片山杜秀のレビュー一覧
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説明不要なこの二人の対談本、ということで同時代史として一読の価値は十分すぎるほどある。
ただ、片山杜秀氏の他の著作の圧倒的な面白さに惹かれて手に取った私にとっては、片山氏の佐藤氏への遠慮(忖度)がかなりの残念感(それが象徴的に出ていたのが、片山氏の「シン・ゴジラ」への評価。他の文章ではあれだけ絶賛していたじゃないですか、片山先生!!)。
佐藤氏は、間違いなく頭の明晰な整理されたトークのうまい人であるが、それだけにその瞬間の分析が速報性が高い、というか、都度都度上書き更新されていく印象が強い(雑誌の連載などでそれが顕著)。それは官僚として必要な資質だとも思うので批判しているわけではない。
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クラシック音楽は他の芸術とは違い、作り手よりも受容先の状況が重要となる演奏する人と聴衆がいなければ成り立たないので、死後評価される画家、文学者のような人はほとんどおらず、異端の音楽家というのもクラシックの世界ではほぼいない。
元々教会音楽から始まった受容は王侯貴族、大都市のブルジョアと受け継がれる。グレゴリオ聖歌は、もっとも神の作り出したものに近い人間のみで奏でる音楽であるが、それに宗教改革を経て、ラテン語から現地の言葉、歌いやすいメロディといった世俗的な要素が加わっていき、王侯貴族のオペラや室内楽になっていった。バッハは教会に所属して音楽を作っていったが、どちらかというと後世に評価された作曲 -
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教会音楽?クラシック音楽?バッハ?ベートーヴェン?ワーグナー?なにが違うの???
…と、音楽的素養のない私にはそう感じられるのだが、この本を読んで、世の中や教会の権威、音楽の受け取り手の世界史の中での変容に応じて(またはあらがう形で)、音楽が歴史を紡いできたことを知ることが出来た。当時の世の中の受け取り手に向けて、こういう意味合いで作られた音楽…という作品の背景を知り、敷居の高い音楽、全く分からない音の羅列を、理解するヒントが得られたような気がする。
ベートーヴェンの運命の、覚えやすい冒頭のメロディーは、なぜそうなっているのか、が分かる。 -
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第3章までは、普通の音楽史に書かれている普通の進行だが、第4章の「ベートーベンの時代」から面白くなってくる。
市民の時代において、市民と向き合うことで生まれてきたのがベートーベンの音楽である。
キーワードは、①わかりやすい(簡易・単主題) ②うるさい(刺激・エネルギー・力) ③新しがる(資本主義・驚き)
ちょっと強引に作曲家と時代を関連付けすぎていると感じる部分もあるが、代表的作曲家が存在した時代背景についての認識を持っているのと、持たずにいるのでは、聴こえてくる音が全く違ってくるだろう。
ベートーベン以降はシェーンベルクに至る(ロマン派から近代)、社会と音楽の変遷が非常分かりやすくまと -
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私が歴史に本格的に興味を持つようになったのは、予備校時代に河合塾の石川晶康先生の講義を受けたからである。「歴史に流れなんてない、っつうの」が口グセ。実はそれは現代のパラダイムで過去を安易に語るな、ということを言っていたのだと思う。これ出るぞ、は本当に出題されていたが、要するに学会誌に丹念に目を通して出題者の関心を捕捉していたんだろう。「聖と賤はコインの裏表だからな」なんてことを板書して力説していたし(これはのちに網野善彦を読み漁ることにつながった)、「7-8世紀の対東アジア外交は押さえとけ」の教えは今、娘に引き継いでいる。
さて本書は、そもそも小学校から一貫校で大学受験自体未経験という著者が -
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音楽の提供者ではなく、受け手の変遷を軸にして、音楽史を振り返る1冊。教会を中心とした宗教音楽から、王侯・貴族に向けた音楽へ、そして市民に向けた音楽へと、社会の変化を反映しつつ変容を遂げていく音楽。そのなかで、市民向けの音楽を創造したという意味で、ベートヴェンは比類なき業績を残した。
さらに面白かったのが、大国のグローバリゼーションに対抗し、民族を重視し、小国が存在感を増していく流れの中で、ワーグナーが台頭していったという流れ。
音楽というのは、あとから振り返っても、いろんな意味付けが可能ですが、こうして世界史と重ね合わせながら語られるのはとても新鮮でした。 -
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日本のあらゆるところに蔓延する、無責任主義、たこつぼ思考が五箇条の誓文に読み取れるとする新説。なぜ明治維新はうまく行き、77年後の敗戦を招いたのか。元勲がいなくなって国の経営を統合できる人物がいなくなったからだ、という。非常に腑に落ちる仮説だ。
戦後72年を過ぎ、リーダーシップのある首相に期待が集まる反面、ファッショとラベルをつけて馬鹿騒ぎするマスコミ。煽動を真に受けないものの、ちょっと危ういなと眉唾で聞く民衆。職域奉公に専念し我関せずの経済人。非常に危うい時期に来ているのは間違いなさそうだ。。。
戦前と異なるのは、国民が本位ではなく足かせに見えるところ。愛国心の基礎を奪われた状態で、一朝事が -
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ネタバレとてつもない本。
残念ながら私はクラシックに関しては
不得手な部類に入るため
ピントは来ないのですが、
物は試しなので一部楽曲は聞いてみました。
クラシックと言えば…の
あの方の曲は実に難解でした。
でもはまる人ははまるんだろうな。
嫌いではないですよ。
そして、ある動画で見た指揮者の方は
やっぱりものすごい人なんだな、と思いました。
確かかなり長く生きた指揮者の方で、
すごい人からバイオリンの指導を受けていたことは
全く知りませんでした。
クラシックというと有名どころばかりですが
この本にはそういうのはあまり出てこず
(まあ、マーラーは有名か)
私も聞いたことのない人ばかりでした。
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<目次>
序章 「五箇条の誓文」と明治150年
第1章 尊皇攘夷再考~「未来の攘夷」と「方便の開国」
第2章 明治国家のデザインの秘密~「王政復古」と「シラスによる政治」
第3章 大正デモクラシーとは何だったのか
第4章 昭和維新の論理~攘夷からアジア主義へ
第5章 非常時国家のへの野望と挫折
終章 「五箇条の誓文」と平成日本
<内容>
この本の魅力は、「五箇条の誓文」を利用して、明治~戦前までの日本近代史を俯瞰してしまったことだろう。こうした歴史論は面白い。あっているかどうかは二の次で、解釈されたものの筋が通っているものは面白い。昭和維新の①アジア主義②農本主義③国家社会主 -
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・十字軍は、政治的な影響、経済的な影響、文化的な影響をもたらした。
・教皇と諸侯の力をそぎ、王と商人の力が伸長した。中世が崩壊し、絶対王政が幕を開ける。
・ヨーロッパはユーラシアから見れば「辺境」であり、進んだ東方の文明やイスラム帝国やモンゴル帝国からは放っておかれた。そのおかげで、自分のペースで近代化を進めることができた。後の日本は西洋列強からの植民地化の危機感で慌てて近代化が必要だった。
・宗教改革は諸侯に都合がよく、皇帝権と結びついていたカトリックから干渉を受けずに領域を統治できるようになった。
・ルターが聖書をドイツ語に翻訳し印刷技術で頒布したことにより、教会抜きに神と人間が直接対話で