斎藤美奈子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
非常に面白く、興味深かった。「同時代小説」を俯瞰的な視点で分析し、特徴を抽出することがいかに難しいか、ちょっと考えてみればすぐわかる。その困難に果敢に挑んだ本書、なるほどねえ、言われてみればその通りとうなずくことしきり、さすが斎藤美奈子さん。
60年代から10年ごとに、売れたり話題になったりした作品をとりあげ、そこに刻印された「時代の空気」を鮮やかに読み解いていく、その切れ味に唸ってしまう。文学というのは、現実から遊離した場所で行われる営みのように思ってしまいがちだが、なんのなんの、本書を読むと、これほど「時代」の要請によって創り出されたり読まれたりするものなのかと、目から鱗が落ちる思いだっ -
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Posted by ブクログ
民主党政権、東日本震災、安部政権など、出てくる事象は過去のものだ。でも、そこに出てくる問題意識、解決に向けた姿勢、いら立ちも含めて、今も深く共感できるものだと思う。これより後の本『忖度しません』を先に読んでいるんだけど、まったく古さを感じない。今も現在進行形の話として読み進められた。面白かったし、一方で面白がってばかりでいいのか、という意識もある。本書で紹介されていた本のいくつかは、積読のまま俺の本棚にもある、読まないとなぁ。
美味しんぼの福島エピソードとか、取り上げられた当時、俺もイタイな、とおもったものだった。あるいはエキセントリックだな、と。でも、作品を作るとは本来、エクセントリックな -
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Posted by ブクログ
「月夜にランタン」「ニッポン沈没」に続くシリーズ三作目。「ニッポン沈没」が暗めのトーンだったのに比べて、今回は、「政治も世の中も相変わらずひどいもんだけど、それでも希望はある」という前向きな思いを感じる一冊だった。タイトルにもそれが表れていると思う。
いつもながら取り上げられる本の幅広さに感嘆する。不愉快になるに決まっている安部ヨイショ本とか嫌韓本とかもしっかり読んで、自分の意見をはっきり述べる姿勢がすがすがしくカッコイイ。あとがきがとても良かったので、以下その抜粋。
「言論空間が『敵と味方』『内と外』『ホームとアウェイ』に二分され、仲間うちでしか通じない言葉が増殖していく。いわば思想のタ -
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Posted by ブクログ
文庫解説に目をつけるとは!なかなか斬新な批評だった。文庫解説は誰のものというと、当然読者のためのはずだが、作者のためや自分のための解説が多いという。その取り上げ方、切り捨て方がなかなか痛快!作者の個人史に引きずられた解説や与太話に過ぎない解説も困ったものだが、こうやってこの本に取り上げられて読んでみると面白い。
作品の社会的背景を捉え、読書の指針となる、あるいは視野を広げる解説が優れているということらしいが、これが結構難しいことらしい。だめな解説や優れた解説の書き手の名前が挙げられていて、なかなか厳しいね。
松本清張のアリバイトリックの不備を突いた批評家がいて、「ええー、これじゃ作品自体が成り -
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「飽食の国に住む私たちは、食べることが大好きだ…(中略)でもほんの50数年前までは、日本も『飢えた国』のひとつだった。」
から始まるこの本。
食から見る戦争…というと
悲惨な想像しかできないかもですが、
この本はちょっと違っていて
悲惨になっていく食生活だけど
日々が楽しくなるような工夫で食事だけでも、
ちょっとでも楽しいものにしよう~というような
人々の生活が見えてくる
戦争が始まる前から中間、そして後の食の変遷がすごい
デコった「飛行機メンチボール、軍艦サラダ、鉄兜マッシュ」などはまだ楽しいけど、
後半になると、もう野菜も調理しないで生で食べましょう的なことを推奨されたり、
野草も食 -
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Posted by ブクログ
1960年代〜2010年代までの小説を
時代背景ととも分析。
近代日本文学(〜1950年代)は「ヤワなインテリ」がいつまでも悩んでいるヘタレども。
60年代 大学進学率上昇に伴う 知識人の凋落
70年代 公害問題等による 記録文学の時代
80年代 バブル経済 遊園地化する純文学
90年代 バブル崩壊後 女性作家の台頭
00年代 9.11.リーマンショック 戦争と格差社会
10年代 3.11以降 絶望的ディストピア
芥川賞受賞した芸人さんのあの作品も往年の私小説に近い自虐的なタワケ自慢と貧乏自慢と一刀両断。
市場縮小も著しく、新しい表現による小説は
なかなか厳しい時代のようです。