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Posted by ブクログ
劇的な終幕を迎えた「十日間の不思議」(1948)に続く1949年発表作。単なる〝思考機械〟から苦悩する探偵へと様相を変え、円熟味を増したエラリイ・クイーン中期を締めくくる傑作だ。
正体不明の連続殺人鬼にマンハッタンは震撼していた。何れも絞殺で、犯行には絹紬が使われていた。性別や人種、年齢や家庭環境に共通点はなく、動機も解明されない。新聞は過激な記事で恐怖を煽り、殺人鬼を〝猫〟に見立て、新たな犠牲者をその尻尾に付け加えた。すでに尾は五つ。市民らは自警団を作り、不甲斐ない警察と市政を批判。父・リチャードに懇願されて捜査の陣頭指揮を取ることになったエラリイは手掛かり皆無の連続殺人事件に着手するが、まるで霧の中を彷徨うが如く事件解決への道は八方塞がりだった。
舞台をニューヨーク/マンハッタンに絞り、大都会の喧騒を織り交ぜつつ、格差や人種差別などの社会の闇もしっかり描いており、発表当時はかなり刺激的な作品だっただろう。
論理的思考を駆使した前期傑作群を彷彿とさせる渾身の一作であり、よりダイナミックな展開で人間の心理/闇を照射し、罪と罰の在り方をも掘り下げている。サイコパスによる無差別連続殺人に打ち震えるマンハッタンの狂騒、探偵クイーンの苦悩、殺人者にまつわる暗い過去、終盤で辿り着く重い真相はミステリ作家として成熟の極みにあった証左だろう。後に席巻するサイコキラー物の先駆的作品としての価値も高い。精神分析を巧みにプロットに絡ませるロジックは見事に昇華して、大きく畝り、読者を圧倒する。或る意味必然的にこの悲劇的な結末を取らざるを得なかったクイーンの達観。結末も深い余韻を残す。
Posted by ブクログ
クイーンファンを自認しながら、本書はその梗概すらすっかり忘れていた・・・・・・。もうほとんど初読のような感じで読んだのだが・・・。
いやもう、完成度高い。
パズラーとしてはちょっと薄いけれど、サスペンスとしては超一級。ぐいぐい読ませる。
もちろん、中盤で「なぜこの順番で殺されていたか」を説明するシーンは冷徹なまでにロジカルで、読者はクイーンの真骨頂である論理の快感を味わうことができる。
ラストもちょっと泣けるなあ。ほんと、そのまま法月綸太郎みたいだった。
中盤から後半にかけて、少々間延びしている感はあるが、その瑕疵は本書全体の完成度からして、わずかなかすり傷でしかない。
Posted by ブクログ
本格というよりは警察小説の色合いが濃い作品。ミッシング・リンクものなのだが、同時に社会的テーマも扱っていて、既読のクイーン作品とはまるで雰囲気が違う。
チームで捜査したり、また気の遠くなるような広範囲から犯人を絞り込んでいく様は正に警察小説の展開。でも推理のプロセスはばりばりの本格。エラリイが見つけた小さな手掛かり。読者でも容易に気付くそのヒントをどのように発展させるのかと思いきや──いや、参った。これだけきれいに繋がるとぐうの音も出ないわ。作家自身がベスト作品と評するのもわかる。
異色の作品なだけに、生粋のファンから見ればそこが違和感だったりするのかもしれないが、クイーンの別の面を堪能できるポイントはそこそこ高いのでは。心理学的な動機づけや、人間描写に重きをおいた展開など、“意外”な要素がすべて面白く感じた秀作。
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