片山杜秀のレビュー一覧
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吉田松陰から丸山真男まで、11人の人物の経歴と思想を紹介した新書。
松蔭、丸山を始め、福沢諭吉、岡倉天心、北一輝、美濃部達吉、和辻哲郎、河上肇、小林秀雄、柳田国男、西田幾太郎と、多士済々の人物について述べられており、彼らの思想と生き方を学ぼうとする読者には、格好の入門書と言えるだろう。
福沢諭吉の項では、慶應義塾が日本で初めて授業料をとる学校だったとのエピソードも。
彼が戦前から戦後まで説得力を持ち続けた唯一の思想家であるのは、人間が独立して生きるにはお金が大事だという経済リアリズムだったからとも。
それぞれの人物について20頁前後でまとめられているのは、1回ひとり90分程度で「夜間授業」とい -
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単行本「クラシックの核心」の9人に、ベートーヴェン、トスカニーニ、バーンスタイン、カラス、リヒター、吉田秀和の6人を追加し、文庫化した本。
既に、「クラシックの核心」は読んでいたので、文庫化の際に追加となった6人だけを読んだ。ベートーヴェンは、初出の文藝別冊で読んでいたが、この際なので、また読んだ。
文藝別冊では、片山氏の書いた記事のページは、文字サイズがかなり小さく印刷されている。その為、ぱっと見て(内容云々の前、つまり認知容易性が悪いということ)あまり良い印象は抱かないが、本書は普通の文庫本の文字サイズであるため読みやすい。
内容は、話題が多岐に渡り面白い。ただ面白いだけではなく、そこ -
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江戸幕府成立後も伊達政宗など東北には曲者が揃っていた。この防波堤が水戸徳川家である。藩主は江戸在住が義務とされるが、格式は尾張、紀伊より低く、土地も痩せており財政は苦しかった。そこで徳川光圀は将軍に対する天皇の優位性を強調した。水戸学の創始である。後期水戸学会沢正志斎は攘夷を説き、吉田松陰に影響を与えた。この頃ロシアとの接触があったことが背景にある。
明治憲法において国務大臣は天皇を輔弼するとされている。輔弼とは責任と判断を行う意味であるから、天皇は政治的責任を取らなくて良いという構造である。これに抵抗した井上毅は天皇主権説を主張。のちの天皇機関説事件等に続く対立構図は、憲法制定当初からあった -
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音楽評論よりも、本業の著作「未完のファシズム」で興奮させられた片山杜秀氏が、このところ新刊が相次ぎ、いったい何人のゴーストライターを抱えているかと思わせる佐藤優氏との共著でこの本の出版案内を見かけたので「坂の上の雲」を再読した上で読み終えた。
結果的には再読直後に手にしたのが正解であった。
お二人の対談を文章化したものに加え、要所要所にそれぞれが眺めのコラムというかエッセイ風のものを差し込み、言い足りなかったところを補足している。
司馬遼太郎を手放しで礼賛することなく、「国民文学」としての司馬遼太郎の美点と、ある意味弱点となってるところを冷静に見て取っているあたりが、読んでいて納得感が大き -
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「坂の上の雲」解説本の体。「坂の上の雲」も司馬作品も読んだことがない方が、読んでみたくなるかはよくわかりません。私は高校の時に読みましたが「坂の上の雲」も「竜馬がゆく」も司馬代表作とはとても思えず、国民小説かと言われれば・・・という感じ。確かに日露戦争開戦までは面白いんだけど、新聞連載らしい全くまとまっていない小説。なのでもう一度読んでみようとは全く思わなかったが、この対談で書かれている内容は作品関係なく、なかなか面白い。「司馬史観」とまで言われるように、如何に司馬作品が良い意味でも悪い意味でも歴史解釈に影響を与えているかがよくわかる、という意味では優れた解説本。
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幕末維新のイデオロギー的原動力となった水戸学の原理と歴史的進展を考察する一書であるが、そうした学問を動かす現実的背景となった史実を、どこにこの話はつながるのだろうといった関心を惹起させつつ、良い具合いに織り交ぜて叙述が進んでいく。500ページ近い大作であるが、読物としても面白く、最後まで飽きさせずに読ませる力技はスゴい。
本書でも登場する三島由紀夫や梶山静六のご先祖のように直接当事者ではないが、両親が茨城生まれだったので、幕末水戸の天狗党・諸生党の内乱のことは子どもの頃に少しは聞かされた。水戸の自虐ネタだが、茨城は幕末の内乱で有為な人材がいなくなってしまったので、明治になって全く浮かばれ -
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この本の内容はカルチャーセンターでの講演だという。
ラジオでの、あのバカ丁寧な(失礼!)、でも前のめりになって迫ってくるような、独特な語り口が彷彿とする。
それは今、「クラシックの迷宮」を聴いているから?
それはともかく、企図は音楽史を政治史に関わらせて読み解くことだろう。
モーツァルトのトルコ趣味も、墺土戦争、オスマントルコのウィーン包囲の影響があること。
ベルリオーズの幻想交響曲や、ベートーヴェンの第九にも、フランス革命や、その後の自由主義思想が反映していること。
オーケストラの楽器編成(特に金管楽器)にも、国民国家の軍隊が出来上がる時代の要請に応じたものだというところは特に面白かった。 -
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著者はラジオ「クラシックの迷宮」の解説をしており、その独特な切り口と番組構成には、毎回驚かされる。そこで選曲された曲は珍しい曲、マイナーな曲が比較的多く、曲自体の魅力に気づかされることが少なくない。他方、曲の合間で加えられる講釈も楽しい。本書はいわばその解説パートに特化したものといえる。
一読してわかったことは、市民革命が先行し、新しい聴衆となる層が多くなると、その層に好まれる曲想や曲の役割が付与されていった、ということだ。ベルリオーズの幻想は、フランス革命後の貴族でない市民に受け入れ、ラ・マルセイエーズを歌った軍隊は強くなった。またベートーベンの曲と種々の革命は密接に関連している。今年はベ -
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日本が戦勝国として関わった第一次世界大戦を起点に「なぜ日本が勝てるはずもない戦争に飲めりこみ滅びたのか」を読み解く。
未完のファシズムという意味は、明治日本は天皇中心の国家を築こうと試みたにもかかわらず、天皇以外にはリーダーシップをとれる仕組みがなかったこと。
確かに日本のヒトラーと言われる東條英機も独裁者だったか?というとNO。この「本気で意見が一致してひとまとまりになり誰かの指導や何かの思想に熱烈に従うことは、いついかなるときでも、たとえ世界的大戦争に直面して総力をあげなくてはならないときでも、日本の伝統にはない」「幕末維新は尊皇派も佐幕派も開国派もいたからこそかえってうまく運んだ。い