ポール・オースターのレビュー一覧
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ネタバレ
感想書きにくい作品だよなあ。オースター作品は何年も前から読もう読もうと積読状態で、そもそも昔通ってた美容室のお兄さんが『ムーンパレス』を薦めてくれたのがきっかけだったのだ。それもまだ半分しか読めてないのだけど、これを機に読み進めたいと思う。
ブラックを見張るブルー、そのブルーを見張る私たちという多重構造。ブラックは見張られることで自身の物語を形作り、そして終わらせようとしている。ブルーがブラックへ接触を図ろうとするところから一気に展開が出てくる。それまでは淡々と、色のない情景が続くように思える。派手なことは起きないけど、何か惹かれていく感じ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレリーマンショック後の冷え込んだ景気のアメリカで、4人の若者がサンセットパークの廃屋に不法滞在してシェアハウスする物語。
金融危機で起こった不景気による先行きの見えない不安と未来に対する絶望感は今の日本の感覚とも通じるものがあり、解説でも語られている通りの「いま・ここ」にしかない切迫感が凄まじい。それは立ち退き期限の迫った廃屋の不法滞在という腰の座らなさがそのまま若者たちの「寄る辺なさ」へと繋がっており、夢や目標のために節約しているというより本当に行き場がなくて迷い込んだような感じなのがたまらなく切ない。群像劇視点ながら主人公含む4人ではなく、主人公マイルスの父親であるモリス・ヘラーの視点も混じっているのがこの手の青春群像にしては珍しく、社会的には成功していながらも、息子の失踪によって負った傷や妻との不和が描かれており、その孤独感と喪失感に年齢は関係ないことが伝わってくる。個人的に自身の年齢もあってか刺さったのは父親視点のページであり、息子を心配する立派な父親であると同時に、死の匂いを振り払えない一人の人間としての孤独が痛烈に胸に刺さった。
それぞれの視点で描かれてるのは高学歴の貧困であったり、性的に満たされていない行き詰まった芸術家であったり、自身のセクシャリティに悩みつつもパンクな反抗心を捨てられない青い若者であったりと、どの視点も内省的であり物語はあるようでない印象である。そう劇的なことは起こらないのが逆にリアリティがあり、オースターらしいと思うと同時に幕切れは悲劇的で、突然の立ち退き勧告から積み上げたものが壊れるものは儚くも一瞬であり、若い恋人ピラールや父や母との再会で持ち直したかに見えたマイルスが、警官へのパンチ一発で文字通り全てを失ってしまうラストは衝撃的でありながらも、小説全体を通して伝わってくる喪失感に一貫性はあったように思う。 -
Posted by ブクログ
【写字室の旅】
オチがよかった。あと数ページだけどどうやって物語が終わるんだろうって思ってたところでのそういうことか、と分かった時は快感だった。
オースターが今まで書いてきた作品の登場人物たちが沢山出てきて、それぞれの作品を思い出しながら楽しく読めた。オースターはそんなつもりで書いてないかもしれないけど、ファンからしたら最早ファンサービスだと思う。
物語の登場人物が自我を持ったらという題材は色んなところで見るけど、物語を世に生み出すことの責任や畏怖のようなものを感じた。
【闇の中の男】
前半の写字室の旅と同じく物語を作ることについてのお話。
こちらは前半とは違い、作り出された物語の中の人物の方に感情移入して読んでいたから、その物語の終わり方には驚いた。
前半で物語を生み出すことの恐ろしさや責任を感じた後にこの作品を読むことになるので、それでも結局物語は物語で、どんな結末になろうとも現実世界での生活は続くし、そこにフィクションの人物は介入できない虚しさみたいなものを感じた。
もしも写字室の旅と闇の中の男の掲載順が逆だったら全然違う読書体験になったと思う。
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Posted by ブクログ
アメリカの近代作家オースターのニューヨーク三部作、鍵のかかった部屋と幽霊たち、とで3冊。
話的には繋がってはいないけれど、3冊に共通するのは、ニューヨークという現実の世界の中で感じる非現実感。読み進むと、幻想的な迷路にはまってしまったような感覚に陥ります。
どの話も推理小説のようであって推理小説ではありません。主人公は、誰かを探す、観察する、探偵、という体裁をとりながら、ひたすらある人を追ってニューヨークブルックリンの街を徘徊します。
相手を知ろうとすればするほど他人とは何かと考え始め、他者の不確かさが深まり、延いては自分と他者との境界はあるのか、自分とは何か、となります。
結論もなければ謎の解明もありませんが、3冊を通して読んだ時に、3冊の中に隠れた言葉の巧みな関連性、積みあがった言葉が消えていく感覚、最終的に自分と他者の境界が消失する、という不思議な感覚を体験することができます。
とても不思議な世界観。 -
Posted by ブクログ
どこかでグッと掴まれるとか、起承転結がバッチリあるとか、あんまりそういう感じじゃないんだけど(ずっとちょっと変で悲しい話)、なーんか飽きずに楽しく読めて不思議。
MSフォッグ(と彼女のキティ)、フォッグとエフィング(目の見えない偏屈なじいさん)、エフィングの過去、フォッグとバーバー、バーバーの本の内容、みたいにそれぞれまあまあちゃんとした(どちらかというと重くて悲しい)話がたくさん出てきた。
でもなんからみんな好き。
特に最初のフォッグの、お金無いのにその中で謎にやりくりしようと頑張るところがなんか好き。叔父さんの残した本を読みまくって、売って、何もなくなったら公園で生きて…私も助けに行く親友とキティに加わりたかったな笑
人生の偶然性には本当にびっくりするよな!! -
Posted by ブクログ
学ぶことがとても多い読書であった。
ページが進むにつれて、悲しい出来事が起きていき、読んでいるとこちらまで鬱っぽくなる時があった。けれども必ず章の最後の方に。人生において糧となり指標となってくれるような言葉が綴られていて。それを見つけるために頑張って読んでいた気がする。
神は果たしてどのような意図で肩をすくめたのか?
自らのちょっとした、あちゃーやってもた、ごめん!というべき策士的失敗にか。それとも、良きことを重ねていれば必ず神は報いてくれる、という人間の思い込みにか。そもそも神はいるのか?
でも
神はいないかもだが、生は必ずそこにある。死もまた確実にそこにあり、生と死は一体である。
自ら選んだ道があるのと同時に、選ばなかった道もまた同時期にそこにある。
そして、この本のカラクリが素晴らしい!
最初の方に分かるカラクリ、最後の最後で分かるカラクリ。本当にオースターの言う通り、これやった人いなかったよなぁ