更科功のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルにシンプルとあるが、込み入った文章。絶滅したリョコウバトは北アメリカでは手軽な美味しい食料であった。19世紀後半になると人間による乱獲と森林伐採で数を減らし、沢山いたはずなのに100年でいなくなった。しかし、アメリカ先住民が築いた古代都市にリョコウバトはあまりいなかった。アメリカ先住民が個体数を食べたり、エサとなる植物を食べて抑えていたからとされる。アメリカ先住民がいなくなってリョコウバトは大発生した。これは日本で言うところの人が住んでいた山から人がいなくなるとイノシシの個体数が増えるのと同じだと思う。地域の支配者が変われば、その地域の生き物の個体数も変化するのだろう。現在多くいる生き物が昔から多くいたといたわけではない。一方で、進化そのものにも注目すべき点があった。オレンジ色が派手なグッピーは、繁殖には有利だが、敵に見つかりやすく生存には不利である。繁殖に有利な特徴が生存には不利になることがあるが、進化の過程では繁殖と生存の両方に有利な条件が重なることもある。生物は進化することによって進歩するわけではなく環境によって変化する。進化論の先入観と古い価値観をなるほどと納得しながら変えてくれた本。ちょっと難しかった。
-
Posted by ブクログ
題名の通りシンプルに分かりやすく進化や遺伝について解説されており、高校生の頃に遺伝子の授業で生物科目に見切りを付けて物理を選択したような自分でもしっかりと楽しく理解できた。顕性と潜性や自然淘汰などにわかに分かり難いものについて、分かりやすい例題や思考実験でシンプルに説明されており、一般読者向けに丁寧に書かれている。進化についてざっくりと学びたい人にオススメの一冊。
【メモ】
不利なアレル(遺伝子の組合せ)が潜性(昔で言う劣勢)であった時だけ、自然淘汰から逃れて生き残る事ができ、それにより自然淘汰は不利な遺伝子を除去する力はない。
自然淘汰は「生存に有利なように働く」と思われがちだが、「より多くの子を残す変異が増えていく」という表現が正確である。とは言え、「多くの子を残す」特徴は、「生存に有利になる」特徴や「環境に適応する」特徴と一致する。要因が受精数の違いである自然淘汰の事を性淘汰という。
受精卵が神経細胞や筋細胞など同じDNAの塩基配列を持った別の種類の細胞になるのは、塩基配列以外の情報(エピジェネティクス)の変化によるものである。最も有名なエピジェネティクスであるDNAのメチル化は、環境によりパターンが変化する事もあるが、この変化したパターンは子の世代にも伝わる。つまり、親が生きている間に環境によって獲得した形質が子に伝わる事になる。 -
Posted by ブクログ
若い読者に贈るとありますが、私のようなクソジジィにも楽しく読めます。
「平均寿命は屋久杉より人間の方が上」
そうだよね。樹齢2000年とか言ってもその木だけだし。多くは苗木にすらならずに枯れていくし。あと殆どは生きながら死んでる(死んでる心材と生きてる辺材)細胞はせいぜい30年とも。
だから何と言われそうだけどなんか心が軽くなった。死期が近づくとこういう話がいちいちひっかかっちゃう。ジジィになっても死にたいくないのよ。とはいえもうすぐなんだろうけど。
「植物の挿木。寿命って?」
いやほんとそれ。他の章でもミドリムシって何歳?ってのもあったけど。てかここでは触れられてなかったけどベニクラゲいるじゃん?
あいつマジものの不老不死でしょ。
最近YouTubeで見たけど他のクラゲは身体を傷つけて2匹接触させてたら神経繋がって1匹に合体してたし。ここまでくると逆に神様いて欲しいね。
「全ての生き物には寿命設定したけど、でもベニクラゲちゃんは特別なのっ!」とか言って欲しい。あとロイコクロリディウムやハリガネムシについても聞きたいわぁ。(どんな目的があってアレ作った?)
「ヒトは多くの動物に対して強烈な劣等感を持っている。足が遅いからだ。(二足歩行の最大の欠点のひとつ)」
今回この文章が一番好き。
足が遅いことへの劣等感って初めて聞くフレーズ。でもこれって度々聞くあの疑問(もしくは常識)に繋がるのよね。「小学生の時は足が速いとモテる」ってやつ。あのモテは強烈な劣等感の裏返しってこと?うーむありえるかも。
ライオンや虎から逃げる必要は無くなったけど、まだ走ることに対しての執着があるのかもね。
居眠りして観てないテレビを消すと怒るっていうのが、夜中の猛獣避けの焚き火が消えることへの恐怖からきてるという話(ほんまかいな)と同じくらい好き。
「多様性大事。てか人間増えすぎ。(そのこと自体が多様性を失っている)」
こういう「行って帰ってきた視点」を持ちながら論じたいですねぇ。
「鯉→(尿素)→カエル→(羊膜卵)→ヒト、イヌ→(尿酸)→トカゲ、ニワトリ」
この系統樹いいわぁ。覚えておこう。
作者は繰り返し生き物に優劣なんてない、どれも40億年生きてきた最新の形みたいなことを主張してますがほんとそうですね。
ただ多くの(私なんて特に)人間が「人間様 is No.1!」みたいに思い込んで他の生き物を見下してる(飼うわ殺して食うわ飾るわ、その生き物の赤ちゃんの飲み物を奪ってカルシウム!とか言っちゃうわ)その基となってるのは「だって俺たち脳でけぇし」(頭の良さ)なんでしょうけど、これもさっきの多様性の話とちょっと似てるというか。
他の生き物への優位性が頭の良し悪しに依ってるんだとすれば(知能が高いから殺すなとかもありますよね、馬とか鯨とか)じゃあ人間同士でも頭の良し悪しであからさまに差別(区別?)しても良くね?みたいな。そんなこと改めて言わなくてももうそうなってんじゃんって声もありそうですけどもっと明確な身分の差とかありそうなもんですけどね。また別の網がかかるのかな。
