片山杜秀のレビュー一覧
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日本が太平洋戦争に突入してしまった要因を、第一次世界大戦に求めて研究している。当時の軍人たちの思想や現実問題が絡み合い、なかなかにややこしい本。
太平洋戦争突入は「軍部の暴走」で一括りにされることもあるが、実際はそんな単純な図式ではないということが語られる。資源を持たず、国力も大国に比べれば非常に弱い日本が、技術革新で物量が物を言う近代戦に精神性だけで勝てるはずがないと皆分かっていながらも、最終的には精神論や「玉砕」思想に偏ってしまっている。
それにしても、宗教から派生して終末思想のような思考に飛び火し、それが戦争・戦術の動機づけになるようなエピソードがあり、日本でもかつてそんなことを考えた軍人がいたのかと恐ろしくなる。 -
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エマニュエル・トッドさんが来日された契機に、インタビュー、対談を行われた記録と、最新の著書などからの著者の思想についてまとめられています。戦争状態に近づいているかとみられている世の中についてのトッドさんの意見。人類学者としての視点。それを紹介される日本側からみた現在の世界について知ることができます。西洋といった見方では知ることができなく、地域としてのその家族構成とその類似点から導きだされる現状把握と未来の姿に、今までとは違った視点から世界を見ることの利点と必要性を感じさせられます。その視点からみた日本の現状と危険について知ることから、進むべき道と、進んではいけない道について考えることができます。
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タイトルにベートーヴェンとあるが、ベートーヴェンはちょこっとしかでてこない。この本は、あくまでも西洋史を辿りながら音楽史の変遷を語る本である。グレゴリア聖歌からワーグナーあたりまで。
クラシック音楽は好きなので、音楽家の生きた時代を知ることは楽しい。ここ数年、歴史の本を少し多く読むようになったことで、前よりも音楽史の流れがわかるようになったこと(なった気がすること)は嬉しい。
芸術ってやっぱり自己表現なんだなと改めて思う。創作者の内から滲み出てくるもの。自分ではコントロールできない衝動や、そのように作らざるを得ない感覚があるのではないか。
そしてまた、その滲み出た自己表現はオリジナルであるようだけど、必ず社会に影響を受けている。社会を反映している。というか、反映していないのであれば、民衆には理解されずに時代と共に淘汰されてしまう感は否めない。
ルターのところの解説がおもしろかった。聖歌をラテン語ではなくドイツ語で作曲した。このことで新約聖書の内容が民衆にも示された。まさに「その時、歴史は動いた」的な感じがした! -
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12月に入ると会社やらバンド仲間やら、学生時代の同級生やらと飲んではかりの忘年生活に入る。中学あたりの同級生ともなれば、会っても年に一回ぐらいだから、毎度の同じ話題を口にしていても、何だか新鮮で飽きも来ない(決してそれ以外も飽きてる訳ではない)。丁度仲間内じゃ最高峰の大学まで行くような秀才君の口から、社会人になってからまた大学に通いたくなったとの発言が出た。学びの対象を聞けば、歴史だという。途端に酔って良い気分(饒舌になるのにアルコールは無関係)になった私の口から、私が感じる歴史の面白さについて怒涛の言葉が発せられた。自分が改めて歴史好きだと気付いたし、他の同級生も同じく歴史は好きだと言うから、似たような趣味嗜好があってこそ、付き合いは長く続く事を思い知らされた、その様な気分だ。
本書は歴史を学ぶ事こそが人間の生き方や考え方に影響する事を教えてくれる。タイトルの通り、沢山それを知っていれば、教養ある人間に近づく訳だし、話す言葉からも歴史を知った上での説得力や重みを感じさせる事ができるかもしれない。だが、その過去に起こったことの積み重ねでしかない歴史を、今後の生き方や考え方にどう活かすかは人それぞれ異なる。様々な歴史家や哲学者が歴史について述べてきた中ではあるが、かっちりと決まったらスタイルや思考方法など存在しない。あっても「史観」と呼ばれる様な、それを言った書いた人の考え方に近づく程度の事で、それすらも想像や誤りが含まれる不安定なもの、一つの説にすぎないと言う事を理解しなければならない(絶対そうしろ、と言うものでもないが)。
