こだまのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ誰かに責められるわけではなくても、「普通ならこうする」という社会の空気が人を追い詰める。本作はその息苦しさを非常にリアルに描いており、自分自身が無意識に持っている価値観にも気づかされる。
性の話だけではなく、仕事、人間関係、孤独、自己否定など、生きることそのものがテーマになっている。タイトルだけで敬遠するにはもったいない一冊。
性生活がないことだけを切り取れば「普通ではない夫婦」かもしれない。しかし、お互いの弱さを受け入れ、それでも共に生きる姿には確かな信頼関係があった。愛情の形は一つではないと感じた。
主人公は自分を正当化しない。だからこそ、一人の人間としての葛藤や弱さがまっすぐ伝わってくる。読者もまた、自分自身の弱さと向き合いたくなる作品だった。 -
Posted by ブクログ
こだまの著書を初めて読んだ。
特別支援学校高等部に通うダウン症の「けんちゃん」を取り巻く
四人の視点で描かれる連作小説。
とにかく、けんちゃんのキャラクターが最高で、
かつリアリティがある
(こだまは特別支援学校の臨時職員として三年間働いていた経験があるそう)。
それぞれ悩みや生き辛さを抱える四人は
けんちゃんと交流することで変化(成長)していくのだが、
それは純粋で、まっすぐで、自分の気持ちに素直な
けんちゃんの言動(ときに奇行に映ることもある)に影響を受けてのこと。
この本を読んだ誰もが「けんちゃんに会いたい」と思うだろうが、
実社会で障がいを持つ方と接した際に、
自分はどう行動ができるのだろうか、ということも考えさせられる。
読後感がとてもよい。あたたかい気持ちになった。 -
Posted by ブクログ
みんな多かれ少なかれいろんなもの抱えてるし、その大きさや重さは当事者にしかわからない。
障害ってなんなんだろう。特別支援学級、特別支援学校。ノーマライゼーション。多様性。
世の中には矛盾が溢れてる。私は私の周りで起こる日常で、出会う人やできごとにいちいち、怒ったり笑ったり怖くなったり悲しくなったりしながら生きてくしかない。けど、自分が感じてるように相手にも感情があってそれが正しいとか間違ってるとか決めつけるのはやめよう。と、思った。
自分とは違うけどそういう考え方もあるのか、といったん置いてみよう。
なんて思いながら、今年の目標は誰かと喋るときにでもさ、それはさ、と自分の考え押し付けるのを止めるってことだったのにまだまだ。だ。苦笑
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Posted by ブクログ
支援学校の寄宿舎に住む「けんちゃん」を通して変わっていく人たちの物語、といえばありきたりな気もするけど、なんか読み心地がいい。不思議だ。
内容にも、書き口にも違和感がない。登場人物から滲み出る”良い人ぶりたくない”という精神が著者の根底にあるのかも。押し付けがましくないって本当に難しいんだなと思った。
読破した!という達成感よりも、心地よさが残ることって私にとっては本当に嬉しいことだから、そういう自分が思う読書の楽しさみたいなものを久しぶりに味わえて嬉しかった。
私もけんちゃんみたいな存在に救われたことがある。
だからか、こういう視点を持って本を書いてくれる人が素晴らしい書き手で嬉しくてたまらない。 -
Posted by ブクログ
けんちゃんはとてもリアルで、どこかにいそうで。
小説自体は面白くてすらすら読めたし、感情移入もしたりして。
でも3章くらいまでは、けんちゃんがいるからみんなが変わった、みたいな感じはわからなかった。
ただ、登場人物として「けんちゃん」はいるけれど、キーパーソンというには、ただ本当にそのままいるだけ、みたいな感じで。
わかりやすい、気づきみたいな表現?はなかったからかもしれない。
でも、4章を読んだ時に思った。
生きていたらどうしても、いろいろぐちゃぐちゃに悩んで考えてしまうけれど。
けんちゃんは常にただけんちゃんで、けんちゃんの評価基準だけで物事を見ていて、感情の赴くままに真面目に真っ直ぐに生きている。
そんなけんちゃんだからこそ、本当にただ一緒にいるだけで、世界がほんの少し優しく見えてくるのではないかなと。
優しく、という表現が正解なのかはわからないけど。
でも、一緒にいたら、気づかぬうちに、一緒にいる人自身も素直で等身大になれていく。
4章が終わって初めて、けんちゃんの尊さに気付いた。
そして、けんちゃんを読んでる自分自身も、素直で等身大で力が抜けていくような感じだった。
それでもやっぱり、本を読み終わって現実を生きていたら、ごちゃごちゃと考えて悩んでしまうけれど。
けんちゃん、一緒に生きて欲しい。 -
Posted by ブクログ
特別支援の高校に通うけんちゃんに関わる4人の視点で書かれるストーリーです。
皆それぞれに悩みや障害があって、どのように生きていけば良いのか、どうしたいのかわからず探りながら生きている。正直で素直で、時に野生動物のようなすばしっこさを見せるけんちゃんをみているうちに、その言動に惹かれ、引っ張られていく…。けんちゃんには不思議な力があるようだ。
『障害のある子ども』を描くものはあっても、『特別支援学校の生活』を描いた小説はそんなに多くないのではないかと思う。そこに関わる大人の向き合い方を見て、非常におもしろいと感じた。
けんちゃんのことを応援したくなるし、卒業してしまうのは寂しい…。私もペプシで激怒するけんちゃんを一度は見てみたい!(不謹慎かな)
心温まる素敵な話でした。 -
Posted by ブクログ
4年ぶりの再読です。
やはりとても良かったです。
大変なことがあっても、これだけユーモアのある文章で昇華させて本当にすごいと思います。
こだまさんがこれだけ頑張っているのだから、自分だってもう少し頑張ろうという気持ちにさせてくれました。
「おわりに」の言葉がとても印象に残っています。
『洗練された故郷、文化的な家庭、健康的な心身、コミュニケーション能力、運、なにもかもが欠けているということ自体が私の装備』
なんて最強なんだろう。自分とは次元が違うなと思いました。
本当に尊敬します。
僕のなかで、魅力がある人というのは「思わず応援したくなる人」でもあります。まさに、こだまさんがその一人。
これからも応援しています。
そして、既に何回か読んでいる私小説『夫の…』がまた読みたくなりました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレオーディブルで聴いた。
ずっと気になっていた本をオーディブルで見つけて早速聴いた!
