谷崎由依のレビュー一覧

  • コロナ禍日記

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    コロナ禍をどうやって過ごしたのか。日記にすることで、日常の変化やそれに対する筆者や世間の反応の変遷が見えて面白かった。国や仕事によっての違いも興味深くて、その辺もっと幅広く知りたいと思った。

    苦しかった頃のことをいろいろと思い出して憂鬱な気持ちにもなったけれど、記録として大事な一冊になるでしょう。

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    2021年12月07日
  • 地下鉄道

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    南北戦争以前のアメリカ。
    そこには南部の黒人奴隷達を逃そうとする秘密の“地下鉄道”があった。
    著者はその暗喩をそのまま物語の中に登場させる。
    本物の地下鉄道に乗るのは黒人の少女コーラ。

    逃亡、逃亡、逃亡。
    安住はすべて一瞬の間。

    偏見に基づく群集心理、
    それは人間をここまで残酷にさせるんだ。

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    2021年06月28日
  • 地下鉄道

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    19世紀アメリカ。現実にあった〈地下鉄道〉という黒人奴隷解放支援組織を実際の鉄道に置き換えてジョージアの奴隷少女コーラの逃亡劇を描いたフィクション。ファンタジーのような設定だがそんな甘い話ではない。逃げるコーラを追いかける奴隷狩人リッジウェイ。コーラと共に逃げる仲間は捕まり、彼女を助けた白人も殺され、コーラも捕まり、しかしまた地下鉄道に乗って逃げる。希望を感じさせるラストだが当時の黒人に真の希望はあったのか。どこまで行けば逃げ切れるのか?トンネルの中を逃げるように、漠然と北部に逃げるしかないのだ。しかしそれでも時代から逃げないと本当の安心はできないのだ。ユダヤ人にとってのホロコーストと同じでは

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    2022年09月01日
  • 地下鉄道

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    ゴールのないマラソンの話。

    19世紀のアメリカで黒人奴隷の亡命を手助けした組織『地下鉄道』が、組織名や逃亡路ではなく実際に"地下鉄道"だったら、という虚構を一つ入れるだけで広がる世界と現実感。

    黒人奴隷を題材にしてるので当たり前に残酷な事が再三起こるけど、エンターテイメント性もありさらりとした文章で、翻訳本としての読みにくさも感じなかった。



    「真実とは目抜き通りのショーウインドウのようなものだ。
    目を逸した隙に並べ替えられ、うっとりと魅力的だが手は届かない。」



    「自身を束縛する手足の鎖に不完全な部分を見つけ出すのだ。ひとつひとつを見ていけば鎖の各部はちいさなものだ。
    でも周囲の

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    2021年04月21日
  • 地下鉄道

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    人が人にできるとは到底思えない所業
    人を人と思わないところに、現在も根深く残る問題のルーツがある
    一度読み始めたら止まらないスリル、緊張感
    アメリカ史の勉強に
    長い長いトンネルの先に見える光は希望の光であってほしい

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    2021年04月13日
  • 地下鉄道

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    ずしんと重く、残酷。なのにスリリングで、豊か。主人公の逃走にはらはらしながら伴走し、協力者の犠牲に瞑目し、狩る者に憤る。過去の物語は今につながっている。

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    2021年02月14日
  • 地下鉄道

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    大傑作。
    南部奴隷を逃す組織を「地下鉄道」と呼んだそうだが、それが本当に地下を走る機関車だったら?というアイデアを挿入、あとはかなり史実に忠実に描かれた、少女の逃亡譚。
    『風と共に去りぬ』が正当な注釈がつくまで配信停止となったとき、ファンの私は「いやー、オハラ農園に仕えたマミーをはじめとする人々のように、奴隷だって(比較的)幸せな人生もあったのでは?」とか思ったけど、奴隷制をまるで理解してなかった。奴隷が何かをわかってなかった。ひとが何もかも奪われて生きる地獄を。
    それでもこうして、どんな残酷な罰が待とうと、自由と尊厳を求める勇気を大勢が奮い、死んでいったことを知ろうとしていなかった。
    教えて

