更科功のレビュー一覧
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ネタバレ本書は古代DNA(化石DNA)の研究の歴史と現状をわかりやすく解説した本である.映画ジュラシックパークでは,植物の樹液の化石である琥珀に取り込まれた蚊の血液から恐竜のDNAを抽出し,恐竜を復活させていた.あれが現実にできるのか.誰しもが夢を感じる部分だろう.このような古代DNAを扱う研究分野を分子古生物学という.著者はその分野の専門家である.その著者が,恐竜のDNAも含めて,分子生物学の進展を,ネアンデルタール人とホモ・サピエンスは交配していたのか?,ルイ17世存命説,カンブリア紀の爆発(カンブリア紀初期における動物の急激な多様化),などとの話題を絡めて丁寧に解説している.また,本書の構成が
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ふんぬーーっ!読みながら鼻息が荒くなるほど面白い。
ジュラシックパークは実現できるのか?ネアンデルタール人と現生人類は交配したか?などなど、目次を読むだけでも興味津々。専門的な内容もすごくかみ砕いた説明をされていて分かりやすい。もちろん専門的過ぎて理解できていないところもたくさんあるのだけれど、理解不能なところがあることをもってしてもあまりある面白さだ。そしてこの著者のすごいところは、読んでいるうちに「じゃああれはどうなんだ?」と降って湧いてくる疑問にも、ちゃんと答えを出してくれるところだ。
それにしても、化石やミイラからDNAを採るということが、これほど大変であいまいな作業だとは知りませんで -
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クリプトビオシスからの復水時に他生物のDNAを取り込むヒルガタワムシという存在に8~9%くらい持っていかれた
ちゃんと『種の起源』を読んだふりができそうな感覚がある。
そもそも種の起源がかなり体系的に自説の正しさを説明する構成になっていることに加え、筆者が現代で分かっていることや元の論旨にあった補強を足してくれているおかげで、それまでに信じられてきた個別創造説を自然淘汰による進化論で論破する過程がよく理解できた。
ダーウィンの凄さは、反対論者の主張に真摯に向き合って咀嚼しつつ、ひたすらに膨大な量の観察を続け、当時の科学の限界ギリギリまで進化論を高みに持ち上げたことなのだとよく解った。
個 -
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また、ネアンデルタールの運命に思いを馳せる。
ホモ・サピエンスに至るまでの人類の進化の過程に存在した彼らが同時に存在した世界があったにも関わらず、何故滅びたのか。人間の嫉妬は、自らと似ている「競争射程範囲」の対象に起こる。それは、欲の対象とその獲得プロセスが競合するからだ。チンパンジーやボノボが我々と共存でき、近縁種と共存できなかった理由はそこにあるのかもしれない。交配が可能だったために自然と淘汰されたという考えもあるが、遺伝子の比率からは、そのような平和的かつ均等な付き合いには感じられない。
本書が、兄弟姉妹の事を色々と教えてくれる。チンパンジーの授乳期間は4~5年と長く、その間は次の子 -
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「世界一シンプルな」という意味は最後まで分かりませんでしたが、語りかけるような文体はとても分かりやすいと思いました。進化論は誤って使われていると言われますが、あらためてその通りだと。進化論をめぐる議論がとてもわかりやすく整理されていること、遺伝による情報の伝達の仕組みがとても分かりやすかったのはありがたかった。世代を重ねるといかに遺伝子が繋がらなくなるのかがとてもよく分かりました。たとえば源氏の子孫だと言っても、その祖先というのは100億人以上に及んでしまうため、その遺伝子はほとんど受け継げない仕組みなどよく分かりました。
生物学の知識はなくても理解できるという意味ではとても良い本だと思い -
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ネタバレタイトルにシンプルとあるが、込み入った文章。絶滅したリョコウバトは北アメリカでは手軽な美味しい食料であった。19世紀後半になると人間による乱獲と森林伐採で数を減らし、沢山いたはずなのに100年でいなくなった。しかし、アメリカ先住民が築いた古代都市にリョコウバトはあまりいなかった。アメリカ先住民が個体数を食べたり、エサとなる植物を食べて抑えていたからとされる。アメリカ先住民がいなくなってリョコウバトは大発生した。これは日本で言うところの人が住んでいた山から人がいなくなるとイノシシの個体数が増えるのと同じだと思う。地域の支配者が変われば、その地域の生き物の個体数も変化するのだろう。現在多くいる生き
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題名の通りシンプルに分かりやすく進化や遺伝について解説されており、高校生の頃に遺伝子の授業で生物科目に見切りを付けて物理を選択したような自分でもしっかりと楽しく理解できた。顕性と潜性や自然淘汰などにわかに分かり難いものについて、分かりやすい例題や思考実験でシンプルに説明されており、一般読者向けに丁寧に書かれている。進化についてざっくりと学びたい人にオススメの一冊。
【メモ】
不利なアレル(遺伝子の組合せ)が潜性(昔で言う劣勢)であった時だけ、自然淘汰から逃れて生き残る事ができ、それにより自然淘汰は不利な遺伝子を除去する力はない。
自然淘汰は「生存に有利なように働く」と思われがちだが、「より多 -
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若い読者に贈るとありますが、私のようなクソジジィにも楽しく読めます。
「平均寿命は屋久杉より人間の方が上」
そうだよね。樹齢2000年とか言ってもその木だけだし。多くは苗木にすらならずに枯れていくし。あと殆どは生きながら死んでる(死んでる心材と生きてる辺材)細胞はせいぜい30年とも。
だから何と言われそうだけどなんか心が軽くなった。死期が近づくとこういう話がいちいちひっかかっちゃう。ジジィになっても死にたいくないのよ。とはいえもうすぐなんだろうけど。
「植物の挿木。寿命って?」
いやほんとそれ。他の章でもミドリムシって何歳?ってのもあったけど。てかここでは触れられてなかったけどベニクラゲい -
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長谷川浩一の『線虫 1ミリの生命ドラマ』を読んだ時に、メスだけで単為生殖可能だが、有性生殖に切り替えも可能だという種がいるという話を読んで、より詳しく知りたいと思って本書へ。
生物の中には、メスしかいないものも結構いる。トカゲやヘビにも、メスしかいない種が存在する。単為生殖の方が増殖のコストが低いのだし、自分の遺伝子を複製して残せるのだから、そっちの方が良いのでは、とも思う。しかし、そんな種にも有性生殖を選択する場面はあって、有性生殖のメリットがあるという事が分かる。
有性生殖の狙いは多様性だ。一律の条件で死なないように、個体の性能を分散させておく。その中で競争力のある個体が淘汰されて進