ほしおさなえのレビュー一覧
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シリーズ第二弾。
亡き祖母・治子さんの縁で連句会「ひとつばたご」に通い始めた一葉を主人公にした、連作六編が収録されています。
前の巻でポップライターを始めた一葉ですが、今回はその関連で、連句会のメンバー・萌さんの手作り菓子のタグ作りを依頼されたり、やはり連句会の昔からのメンバー・久子さんの紹介で、ブックカフェ〈あずきブックス〉で働く事になったり(ポップライターと兼業)、さらに〈あずきブックス〉のお菓子を萌さんが担当することになったりと、ちょっと出来過ぎ展開な気もしますが、まるで言葉と言葉が繋がり合う“連句”のように、一葉の周りも人との出会いと繋がりによって広がりを見せていきます。
そして、注目の新キャラは連句会メンバー・蛍さんの妹の女子高生・海月ちゃん。
基本的に「ひとつばたご」の方々は、皆大人で物腰柔らかな人達ばかりなので、海月ちゃんの個性的なキャラはスパイス的な役割をしてくれそうです。今後も登場するのでしょうかね。
新しい出会いだけでなく、別れもあり、過去の思い出等の、そういった時の流れを語らい合いながら、言葉を紡いでいく・・・何とも素敵なコミュニティだなぁと思います。
亡くなった治子さんの知られざる一面も明らかになってきて、その優しい人柄が偲ばれますね。
月替わりのお菓子のチョイスも絶妙で、どれも美味しそう・・・とりあえず“一周”したのかな。
今後の展開も期待したいですね~。 -
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★紙はむかしから強い力を宿すものだった。(p.266)
文具好き女子も増えているのでかなり受けそうな題材。/百花は紙グッズや豆本好きな手先の器用な大学生。/紙屋ふじさき記念館館長の一成は紙さえあれば満足という紙大好き人間だが商売っ気がなくぶっきらぼう。/紙こもの市で大量の紙を買った百花は出店していた紙屋ふじさきの紙で祖父母の家の障子と同じ麻の葉模様のグリーティングカードをつくりたくなった。/それをきっかけに対人関係の不器用な二人がコンビを組むことになった(百花が紙屋ふじさき記念館でアルバイトすることになった)。/かたくなな一成を百花が少しずつ解凍していく。
■紙屋ふじさき記念館についての簡単なメモ(★は主要語)
【一行目】
そもそものはじまりは叔母からの誘いだった。(第一巻 麻の葉のカード)
【空き箱】《そうですね、なにも入れません。入れられません。空き箱だからロマンがあるのです。》麻の葉のカードp.13
【朝子/あさこ】瓜生朝子。藤崎産業の前社長の妻である藤崎薫子の秘書。
【飯田市】水引の産地。百花の母である冬海と叔母である紫乃の産地でもある。
【石井】小冊子研究会の後輩。一年女子。スイーツを擬人化したイラストを描いている。
【乾】小冊子研究会の後輩。一年男子。四百字以内の超短編ミステリを高校時代からブログに書き続けている。立花ゼミ所属。
【今村紫乃/いまむら・しの】→紫乃
【いろいろ紙ノート】百花が余り紙で父といっしょにつくっていたノート。けっきょくなにも書けなかった。
【瓜生朝子/うりゅう・あさこ】→朝子
【薫子★】藤崎薫子。藤崎産業前社長の妻。大株主でいまだ発言権は強い。八十歳になってSNSをはじめた。偏屈な一成のことを心配しており新しいなにかをもたらしてくれそうな百花を取り込もうとしている。《いまは限られた一部の人に高級なものを売るより、多くの人に小さな幸せを届けた方がうまくいく時代だと思う》麻の葉のカードp.210
【一成★/かずなり】紫乃の知人。端正な顔立ち。ぶっきらぼうなタイプ。紙屋ふじさき記念館の館長。株式会社藤崎産業の社長の甥。母は声楽家。
【紙屋ふじさき】《江戸期創業の紙の店。日本橋にあり、以前は和紙専門だったが、明治にはいって洋紙も扱うようになった。戦後は株式会社藤崎産業と名前を変え、書籍用紙から医療用の不織布まで幅広く扱う大手企業になっている。》麻の葉のカードp.29。薫子の肝いりで現在では和紙を扱う部門として「紙屋ふじさき記念館」がある。