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    2021年01月16日
  • 藁の王

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    ネタバレ

    ちゃんと読むには教養が100000000くらい足りない。
    エメルが自分の創作は出さないくせにいっちょ前に他人の批判はするあたりでイライライライラしたのだが、その後キラキラ女子のメッキが剥げていくあたりは憐れになった。浮腫んだ指、って異形感めっちゃある。
    ラスとはちょっとプリミティブすぎる気もした。そこで主人公とエメルは分かたれるのかい。

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    2019年10月26日
  • 囚われの島

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    ネタバレ

    読んでいて、まあ息苦しい。孤島、繭、田舎の村、マンションの一室…どこも、緩くしかし逃れることの難しい閉塞を感じる。
    伝説のような昔であっても、現在であっても、閉塞は変わらないということか。

    そういえば何十年か前まで蚕は割合と身近だったはずで、しかしいつのまにか普段の生活からその姿は消えた。
    たぶん今の若い世代には馴染みがないと思うが、あえてそれを取り上げたのは何故なんだろう。滅び?
    また”妊娠小説”でもあって、…となると、滅びと再生?

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    2017年07月01日
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

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    タイトル通り各文学賞について複数の方たちが好き勝手(?)話をしたものが1っ冊の本にまとめられている。面白かったのは文学賞の背景であったり、審査の仕方であったり文学賞の周辺まで考察したり説明があったりで、なかなか読み越えのある本だった。世の中にはまだまだ知らない本がたくさんあるのでとても勉強になった。

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    2016年12月11日
  • 世界の8大文学賞 受賞作から読み解く現代小説の今

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    芥川賞や直木賞なんて世界の文学賞のうちに入るのだろうか?日本の作家が書いた日本語の小説しか対象になっていないのに。なんてことを思ったけれども、読んでみました。今年も話題になっているのは、もちろんノーベル文学賞。村上春樹さんがとるかどうか、メディアで騒がれました。この本を読むとわかるのですが、その根拠になっているのがカフカ賞。この賞をとった人が二人、ノーベル文学賞をダブル受賞しているんだそうで、まだ受賞してないのが村上春樹なんだそうです。カフカ賞はチェコ語の翻訳が一冊は出ていないと受賞できないそうで、村上春樹がとった2006年は『海辺のカフカ』が翻訳された年。タイトルがよかった?

    そのノーベル

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    2016年10月24日
  • キャンディハウス

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    ソーシャルメディア“マンダラ”のCEOであるビックス・ボウトンは、記憶をアップロードして共有するサービス、“オウン・ユア・アンコンシャス”を発明し世界を一変させた。
    本書は、連作長篇の形式で多数の登場人物が時間と場所を替えながら、変わりゆく世界での生き方を描いた思弁小説だ(多分)。サイバーパンク的なSFを期待したのだがガッツリ裏切られた。
    ピューリッツァー賞を受賞した『ならずものがやってくる』の続篇という位置づけらしいが、こちらは未読。キャラクターが重複する以外は、あまりつながりはなさそうだが……。

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    2025年09月28日
  • 遠の眠りの

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    大正末期から昭和初期に渡る、予想以上に壮大な話。
    舞台は福井。
    農村、女工、デパート、少女歌劇。
    読んでよかった。
    解説は斎藤美奈子。

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    2025年06月25日
  • 遠の眠りの

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     本特集の雑誌で、この本を知り、購入しました。

     まるで朝ドラのような物語でした。1人の少女の半生が描かれています。
     戦前の、どこかほの暗く、明るい未来もなく、苦しい中にもどうにか生きていく…そんな印象を受けました。

