エラリイ・クイーンのレビュー一覧
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一九四五年発表の作品。デイヴィー・フォックス大尉ーー何人もの日本兵を叩きつぶした「英雄」ーーの凱旋を、ライツヴィルの人々が華々しく歓迎する場面から物語は始まる。しかし実際のところ、彼は戦場で心を壊してしまい帰還したのだった。ミステリー作家として、殺人事件が核となる娯楽小説をずっと書いてきたクイーンだが、戦局が激しくなってきて、改めて「人が人を殺すとはどういうことか」をきちんと示したかったのかな…と思わせる冒頭。
後半でも、ナチスの強制収容所の話が出てくるが、それ以外はいつもの謎解きエンタメ性バッチリ。ドラマツルギー的にだいたいこういう筋書きだろうなあとは予想ができるものの、どうやってその結 -
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ネタバレエラリー・クイーンの1942年発表の本、その新訳。
災厄の家、という話かと思ったら、災厄は町全体、その人々。
銀行家のライト氏の美しい3人の娘たちと、
偶然訪れた小説家、エラリー・クイーン(?都合良すぎ!)アメリカの田舎の富裕層の家庭が、推測ではあるけれど垣間見られて、長閑で平和だけれど悪意に満ちた物見高い庶民達の噂話が大きくこのストーリーを左右している。だけど、年代をみたら大戦前夜。
この町も国も、そして我が国もやがて時代の大きな波に飲み込まれてゆくんじゃないですか!
アメリカという大きな国のまた、その一部をみつけてしまった -
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「自分はたびたび記憶喪失になる。その間、自分が何をやっているのか見届けて欲しい」と古い知人であるハワードに頼まれたエラリイは、三度ライツヴィルへと赴くこととなる。
大富豪の父親のディードリッチ、若く魅力的な継母サリー、仲の悪い叔父ウルファート――そこでエラリイはとある秘密を知らされ脅迫事件に巻き込まれるが――
一言で言うと、とてもドラマチック。これはクイーンの作品の中でも上位に食い込むのが納得の面白さ。
冒頭の登場人物一覧を見ると分かりますが、登場人物はアレだけしか提示されないけれど、そこで繰り広げられる物語がお見事でした。
ライツヴィルもの3作目ですが、このラストの締め方のビターな感じも併 -
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ライツヴィルの名士の家で起こった毒殺事件。夫が資産家の妻を殺そうとしたという実に単純な、しかし考えてみれば奇怪な事件にエラリイ・クイーンが挑むミステリ。
事件が起こって以降のライツヴィルが本当に嫌です。まあミステリではありがちなんですがこういう閉鎖的な村だとか町だとか。疎外されてしまうほうからすればたまったものじゃないなあ。そんな中でジムの無実を証明しようとするライト家の人々とエラリイ。とはいえ傍から見ればジムが犯人で全然おかしくない、むしろそれ以外にどんな真相があるというのか、と決めつけたくなる気持ちもわかりました。だからこそその事件の後で起こる悲劇と明かされる真相にはやりきれないものが。
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購入済み
最後の最後で…
ミステリー小説でこんなに衝撃を受けたのは初めてです。
最後の数ページは、目が画面に貼り付き、涙も出そうでした。(電車内なので我慢しました笑)
結末は一言で悲しいとは言えない、色々な感情が渦巻くようでした。
まさに最後の悲劇というタイトルがふさわしいです。
Xの悲劇から読み続けてこそ、意味のある1冊です。
この本含め、このシリーズは一生忘れられないものになりそうです。 -
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「名探偵の苦悩」「後期クイーン問題」の極地。なぜだろうこんなに胸が苦しいのは?そうか。エラリーが大好きで、彼は私のスーパーヒーローだったからだ。
血まみれの友人が記憶喪失で、殺人を犯したかもしれなくて、とりあえずライツヴィルに同行したら、脅迫電話がかかってきて、さぁ巻き込まれて大変!?な話。
人物紹介、家族関係、そしてライツヴィル。地味に物語は進み、突如破綻する。エラリーはいつもの調子で、論理的に解決する。
先に待つのは、探偵の終わり。理性の終わりだ。
エラリーの現実は、これまでの功績など無に帰す。
知らずに「九尾の猫」を数年前に読んでいた私は、その先の苦悩を知っている。そして光も。
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ネタバレ 購入済み
悪夢的。
エラリイ・クイーン『ダブル・ダブル』再読了。中盤を過ぎても"何が起きているか判らない"五里霧中状態に、悪夢を見ている様な感覚に陥る。リーマをあんな処に潜入させたエラリイ、要反省。横溝正史の諸作品との関連も興味深かった。
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再読。
ドルリイ・レーンものはなかなか読み応えがあっていい。
ドルリイ・レーンの人となりは、好き嫌いが分かれるところであろうが、四部作の評価については(ひとまとまりで見たときについてでは)一致するだろう。
ただ、個々で見て何が一番かと問えば、「Xの悲劇」か「Yの悲劇」かで分かれる。
私はどちらかと言えば、心情的にどちらも一番だと、言いたくなってしまう(笑)。
というのも、秀でている箇所がそれぞれ違う為、比較し様がないと思うからである。思うにそれぞれの良さがあるから、このような意見割れが起こるのであろう。
「Xの悲劇」の秀でている点は、その「簡潔明瞭な論理展開」だろう。成程、と思