ポール・オースターのレビュー一覧

  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    それは人類がはじめて月を歩いた夏だった。という美しすぎる書き出しがいい。音楽的とも評される文章は比喩表現含めてとても綺麗かつ、自嘲と自虐の目立つ語り口ながらニューヨーカーらしい軽快さもあるアメリカ現代文学らしいオシャレさがあった。

    内容としては自伝的な青春小説でありながら、これは家族小説でもある。特に第二部の余命いくばくもない富豪の老人と、第三部の息子がそれぞれ主人公の父であり祖父だったという「偶然」と、それが連なって物語となる「必然」は非常に面白く、いずれも互いが関係性を自覚して双方向になったのは束の間で、死による離別となるのはたまらなく切ない。結局ひとりぼっちとなるラストも含めてかなり薄

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    2025年05月13日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    探偵小説だとは感じなかった。入れ子構造になった物語で、途中、ジョイス的なものが顔を覗かせてから一挙に面白くなった。

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    2025年05月03日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    妄想と現実が入り混じり、
    探偵小説の体から始まるが、途中から
    己の狂気に閉じ込められた人間像について、
    リアルに描かれていて文学作品のよう。

    途中、ドンキホーテ論を交わす場面があるが、
    最後に主人公のクインの赤いノートだけが残り、またそこで初めて、物語の作者が、
    ポールオースターの友人なる『私』の存在が、
    明らかになる。
    まさにドンキホーテのように、4番目なる人物が
    ストリーテラーだったというオチ

    同胞たる人間たちの信じやすさを試す愉しみ
    とあるように、幾十にもなっている入れ子の
    小説になっている。

    読書後も、登場人物のあの人は、夢か現実か
    はたまたクインの妄想か、不思議な余韻が残る

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    2025年04月30日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    随分と滑稽で、幾分と自虐的な貧乏学生マーコの視点から描かれる随筆チックな青春小説。
    どうしたらこんな比喩が思いつくのか?の連続。純文学にも似た美しい翻訳が、思春期ならではの独りよがりの悲壮感、世の中を穿つことでしか得られない優越感と上手く融和していた。
    起承転結というよりは、主人公の回想の中で偶発する出来事の連続にゆらゆらと身を任せながら楽しむ物語。

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    2025年04月20日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    翻訳小説とは思えない文章の良さ!
    表現が全部良くて、刺さりまくって大変でした。
    面白い比喩表現が多くて、言葉遣いがとっても好き。
    著者も訳者もほんとに素晴らしいです。柴田元幸さん訳の本もっと読みたくなっちゃった。

    内容は非常に壮大で先が読めなくて面白かった。
    時系列がごっちゃになってて、頭の中の回想を追ってるような感覚。
    楽しかったし、展開が全く予想つかなくて驚かされてばかりだった。
    大変面白かったです!

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    2025年04月07日
  • 4 3 2 1

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    訳者が後書きの最後で書いたように、この途方もない物語に耽溺、はした…
    まぁ、大分的が外れてるかもなのだが、途中、まるでアメリカの大河ドラマのようだなと思った。
    日本の大学紛争はニュースや小説等で触りだけの関わり方しかしていないものだから、あちらのそれの描写のシーンでは、ファーガソンに感情移入しているものだから、かなりの迫力と無惨さをもって伝わってきたように思う。
    それにしても、そういうことをする年になってから以降は、女も男も相手にするセックスの話も多く、これはこれで興味はあるのだが、寧ろそういう時代を、もう、振り返るだけしかできないような年代になったファーガソンが、回想ではなく、そこからまた何

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    2025年03月23日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    シンプルに読みやすい。
    相手を見張るだけ、という単調な設定だからこそ、自己との対話を通して疑心暗鬼に陥っていく展開がとても良い

    ミステリーの展開がワクワクするので読み終わりのスッキリ感がありつつも、他者を通して自己の存在を確認するというテーマが最後に残されて、行為と行為による影響が人間を人間たらしめていると改めて考えさせられた

    あと海外小説、映画あるあるで名前覚えにくくて発生するノイズがなかったのが地味に助かった

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    2025年03月15日
  • 写字室の旅/闇の中の男(新潮文庫)

