片山杜秀のレビュー一覧
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皇国とはその名のとおり、天皇の治める国という意味である。では天皇とは何か。それは古代以来の日本の君主ならびにその称号とあり、遥か古代から日本を統治する王という事になる。その在り方や存在は時代により様々な変遷を辿ってきたが、現在の天皇の定義は1946に公布され1947年5月3日より施行された日本国憲法によれば、日本国および日本国民統合の象徴となる。その役割としては、日本国の象徴として、憲法第1条に規定される通り、日本国と日本国民が一つにまとまっていることの象徴であること。そしてその役割として、国事を行うこと。国事とは国会の召集、内閣総理大臣の任命、法律や条約の公布など、憲法で定められた国事行為に
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昭和100年ということで、昭和元年=1926年から現在に至るまでの歴史を、日本・アメリカの関係性を軸に辿っていく。とはいえ当然昭和に至るまでのバックボーンもあるわけで、対話の中では時には明治維新頃にまで遡ったりもする。
歴史は好きなのだが、近現代史は全然面白みが感じられなくて学生時代~20代の間は全然頭に入ってこなかった。
それが30代になって、物事の是非が分かるようになり、自らの生きる世の成り立ちを遡る中で、近現代史の複雑に絡み合った経緯を紐解くことの重要性や面白さにようやく気付いた。
私は昭和の末期、63年生まれなので、昭和の記憶などない。人生の大半を平成に生きてきた身からすると、昭和 -
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「先づ労銀の引き下げを策し、労銀の引き下げの為には先づ食料品の引き下げを行なふのが順序」
日本人の国体に対する愛着というか執着は相当で、ポツダム宣言を受け入れるかどうかの判断においても、日本の国体が維持できるかどうかを気にしていた。国体とは天皇を頂点とした制度体制のことで、敗戦によって国体はついえたかというと、母が皇族ニュースを見ていたり、日本人の天皇家に対する好意を見ると、未だ国体は残ってる気がする。これは天皇が謙虚な姿を続けているからだと思う。
日本の軍人はは敗戦後の東京裁判で、空気に抗えなかったというような証言をしたそうな。戦局が日本軍に不利になった際には、ポツダム宣言を受け入れる -
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この本は、トッドの大作『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』を読むための入門本と冒頭で紹介されているけど、それ以上の面白さ。
前述の大作の面白いところをギュッと紹介してくれるだけでなく、現代社会の抱える様々な課題や疑問を家族制度の観点で説明するところにフムフムと読み入ってしまう。
ところどころに見える刺激的なフレーズがまた良い。
意図的に極解した切り取り
■日本やドイツは長男を頭とする直系家族社会。英米の核家族社会とは根本から異なる。
■日本は長男が家を継ぎ、老いた親の面倒を見て家が社会福祉を担った。英米は成長した子は親元を離れ、老いた親の面倒は社会税制が担った。
■日本が硬直化しやす -
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いわゆるバロック音楽の後から現代音楽までのことを言うクラシック音楽は、西側キリスト教圏の音楽であり、西洋の時代と切っても切り離せないものであった。いわば時代を表したもの、ということを詳細に歯に衣を着せぬ物言いで語りつくしたのが、この対談だ。バッハあたりからシュトックハウゼンぐらいまで、個々に取り上げている。結構下世話な話も。確かにねえ、時代から離れた人間の活動はあり得ないからねえ。どんな音楽も、その背後にはそれぞれの「絶対倫理」がしっかりと張り付いている、なんて言われると、もっともでございます、でもなんか怖い、いやうーんそんなもんかなあ、と思ってしまう。いちいち音楽を聴くのに、その背後の絶対倫
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オーディブルで
エマニュエル・トッドの著作は以前いくつか聴いたことがあるのだが、これは「我々がどこから来て、今どこにいるのか?」の邦訳の出版後に、それを読み解き、さらにはその後の特にウクライナとロシアの情勢を受けての世界の現状をどう考えるかについて、トッド氏と、片山杜秀、佐藤優両氏の対談、トッド氏についての片山、佐藤両氏の対談、フィガロ紙のトッド氏に対するインタビューなどなどを載せている。基本、対談やインタビューがベースのものなので、わかりやすいものになっている。
