エラリイ・クイーンのレビュー一覧
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X・Y・Zの悲劇に続く最後の悲劇はドルリー・レーンの死で終わる。名探偵役ドルリー・レーンが最後の真犯人だった。
全てはラストページ、ベンチに座り首をもたげ冷たくなっているドルリー・レーンのワンシーンのためにあった――と解説にあるが、これは納得だ。確かにそのシーンはきれいである。でもあまりにそのシーンを重要視したせいか、幕切れはあっけないし消化不良な感だ。
本作は紙魚殺人事件の邦題もあったらしいが古書を扱ったミステリー小説である。古書に隠された1枚の紙片は、貴重なシェイクスピアの自筆かつ、彼の死が他殺であり殺人犯の告発も行っていた。あまりに貴重な一片を保管しようと殺人まで犯すドルリー・レ -
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ネタバレXの悲劇の次に読んだ。Xの悲劇はとても面白い作品だったがYの悲劇は事前評価の圧倒的な高さのわりに、読み終わると不満点が多々あった。
最も大きい不満点は犯人である13歳の少年が小説の筋書き通りに犯行をすすめるため、ヴァニラの匂いのする軟膏を自分の手首に塗る、という場面。13歳の知能ならこれがヨーク・ハッターを示す手がかりであり、塗ることの無意味さを自覚できるものだろう。でないとしたら、ジャッキーが並外れてバカなのだろうか?
この行動は「真の犯人は死んだヨーク・ハッターでありジャッキーが傀儡である」という解釈を成り立たせるためなのだろうか。そうすると、作品を入れ子構造に持ち込んだがために13歳の -
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「僕は満足していません」。
12年以上前に妻殺しの罪で終身刑となった男。その無罪立証のために再調査の依頼を受けたエラリイ・クイーンが、事件当日の状況を再現した後に吐く台詞だ。あらゆる事実が状況証拠の裏付けをし、男の犯行であることを、あらためて示していた。だが、論理的な疑いがひとつでも残る以上、納得することはできない。初期の冷徹ぶりから様変わりしたクイーンの熱い男気を示すシーンといえる。
中期以降、ライツヴィルを舞台とする物語を展開したクイーンは、自らの探偵に単なる思考機械で終わらない人間性を肉付けし、社会的情況も加味しつつ、作品そのものに深みをもたせた。
発表は1945年。日本を敵国とする中 -
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ニューヨークで起こった連続絞殺事件に挑む名探偵エラリイ・クイーンたちの活躍を描くミステリー。
エラリイ・クイーンといえば本格ミステリ、というイメージが強かったのでこうしたシリアルキラーものの作品は意外でした。展開もロジックというよりかは、警察の粘り強い捜査や囮捜査などが中心となります。ミステリ要素として強い印象に残ったのは、バラバラに見えた被害者のミッシング・リンクが明らかになるあたりでしょうか。
動機や精神分析的な推理が今の時代から考えると、ベタに思えてしまったのが少し残念…。今回の作品の肝となる部分なので、もう一歩何か欲しかったかなあ、と読み終えて少し思いました。
そしてこの作 -
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ネタバレライツヴィルシリーズの4作目
【あらすじ】
ある日、エラリー宛に匿名の手紙が届く。そこにはライツヴィルの富豪の訃報が載った新聞の切れ端が入っていた。そして、別の日に届いた手紙には、先の訃報に関連した人物が行方不明になったとの切れ端が入っていた。
やがて、行方不明の人物の娘がエラリーの元に尋ねてくる。天真爛漫に育った彼女の言動に困惑しながらも、エラリーは彼女と共にライツヴィルで捜査を始める。
【感想】
童謡がプロットに深く関わっている。童謡を使って次の被害者を暗示させる件は、クリスティーの著名作が頭に浮かんでしまう。トリックも少しABC殺人事件(ある規則に当てはめることで真犯人を隠す)に -
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ネタバレライツヴィルシリーズの3作目。
【あらすじ】
ある夜、エラリーの元に旧大戦中に知り合った知人・ハワードが血まみれの状態で現れた。彼は度々、記憶喪失を体験しており、その最中に何らかの犯罪行為に手を染めたのではないかと不安を持っていた。そこでハワードは、エラリーに監視役としてライツヴィルにある自宅に来て欲しいと持ちかける。
【感想】
記憶喪失中に起こった殺人事件を解明する為にエラリーが活躍するのかな?と思っていたら違った。ハワードには記憶喪失の病気以外にも色々と秘密があるようで、その秘密が元で脅迫事件等が起こり、そこにエラリーが巻き込まれてしまうという展開になっている。普段は事件を解決に導く -
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ライツヴィルシリーズの2作目。
【あらすじ】
第二次世界大戦の戦績により、ライツヴィルの英雄に祭り上げられたディビィー大尉。しかし彼は、戦争中の血生臭い記憶と、殺人犯の息子—父親が母親を毒殺した—であることの負い目で、精神に異常を来たしていた。
エラリーはディビィーの妻リンダから、彼の父親が殺人犯で無いことを調べて欲しいと持ちかけられ、再びライツヴィルの地を訪れる。
【感想】
12年前に起こった毒殺事件をエラリーが調査し直すことで、当時表になかった事実を引き出し、その結果、事件の確信が明らかになるというプロットになっている。序盤は父親に不利な情報しかでてこず、苦心するエラリーだが、1つ2つ -
Posted by ブクログ
いわゆる「後期クイーン問題」の代表作というイメージの強い作品。スーパーマンではなく、悩める名探偵である。そのあたりを強調するたのか叙述方法にも工夫が凝らしてあったりして、趣向に対する作者のこだわりを感じさせる。
こうなってしまうと、犯人は一種の神である。この手の「おち」は今となっては決してめずらしいものではない。テレビドラマにだって出てくるパターンだ。クイーンの得意技のひとつでもある。が、それを「意外な凶器」とでもいえるようなレベルにまで持っていくのは、すさまじい力業である。内容はともかく、そのレッテルの貼り方にかなりびっくりした。これでは確かに「悩める名探偵」が生まれざるを得ない。
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Posted by 読むコレ
Yの時点で60越えのおじいちゃん主人公だったドルリー・レーンに、心ならずも温かい眼差しを送っていたものですが・・まさか、本作がその10年後になっていようとは(笑) もう、温かいを通り越して介護の視線でした。
ついでに相棒のサム警部も定年となっては、さしものクイーンも読者の視線を気にしたのか、突如サム警部の娘というにはいささか苦しいハタチの女の子、パットが現れ、しかも何と物語がパットの可愛らしい一人称で進むという・・もう、大変なことになってます。80年前の本ですよ・・これ。
肝心な物語。クイーンに老人をいたわろうなどという気持ちはないのか、物語の80%は追い詰められて苦しんでました。そ -
Posted by 読むコレ
自分は正直言うと、古典ミステリは苦手です。特に、殺人事件を、関係者のインタビューによって解決していくタイプは苦手で、とてもページをめくらせる力があると思えない。クリスティもヴァン・ダインも、イマイチ積読から抜け出せないのはそういう理由からです。
本書も、スタートはその臭いが漂っていましたが、途中の裁判のシーンから劇的に変化し、指に力が込められるようになりました。ドルリー・レーンが痛快と思える推理を見せ始めたところからです。
結果として、自分的上位に入る本とはなりませんでしたが、古典を読むきっかけにはなりそうな気がしました。すでにYも積読済み。頑張ろう!