【紙屋ふじさき記念館★】株式会社藤崎産業の日本橋にある旧本社ビル四階で創業当時からの資料を集めている。館長は一成。もうすぐなくなるかもしれないが薫子は残したいと考えているので一成にハッパをかけている。
【カルトナージュ】《フランスの伝統的な工芸品よ。厚紙で作った箱に紙や布を貼って飾るの。》麻の葉のカードp.18
【木谷/きたに】百花たちの大学の先生。近代小説の舞台になった町についてフルイ地図と現在の地図を比較しながら奇術を検証する。という話から『菓子屋横丁月光荘』の木谷先生と思われる。
【クラフトパンチ】型抜き用のパンチ。さまざまな型があるらしい。
【坂本泉】小冊子研究会の先輩。四年生。莉子の高校時代の先輩で小冊子研究会に誘った。現在就活で苦闘中。
【真田/さなだ】久川の助手。
【紙胎/したい】紙に漆を塗る手法。
【紫乃★/しの】今村紫乃。百花の叔母。冬海の妹。独身。日日草という器の店をやってる。おおらかなタイプ。
【小冊子研究会★】大学で百花や莉子が入っているサークル。部員は八名。
【髙子】日本橋の高島屋屋上で飼われていた象。
【立花】百花たちの大学の先生。乾がゼミに所属している。『菓子屋横丁月光荘』の立花先生と思われる。
【たとう紙】着物を包む紙。
【東京紙こもの市】さまざまな業者が出店しさまざまな紙のアイテムを出品する。盛況。見ていると語彙が低下し「きれい」「素敵」「かわいい」しか発しなくなり、皆、紙の亡者になる。三日月堂の印刷物もあるかも。
【戸川/とがわ】漆芸家。螺鈿が得意。
【徳山/とくやま】紙屋ふじさき記念館の、一成の前の館長。
【豊崎翠/とよさき・みどり】薫子の友人の孫。祖母がやっていた人形町のお茶の店を継ぎたいと考えている。
【西園】小冊子研究会の先輩。三年男子。立花ゼミ所属。
【八十八夜】豊崎翠が祖母から継ごうとしているお茶の店。リニューアル中。
【久川/ひさかわ】建築士。八十八夜の改装を請け負った。
【日日草】紫乃の経営している器の店。一週間単位で作家の個展やグループ展を開いている。
【房野/ふさの】和紙作家。八十八夜の壁面を飾る紙をつくった。
【藤崎薫子/ふじさき・かおるこ】→薫子
【藤崎一成/ふじさき・かずなり】→一成
【細川紙】埼玉県小川町でつくられる和紙。ユネスコ文化遺産に登録されている。
【真琴】小冊子研究会の先輩。四年。家業を継ぐ予定。
【松下】小冊子研究会の後輩。一年女子。高校時代に短歌の賞を取ったこともある和風美人。
【耳付きの紙】端っこがきれいにカットされたものではなく毛羽立っているタイプの紙。おおむね高級品。
【百花★/ももか】吉野百花。吉野冬美と雪彦の娘。大学二年生。紙アイテムが好き。どうやら紙そのものが好きなようで包装紙や量り売りの紙に惹かれる。手先が器用で豆本をつくったりもしたが絵のない本、文字のない本だった。大学では日本文学専攻でサークルは「小冊子研究会」。
【森沢】小冊子研究会の先輩。三年男子。動画撮影が得意でネットにもアップしている。題材は主に自転車旅行。
【百花の祖母】飯田市で以前は水引をつくる仕事をしていた。
【柳田/やなぎだ】昔、記念館の近くで筆耕の仕事をしていた。仕事柄よく来ていたそうだ。
【ユネスコ無形文化遺産】和紙で登録されているのは石州半紙(せきしゅうはんし)、本美濃紙(ほんみのし)、細川紙の三種。いずれも楮だけでつくられている。
【吉野冬海★/よしの・ふゆみ】百花の母。雪彦の妻で十五歳年下。紫乃の姉。編集者。現実的なタイプ(と百花は考えているようだがそうでもなさそう)。
【吉野百花/よしの・ももか】→百花
【吉野雪彦★/よしの・ゆきひこ】百花の父。作家。冬海の夫で十五歳年上。結婚したときはすでに作家だったので母も作家としての吉野雪彦しか知らない。紙が好きで手帳屋になりたかったのだとか。百花といっしょにいろんな紙を使ってノートをよくつくった。
「わたし」が小学生のとき事故で他界。無口だったそうだ。《頭にある言葉は、全部原稿用紙に吸いこまれちゃってたんじゃないかな。》麻の葉のカードp.307。《お父さんのことは、全部お父さんの書いた本で知ったような気がする。》麻の葉のカードp.308
