ポール・オースターのレビュー一覧

  • ガラスの街(新潮文庫)

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    クインの失われた息子と妻の話は最後まで語られない。その説明の不在こそトラウマの証拠だろう。
    ピーターとヴァージニアは、おそらく彼の失われた家族を暗喩している。
    ダニエル・クインのイニシャルが、ドン・キホーテと同じであるように、これは狂人、あるいは狂人に見える人の物語であり、孤独に陥っていく「浮浪者」あるいは「狂人」の内面を描いた物語だろう。
    最初は、ピーターの父である教授がそのように見える。しかし次第にクイン自身がそれと同じ境地に陥っていくのである。

    教授と同じ顔をした(立派なみなりをした)別の人間は、おそらくそうではなかった別の人生を生きる自分の暗喩である。クインにとってのオースターも同じ

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    2025年09月10日
  • 4 3 2 1

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    これぞ、オースターが遺した
    オースター流の総合小説だ。

    恋愛・哲学・音楽・文学・青春・政治が
    これでもかと言わんばかりの力強さを持って
    オースターの文学的音楽の波にサーフしている。

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    2025年09月03日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    探偵ブルーはホワイトから、ブラックを見張ってほしいという依頼を受ける。
    ブルーはブラックの真向かいの部屋に住み観察を始めるが、彼の行動はといえば、何か書きものをしているか、散歩しているかのどちらか。
    事件らしい事件も起こらず、ただブラックを見張り続けるほか何もすることのない日々に、ブルーはじりじりと焦燥感を募らせる。
    無機質なニューヨークの街の中で、物語は色彩を失っていく――。

    『書くというのは孤独な作業だ。それは生活をおおいつくしてしまう。ある意味で、作家には自分の人生がないとも言える。そこにいるときでも、本当はそこにいないんだ。』
    『また幽霊ですね。』
    『その通り。』
    『何だか神秘的だ。

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    2025年08月16日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    書き出しの「人類がはじめて月を歩いた夏だった」はあまりにも名文だと思う。

    愛や喪失をテーマに紡がれる物語で文章も相まってとても美しく儚い。

    以下、好きな文章。

    ・「彼女に恋をしないこと なんて不可能だった。ただ単に彼女がそこにいるという事実に酔い知れないこと なんて不可能だった」

    ・「僕は崖から飛び降りた。そして、最後の最後の瞬間に、何かの手がすっと伸びて、僕を空中でつかまえてくれた。その何かを、僕はいま、愛と定義する」

    人生のオールタイムベストに挙げる人が多いのも頷ける。

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    2025年07月24日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    喪失から始まり喪失で終わった。人生は喪失の連続だ。同じ場所に留まり続けることはできないし、自分の意思とは関係なく街の風景は変わっていく。歳をとるにつれてどんどん話のできる人は死んでいく。このような喪失とどのように向き合って生きていけばいいのだろうか。自分だったらどうなってしまうのだろうと考えながら読んでいた。

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    2025年06月12日
  • 4 3 2 1

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    1960年代を中心としたアメリカ、激動の時代のクロニクル。パワフルかつ繊細。変奏曲のように同じ主題が違う展開を生み出す。これまで自分が教科書やニュース、別の作品で見聞きした歴史的事件が現れて登場人物がどのように関わっていくのかを辿るのも一興。最後に一定の種明かしがあるのが優しみ。作品の長さは読書の楽しみの長さ。

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    2025年05月31日
  • 4 3 2 1

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    買ってから5ヶ月寝かせていたけれどもGWに意を決して読み始め、2週間かけて読み終わりました。

    とにかくすごい作品としか言いようがない(語彙力)。
    今になってポール・オースターで好きな作品ベスト3に入るものを読むことになるとは思わなかった。

    解説や帯にも書かれているけれども文字どおりオースター文学の集大成でした。

    オースターが生まれた1947年から1970年代にかけてのNYにおける野球チーム、バスケットボール、ベトナム戦争と反戦運動、公民権運動、文学や音楽、大学生と学生運動、アメリカ政治などオースターが何度も題材にしてきたテーマや、人にはコントロールできない

