エラリイ・クイーンのレビュー一覧
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中学生のころ、エラリー・クイーンのいわゆる"国名シリーズ"をいくつか読んで、「エラリーってかっこいい…」と憧れていたことを思い出した。はっきりと「美形」として描かれていたのか覚えていないが、若く、長身?で、切れ者?で、そして鼻眼鏡だか縁なし眼鏡だかをしょっちゅう磨いていたような(眼鏡萌えだったのかもしれない)。あとなんといっても名前が素敵。エラリー・クイーン。説明が前後したが、これは20世紀アメリカの推理小説作家名=従兄弟同士の二人の共作のためのペンネームであり、作中の探偵役(ややこしいことに職業は推理小説作家)の人物の名前でもある。
それで急に、果たして探偵エラリー・クイーンはかっこいいのか、つまりそう書いてあるのか、そしていまの自分が読んでもかっこいいと思うのか、を確認したくなり、何を読もうか検討した結果、未読の中期の長編『災厄の町』(1942発表、訳:越前敏弥[2014])にしてみた。これは"ライツヴィルシリーズ"と呼ばれる作品群の第一作で、ライツヴィルというアメリカの架空の田舎町が舞台だ。
やはりはっきりと「美形」とは書いていなかった。というか容姿はおろか年齢も明らかでない。発表時点でもうじゅうぶん知られたキャラクターだったから、しかたない。でも、事件の関係者である若い娘とあれよあれよという間にいい感じになり、「あなたってハンサムだわ」と言われたりはしている(とはいえ出会う女性の誰もが多少の好意を寄せる、みたいな「モテ」感はない)。またあるときは「彼女は昨晩出かけましたよ、そしてマティーニを飲んだ。なぜわかるか?彼女とキスしたからです。――僕には僕のやり方があるんですよ」こんな感じだ。
いや、これはこれで、昔読んだときの印象とは違う…もうちょっと硬派だったような…。いろいろと世の言説を読むと、初期("国名シリーズ"も含まれる)と中期以降ではエラリー像が変化しているというのは定説のようだから、「昔憧れたエラリー探し」は改めて初期作品の再読によって行った方が良さそうだ。ということがわかった。
(あ、いま突然思い付いたけど、「昔憧れたエラリー」は、今ならオノナツメさんの【大きい人】絵がとても似合うイメージ!)
肝心の事件、謎解きに関しての感想は割愛。ネタバレせずにコメントするのが難しいという理由もあるが、世評のとおり、この作品は犯罪のトリックや推理手腕の見事さよりも、田舎町の名家に起こった凄惨な事件がその町の人々の人間性を剥き出しにする様子が、見所かなあと思う。 -
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ネタバレ作者の代名詞である理詰めのロジックで勝負する物語ではなく、事件の背景にある関係者の心理分析に力点が置かれており、真相の意外性もあるし、物語としての深みを感じさせる作品であった。
(以下、物語のあらすじに触れています。)
<猫>と名付けられた犯人による連続殺人事件が5件続き、エラリイに出馬が要請され、捜査に当たるものの、さらに4件の殺人が続き、なすすべもなく、焦燥に駆られるエラリイ。一見、無差別連続殺人と思われた事件だが、エラリイの分析によって、その特徴が次第に明らかにされていき、物語の約半分ぐらいのところで、被害者間の意外なつながりがわかり、重要な容疑者が浮かび上がる。
無関係と思われた被害者がつながる条件や、女の被害者がすべて未婚だった理由はなかなか面白い。残りのページ数から判断して、このままで終わるわけがないと思い、根拠はなかったが、容疑者以外の別の犯人を想定してみた(結局はずれで、犯人は別の人物であったが)。
エラリイは、容疑者逮捕後も真相を見誤っており、ある事実を知ることで自分が間違っていたことに気づく。前提が崩れたことで、容疑者の取った行動や容疑者の過去の出来事を再検討し、心理分析を行うことで新たな動機を発見し、その動機と、犯行の実施可能性から真犯人を特定する。
精神病医との対話の中で語られる犯行の動機、その背景にある関係者の心理分析は読み応えのある内容であった。
また、エラリイが自分の探偵としての無力感に捉われるラストの場面も印象的であった。 -
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アートというものが投機の対象でしかないならば
戦争もやはりハプニング・アートの一例にほかならない
くだらないことである
表現の自由は存在せず、ただ暴力を煽り正当化するなにか
…たとえば、ありきたりな「物語」