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    1人の老年男性が主人公の中編2編からなる本作。
    いずれも静かな語り口で、著者独特の画中画のような構造は共通しているものの、物語の雰囲気は少し違います。
    とはいえ、いずれもどこか“不安”や“不穏”が付きまといつつ、どっぷりとその世界に浸って読書時間を堪能しました。
    ポール◦オースター的世界に浸れる良作だと思いますが、もう新作を読めないのかと思うと非常に残念でなりません。

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    2025年02月13日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    狂った若者とイカれた老人とのキテレツな関係も、読み進めるうちに頼もしいコンビのように思えてくる。
    主人公と関わる登場人物の多くは、割り切れない葛藤と独りよがりでもそれを打破する工夫や拘りが散りばめられている。狂っていてもイカれていても同じ人なんだと思えた。

    タイトルにある「ムーン」という言葉が、全編に渡って多くの描写に使われているのも読み終えて納得。
    これは読んで良かった。
    自分の人生の終盤にもう一度読むといいかもしれない。

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    2025年01月18日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    最後の1章が良かった。
    最後の章の為に、それまでの複雑に絡み合ったストーリーを読んできた甲斐があったと思えた。

    最初から最後まで主人公には共感できず、途中で語られる砂漠での物語は正直つまらなかったが、この小説を貫く哀しい諦観のような空気感は楽しめた。その哀しさを最も感じられたのが最後の章であり、最後、主人公が到達した浜辺で見上げた月は、この物語中に一貫して存在する哀しさの象徴に思えた。

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    2025年01月15日
  • ブルックリン・フォリーズ(新潮文庫)

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    ブルックリンって書いてあったからリサイクル本を購入。
    読み終わった後にポールオースターって見て納得。
    そして驚き。笑
    結構好きな作家だし作者見ずに読んでても無意識に好きなの選んでる…!

    割とリアルなニューヨーク(ブルックリン)の人たちって所が良かった。
    全然キラキラしてないの。
    みんな人生こんなもんじゃないかな。
    ハリーだけがある意味キラキラかな。

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    2025年01月13日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    ブルーに課せられたのは、ただ机に向かって書き物をするだけのブラックを見張ること。
    そのうち、自我が融解してブラックと融合したかのような奇妙な感覚に陥る。
    ブラックはブルーの合わせ鏡でもある。
    ブルーの視点を通して、わたしたちもブラックを知り、ブルーを知る。
    ブラックにとってもブルーの存在は同じようなもので、だからこそブラックはブルーを殺せなかったのだろうし、そこで怒りに任せてブラックを殺してしまうブルーには狂気すら感じる。
    その後、ブルーが正常に戻れることはあるのだろうか。ブラックを失って。

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    2025年01月06日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    2024年に亡くなったアメリカの作家、
    ポール・オースターが描く、私立探偵の物語。

    登場人物は、(実在の人物等を除いて)全てが色の名前で、奇妙な展開や駆け引きに夢中になりました。

    ページ数も130ページ程度と非常に短いので、1日で一気読みでき、2024年の年納め小説とさせていただきました。

    実は、ニューヨーク3部作の第2作目とのことで、
    話は繋がってないらしいものの、1作目のガラスの街から読むのもアリだったかもと思いました。

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    2025年01月06日
  • 4 3 2 1

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    遂に、読み終わった…
    1947年生まれのポール・オースターによる自伝的小説

    戦後史において恐らく最も激動だった60年代を若者として生きることは、自らの可能性が何通りにも分かれパラレルワールドの如く並行して存在するように感じるのかもしれない

    面白かった!

