こだまのレビュー一覧
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ネタバレ猫を乗せて
凍える夜の鍋焼きうどん
が一番好きでした
枕のそばに栄養士さんの握った小さなおにぎりと胡瓜の漬け物が置かれた。「地蔵のお供えじゃねえか」夫は笑いを嚙み殺しながら、身動きできない私に言った。
私は学年で三位になり、メダルを首から提げて意気揚々と帰宅した。当然「よくやった」と両親に褒められるものだと思っていたけれど、ふたりの口から出たのは「一位は誰だったの」だった。
老人は「さっき犬を焼いたばかりだから中が温まってる。普段より早く焼き上がるよ」と陶芸教室の先生のように言った。
今回も面白ワードがたくさんあって楽しめました -
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Posted by ブクログ
本が出版された当時、話題になっていたのを知っていた。読みたいなーと思いつつ、なんとなく先延ばしになっていた。
ようやく手をつけ読み始めた。
止まらなかった。
はじめは、自分とは全然関係のない人の話だなあと外側から覗くように読んでいた。中盤アリハラさんのぶっ飛んだ話に驚嘆しつつ、気づいたらかつての自分の精神状態とリンクしていた。
何この本。
と、思いながら読み進めていたらまた思わぬ方向にすすんでいく。
苦しい。
苦しいけど目が離せない。
これは一つの人生。
当たり前のことは当たり前じゃない。
知らずに人を傷つけているのかもしれない。
読書はいろいろな事を教えてくれる。 -
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ひりひりする。
タイトルに嘲笑い、発売当時に仲の良い先輩と「ノリで」買ったことを覚えている。
最近、家に本を置く場所がなくなってきて、整理していたときに久しぶりに手に取った。
「もうこんなふざけたタイトルは手放そう」と思い、最後にどんなんだっけと読み返したのがだめだった。
ああ、ひりひりする。
この作者の生きてきた人生。分からないようで分かる、異常なようで、誰にでもありうる普遍的な生きづらさ。「普通」という呪いにとらわれて苦しむつらさ。
「どうしても入らない」という精神性。家族との関係。
そして、最後の手書きの迫力。
誰の人生もみな、「名作」になるのかもしれない。ひっそりと耐えて生きてき -
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ネタバレ「俺にはコミュニケーションとか丁寧なサービスとか要らねえんだ。素早く椅子 から 降ろしてくれるのが最高の店。味気ない店ほどいい。流れ作業でいい。俺なら千円カットに五千円払うね」
「あの子はいま何を楽しみに生きているの?」
若者に「携帯電話のない時代ってどうやって待ち合わせたの」と訊かれるが
何とかなることを期待して行くしかない
行って、会えるまでひたすら待つ。会えなかったらそれまでだ
今思うと、余程の事情がない限り直前の気分で「やっぱ行くのやめた」と
手のひらを翻す人は少なかったのではないか
約束を大事にする。約束に縛られる。一概にどちらの時代がいいとは言えない -
購入済み
誰にも悩みはある
タイトルからして中々購入出来ないでいましたが今回思い切って読んでみることにしました。リアルにタイトルどおり現実の悩みを抱えて生きてきた内容でした。誰にも相談出来ず仕事でも心が崩壊してしまいそうな出来事があってもなんとか踏ん張ってきた作者を応援したくなりました。夫婦には他人には分からない様々な悩みがあるものです。自分の人生は自分だけのもの!楽しく謳歌させなくては勿体ないとつくづく考えさせられました。
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ネタバレ 購入済み
タイトルにびっくり
信じられないくらいの田舎に住んでいた主人公の鳥居さち子は閉鎖的な人間関係に嫌気が差していた。
同級生の性事情が筒抜けだったこともあって初めてはまったく知らない他人としたさち子。
終わったあとのシーツに広がる血や下腹部の痛みに後悔しているようだった。
高校卒業後は地元から離れたところに進学。
ボロそうなアパートであっても息が詰まりそうな地元よりマシだと思うさち子。
同じアパートに住む一つ年上の男子大学生の倉本慎と出会う。
倉本は初対面の時からあまり気を使わない感じの人でさち子の生活に入り込んでくるもののあまり不快感はない。
一年先輩ということもありお得な情報も教えてくれる倉本と距離 -
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個人的に旅は退屈になりがちだ。
ガイドマップに載っている名所を巡るのは情報を消費しているだけに思ってしまうし、
かと言って全然知らない路地に行って何か発見するほど感性が研ぎ澄まされているわけではない。
というのは極論かもしれないけど、まあそんなような事を思っている。
そういう意味では本作「縁もゆかりもあったのだ」は一筋の光明だった。
まさに本作の巻末に次のようにある。
「自分とは無関係と思いこんでいた人や土地が、その細い糸を辿っていくと、つながっていた。何気なく通り過ぎた場所が数十年の時を超えて急に意味を持つ瞬間もある。そんな過去の記憶とのつながりもまた、旅ではないか」
旅する土地を通し -
購入済み
そのときどん底に悲しくても、いつか、笑いだしたくなる話にすることができたら、きっと少しだけつよくなる。 こだまさんは沼の底で苦しんで苦しんでどろどろになって、深い沼の底からはいつくばって、文章という武器を手に入れたことで少しずつ泥を吐き出して、今日をどうにか生きている。の、かも。 吐き出すのがとっても上手。危うく吐き出された泥に溺れそうになっちゃった。
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購入済み
心の痛みを知る
表題のような理由でセックスができない人は、たしかにいるのだろうなと思います。
本で読まないと想像もできなかった、心の痛みを知ることができる。
そういった作品は貴重です。