【落水紙/らくすいし】和紙。小さな穴がたくさん開いてレースのようになっている。《紙漉きで、まだ紙が乾く前に水をシャワーみたいにあてる》麻の葉のカードp.26
【和紙】繊維が長いので洋紙より丈夫。
【和紙の原料】よく知られているのは楮、三椏、雁皮。
【莉子★/りこ】百花の友人。大学で同じ「小冊子研究会」に入っている。コミュニケーション力やプロデュース力が強い。 -
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4つの駅を舞台とした、4つの心温まるストーリーが楽しめます。東京、神奈川、愛媛、京都の駅です。私はこの舞台となった駅のうち2つには行ったことがありますが、2つは駅名すら知りませんでした。
そんな私でも4つのストーリーは全て楽しむことができました。知っている駅では「そういえばそんな立地だったな」や「その気持ちわかる」といったような地元あるあるが楽しめましたし、知らない駅では未知の場所、でもそこにいけば確実にある場所の風景を想像して楽しめました。
感動的なストーリーやホッとする結末が中心です。悪く言えば大どんでん返しもない、特別な設定もない平凡なストーリーですが、私はこういったジャンルの本が無性に読みたくなる時期があり、今まさにその時期だったので、個人的には大当たりでした。
誰かのちょっと特別な日常は見ていて楽しくなるものです。年度末から新年度にかけてバタバタとしている方も多いかと思います。私はそんな方にこそ本書をお勧めしたいです。 -
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このシリーズ6冊目。今度も配偶者のほうが先に読み終えた。
コロナ禍で記念館の閉館イベントも中止になった前作から続き、全編を通じて蔓延が始まったばかりの頃の街や生活の様子が描かれる。
不要不急の外出自粛、オンラインでの会議や面接、リモートワーク、病院や介護施設での面会謝絶といった緊急事態宣言下での生活だが、それらには私たちが経験したことやニュースで取り上げられた以上のものはなく、あの時はそうだったよねというようには思いながらも、あまり面白みはなし。
ただ、『いまのこの社会が現実。こんなことになってなかったら、って思うのはやめよう。いまだからできることはあるんだから、悔いがないようにいそれをやり遂げよう』という前向きな気持ちが表されていたのは、この物語らしくて良かった。
そうした状況を下敷きにしながら語られる第一話のメインは、百花の藤崎産業への入社試験。
ただでさえ緊張するのに加えてオンライン面接とは、なかなか動揺する局面ね。
ありきたりな展開だが、このタイミングで手漉き和紙の見本帳を送ってくる一成の心遣いが嬉しい(彼も成長したよね)。
第二話は大学祭に向けた雑誌づくりが中心の話。
コロナ禍の制約の中での知恵の出し合いだが、3年生も2年生もみんな前向きで救われる。
今やここから3年経っているのだが、色んなところでこういう知恵を出し合ってきて今の暮らし振りがあるのだなと改めて思わされた。
途中挟まれる松下さんの祖母の話は切ない。
第三話は卒論の話、の筈が、その気休めに箱づくりを始めたら、そちらがメインになった模様。
紙小物について考え出したり作り始めたりすると次々とこうしたらどうかということが湧き出して来るところはさすが“小鬼ちゃん”。
そんなことしないで早く卒論書きなよという気持ちだったが、こちらが気を揉んだ割にはあまり呻吟が描かれずに卒論が完成したのにはやや脱力。
記念館が再スタートすることになった時のオリジナルグッズを考えたり先生に渡す手紙の本づくりなども重なって、最後まで小鬼ちゃん振りのほうが目立つ。まあ、彼女らしいけど。
最後に出てきた記念館の移転先が川越になるのは、楽しみなようでもあり安易なような気もしたり。 -
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シリーズ6作目。
コロナの世界的大流行の影響で記念館閉館イベントは全て中止。
大学4年生となった百花は、リモート環境下で卒論と就職試験に取り組むこととなる。
突然身に降りかかった未曽有の事態。