     少しだけ、桜木紫乃さんの描く小説に近い作品だと感じました。

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    2025年04月24日
  • 遠の眠りの

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    ☆3.4

    絵子は女として以前に、まず人間として生きづらそう。
    そんな絵子が見る女たちの生活はやはり苦しさがあって、彼女たちへの思いもきっと自ら言語化できるようなものじゃなかった。
    それでも振り絞って書いたものを積み重ねていく未来を見たいと思った。

    読んでいて苦しくなる気持ちがあったとしても、読むのをやめられない、やめてはいけないと手を動かす何かを感じた作品でした。

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    2024年03月08日
  • 地下鉄道

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    多数の受賞が本作の評価を確固たるものとしている。それでも、黒人奴隷の歴史に馴染みのない日本人の私にとって、読書中の没入感は今ひとつだった。いや、ひょっとすると、その原因は題材ではなく、重要な登場人物の心の1人である奴隷狩人の心の機微に首を傾げながら読んだからかも知れない。制度の瑕疵と評する逃亡奴隷の娘に対し、自分の心情を吐露しながら長々と興味深く会話ができるのかどうか。報酬をふいにしても自分の手で殺したくなるのではないか。

    主人公は逃亡中に地下鉄道の関係者に匿われる。「見えない鎖」に自由の意味を自問する場面がある。毎日、満員電車に揺られながら会社に通うサラリーマン諸氏にとって、格別新しい問い

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    2023年07月20日
  • 遠の眠りの

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    女性の人権がまだまだ確立しない
    時代に生きた絵子を中心とした女性達の
    時代に翻弄されながらも
    迷い、悩み、自立して行こうとする
    姿が時に痛ましく心が揺さぶられる。
    若き絵子が目にしたえびす屋は、煌めきと
    希望が詰まった宝箱であったのだろう。
    そこに現れたた少女歌劇団のキヨ。
    出会いはまた、絵子を夢の扉の先を
    具現化し脚本を描くミューズになった。
    また戦争が始まり絵子の青春も幻の様に
    消えて行く。
    何となくキヨ兄弟の出自や移民の話は
    何故だか中途半端で、この物語には
    不要な感じがした。
    絵子の行動が全て中途半端で、最後も
    夢か幻か?何とも言えないモヤつとした
    最後だった。

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    2023年06月19日
  • 遠の眠りの

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    ネタバレ

    どれだけ時代が移っても、どれだけテクノロジーが進んでも、根柢にあるものに変化がないこと
    「いま」に照らし合わせるとよく見えてしまう

    結果的に彼女が最終的に戻ったこと、それを選択したこと
    そうならざるを得なかったこと
    なんとも気持ちのおさまりが悪いことよ

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    2023年03月08日
  • 地下鉄道

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    黒人奴隷の少女の逃亡劇を描いた小説。小説とはいえ、アメリカの奴隷制度という実際の状況の基づいた設定になっており、奴隷制度時代がいかに過酷なものであったのかを感じることができる。

    フィクションとはいえ、ここにかかれているような物語があって、はじめて現在のアメリカが、世界があるのだと思わされる。もっとも、過去にこんな時代があったという感傷的な作品ではなく、今まさに進行形で起こっていることにもあてはまることができる恐るべき作品だと思う

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    2022年09月03日
  • 地下鉄道

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    黒人奴隷少女の過酷な逃亡の果てに、自由
    と言う世界があったのか。
    黒人の奴隷の歴史の詳しい事は漠然としか
    知らなかった。
    この黒人の為の地下鉄道と言うファンタジー
    を通して語られる黒人奴隷達の非道なる扱い。
    誰かの所有物としてしか生きられない現実。
    黒人と言うだけで人との尊厳は失われ
    物としてしか存在しない。
    地下鉄道を通り抜け、自由を求めて安住の地
    を探すコーラは色々な人たちに出会い、そして
    失いまた新たな自由の地を求めて凛と前を向いて
    生きている姿が人として美しい。

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    2022年02月13日