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吉田秀和氏も激賞した前作『片山杜秀の本(1) 音盤考現学』に続く第2弾。
シューベルトを近眼派音楽の夜明けと断じ、金満的ヴィブラートの淵源はクライスラーにありと喝破、信時潔から坂本龍一に至る隠された楽統を暴き出し、ショスタコと恋愛映画の意外な親和性を解明する──
音盤の博物学者・片山杜秀が渡り歩いた傑作・問題作。『レコード芸術』誌の人気連載「傑作!? 問題作!?」の後半50本を完全収録!
岡田暁生さん推薦!
「僕なんか逆立ちしてもかなわない人」──私は片山さんを誰かに紹介するとき、いつもこう言うことにしている。
片山さんは異形の文体の持ち主だ。こんなにも凄まじい凝集力をもつ文章には滅多に出会えない。 ひとつひとつの単語がまるでウェーベルンの音符のように、読者の脳髄の中で次々爆発する。しかもこんな核分裂みたいなセンテンスが、ロッシーニのテンポで機銃掃射されるのだ。そして彼が書いたものを読み終わると──いつだって音楽が、思想が、社会が、時代が、それ以前とはぜんぜん違って見えてくる。
かつて福田恒存は吉田秀和のことを「真の音楽批評家の名に値する日本で唯一の人」と呼んだが、僕にとって片山さんは「真に21世紀の音楽批評家の名に値する唯一の人」である。
──岡田暁生(京都大学准教授、中公新書版『西洋音楽史』著者)
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Posted by ブクログ
本書の元の記事は、2000年から2008年までレコ芸に連載していた「傑作!?問題作!?」である。その全100本の記事の内、前半の50本が「片山杜秀の本 1 音盤考現学」に、後半の50本が本書に納められている。
1枚のテーマ・ディスクに対する記事なので、落とし所は限られてくる。そういう場合でも、取り上げられている盤がもっと良いものであれば(作曲家、あるいは演奏家がもっと良いものだったら)、もっと面白い話が展開されたのではないかと思われ、もったいないというか、残念という様な気がした。つまり、たまにはテーマ・ディスクに、話題になった盤や、名演や名盤と言われる様な盤があれば、華やかな話題になったのではないか、面白い話が聞けたのではないかということである。
本書は再編されて「音楽放浪記」というタイトルで文庫本にもなったが、取り上げられている盤が時代を越える様な名盤ではないので、賞味期限は短い。
また、月に一回なら面白いと思える記事でも、本としてまとめて読むと、強引な論説が気になってくるというきらいもある。「なるほど」と思わされる回もあるが、著者お得意の思想論でまとめ上げ、これはちょっと付いていけないなと思える回も少なくなかった。もっとも書き下ろしの本ではないので、出来にばらつきがあるのは、ある程度は仕方がないことであるが。
印象に残った記事は、「能とソヴィエト」というタイトルの回である。テーマ・ディスクはアファナシエフによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ集。これは、論考ではなく、片山氏がアファナシエフにインタビューした話が載っていて、アファナシエフに演奏テンポの遅さの理由をたずねたら、「フルトヴェングラーの遅くうねる演奏に影響されたことと、能の緩慢な時の流れ、能役者の声の持続に理想の美を見出したことが重なり、今の自分ができた」という。
アファナシエフのあの異常なテンポの遅さは、思想的とか哲学的とかいう言われ方もしていたが、そんな単純な理由だったのかと驚いた。あの演奏スタイルは、ただの美意識や好みの問題からきているわかり、謎が解けたようで嬉しかった。
初回限定特別付録として、巻末に袋とじになっていた対談「カタヤマモリヒデの作り方」は、片山氏がどのように育ってきたか、どのようなカルチャーに接してきたかが分かり、興味深く、面白く読んだ。
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