要するに歴史とは過ぎ去った時間の話であり、時空を超えて確かめる事が出来ない以上、それを見た、書いた人から伝わるものでしかない。記録が映像や音声で残っていたとしても、肝心要の登場人物の(その瞬間の)脳の中身は見ることが出来ない。だから常に「あれは、ああいう事だったんだろう」という推測付きになる。ただ一つそれを限りなく事実に近いものにするなら、その前後の出来事や登場人物を広く知れば良い。それが歴史の勉強だ。多くの人が考える状況や考察は、自分1人が考えるものより正確なものに近いだろうし、それまでの流れを多方面から理解すれば、きっとその結び目である「歴史的な出来事」が事実に近いか否か判断する事は可能になる。
実は前述した、私の語った歴史好きの理由は正にそこにある。様々な歴史書を読むと、一つ一つだった出来事が、時間を経たときに何処かで交わる。経緯を知り理解する、と言う部分があり過ぎて、結局辿り着けないゴールに向かって延々と考える事ができる点、それが私が歴史を好きな理由である。私もそれなりに歴史がああだった、こうだったという自分なりの考え方を持つ。だが他人に強要はしないし、他人の意見や考えも否定しない。それぞれが旅した歴史の中にどの様な感想を持つのも自由だからだ。だから本書の考え方も一切否定しないが、中々筆者の考え方が怒涛の様に吐き出されていく内容に、結局のところ私は置いていかれてしまった。 -
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自民党の高市早苗氏が内閣総理大臣となり、お隣中国とのちょっとしたイザコザはあるものの、国民からの人気は絶大(今のところは)、何かこの国を良い方向へと導いてくれるのではないかという、淡い期待を抱いてしまう。高市総理は何と言っても日本最初の女性総理であるし、かつて絶大な人気を誇り、その存在感を対世界に対しても発揮してきた今は亡き安倍元総理の面影を思い起こさせる。期待はしてみたいが、またいつもの様に裏切られたら嫌だから、がっかりしない様に冷めた目で見ている自分がいる。とは言え、この先の日本の在り方、超高齢社会、エネルギーや食料の確保と自給自足、地方の過疎化や都市への一極集中、そして災害やサイバーテロへの対応など様々な社会課題に直面し、先の予測が難しく、閉塞感にも溢れる社会に、新たな光となる方向性を見出してほしい、その期待を失ってはならない。そう簡単な事ではないが、複雑に絡み合ったそれら問題の解決の糸口みたいなものを見出してほしいと切に願う。
日本の近代史は、黒船来航以降、特に明治維新後に大きく様変わりし、島国の内に閉じ籠るだけでは、日本という国そのものを維持し続ける事が難しいと、当時の人々は悟った。だから、それを国民に国全体にどう知らしめて統一的に行なっていくか。日本の近代の方向性づけに大きく寄与したのが、本書タイトルにもなっている「五箇条の(御)誓文」であり、それを礎として発展した「日本」の歴史(日本史)を解き明かそうとするのが本書の役割だ。本書は表紙にも小さく「シリーズ 企業トップが学ぶリベラルアーツ」とあるが、企業のトップたるもの会社という巨大な船の舵取りを上手く行い、起業目的達成に向けては、明治天皇の「五箇条の御誓文」の様な方向性を示せ、という事であろうか。
五箇条の御誓文、それ自体は明治天皇が京都御所の正殿・紫宸殿に於いて、1868年4月6日 に天神地祇に誓約する形式をとりながら、公卿や諸侯などに示した明治政府の基本方針、という事になる。中身は勿論5つの宣言となっており、現代文で簡潔に示せば、「会議を開いて公論で決める」「上下心を一つにして国を治める」「身分に関わらず志を遂げさせる」「古い慣習を破り公道に基く」「知識を世界に求めて国を興す」となる。そして、その後には宣誓を締めくくる、我が国はかつてない大きな変革を遂げようとしている。私(明治天皇)は国民の先頭に立ち、天地神明に誓い、この国のあり方を定め、万民が平和に暮らせる道を開こうとしている。国民はこの考えに基づき、心を一つにして努力してほしい、と言った記述が続くのである。前述した様に「将来の国の在り方、国民の心持ち」を天皇自らが示された(知らしめた)ものであり、その後の近代日本史に大きく影響していく事になる。
明治から大正を経て、昭和初期にかけての軍国主義の背景には常にこの精神が反映されてきた事は明白であり、時に時代の寵児と呼ばれるような政治家や軍人、思想家たちに考えは引用され、正に国の形を作る上で重要な教義と言えるものであっただろう。その後の歴史を知る我々現代人が、その良し悪しを短絡的に判断し評価するのは難しい。だが、太平洋戦争に敗れたのち、昭和天皇が発した言葉もまた、この御誓文に始まった。後はそれを受け取った国民が、それぞれの時代において、それを正しい方向で解釈し、国を良い方向へと導いてほしい。その様な敗戦に打ちのめされた昭和天皇の、素直な気持ちの表れではなかっただろうか。