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    2025年05月15日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    熟年離婚の後に死に場所を探してブルックリンへと帰ってきた老人が甥のトムとの再会を機に、冒険に詐欺に逃避行の手助けと家族を取り巻く人生最後のドタバタ騒ぎに巻き込まれる物語。オースターの作品の中で恐らく最も読みやすいコメディタッチのストーリーであり、相変わらずその「語り」の巧さに敬服してしまう。

    登場人物に対しての作者の「まなざし」に非常に温かみがあり、たとえば主人公のネイサンは切れ者で老人特有の知恵と落ち着きがあるが、行きつけのダイナーにいる女性店員にデレデレしたりと、いくつになっても男であることの愚かさが描かれているわけだが、それが決して否定的でなく、至ってフラットに描かれている。さりとて肯

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    2025年05月15日
  • 4 3 2 1

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    一ヶ月半をかけてようやく読み切りました!
    ネタバレになってしまうため内容はあまり詳しく言えませんが、一章の途中から違和感を覚え、二章を読み始めると「これってまさか...」と慄き、さらに読み進めて、この本の構造そのものに気づいたとき「とんでもない本に手を出してしまった...」とかなり驚愕しました。
    しかしこの構造自体が今まで人生の可能性について、あり得たかもしれない出来事や人にはコントロールしようのない偶然を何度も題材にしてきたポール・オースターならではであると思いました。まさしく集大成の作品です。

    一滴の水滴が水面に落ちて波紋がゆっくり広がっていくように、少年の頃のある人との出会いが考えの礎

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    2025年03月28日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ポストモダニズムがどうとか、巻末にあった文章のようなことは難しくてわからない。作家たちの歴史を学ぶ必要がある。
    ただ単純に、読んで、構造的な面白さが印象深かった。前衛アートのように構造を楽しむものなのかな、と思った。
    主人公たる探偵ブルーは、ホワイトに「ブラックという男を監視してほしい」と依頼される。しかしブラックは日がな一日机に向かっていて、外出は散歩程度のものだ。依頼の意図も知らないブルーは焦れて、飽き、やがてホワイトとブラックについて物語を妄想したり、自己について深く考え込んだりする。ついにブラックと接触したブルーは、ブラックもまた誰かを監視するよう依頼された探偵だと知る。

    監視する者

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    2025年02月01日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    鍵はウォールデンである。
    ある男を監視する主人公は、男の買ったソローの森の生活を読もうとして挫折する。
    ゆっくりと読む、それが主人公の陥った袋小路を打開する唯一の手段。
    しかし、その機会を失った事で、停滞していた監視は、主人公を傍観者の立ち位置から巻き込む形で、監視される男へと、一種、予定調和の様に集約していく。
    ゆっくり読むべきは、我々読者だったのか?
    この転換は、小説の丁度ど真ん中でピッタリと折り返す様に起き、計算された構成を味わえます。

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    2025年01月22日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ネタバレ

    物語の中に著者が出てくるメタ要素がある中で、同じくメタ要素のあるドン=キホーテをとりあげるというユーモアさもありつつ、妻と息子を失った主人公の虚無感ゆえの自己の抽象化と、そこから起こる探偵物語のような展開に惹き込まれる。

    どうなっていくんだろうと没入するほど、奇妙に歪められた世界を見ることになった。
    結論から言うと解決はされていない。
    俎上に載せられた問題は何もわからないまま、物語の幕は閉じる。
    真実の物語なのだから、常に答えが用意されているとは限らないよね、という感じなのか。
    それでも、面白い。

    個人的な読字体験として、プルーストとイカ〜読字は脳をどのように変えるか〜を併読していて、文字

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    2024年12月15日
  • 4 3 2 1

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    ネタバレ

    やー、面白かったなー!!分厚くしかも二段組で、嬉しくこの世界に浸った。

    注:何をどう書こうが読み進む面白さを削いでしまってはいけないので、未読の方はここから先を読まないでください。


    最初の1.1、1.2で、むむむ?と思いながら読んでいたのが、1.3あたりから、もしかしてこれってそういうこと?!と急に霧が晴れてきて、すごい構成だなーとぐいぐい来た。どういうことかは読んで知るのが吉。ラストも素晴らしい。余談ですが、そういえばポール・オースターはコロンビア大学なんだね。まさに『いちご白書』の渦中の人だったんだ?

