片山杜秀のレビュー一覧

  • 音盤博物誌 片山杜秀の本(2)

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    『音盤考現学』に続く第2弾であるが、こちらの方がはるかによい。
    初出は『レコード芸術」の連載記事だが、連載を重ねるにつれて勝手がわかってきたのか、たいへんに説得力のある文章となっている。
    「ふーん、こんな曲あるんだ」というような、あまり世間では知られていない曲が多く紹介されているが、そのすべてを「んじゃ、聴いてみよっかな」と思うわけではないだろう。
    ところが、2006年の連載記事は、そのどれもが「聴いてみたい!」と思わせられるものばかりだ。
    この年が、この連載記事の頂点だったと思う。
    いずれにしても、すばらしい音楽評論50本である。

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    2012年02月23日
  • 音盤考現学 片山杜秀の本(1)

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    iPad傍に再読。Wikipedia見たり、iTunesの試聴でチョイ聴きしたり(この本に載っている曲はほぼ無いけど)、そのまま衝動買いしたり、ピアノアプリで「ドードードー、ドーシドーレレ#ー」と伊福部旋律弾いてみたり、フミフムしながらも2ページに1度は爆笑している。

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    2011年07月29日
  • 皇国史観

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    皇国とはその名のとおり、天皇の治める国という意味である。では天皇とは何か。それは古代以来の日本の君主ならびにその称号とあり、遥か古代から日本を統治する王という事になる。その在り方や存在は時代により様々な変遷を辿ってきたが、現在の天皇の定義は1946に公布され1947年5月3日より施行された日本国憲法によれば、日本国および日本国民統合の象徴となる。その役割としては、日本国の象徴として、憲法第1条に規定される通り、日本国と日本国民が一つにまとまっていることの象徴であること。そしてその役割として、国事を行うこと。国事とは国会の召集、内閣総理大臣の任命、法律や条約の公布など、憲法で定められた国事行為に

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    2025年10月15日
  • 生き延びるための昭和100年史(小学館新書)

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    昭和100年ということで、昭和元年=1926年から現在に至るまでの歴史を、日本・アメリカの関係性を軸に辿っていく。とはいえ当然昭和に至るまでのバックボーンもあるわけで、対話の中では時には明治維新頃にまで遡ったりもする。

    歴史は好きなのだが、近現代史は全然面白みが感じられなくて学生時代~20代の間は全然頭に入ってこなかった。
    それが30代になって、物事の是非が分かるようになり、自らの生きる世の成り立ちを遡る中で、近現代史の複雑に絡み合った経緯を紐解くことの重要性や面白さにようやく気付いた。

    私は昭和の末期、63年生まれなので、昭和の記憶などない。人生の大半を平成に生きてきた身からすると、昭和

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    2025年09月15日
  • 国の死に方

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    「先づ労銀の引き下げを策し、労銀の引き下げの為には先づ食料品の引き下げを行なふのが順序」

     日本人の国体に対する愛着というか執着は相当で、ポツダム宣言を受け入れるかどうかの判断においても、日本の国体が維持できるかどうかを気にしていた。国体とは天皇を頂点とした制度体制のことで、敗戦によって国体はついえたかというと、母が皇族ニュースを見ていたり、日本人の天皇家に対する好意を見ると、未だ国体は残ってる気がする。これは天皇が謙虚な姿を続けているからだと思う。

    日本の軍人はは敗戦後の東京裁判で、空気に抗えなかったというような証言をしたそうな。戦局が日本軍に不利になった際には、ポツダム宣言を受け入れる

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    2025年09月09日
  • トッド人類史入門 西洋の没落

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    この本は、トッドの大作『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』を読むための入門本と冒頭で紹介されているけど、それ以上の面白さ。

    前述の大作の面白いところをギュッと紹介してくれるだけでなく、現代社会の抱える様々な課題や疑問を家族制度の観点で説明するところにフムフムと読み入ってしまう。
    ところどころに見える刺激的なフレーズがまた良い。

    意図的に極解した切り取り
    ■日本やドイツは長男を頭とする直系家族社会。英米の核家族社会とは根本から異なる。
    ■日本は長男が家を継ぎ、老いた親の面倒を見て家が社会福祉を担った。英米は成長した子は親元を離れ、老いた親の面倒は社会税制が担った。
    ■日本が硬直化しやす