「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」もオーディブルに入っているので、聴こうと思っていたが、こちらはちょっと気合を入れない -
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日本が何故大東亜戦争という、後世から見れば圧倒的に無謀な戦いに突入していったのか。
時の陸軍指導者たちは神国の奇跡を信じていたのか。
結論を言えば、彼らは何の幻想も抱いていなかった。
第一次大戦やそれ以前の日露戦争の教訓から、近代の陸戦は火力と物量が勝敗を決することは熟知されていた。
実際、第一次大戦の中で日本軍が戦った青島戦は十分な火力による飽和的攻撃によって勝利した。
にも関わらず、「生きて虜囚の辱めを受けず」といった「戦陣訓」や、無勢に不利な包囲殲滅戦が何故主流の思想となったのか。
筆者はそこには顕教と密教があるという。
経済力、人口、資源、技術などの戦争資源に劣る「持たざる国 -
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太平洋戦争では過度な精神主義に陥った日本軍であったが、第一次世界大戦で行われた総力戦の研究を怠っていたわけではない。近代戦は国家同士の物量戦であり、日本は欧米列強に比べて生産力で劣るということまで日本軍は理解していた。日本軍の青島攻略は物量戦の模範とも言うべき戦い方であった。しかし、物量戦の重要性を認識していたからこそ、物量差の大きい欧米列強と全面戦争になったら物量での劣勢を挽回するために、精神主義的な殲滅戦を理想とした。絶対に敵わない物量戦から目を逸らし、精神力で劣勢を跳ね返すという非現実的な思想を抱いてしまった。(石原莞爾は満洲の支配を通じて、欧米列強に対抗できる生産力を獲得しようとしたよ
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明治憲法のガバナンス上の欠陥から宮沢賢治、さらには女性の月経に関する問題まで、著者の守備範囲の広さに舌を巻く。著者の記述の妥当性はわからないが、一つの説明としては面白かった。著名な「昭和16年夏の敗戦」や「失敗の本質」と並んで読まれるべき一冊だと思う。
次の一文が印象的だった。
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(…)ふたりとも冷静な現実主義者として次なる戦争は物量と機械と科学力だという合理的な本音を持ちながら、日本陸軍の軍人としては精神主義を建前として高唱せざるを得ず、しかし二・二六事件や日米開戦といった歴史の流れのなかで、本音は忘却され建前ばかりが暴走し始めていったのです(…) -
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日本の知識人・オピニオンリーダー11人の思想とその原点をわかりやく解説している。各人の経歴など、多少退屈に感じるところもあったが、文章もよみやすく、その時代の思想風潮もよく理解できた。
各人は、多かれ少なかれ、「天皇」をどう位置づけるかにも心を砕いており、天皇は日本独自の思想背景としてなくてはならぬ存在であったこともよくわかった。近年はむしろ天皇に触れることはタブーのような風潮があるが、(どう位置づけるかにかかわらず)天皇抜きに日本の思想は論じられない、というのが、本書の裏テーマなのかな、と感じた。
知ってるようで知らない日本の代表的な知識人達の主張の概要を学ぶには最適の一冊。 -
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クラシック音楽にまつわる入門書や解説書というのは世の中にごまんと溢れていて、当然のごとくそれらの大半は知的興奮を全く与えてくれないレベルのものばかりである。
そんな情況に対して”Nein”を突き詰めるが如く、京都大学人文研におけるクラシック音楽の専門家として高いレベルの分泌活動を続ける岡田暁生と、政治学者としての顔も持ちながらクラシック音楽に対する広範な知識量でも読者を圧倒する片山杜秀という2人がタッグを組んだ本書は、まさに自分が本当に読みたかった入門書・解説書であった。
本書の特徴は、通常の入門書・解説書ではさらっと触れるような点についても、その背景・理由をごまかすことなくクリアに語ろうと -