誰もが不安で、どう乗り越えたらいいのか分からなかった2020年を2年の期間をおいて描いてくれたことで、その実態を冷静に受け止めることが出来た気がした。
5作目の感想で、「書き急ぐのか?」と書いたが、この6作目でコロナに翻弄された1年を丁寧に描いていたような気がする。
学生の大事な1年さえも、コロナは奪ってしまった。
たくさんの人が虚無感に襲われたと思うが、自分の心の中にいつもいた大学4年生、高校3年生など最後の1年間を奪われてしまった人々の想いが、今作を通じて知ることが出来た気がする。
もちろん、今作はフィクション。
作者さんだって、本当の大学生ではない。
それでも百花やゼミの同級生、サークルの仲間とのやり取りから、にじむやるせなさや、その中で必死に前を向こうとする気持ちを感じ取ることが出来た気がする。
リモートのやり取りしか出来ない中で、自分が出来ることを見出そうとする人たちの言葉にも勇気をもらえた。
特殊な環境だから、これまでのような内容とは違うけれど、唯一出て来た「結のアルバム」のラストには涙がこぼれた。
記念館の未来には驚きだったが、次作から藤崎産業の社員となる百花の活躍に期待。
今作の刊行記念のオリジナルグッズが、すごい気になる・・・ -
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ネタバレ「紙屋ふじさき記念館」、その5。
和紙と活版印刷…とつながって、「物語ペーパー」に使われた百花の亡き父・吉野雪彦の著作を復刻した小冊子を刊行するという話がもちあがる。
また、紙そのものが芸術作品になろうかという、墨流しの技法を使った料紙との出会いから、閉館する記念館の最後の企画は料紙を使った文箱を作るワークショップと決まったのだが…
だんだん、失われつつある手作業や伝統技法の解説が多くなり、百花の研究レポートのようになってきたような…
その上、突然、リアル世界の新型コロナウィルス感染が物語世界に入り込んできたことにびっくり。
もちろん、コロナ禍で人々の生活様式も価値観も大きく揺さぶられたことは間違いないんだけれど…
ここまではっきりとリアル時間が百花の大学三年生と特定されたら、この先の物語も現実世界の実像を反映させて進まなくてはならなくなりそうで、何となく違和感が残った幕切れだった。
この先の世界の変動、例えば為替変動や他国の戦争も、物語に入れますか?この物語の伝えたいことって、そこですか?という…
そして、例によって蛇足ですが、表紙のイラストが気になって気になって…
百花の体のねじれ方もすごいが、腿裏まで届くような長〜いショルダーバッグと、いつも三揃スーツの御曹司の、レギパンのようなピッチリしたパンツ。ううう…誰も気にならないのかしら…
さらに個人的には、ご贔屓の登場人物、文字箱の綿貫さんの再登場希望。 -
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シリーズ第三弾。
守人の“家とのコミュニケーション”が、巻を追うごとに進化していますね。
最初は家の声が聞こえるだけだったのが、前巻では〈月光荘〉と“会話”をするようになり、この巻では〈月光荘〉以外の家とも会話ができるようになっていました。
そして第二話「オカイコサマ」で、守人の大学時代の友人・田辺さんの祖母・喜代さんも“家の声が聞こえる”お仲間ということが判明。
しかも、田辺さんの祖父母の家を建てた人が守人の血縁だったという素敵なサプライズ展開でした。
このような“人の縁”の連鎖が心地よく、出てくる人達が良い人ばかりなので安心して読めますね。
表題作の第三話「文鳥の宿」では、ついに〈三日月堂〉が登場して“おおっ♪”と、テンション上がりました。
第一話「雛の家」で行われた“貝合わせ”のワークショップなど〈月光荘〉で行われるイベントも魅力的で、企画する皆さんがすごく楽しそうなのが良いですね。
(それで毎回大盛況。ちょっとご都合主義な感じがしないでもないですが、この安定感が良いので問題なし)
進路に悩んでいた守人も、人々と交流していくうちに川越で働くという方向が見えてきた様子です。
今後、どのような縁が繋がっていくのか楽しみです。