唯一イマイチ納得いかないのは牙を失ったことと一夫一婦制などから推測される「人類は平和な生き物」論。まぁそうかも。そうかもなんだけど。
やっぱ凶暴なんじゃないかなー。それとも僕が思ってるより他の生き物がずっと凶暴なのか。 -
Posted by ブクログ
化石に残るかすかな、しかしきわめて重要な、手がかりをめぐる分子生物学者たちの成功と失敗が紹介されています。
約20万年前に誕生したホモ・サピエンスと比べて、たとえば何千万年前の恐竜の化石から何かを知ろうとすることは相当に大変なことであることを知ることができます。では、なぞそのように大変な作業をつづけることができるのでしょうか。著者は、結論部において以下のように述べます。
「現在という磨りガラスを通さずに、直接過去を見ることができる快感は何物にもかえがたい。何かの役に立つからではない。いや、何かの役に立つかもしれないが、それが目的ではない。過去を知るということは、それ自体が知的好奇心を刺激する営みなのだ。」
「過去を知るということ」がもたらすのは「直接過去を見ることができる快感」。この快楽原則が分子生物学の探究を支えている、というのは乱暴すぎる議論でしょうか。
個人的には、現生人類が存在していなかった過去を化石を介して知ることの意義は、カンタン・メイヤスーが『有限性の後で」で述べている、化石を介して知るということの問題(いわゆる祖先以前性の問題)としても捉えられると考えています。つまり、科学と哲学を表裏一体の関係として考えることで、化石論は広がりと深まりをもつように思えるのです。 -
Posted by ブクログ
まんべんなく、基礎的な内容の生物学を網羅した本。
発行が2019年ということもあり、コロナ前なのでコロナウイルスや、ウイルスに関する新しい知見などは含まれていない。そういう意味では、最新とはいいがたい内容ではあるが、生物学・科学というものの考え方について、わかりやすくレクチャーされている良書であるように思う。
またAIについての基礎項目も挙げられていて、下手なAI論の本よりもわかりやすく説明されているのが面白い。
特に『シンギュラリティ』は、言葉だけがひとり歩きしている場面を良く見聞きするが、このあたりもかみ砕いて説明されているため、とてもわかりやすい。
全体として目新しいものはないが、タイトル通り美しく整頓されているので、読みやすく理解しやすい本だと思う。
残念なのは、やはり遊びの部分が時折差し挟まれるイラストのみというところだろうが……生物学・科学はもっと猥雑であっても良いような気がしている。 -
Posted by ブクログ
大変面白かった。
・植物状態の人間でも意識があることはある
・無意識状態の方が生存能力が高い(盲視:盲目の人がものを避けて歩ける)
・チンパンジーも人と枝分かれしてから進化している
・ネアンデルタール人が間氷期まで生き残っていれば、繁栄していたかもしれない
1カ所おかしいと思ったのは、「生きる」とは「生存して繁殖する」と言いながら、「生きる」ことを目的とした自然淘汰と「意識」の存続を目的とした自然淘汰はときに相反すると言ってること。意識を存続すると言う事は(自分が)「生存」することを意味するのだから、重なっている部分と相反する部分がごっちゃになっている。整理するなら「意識」の存続を目的とした自然淘汰は繁殖(種として生き残る)とは相反すると言うべきではないか。 -
Posted by ブクログ
人類進化の歴史が丁寧にまとめられている。ネアンデルタール人やホモ・フローレシエンシスが絶滅した年代も更新されている。
最初に進化した人類の特徴は、直立二足歩行と犬歯の縮小の2つ。オスが子育てに協力して一夫一婦制かそれに近い社会を作るようになり、メスや子に食物を手で持って運ぶために直立二足歩行をした。同種内で争うことがほとんどなくなったので、犬歯が小さくなったというシナリオが考えられる。
初期人類は足の親指を大きく広げられ、樹上生活もしていたが、アウストラロピテクスでは足の親指は他の指と並行になり、かなりすぐれた直立二足歩行をしていた。主に草原の食物を食べていたが、草食動物も食べていた。石器も使っていたかもしれない。
ホモ・エレクトゥスは走ることができるようになり、汗をかいて体温を下げるために体毛を失った可能性がある。ホモ・エレクトゥスは、アシュール石器を用い、火も使った可能性がある。
ホモ・エレクトゥスでは前頭葉にブローカ野ができ、ホモ・ハイデルベルゲンシスでは舌骨の形が変わり、ネアンデルタール人では脊椎骨の穴が広がって、FOXP2遺伝子が変化したことから、言葉は段階的に発展したと考えられる。
ネアンデルタール人との交雑によって、ホモ・サピエンスは寒い環境に適応する体色や体毛に関する遺伝子を受け継いだ。 -
Posted by ブクログ
私のブルーバックス積読シリーズ。この本は2,3年前に「これなら私にも読みやすい!」と思って買ったものの、直後に「今後論文を書くわけでもないのに、文章術…」とモチベーションが下がってしまい積読にしていたもの。今回改めて読んでみた。
論文を書こうとしている学生もそうだが、文章を書く「ライティング」だけでなく「ロジック」「ロジカルシンキング」といった面でも鍛えられる本と感じた。
新社会人などにもオススメできる本だ。
読者を意識し、文章のつながりを理解し、分かりやすい文章を書けるようになる。
パラグラフ・ライティングというのが身につく。
また、逆に"分かりにくい代表"の大江健三郎の小説も読みたくなった。