斎藤美奈子のレビュー一覧
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ネタバレ安倍晋三元首相の国葬の是非をめぐり、また北朝鮮拉致被害者の帰国から20年という節目を迎えるにあたり、「政治」に関心を集めたいと思って本を探している中で出会った一冊です。
学校では特定の政党や政治スタンスについての授業(指導)ができない(教員個人の意見表明、という形であっても非常に神経質にならざるを得ない)という事情がある一方で、生徒に対しては「政治に関心を持つように」指導してゆかねばならないというジレンマがあります。
なぜ、政治に関心が持てないのか、それは「自分のスタンス」と「推しが誰(何)か」が明確になっていないからだ、と筆者は主張します。
そして「右派/左派」「保守/リベラル」「体制派 -
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わかりやすい文章を書く著者でした。
政治を語る上で中立はあり得ないという切り口、ほんと、その通りだと思います。
学校では政治的中立を守って授業しなければならないと学習指導要領に書いてあるので、社会の先生たちはよほど勇気がないかぎり、踏み込んだ授業ができないと思う。でも、こういう風に学校教育で政治的中立を掲げているから、みんな政治に無関心になっちゃうんじゃないの?って思ってしまいます。若者が投票行かないのは、馬鹿だ、じゃないよ、興味を持たせられるような授業がマニュアルで禁止されてる体制に問題があると思うよ。ほんとに。
…脱線してしまいましたが、著者は結構リベラルな思想なので、右派の人が読むとイ -
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試し読み
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どちらも好きな作家、評論家でそれぞれの書く文章も好きなのだが、対談となるとまた違った趣を呈する。「この30年」というのは平成の総括であり、最後に現在のコロナ禍の状況についても述べられている。元々は「SIGHT」に掲載されていたものだそうだが、休刊したらしい。これは私自身が高校時代に読み耽った「ロッキング・オン」の雑誌らしい。「SIGHT」を読んだこともないが休刊は残念である。本題に戻ると、共に職業柄か多読の著者で、しかも読み込みが深いというか、好みである。掲載された小説はほとんど読んでないが、このような物を読む事で読んだ気になるのは本当はいけないのだろうが。ただ、ここでも書かれているように小説
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若者が政治に無関心なのは「ひいいきのチームがないから」と本質をずばりと突く。じゃあ決めよう、あなたは「体制派」「反体制派」か、どっち?
〈「体制派」とはいまの政治を支持し「このままのやり方でいい」と思っている人たち、「反体制派」は今の政治に不満があって「別のやり方に変えたい」と考えている人たちです〉
〈どっちでもない? あ、そうですか。そんなあなたは「ゆる体制派」「ぷち体制派」「かくれ体制派」です。どっちでもない、つまり政治に無関心で、特にこれといった意見がない人は、消極支持とみなされて自動的に「体制派」に分類されます。〉
ここを足がかりに、資本主義と社会主義、右翼と左翼、全体主義と個人 -
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2000年代の直近史をオバマの「Promised Land」きっかけで辿り直しているのだがどうもこの震災以降2015年ほどまでが現在の日本の崩れていくきっかけのー最も顕著になる案件が目白押しだったことが確認される。
著者も言っている通りこの5年間が最も暗澹たるもので底を打ってるかと思えば今現在までそれは一向に浮上していない。まさに川に落ちた犬に石を投げつけられるごときのコロナ禍であるなあ。
せめてもの救いはアメリカで劇薬としてのトランプがあったおかげでモラルとしては加速主義的に回復が見れてそれが日本にも影響を与えていること。
でもまあ日本で状況が回復するのはあと10年ばかりかかるとは確実に言え -
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斎藤美奈子の本の読み方は、私の手法とは全く違って面白い。そして、問題意識もいまの時代にフォーカスして、実に巧みな解説をする。
6つのテーマの選定がうまい。時代の核心に触れる。とにかく、「忖度しません」と言う題名さえも素晴らしい。現在の官僚やマスコミも忖度しすぎの時代に、これまで言えるのはいい。
6つのテーマは、①「バカが世の中を悪くする、とか言ってる場合じゃない」ー反知性主義とは何か?を追いかける。またなぜ反知性主義が台頭したのだろうか?
