更科功のレビュー一覧
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化石に残るかすかな、しかしきわめて重要な、手がかりをめぐる分子生物学者たちの成功と失敗が紹介されています。
約20万年前に誕生したホモ・サピエンスと比べて、たとえば何千万年前の恐竜の化石から何かを知ろうとすることは相当に大変なことであることを知ることができます。では、なぞそのように大変な作業をつづけることができるのでしょうか。著者は、結論部において以下のように述べます。
「現在という磨りガラスを通さずに、直接過去を見ることができる快感は何物にもかえがたい。何かの役に立つからではない。いや、何かの役に立つかもしれないが、それが目的ではない。過去を知るということは、それ自体が知的好奇心を刺激す -
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まんべんなく、基礎的な内容の生物学を網羅した本。
発行が2019年ということもあり、コロナ前なのでコロナウイルスや、ウイルスに関する新しい知見などは含まれていない。そういう意味では、最新とはいいがたい内容ではあるが、生物学・科学というものの考え方について、わかりやすくレクチャーされている良書であるように思う。
またAIについての基礎項目も挙げられていて、下手なAI論の本よりもわかりやすく説明されているのが面白い。
特に『シンギュラリティ』は、言葉だけがひとり歩きしている場面を良く見聞きするが、このあたりもかみ砕いて説明されているため、とてもわかりやすい。
全体として目新しいものはないが、タイト -
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残酷なのは、大脳や二足歩行を得た事で犠牲にしたものもあるからだ。人間は非力で身体を覆う毛量も少なく、脳の維持のために大量のグルコースが必要だ。それに腰痛や心臓病は進化の代償であるらしい。それだけではない。進化は直線的ではなく、我々は最上ではない。個々の生物が環境にあった選択圧の中で最適化されている。人類こそ頂点であるような錯覚もまた、残酷な事実なのかもしれない。
本書はそうした事実を人間の身体機能について分かりやすく解説するだけではなく、他の生物や自然環境についても、平易で分かりやすく説明してくれる良書である。
例えば、「肺」の誕生について。
消化管の壁には、食物から栄養吸収するために血 -
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大変面白かった。
・植物状態の人間でも意識があることはある
・無意識状態の方が生存能力が高い(盲視:盲目の人がものを避けて歩ける)
・チンパンジーも人と枝分かれしてから進化している
・ネアンデルタール人が間氷期まで生き残っていれば、繁栄していたかもしれない
1カ所おかしいと思ったのは、「生きる」とは「生存して繁殖する」と言いながら、「生きる」ことを目的とした自然淘汰と「意識」の存続を目的とした自然淘汰はときに相反すると言ってること。意識を存続すると言う事は(自分が)「生存」することを意味するのだから、重なっている部分と相反する部分がごっちゃになっている。整理するなら「意識」の存続を目的とした -
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人類進化の歴史が丁寧にまとめられている。ネアンデルタール人やホモ・フローレシエンシスが絶滅した年代も更新されている。
最初に進化した人類の特徴は、直立二足歩行と犬歯の縮小の2つ。オスが子育てに協力して一夫一婦制かそれに近い社会を作るようになり、メスや子に食物を手で持って運ぶために直立二足歩行をした。同種内で争うことがほとんどなくなったので、犬歯が小さくなったというシナリオが考えられる。
初期人類は足の親指を大きく広げられ、樹上生活もしていたが、アウストラロピテクスでは足の親指は他の指と並行になり、かなりすぐれた直立二足歩行をしていた。主に草原の食物を食べていたが、草食動物も食べていた。石器 -
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私のブルーバックス積読シリーズ。この本は2,3年前に「これなら私にも読みやすい!」と思って買ったものの、直後に「今後論文を書くわけでもないのに、文章術…」とモチベーションが下がってしまい積読にしていたもの。今回改めて読んでみた。
論文を書こうとしている学生もそうだが、文章を書く「ライティング」だけでなく「ロジック」「ロジカルシンキング」といった面でも鍛えられる本と感じた。
新社会人などにもオススメできる本だ。
読者を意識し、文章のつながりを理解し、分かりやすい文章を書けるようになる。
パラグラフ・ライティングというのが身につく。
また、逆に"分かりにくい代表"の大江健三 -
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とあるビジネス研修で進化論の引用があってその際にあまり自分の理解がスッキリしなかった事もあり本書を手に取った。
そのビジネス研修では、要不要論的な考えで成長(進化)を無理矢理ダーウィンの進化論に結びつけていただけ。間違った進化論の理解とはこうやって(ビジネスなどの異分野で強引に結びつけ語られる) 広まっていくのか...?と気付く機会になった。
本書自体は、ダーウィンの進化論、現在の進化生物学との違いや、進化のメカニズムやプロセスなど、わかりやすく整理されつつ論じられていて、とても読み進めやすい。
今西進化論の話しは要らない気もしたが、生物の進化はそれほど多種多様な考えをもつ人々や研究者の -
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ここしばらく読んだ中で、最もタメになった本。意外。消化吸収そして排泄の話、ヒトはどうやって「走れる」ようになったのか、人類はほんとうに「優れて」いるのか、等々、生物としての自分のありようを改めて考えさせられた感じ。
生きとし生けるもの、その目標はただ「生きる」こと。それは艱難辛苦を乗り越えろ、という意味では決してなく、自分としては生きてればいいんだから楽にしようよ、という意味にとれた。
生きるのに必要なこと、それって何がどのくらい?と考えていくと、ヘンにミニマライズしなくても、これでいいじゃん、と納得できる気がする。まぁそれはもう自分の残り時間が見えてればこそ言えることなのかもしれないけれ