    自伝的小説というより、彼の世代の大河ドラマと言うべきか

    青春の戸惑いと喜びを書かせたら彼の右に出る者はいない
    身体と精神の変化、神との関わり、性愛、クィア、闘争、死…
    辟易しないのは、この小説のスタイルと、彼の「小説と思弁的な散文のあいだの微妙な線を歩く術」のおかげだ

    そして、
    今の制度がダメだからと革命を起こそうとして失敗したのが6

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    2025年01月04日
  • 4 3 2 1

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    面白い!790ページの物語に一週間どっぷり浸かって、まずはそう言い切れる。が、いやー疲れたってのも本音。
    ひとたびファーガンソン君を好きになってしまえば、横溢する詩、書物、音楽、そして映画の固有名詞も、ファーガンソン君を形成していく重要なピースとして愉しく読める。
    しかし、教養といってしまえばそれまでだが、誰の本に感銘を受け、どの映画が最高かを論じるのが友情を築く土台だとすると、僕などは全く資格に値しないのは残念なところ。ファーガンソン君は1960年代アメリカの空気を胸いっぱいに吸いこんで青春を駆け抜けていく。

     “これまでファーガンソンはいつも、人生は一冊の本に似ているとあらゆる人から言わ

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    2025年01月04日
  • 冬の日誌/内面からの報告書(新潮文庫)

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    オースターの訃報に悲しみながらじっくりと。
    主語?を「君」にして幼い頃からを振り返るのと、もっと混乱に満ちた青春の日々を語る2篇の自伝。瑞々しく、ロマンチックで、かえすがえすももうほぼ新作が読めないのが寂しい。

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    2024年11月09日
  • 写字室の旅/闇の中の男(新潮文庫)

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    ネタバレ

    前回読んだ『幽霊たち』も、主人公が「自分が何者かわからない」状態から本当の自分に戻っていく話だったけどこういう作風なのか。
    オチが興奮するタイプのものじゃなくて静かに取り残されて終わっていくのだが、私は結構好み。

    まだ著者の作品は3作しか読んでいないが、主人公が自身の内面と対話している様子を俯瞰したり時には自分とリンクさせたりしながら本と精神的に繋がっているような感覚になる。

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    2024年10月01日
  • ガラスの街(新潮文庫)

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    オースター初期、ニューヨーク3部作のうち「孤独の発明」と「幽霊たち」は読んだ記憶があるのだが本作は未読。追悼特集で平積みになっていたところでついに手に取った。
    探偵小説のような体裁で書かれているが、探偵小説のような謎解きも、事態の進展もない。
    馴染みがありそうな例えをするならば、村上春樹的な不思議空間に迷い込み、探偵のようなことをさせられた男の物語といったところだろうか。

    いささか実験的小説のような印象も受け、いろんな手法とテーマが混ざり合っているのだが、敢えて軸となるテーマを探し出すとするのであれば「言葉」と「狂気」と「認識」だろうか。
    虐待を受けて育ったクライアントが用いる違和感のある言

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    2024年09月22日
  • 幽霊たち(新潮文庫)

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    ニューヨーク3部作~「ガラスの街」「鍵のかかった部屋」「幽霊たち)
    1985年~1986年に執筆されたこの傑作揃いは、全く、互いに関連するものはない。
    なのに、読書中、読後感が同じ匂い、感触に包まれる。

    どれも読んだのは20年余前、仕事の合間に読んだ事もあり、あんまり記憶に残らなかった。
    年齢もあるのか・・と今回、まずこの本を再読してみて感じた。

    共通するモチーフは「孤独」そして無色ではないとしても没個性的「存在の」人物・・ブルー・ブラック、ホワイト、レッド、ヴァイオレット・・・
    ブルーがブラックの指示に従い、歩き走り行動して‥現実と虚構のはざまが薄れ消えていく感覚がこちらにも伝わってくる

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    2024年09月17日
  • ムーン・パレス(新潮文庫)

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    「それは人類が初めて月を歩いた夏だった」
    主人公マーゴの物語が始まる。

    敬愛するビクター伯父さんを亡くしてから、隙間から見える「ムーン・パレス」のネオンサインを、ただ眺め、思い浮かべるだけの生活を彷徨う……やがて、友とキティという女性に助けられて、無為の果てから生還する。

    そののちに出会ったエフィングという人物が、主人公に生き様を見せる。
    「……どこでもない場所のど真ん中の、何もない荒野に、独りぼっちで何か月も……わしはどこへもいく必要なんかないんだ。ちょっとでも考えれば、とたんにもうそこに戻っているんだから。このごろじゃ一日の大半はそこにいるのさ……」

    物語は次に主人公マーコとエフィン

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    2024年09月16日