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    2025年06月15日
  • ごまかさないクラシック音楽(新潮選書)

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    いわゆるバロック音楽の後から現代音楽までのことを言うクラシック音楽は、西側キリスト教圏の音楽であり、西洋の時代と切っても切り離せないものであった。いわば時代を表したもの、ということを詳細に歯に衣を着せぬ物言いで語りつくしたのが、この対談だ。バッハあたりからシュトックハウゼンぐらいまで、個々に取り上げている。結構下世話な話も。確かにねえ、時代から離れた人間の活動はあり得ないからねえ。どんな音楽も、その背後にはそれぞれの「絶対倫理」がしっかりと張り付いている、なんて言われると、もっともでございます、でもなんか怖い、いやうーんそんなもんかなあ、と思ってしまう。いちいち音楽を聴くのに、その背後の絶対倫

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    2025年06月15日
  • トッド人類史入門 西洋の没落

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    オーディブルで

    エマニュエル・トッドの著作は以前いくつか聴いたことがあるのだが、これは「我々がどこから来て、今どこにいるのか?」の邦訳の出版後に、それを読み解き、さらにはその後の特にウクライナとロシアの情勢を受けての世界の現状をどう考えるかについて、トッド氏と、片山杜秀、佐藤優両氏の対談、トッド氏についての片山、佐藤両氏の対談、フィガロ紙のトッド氏に対するインタビューなどなどを載せている。基本、対談やインタビューがベースのものなので、わかりやすいものになっている。

    「我々はどこから来て、今どこにいるのか?」もオーディブルに入っているので、聴こうと思っていたが、こちらはちょっと気合を入れない

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    2025年05月22日
  • 未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命―

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    日本が何故大東亜戦争という、後世から見れば圧倒的に無謀な戦いに突入していったのか。
    時の陸軍指導者たちは神国の奇跡を信じていたのか。

    結論を言えば、彼らは何の幻想も抱いていなかった。

    第一次大戦やそれ以前の日露戦争の教訓から、近代の陸戦は火力と物量が勝敗を決することは熟知されていた。
    実際、第一次大戦の中で日本軍が戦った青島戦は十分な火力による飽和的攻撃によって勝利した。

    にも関わらず、「生きて虜囚の辱めを受けず」といった「戦陣訓」や、無勢に不利な包囲殲滅戦が何故主流の思想となったのか。

    筆者はそこには顕教と密教があるという。

    経済力、人口、資源、技術などの戦争資源に劣る「持たざる国

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    2025年05月07日
  • トッド人類史入門 西洋の没落

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    欧米中心主義ではないとは、どういうことか
    ウクライナ戦争にしても、アメリカやイギリスの裏の思惑がなんとなくわかり、ロシアに対する見方もちょっと変わった

    西洋の栄光が相対化されたとき、日本はどうあるべきか、、

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    2025年04月30日
  • 歴史は予言する(新潮新書)

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     圧倒的な情報量。ちょっと失礼ながら(どっちに?)(仲がどうなのかは知らないけども)原さんのコラムを思い出してしまった。

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    2025年02月19日
  • 未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命―

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    太平洋戦争では過度な精神主義に陥った日本軍であったが、第一次世界大戦で行われた総力戦の研究を怠っていたわけではない。近代戦は国家同士の物量戦であり、日本は欧米列強に比べて生産力で劣るということまで日本軍は理解していた。日本軍の青島攻略は物量戦の模範とも言うべき戦い方であった。しかし、物量戦の重要性を認識していたからこそ、物量差の大きい欧米列強と全面戦争になったら物量での劣勢を挽回するために、精神主義的な殲滅戦を理想とした。絶対に敵わない物量戦から目を逸らし、精神力で劣勢を跳ね返すという非現実的な思想を抱いてしまった。(石原莞爾は満洲の支配を通じて、欧米列強に対抗できる生産力を獲得しようとしたよ

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    2025年01月28日
  • トッド人類史入門 西洋の没落

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    エマニュエル・トッドは社会の根底を見据える思想家である。彼の視点は地域や人種といった分断を越え人々の文化や家族構造に光を当てる。時に鋭く時に冷静に歴史の流れを解き明かす彼の分析は我々が持つ固定観念を揺さぶる。だが我々は報道の恣意性に常に注意を払う必要があるとともに判断も委ねられている。事実をどう伝え、どう受け止めるべきか――現代における課題を浮き彫りにする。多様な視点を持ち真実に近づく努力を忘れないことが思考の深まりにつながるだろう。