②「戦後日本の転換点はいつだったのか」ー60年安保。田中角栄をどう評価するか?1985年阪神タイガースが優勝。くつろいすぎの司馬史観。坂の上の雲はもう見終わ -
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試し読み
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論壇誌や新聞の書籍解説などとは違い文庫の解説は大抵は一人なわけで、そこにおそらく緩み、油断が生じてしまう。
ある人は作品や作者に媚びへつらい、ある人はあくまでも自己顕示欲の発露として終始する。
つまり、どうしてもイキったりカカったりしてしまうツッコミどころ満載の不思議な風習なのであった。
こんないじりがいがある素材を見つけた斉藤先生の快刀乱麻は止まらない。三島由紀夫だろうが大江健三郎だろうが果てはおそらく精神的な師でもあろうと思われる小林秀雄までも。完膚なきまでにおちょくっている。本当に気持ちがいい。
それでも最後の二篇、戦争題材のものに関してはしっかりと重くシリアス。戦争への同調圧力はもちろ -
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試し読み
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政治の話からLGBT、反知性主義、現代進行中のコロナについてまで。時事について、三冊の本を読みながら考える。真面目に考え込むところと、クスっと笑えるところの振幅が魅力的。静かに淡々と説明したかと思うと、「でもさ」といきなり切り返す。そのあたりの動きになんかしびれるね。読んでいて楽しかった。楽しかったでおわるのではなく、あぁ自分にはもっとできること、やらなければいけないことがあったんじゃないかな、と振り返ることができるし、その元気が出てくるんだ。
「忖度とは、コミュニケーションの回路を閉じて、腹のさぐりあいをすることです。ろくなもんじゃありません。「当事者が声を上げれば、やっぱり事態はかわるの -
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ネタバレ斎藤美奈子の新刊は、本屋で見かけたら買うことにしている。
で、数年放置してしまう。
絶対読むのだから、今でなくてもいい。
『月夜にランタン』も『ニッポン沈没』も数年放置した結果、第二次安倍政権が発足したタイミングで第一次安倍政権の突然の終焉と総括について読んだのだった。
それはそれで面白かったけど。
今回はひと月も寝かせず、すぐ読んだ。(当社比)
テーマごとに3冊の本を紹介し、世相を斬る。
私が彼女を好きな理由は、知識の(彼女の興味)の幅の広さと、上下左右どこにも忖度しない語り口の鋭さにある。
今作も、目からうろこがドバドバ落ちた。
「バカが世の中を悪くする、とか言ってる場合じゃない」
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読んでいて、非常に濃い時間を過ごし愉しかった。本好きと称しつつも、如何に偏っているかを知ったし、「読めない時期」が結構あって、意外と知らない作家、作品が多いのも解った。
自身が「純文学は嫌い」とかねてより思っているし、今も変わらないのだがその中でも少しは読んできたつもり。純文学に有る「オープンエンド」が好きというせいもある。ヘタレの知識人から始まったというそのルーツの表現法に納得。
同時代文学史とは言い過ぎと感じたのは、そう行ってしまうと「思想史」に通じてしまいかねない事。
それにしては、1960年からの諸々の動きを俯瞰し、見つめ切れているかと簡単に攻撃を食らいそう(そういった流れが好きな人 -
Posted by ブクログ
さながら近々の歴史をざっくりと見ながら、同時代の文学史をひも解いてくれるとてもわかりやすく面白い文学案内でした。確かにこういうのを待っていました!
わたしの読書人生は1950年代の後半から始まっています。その頃は桑原武夫や伊藤整の読書入門や、もう少し詳しいのだと中村光夫の『日本の近代小説』、1960年代後半に出た同じく『日本の現代小説』が参考書でした。まさに斎藤美奈子さんが「まえがき」にそうお書きになってます。
でも、そういう案内は1960年代までで終わっています。このようなわかりやすい案内は今現在2010年代までなぜか空白でした。もちろん専門書的なものはあったでしょうが。
世界が多様性 -
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ネタバレ通勤電車の中で読んでいたが、どうしてもニヤニヤしてしまい、困った。
特にブックカバーもしていなかったので、このタイトルとニヤニヤオヤジの顔を見比べた乗客がいたら、さぞかし気味悪かったろう。
もちろん斎藤美奈子の本には時々触れていたが。
先日来春樹の作品群を拾い返す中で、春樹って結局中絶手術後自殺した女の子のことばかり思い返しているんだろうなあ、んで聞きかじったところによれば中絶手術ってここ数十年の話(脱線するが水子供養の歴史ってすごく短い)らしい、
など考えるうち、石原千秋「謎とき村上春樹」で本書に言及されており、猛烈に読みたくなった次第。読んでよかった。
気になっていた優生保護法の歴史と伴 -
Posted by ブクログ
世に出ている近世(明治)以降の文学の解説本の多くは、60年代の横光利一・石原慎太郎・開高健らで終わっている。著者はその後の文芸の歴史をきちんと解説した書が見当たらないとことに奮起し、筆を執る。カバーする範囲は1960年代〜2010年代までの約60年。我々が生きてきた“同時代”の「性格」を文学で探っていく。
印象深かったのは、文芸評論家の蓮實重彦の考察。70年代半ば〜80年代を代表する小説の「羊をめぐる冒険」「コインロッカーベイビーズ」「枯木灘」「吉里吉里人」「裏声で歌え君が代」「同時代ゲーム」は全て同じプロットの物語である。「依頼」→「代行」→「出発」→「発見」という経過を辿る構成であると喝