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    2024年12月15日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    探偵小説のようでそうでもない
    ひとりの男の「間違い電話から始まった」
    物語
    「ニューヨークは尽きることのない空間、無限の歩みから成る一個の迷路」
    やっぱり気になる
    読み終えたあともっと
    気になる
    ゼロは始まりか否か

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    2024年12月08日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    奇妙な依頼を受ける私立探偵
    ただ、見張り続けるだけ
    何かおこるわけでもなく
    次第におかしな思考になり
    おかしな行動をとる
    いったいなんなの!
    と、読む側もおかしくなる
    が、なんだか気になって気になって
    一気に読まずにはいられない
    読みおわっても
    気になって仕方がない

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    2024年12月07日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    柴田元幸さんを知ってから
    ポール.オースターを知りました
    そしてやっとこの有名な作品を読むことができました
    なんともせつない青春小説
    月が常にそばにいて
    絶望と、偶然と、運命と、に振り回される
    「太陽は過去であり、地球は現在であり、月は未来である」ムーンパレスで出会ったこの言葉が
    自らの家系を知り、未来を暗示していく

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    2024年12月07日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    10年ぶりくらいに再読。フォッグがユタ州の荒野をもっとずっと彷徨ってるイメージだったけど、実際には数ページだった。
    世界との繋がりが完全に絶たれたと思っても、意外なところに繋がりは残っている。世界は偶然が支配している。終わったと思ったところから始まる。どんな絶望的な状況でも、世界は自分と関係なしに回り続ける。
    「僕はただ歩きつづければよいのだ。歩きつづけることによって、僕自身をあとに残してきたことを知り、もはや自分がかつての自分でないことを知るのだ。」

    キティが魅力的すぎる。

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    2024年12月03日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    最高。これがロマンチック。

    ムーンパレスという名前のままに、何度も月に関するものが出てくる。叔父さんが「金がないからこれ以外送れないんだよ」と送ってくれた1000弱の本とそれを包むダンボールを家具にするという発想。叔父さんが亡くなりそのダンボールを本を読み売ることで悲しみと同時に消費し、叔父さんの本来の「役に立てる」を実行する。売る本もなくなってからは路上生活をするようになりその中でキティと出会い親友とキティに救われる。

    次に盲目で車椅子に乗った気の狂った振りをする変わり者のおじいさんエフィングのところで働くことになる。エフィングが急に死を悟り、エフィングの隠された壮絶な物語が開けて行く。

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    2024年11月23日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    ポール・オースターの小説はいつも破滅的で諦観していてある程度一貫性が無く、実際に起こる出来事ではなく物語は人の脳内で進むので、現実逃避に効く。
    radioheadの小説版って感じ。

    本書はオースターの中では比較的理路整然としてビギナー向けといった印象。

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    2024年10月15日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    非常に起伏に富んだ鮮やかなストーリー展開で一気に読ませる力がある。所々に出てくる現実の出来事への評価を含めて政治的にも旗幟鮮明であり、「多様性とその敵」とばかりに定義される善悪の構図は、寛容がベースとなる本書の筋書きの中では怒と憎悪の感情が顕になる貴重なアクセントでもある。
    小説の舞台から四半世紀、出版から20年が経過した現在から見ると、ポリティカル・コレクトネスが高らかに歌い上げられている光景には当時の熱気と未完の革命への期待感のようなものが感じられる。その明るさが、結末部分に迫る非常に暗い影と対照的に浮かび上がる仕掛けには思わず唸らされた。

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    2024年10月05日