斎藤美奈子のレビュー一覧
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まさに立体的な読書、とでも言うべきか。書いてある内容をただただ「ふーん…」と読み飛ばしていくのではなく(こうなりがちな気がするけど)、これでもか!?というほど各所にメスを入れていく。この好奇心、探究精神こそが知性に繋がるんだと思うし、記憶に残る読書になるんだと思う。時に割と身も蓋もないような言い方もこの本の中にはあるんだけど、いいんですそれで。それが面白いし、新たな発見というか、時に自分の"痛さ"に気付かせてくれたりもするから。
例えば『五体不満足』だったり『だから、あなたも生きぬいて』だったり、世間の評価に流されて結局「なんかいい本だったな」ぐらいの感想しか持たず終わってしまうということも割とありがち。だからこそ、斎藤美奈子氏のように率直に自分の感想を持つ読書というのははなかなか貴重だ。
近頃の若者は本を読まない、なんて言うけれど、自分の考えや在り方を補強してくれるような本ばかり読んでると、なんだかとんでもない"勘違い野郎"になってしまいそう。それだったら本を読まなくてもそんなに変わらない。面白くない本でもそれはそれでどこかに楽しさがあるかなー、いろんなジャンルを読むのも楽しいかなー、なんてことをこの本は思わせてくれる。 -
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斎藤美奈子のデビュー作。小説の中でヒロインが妊娠をする小説を「妊娠小説」と定義づけ、より正確には「望まない妊娠」である。原点は森鴎外の「舞姫」だとしています。「太陽の季節」「死者の奢り」「青春の蹉跌」「北都物語」がメンズ系なら、「もう頬づえはつかない」「海を感じる時」はレディス系。メンズ系は女に裏切られる話。ヒーローの年齢により、若い男が恋人の妊娠で打撃を受ける話、中年妻子持ちの男が愛人の妊娠で疲れる話などに類型。レディス系は自身の妊娠を機に男を見限る話、などに類型。
この本を出した時、文芸誌の元編集者から「小説はそんな風に読むんじゃない」と叱られたといいます。がこの「妊娠」をキーワードにすると、それまでうっとりと甘美だった物語世界が、男と女の価値観の違いを鮮明にあぶりだす気がします。 -
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なにかと波長の合う斎藤美奈子氏の書評本。しかしそこは斎藤氏、単なる本の羅列とはちがう。本を材料に世の中を縦に斜めにバッサバサ斬る。
2006年7月~2009年5月に、マガジンハウスの小冊子「ウフ」に連載されたものが主となり、2010年3月~「ちくま」に連載の物が核になっている。なので取り上げた本はその間に話題になった本をよみつつ、さらにその旬な本のバックボーンになっている本も取り上げている。
2012の今からだと6年前。最初の本が安部元首相の「国家の品格」。この時点でまだ次期首相候補なんです。いまや歴史の彼方ですよ。
斎藤氏と私は同学年。したがって団塊世代への非共感も同じ。2006年6月の「昨日の志はどこへ?団塊世代の懲りない面々」で2006年時点の定年まじかの彼らを、もーあと少したったら定年モノで脚光をあびるんだろうか?と危惧してるが、サイトーさん、2012、それはバッチリ現実になりましたねえ。ポスト団塊の我々についぞ光は当たらないのである。 -
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読書家である事を誇りに思っている層はベストセラー本を買わない傾向にあるが、ならば代わりに読んで概要を紹介しよう! というのがこの本。
要点をさくっと説明しつつ、ツッコミどころには容赦なくつっこんでいくのが非常に痛快。
何故その本が売れたのか、という事の分析もされている。
大多数の作品がばっさりと斬られているが、単に批判するばかりではなく、著者が良い作品だと感じたものもきちんと評価されていて、
よくある「痛烈に批判するばかりの書評本」とは違い、著者が作品に真摯に向き合った上で紹介しているのだと感じられた。
「善良な読者」(ベストセラー本をよく読む層を、文中でこう読んでいる)ではない人の中でも、本気でまるごと信奉してしまうタイプの人ではなく、
ウィットに富む文ににやりと笑いながら軽い気持ちで読める余裕のある人にはお勧め。
但し、2007年の本なので、最新作は紹介されていない。 -
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ネタバレ結論もいいけど、分析の過程がいちいちおもしろい。
明治以降に著された中で、
いわゆる『望まない妊娠』を扱ったものを纏めて分析・批評した本。
有名無名のいろんな作品が出てくるが、妊娠に関わる記述のみピックアップしていて、すごくドライに扱っているので妊娠に対して神秘性とか求めてる人はイラっとくるかも。
妊娠小説って基本的に男の人の優位性が滲み出るもんなのだと著者は言いたいのだと思う。
なお、最後に取り扱ったお話一覧が付いているので、読みたくなった人には便利。
いわゆる、文学の中で扱われる妊娠というのは、
(男性に取って都合の良い)道徳を説くのにとても便利というのが、
触れた小説を通して実感が湧く結論だった。 -
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高熱の中読んだ斎藤美奈子。高熱でも読めてしまうのが斎藤美奈子のすごいところだよな。わたし、趣味は読書。なんて、これからは絶対言えない。っていうか、実際本よんでねーし。『趣味は睡眠。』っていう本でも書こうか。
斎藤美奈子の何がすげえって、これは書評じゃなくて、そんなの超えて、社会学的な分析っていうか、マーケティングっていうか、そういうレベルの本であること。何が読者に求められているのかを分類して、わかりやすく、かつ面白く書いてしまったわけ。しかし、斎藤さんが自覚的であるように、彼女の言うところの「善良な読者」は、斎藤さんの本なんか手にとらんのだというのがものがなしい。もともと斎藤さんは編集者だったそうな。すげー。いい仕事してますなー。