そんなものがでっち上げられているばかりなのだから
クイーン親子は、20世紀最大の武器商人「ボディジェン社」から
強引な「招待」を受ける
「帝王」キング・ベンディゴに殺害予告が届いたからだ
ベンディゴの一族は、社の創業以来
世界中のほとんどあらゆる戦争を、裏からコントロールしている
しかし、事件を追及するにつれ
すべてでっち上げで作り出された「帝国」の真実が
エラリーには見えてくるのだった
1952年の作品 -
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「猫」と呼ばれる絞殺魔が出現し次々に絹紐で殺人を犯す、という物語の骨組みや、犯人の動機を精神分析からアプローチしていくところはサイコ・スリラーの先駆と言えますし、「なぜ被害者の年齢が若くなっていくのか?」、「なぜ既婚女性は狙われないのか?」、「なぜ電話帳に記載されている人ばかり狙うのか?」という謎が結びつく真相は鮮やかで、ミッシング・リンクものとしても秀逸です。スランプの名探偵が復活するまでを描いたドラマ的な側面もあり、非常に高い水準で纏っている作品だと思います。
ただ、全体的に冗長気味なのと、容疑者が少ないためどんでん返しが分かり易いのが残念です。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【あらすじ】
ニューヨークで組紐による無差別連続絞殺事件が発生。警察やエラリーの必死の捜査にも関わらず止まらない殺人に、メディアはネコを模した犯人像を書きたて、市民は恐怖を募らせる。やがてエラリーは、被害者の出生にある共通点を見つけ出す。
【感想】
既に何名か殺人が起こった状態で始まり、そこにエラリーが投入されるという展開で始まる。犯人の顔も被害者の関連性もなかなか見えてこず、先の展開を期待しながら読める。
被害者の共通点が判明してから犯人を追い詰める過程は緊迫感があり良い。あっさり終わったと思わせて捻りも用意されているので、読み応えがあった。
あとがきによると、フレデリック・ダネイのベスト3自著の番外編に入るとのこと。
なお、日本語版タイトルは被害者の数が読めてしまうので良くないと思う。九尾の狐をもじりたい気持ちはわかるが。 -
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エラリー・クイーン初読!
どうやら『Yの悲劇』の方が有名らしいですね。何も知らずに『Xの悲劇』を手に取りました……
面白いッ!
すごい描写が細かい。
本当にあった話じゃないかと疑うほど。土地勘もないし、分かりにくい所もあるけれど、それに勝るレーン氏の推理、観察力‼︎
ちょうど並行して、SHARLOCKを観ていたので、「ホームズだ!ホームズだ!」とワクワクしながら読みました。
最後まで、レーン氏は種明かしをしないので読者も一緒に推理できるんですが、もう最初からダメでした。全く追いつけない……
種明かし読んで、「そこかよー」となる。
サム警部になった気分です。 -
Posted by ブクログ
クイーンファンを自認しながら、本書はその梗概すらすっかり忘れていた・・・・・・。もうほとんど初読のような感じで読んだのだが・・・。
いやもう、完成度高い。
パズラーとしてはちょっと薄いけれど、サスペンスとしては超一級。ぐいぐい読ませる。
もちろん、中盤で「なぜこの順番で殺されていたか」を説明するシーンは冷徹なまでにロジカルで、読者はクイーンの真骨頂である論理の快感を味わうことができる。
ラストもちょっと泣けるなあ。ほんと、そのまま法月綸太郎みたいだった。
中盤から後半にかけて、少々間延びしている感はあるが、その瑕疵は本書全体の完成度からして、わずかなかすり傷でしかない。 -
Posted by ブクログ
本格というよりは警察小説の色合いが濃い作品。ミッシング・リンクものなのだが、同時に社会的テーマも扱っていて、既読のクイーン作品とはまるで雰囲気が違う。
チームで捜査したり、また気の遠くなるような広範囲から犯人を絞り込んでいく様は正に警察小説の展開。でも推理のプロセスはばりばりの本格。エラリイが見つけた小さな手掛かり。読者でも容易に気付くそのヒントをどのように発展させるのかと思いきや──いや、参った。これだけきれいに繋がるとぐうの音も出ないわ。作家自身がベスト作品と評するのもわかる。
異色の作品なだけに、生粋のファンから見ればそこが違和感だったりするのかもしれないが、クイーンの別の面を堪能できるポイントはそこそこ高いのでは。心理学的な動機づけや、人間描写に重きをおいた展開など、“意外”な要素がすべて面白く感じた秀作。