更科功のレビュー一覧
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いや新しい人類史を学んでみるものだと。ちょっとかじったところではついネアンデルタールはサピエンスに滅ぼされたのだというような少し前のもっともらしい説を信じ切っているところもあり、そんな簡単なもんじゃないよというのが本書でよくわかる。変なファンタジーを廃しつつ、実は今いる1種類の人類、すなわち我々ホモサピエンス以外にも共存していた時代があるのだということが説得力を持って語られる。なぜ彼らが絶滅しなくてはいけなかったのか、も興味深い。ただ遺伝子的にいま見られているネアンデルタールとの交雑については最新研究までフォローされていないのでできれば続編か増補改訂版を出して欲しい。人類学がまだまだこれからわ
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腰痛、難産などの不都合を抱える人体。だがそれは必要な進化だった。
そもそも生きる・死ぬとはなにか、進化はなんのためにあるのか…。
【生きているとはどういうことか】
ではまず「エネルギーを吸収している間だけ一定の形をしていて(散逸構造)、ときどき同じものを複製する」とする。するとガスコンロや台風なども「生きている」と表現できることになる。
いわゆる生物は、細胞膜とか皮膚とか何らかの仕切りで外の世界と区切られている。
つまり何らかのかたちで膜に包まれた有機物ができて、ある程度長く存在して、複製する散逸構造を持ったものができた、これが生物。
すると、生きる構造になった結果、生物が生まれたのだから -
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学校で習ったことの記憶を辿ると、多くの生き物がいる中で哺乳類はそのピラミッドの頂点にあり、さらに「ヒト」はその上を極めています。確かに我々「ヒト」は他の生物を利用したり食べることで生きています。
頂点に至る過程で私達は様々な進化を遂げてきたのですが、この本によると、その進化は「不完全」であるということが解説されています。不完全なので、私達の身体にある臓器は今も進化しているらしいです。環境に応じて進化というか対応していくのでしょう。私達は完全ではない、だからまだ変われる、というのは希望が持てた感じがしました。
以下は気になったポイントです。
・宇宙空間を移動する宇宙船は、細長い形がよい。宇 -
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地球上の生物は長い年月をかけて進化を続け、今も続いている。一般的な考えでは「進化」とはバージョンアップであり、その頂点に人類がいる、ということだろう。が、本書で語られる「進化」とは単なる変化であり、その生物にとって良いこともあれば、悪いこともある。生物にとって何より重要なのは次世代を残すことであり、そのためには犠牲にされた能力や残された欠陥もある。進化は進歩ではないのだ。
今の人類だって、多くの欠陥を抱えている。直立二足歩行は脊椎や骨盤に過度な負担がかかるし、心臓の血管は非常に細くて心筋梗塞の可能性が高い。生まれたばかりの子供が自立するのに長い期間が必要。チンパンジーやゴリラよりも劣り、原始 -
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700万年前に登場した人類は、進化の道を歩み、現在に至る。が、その道は真っ直ぐな一本道ではない。途中でアウストラロピテクスやネアンデルタール人に進化したものは絶滅し、我々=ホモ・サピエンスだけが生き残った。
本書はホモ・サピエンスの「進化史」ではなく、それ以外の人類の「絶滅史」を推測し、我々が生き残った理由を探る。
よく言われるのは脳が巨大化したことが人類の繁栄につながったということ。確かに、人類は他の動物より大きな脳を持っていた。が、絶滅したネアンデルタール人の方がホモ・サピエンスより脳は大きかったらしい。
著者いわく、脳は大きければ良いというものではない。大きな脳を維持するためには大 -
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ヒトの祖先とチンパンジー類の祖先が分岐してから約700万年。現生人類である我々にいたるまで、どのようなヒトの種が現れ、どのように生活し、別の種と交わり、どのように絶滅していったのか。著者は化石や住居跡、道具、DNAなどの証拠や他の類人猿との比較などから人類史を構築し、大きな一つの「ストーリー」として提示する。我々がなぜ今のような形で生きているのか、この「ストーリー」から考えると、必然的な部分もあるが、かなりの部分で偶然の要素も大きかったと思わずにいられない。
人類史に関する本は以前も読んだし、NHKスペシャルでも見ていたので大体の事は知ってるつもりだったが、この本では人類史の「ストーリー」を語 -
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■最古の人類であるサヘラントロプス・チャンデンシスから最後の人類であるホモ・サピエンスまでには数え方にもよるが,およそ25種の人類がいたことが分かっている。
・そしてそのすべての人類が直立二足歩行をしていたと考えられている
・したがって私たち人類はおよそ700万年間も直立二足歩行をしている
・直立二足歩行をしているということは両手が歩く役割から解放されているということ
・だが脳は大きくならなかった
・石器も作らなかった
■現在のチンパンジーの脳は約400㏄である。最古の人類サヘラントロプス・チャンデンシスの脳も大体400㏄である。その後の様々な人類,例えばアウストラロピテクスの仲間も大体400 -
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啓文堂新書大賞でみて。
非常に面白かった。
難しい単語を使っていないし、
例えが絶妙でわかりやすかったし。
例えば、
人間と人間以外の動物に隔たりがあるのは、なぜか。
人間が徒競走で圧倒的な1番となったのは、
足が1番速かっただけでなく、
2番手から25番手の走者が休んだから。
つまり、2番手から25番手の人類が滅んだから、とか。
むかし、馬に噛まれた人がいて、でも電車に乗って帰った、
それは馬が草食動物であり牙をもってないためで、
犬歯が小さいため殺人には凶器が必要な人類も同じだ、とか。
森から草原に追い出されたことが、
人類が人類である直立二足歩行の始まりであったという説は知ってい -
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約270ページで、宇宙の誕生からヒト(ホモ・サピエンス)がこの地上に存在するまでの歴史を語ってくれている。コンパクトだけど、濃密であり、かつ“特異な視点”での語りもあり大変面白かった。
(「地球史学」という過ぎ去ったことだけど、人類がその叡智を使って少しづつ解明していくという分野はロマンを感じる。そこには研究者の解釈の幅が効かせられる範囲があるから)
では面白かった点をもう少し具体的に語ろう。
ひとつは①科学者のものの見方が、われわれ一般人とは違うところを感じながら読めたこと、
その代表的なところは、世の中にある現象を「徹底した分類」によって整理して、理論立てていこうとする姿勢。 世