毎年きっちり同じ時期に、新刊と文庫が出るしゃばけシリーズ。第17作になりましたか。シリーズ20周年だそうです。今回も安定した全5編。裏表紙にある通り、一応、輪廻転生が共通したテーマか?
「昔会った人」。上野の広徳寺で見せられた、蒼く丸い玉の素性とは。貧乏神の金治が過去を回想する、珍しい展開。一太郎の前世に迫るとだけ書いておこう。この恐ろしい貧乏神にも、義理というものはあるらしい。
「ひと月半」。一太郎が箱根に湯治に行ってから、一月半。退屈な長崎屋の妖たち。ある日、死神と名乗る三人の男たちが訪ねてきた。彼らが言うには…。人騒がせというか何というか、長崎屋には関係ない話だよねえ。
「むすびつき」。鈴の付喪神である鈴彦姫に一大事が迫る。裕福な長崎屋といえども、欲に囚われた相手の説得は難しい。探し物はこんなところにあったとさ。鈴彦姫としては、ほっとしたと同時に、切ない結末が待っていた。
「くわれる」。一太郎にこういう主張をする相手は何人目だっけ。しかし、今回は恐ろしい悪鬼だった…。広徳寺や栄吉まで巻き込まれ、解決したのかしていないのかよくわからない展開。栄吉が菓子職人として独り立ちする日は近いのか?
「こわいものなし」。ある日突然、「能力」を会得した男。彼には願望があった。その結果…おいおいおいおい!シリーズ史上最大の突っ込みどころではないか。笑ってはいけないが、これって願望が叶ったことになるのかね?
いつも通りの安定感かと思いきや、最後にブラックユーモアが待っていた。いずれ、一太郎と妖たちの楽しい時間には、終わりが訪れる。と、思っているのだが、シリーズ完結はなかなか見えてこない。終わってほしい訳ではないですよ。
深読みするなら、いつかは訪れる「終わり」を、匂わせているような気がしないでもない。でも、そういう話は前にもあったような。シリーズが20年も続くのは快挙だけれど。2021年は、何やら記念企画があるらしいが。