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    2024年12月09日
  • トッド人類史入門 西洋の没落

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    ソ連は共産主義、反植民地主義で勢力を拡大したが、基本的には外婚制 共同体家族の地域に限られた。今のロシアは父権的で伝統的な保守主義を掲げており、イスラム世界を含むより広くアピールする事ができるとの事。実は世界の75%は父権制社会である。ロシアは孤立していない、味方を変えると西洋社会が世界から孤立しているとも言える。
    トッド氏の「我々はどこから来て、今どこにいるのか」に挑戦したい。

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    2024年10月14日
  • 未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命―

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    明治憲法のガバナンス上の欠陥から宮沢賢治、さらには女性の月経に関する問題まで、著者の守備範囲の広さに舌を巻く。著者の記述の妥当性はわからないが、一つの説明としては面白かった。著名な「昭和16年夏の敗戦」や「失敗の本質」と並んで読まれるべき一冊だと思う。
    次の一文が印象的だった。
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    (…)ふたりとも冷静な現実主義者として次なる戦争は物量と機械と科学力だという合理的な本音を持ちながら、日本陸軍の軍人としては精神主義を建前として高唱せざるを得ず、しかし二・二六事件や日米開戦といった歴史の流れのなかで、本音は忘却され建前ばかりが暴走し始めていったのです(…)

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    2024年08月04日
  • 歴史は予言する(新潮新書)

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    週刊新潮の名物コラム「火裘冬扇」から。
    筆者の知識力には驚かされる。斬新な視点は通常のテレビや新聞報道とは一線を画する。ちょっと右寄りな気もするが。

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    2024年04月21日
  • 尊皇攘夷―水戸学の四百年―(新潮選書)

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    尊王と攘夷が何故、水戸から産まれたのか?
    天下の副将軍の論理的思考、九十九里浜の沖が捕鯨船の停泊地、鯨の海だった事から語られる水戸の400年。

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    2023年12月10日
  • 11人の考える日本人 吉田松陰から丸山眞男まで

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     日本の知識人・オピニオンリーダー11人の思想とその原点をわかりやく解説している。各人の経歴など、多少退屈に感じるところもあったが、文章もよみやすく、その時代の思想風潮もよく理解できた。
     各人は、多かれ少なかれ、「天皇」をどう位置づけるかにも心を砕いており、天皇は日本独自の思想背景としてなくてはならぬ存在であったこともよくわかった。近年はむしろ天皇に触れることはタブーのような風潮があるが、(どう位置づけるかにかかわらず)天皇抜きに日本の思想は論じられない、というのが、本書の裏テーマなのかな、と感じた。
     知ってるようで知らない日本の代表的な知識人達の主張の概要を学ぶには最適の一冊。

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    2023年09月26日
  • ごまかさないクラシック音楽(新潮選書)

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    クラシック音楽にまつわる入門書や解説書というのは世の中にごまんと溢れていて、当然のごとくそれらの大半は知的興奮を全く与えてくれないレベルのものばかりである。
    そんな情況に対して”Nein”を突き詰めるが如く、京都大学人文研におけるクラシック音楽の専門家として高いレベルの分泌活動を続ける岡田暁生と、政治学者としての顔も持ちながらクラシック音楽に対する広範な知識量でも読者を圧倒する片山杜秀という2人がタッグを組んだ本書は、まさに自分が本当に読みたかった入門書・解説書であった。

    本書の特徴は、通常の入門書・解説書ではさらっと触れるような点についても、その背景・理由をごまかすことなくクリアに語ろうと

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    2023年09月09日
  • トッド人類史入門 西洋の没落

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    エマニュエル・トッドとの対談

    ロシアとウクライナ
    日本や西洋の立場でなく、非西洋的な立場から見れば違った視点が見えてくる。
    進んでいると思われた西洋の家族のあり方。
    ロシアから見たら西洋による侵略からの防衛戦争
    アメリカによるドイツの国力低下を狙った武器許与
    ロシアのGDPでは測れない軍事力

    正義でなく、ここにある現実を知ることの大切さ
    もちろん、殺戮が決して許されることではないけれど、そろそろ、冷静に2つの国の立場を確認することも大切なのかなと思いました。

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    2023年08月13日