今なお政治は混乱し、グローバリズムで世界の脅威との繋がりもより強くなる日本。隣国とのいざこざだけでなく、はるか遠くに離れた地域の紛争が国民生活にダイレクトに物価高などの影響を及ぼす。一方で世界の各地で強力な壁を設けて自国最優先のナショナリズムに染まる国々が現れ始める。協調主義から単独主義への悪き流れ。国内を見渡しても海の向こうへ目を向けても、方向性が霞んで見える中で、我々国民の心の内に、大切な教えとしてしまっておきたい内容、それがこの御誓文ではないだろうか。勿論受け取った私自身がそれを期待通りに解釈すればの話だが。どの様な良い教えも言葉も、受け止めた側の解釈次第で悪にでも善にでもなる事を教えてくれる一冊だ。 -
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ここ数年、精力的に執筆活動を加速させている片山杜秀氏。従来は主として音楽評論・政治評論を手掛けてきた(特に『未完のファシズム』が名高い)ので、本書のように単なる「政治」カテゴリーに収まらない――なんてったって西田幾多郎や小林秀雄までもが論及されている――ある種、畑違いの著作は珍しい気がする。
タイトル(ちなみに、この本のタイトルは、おそらく映画『12人の怒れる男』をもじったものだろう)にもあるように、この本は、11人の著名な思想家達を一章ずつ取り上げて、その代表的著作を丁寧に――しかし時には掻い摘みながら――紐解いて、彼らの思想の核心に迫っていく日本近現代思想の入門書である。似たような類書はいくらでも(単行本でも文庫本でも)存在するが、所々で片山氏独自の切り口や着眼点が披露されていて、これはこれで大変勉強になるし、また思わず膝を打つ鋭い指摘もあって結構面白い。
個人的に「なるほど、上手くまとめたなぁ」と感心したのは、小林秀雄の中心的な思想を「何かを批評しようと思ったら、たんなる印象論ではなく、必ず《理論》に基づいていなければならない。とはいえ、何もかも全てが《理論》で説明できるわけでもないのだ」と、乱暴ながらも正鵠を射た表現でまとめている箇所。「批評の神様」と呼ばれる小林秀雄の思想が、こんな単純でいいのか?と感ずる向きもあるだろうが、実際ホントにこんな感じで、自分は苦笑しながらも思わず首肯してしまった。なかなか言い得て妙。
コンパクトな良書ではあるが、敢えて一つ苦言を呈すと、もっと各思想家の「出自や経歴」に関して深く突っ込んでも良かった気がする。伝記的研究こそ腐るほどあるかもしれないが、この本が文庫本・入門書のスタイルをとっていることを鑑みると、「出自・経歴」が彼らの思想形成に及ぼした影響などを、もっと詳しく論じてくれたほうが親切だったろうし、各論にさらに厚みが増しただろう。 -
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吉田松陰。欧米列強は日本にたいして船など高額なもの売る。値は張るが、資金は貸してやるという。しかし借金が返せない場合、日本の土地に租借権を要求。部分的に植民地にしてしまう。徳川幕府は米と通商を結ぼうとしているが、隙あらば侵略を仕掛ける欧米列強のやり方に無防備すぎる。p.26 水戸学では日本を守るのは侍(エリート)であり愚民は反乱を起こさないよう統治するという発想だが、日本を守るためには身分関係なく教育しなければならない。p.28▼丸山まさお。天皇はヒトラーのような独裁者ではない。天皇は万世一系の血統で威光を発しているのでり、天皇自身が主体ではない。天皇は自らの意志によって何かをする気持ちがない。憲法も天皇が主体的に作ったものではない。※臣下は「天皇の意志だ」というが、天皇には意志がないため、責任の所在がわからなくなる。p.244『考える11人の日本人』
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『国の死に方』★3
『大学入試問題で読み解く 「超」世界史・日本史』★3 -
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4人の作家がそれぞれ宗教についての学びの深い本を1冊ずつ取りあげて紹介・解説している本。とりわけ各章末の考察欄が非常によい。
「宗教は社会や家庭と対話を重ねながら価値観をすり合わせて共に成熟していくことが重要」
「宗教に対して疑いがあって当然、逆に100%疑いがない方が危うい」
「信仰は信じる・信じないの間で揺れ動くが、離れられないと思った時に本物になっていく」
「論理を超えた妄信があるからこそ宗教と呼ぶ。」
「宗教には体感できる非日常性がなければならない。」
「念仏とは与えられるもの(与格的)であり、自分の無力さに絶望し祈ろうという気さえ起きないようなときに初めて他力が開かれる」
要約すると以上のようなメッセージに集約されるが、どれも密度が高い。
私はこれまで論理的・科学的・心理学的・社会学的な目線から宗教を見てきたが、それを超えたトートロジーな部分こそが宗教たる所以であって、そこに功罪があることを知ったのは大きなパラダイム転換になった。
一筋縄ではいかない、多面性を持った「宗教」の本質に近づくことが出来る有意義な一冊だと思う。