ポール・オースターのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
難解だと感じるのに面白いからかするする読み進められた。
いかにもミステリーといった始まり方だったから途中まではこの事件の真相は一体どこにあるんだろう、どうやって解明されるんだろうとワクワクして読んでいたけどそういう次元の話ではなかった。
最後の方急に物語が動くけどラストシーンであれはあの時の伏線だったのか!と思う瞬間がありそれがとても楽しい。
結局どこに行ったんだろうね。途中で語られてた街にいる様々な人たちと同じようにニューヨークの街に溶けて消えてしまったみたい。
三部作は幽霊たちを先に読んだんだけど本作も同じく書くことの苦悩を感じた。 -
Posted by ブクログ
自己紹介を兼ねた序章で、本書の主人公は3歳の時以来56年ぶりにブルックリンに戻ってきたと書かれている。肺癌を患い、目下のところ小康状態で、生まれ故郷のブルックリンで過ごすことにしたと。病気のためか明らかにしていないが、仕事はリタイアしたと。くしくも、日本でいう定年退職の年頃だ。
定年退職者の日常となると、1か月前に定年退職を迎えたわが身としては他人ごとではないが、平穏なわが身と異なり、主人公はいろいろな人と関わり、周辺でいろいろな出来事が起こる。タイトルのフォリーズ( ”愚行” や”愚かな”) の意味の通り、客観的に見れば、些細で愚かなことかもしれないが、ご隠居の視点から見ると、関わる人 -
Posted by ブクログ
ニューヨーク3部作からオースターを読んでる身としては、
この2作は本当にニューヨーク3部作との関係性で語りたくなる作品。
というのはあの3部作はまさに「作家が小説を書くというのはどういうことか」をめぐる3作だったわけだし、
もちろんその後の作品でもそういった問題意識を提示してきたけれど、
この2作は本当にそこを前面に押し出して「書くものの責任」「書かれた世界への畏怖」みたいなものを強く感じます。
「写字室」はコミカルであり、ファンサービス的な部分を感じたけれど、「闇の中の男」は後半の作家を殺さなきゃならないって部分で緊張感が高まるし、映画化もあるんじゃないかと感じました。
スパイク・ジョーン -
購入済み
オースターファン向けです。
『孤独の発明』を30代の頃に書いたオースターが歳をとり自分の身体史・精神史を振り返ります。個人的には「冬の日誌」の方が好きかな。
ここから大作『4321』に繋がるわけですがこちらはまだ未訳…。 -
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ニューヨークに暮らすダニエル・クインは、かつて探偵小説で名を馳せた作家だった。しかし今では、世間を驚かせるような作品を書く気力もなく、匿名でミステリーを書いて生計を立てている。そんなクインの元にある日、助けを求める電話がかかってくる。「探偵のポール・オースター氏に事件を解決してほしい」という依頼だ。しかし、ポール・オースターなる人物には全く心当たりがない。間違い電話だと思って切ってしまうが、その後も何度も同じ電話がかかってくる。仕方なくクインはポール・オースターという探偵のふりをして、電話の主に会うことにする。
待ち合わせ場所でクインを迎えたのは、ヴァージニアという女性だった。彼女は依頼人の -
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あるひとが、そのひと自身であること。
それは本人がしっかり把握している限り問題にならないのかもしれない。
が、本人の把握がゆらげば、あっという間に何者かはわからなくなってしまう。
いや、何当たり前のこと言ってるんだ、と言われそうだが。
この小説を読むと、このことを考えさせられるのだ。
主人公のダニエル・クインの視点から語られるこの物語。
詩人としての活動をやめ、今は探偵小説を書いて、そこそこの評価を得ている。
ある日、彼のところに、仕事を依頼する間違い電話がかかってくる。
相手の女性は彼を私立探偵「ポール・オースター」と思っており、義父スティルマンを尾行してほしいと依頼する。
最初は人違いと -
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ブルックリンで晩年を過ごそうと引っ越してきた、失意の男性。だけど…?
ユーモラスに、成り行きが描かれます。
60歳のネイサンは癌にかかって会社を辞め、妻とは離婚。娘とはうまくいかず、親戚ともほぼ音信不通。
いくらか思い出があるブルックリンを終の棲家に選び、自分のこれまでの愚行を書き記して過ごそうか、などと考えていました。
街の古本屋で、甥のトムにばったり再会。これが親族では一番気が合う甥だった。
トムから繋がってご縁が転がっていき、トムの妹や娘や母、古本屋の主人など、思わぬ出会いと楽しみが増えていくのです。
やや上手く行き過ぎ?だったり、中年?男の身勝手さが垣間見えたり、というところも、ユー -
Posted by ブクログ
魅力的でカラフルな人物たちが登場する。語り手がいるが、群像劇と言ってしまってもいいかもしれない。
特に楽しみもなく暇をつぶしながら老後を過ごすつもりだった高齢男性が、甥に久しぶりに再開したことをきっかけに突如人間関係が広がり、さまざまな事件が起こり、考え方がポジティブに切り替わっていく。まあ、楽しみながら読める。
フォリーズ(Follies)とは「愚行」という意味で、たしかに登場人物は愚かなことばかりしているように見えるが、愚かな行為は悪いことというわけではないよね。
多様性に肯定的だが、唯一カルト宗教に関しては強い否定的な書き方をしている。