全く入らない人の話かと思ったら、他の人とはできるのか…!
この本を読んで、世の中の夫婦の子供は産まない理由って、人には言えない、言いたくないような様々な理由が色々あるのかもしれないなと思った。
子供を産まないことがおかしなことと思われたり、子供を産まない(産めない)娘を、実の親が欠陥品と言ったり、夫の両親に謝りに言ったりするところは衝撃的だった。今は結婚しない、子供を産まないことも選択肢の一つと言われているのに、少し前の時代なのかもしれないけど、そんなに悪いことのように言われたり思われたりしてしまうんだ…と思った。
学校の先生も、私は学生の頃に学校の先生達を見て大変そうすぎて、絶対自分はなりたくない職業だと思ってたけど、やっぱり大変すぎると思った。
挿入しなくても、シリンジ法とか不妊治療とかで妊娠できる可能性はあるけど、薬を断つと体調が悪化してしまうのはつらいよな…
他人の人生の経験を、このように本として読める(聴ける)のはとても面白かった! -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルを見た時、私は、推察よりも先に面白さを感じてしまったのだが、読み進めて今、その真面目に取り合ってもらえなさも内包する狙いがあって作者様はこのタイトルにしたのだろうと感じた。
本作の内容は大きく分けて、
夫との関係性
仕事場での関係性
傷ついた自身を慰める行為
母との関係性
これらの部分が大きい。
傷ついた自身を慰める行為に関しては、他と質感があまりにも違い、衝撃を受けた。夫が風俗に行っている事に対し、悲しみを覚える主人公の下りがあった分、それが主人公自身に降りかかる事、内容の衝撃も相まってここだけケータイ小説読んでる気分になった。特にアリハラさんの部分やらおっさんの部分。
夫との関係性は、基本的にちんぽ周りがメインに据えられていたため、序盤以外は二人の日常的な関係性が描かれていない。
仕事で忙しく2人の関係性が取れていないのか、序盤の延長として2人だけの関係性を築けているのか。レスによる倦怠期のような日常なら、辛いが後者の方がしっくりもくる。
ただ、ここで理解のある彼、のような作中における都合のいい、しっかりとした人なら、この作品は薄っぺらいものになっていたのだろうとも思う。
仕事場での話は、辛い。
生徒との関係から精神を蝕まれていく様が辛い。ただ、その原因を作った少女を、私はインスタントカメラの下りで許してしまった。
主人公が許す場面でなおも許せなかったのはサクライ先生である。
人が限界を越えてから「あなたには期待していたんだがな。」とか言い出す。その原因の一端に自分がいるとは考えもせずその人生を過ごしていくのだろうと思うと歯噛みせずにはいられない。多分自分に酔ってその発言をしている。自分が悪人だとは毛ほども考えていない真の邪悪。それほどに許せない。
最後の部分、保険のしつこい女性に心の中で半生を振り返る下りがある。
その時の主人公はその宿命を、じたばたせず達観しているような描かれ方をしていて、強い女性として熟成している。
それは序盤、彼女が学級崩壊している場所の担任になる前に求めた強さかもしれないが、彼女の半生を共に見てきた人間からしてみれば、それは強くならざるおえなかった悲しみを含んだものに感じた。
P62
ちんぽは返り血を浴びた人殺しのように赤く染まっていた。
・真面目なシーンであるにも関わらず、面白さに拍車をかけようとしているような比喩。思わず笑ってしまった。
P93
ある日帰宅すると三角コーナーの網目の中で味噌汁に入れた豆腐とわかめが乾いていた。生ゴミボックスの中にはご飯とおかずが そっくりそのまま捨てられている。全く手をつけた形跡がない。寝坊して食べる暇がなかったのだろうか。その時はそう思ったのだが、翌日も、そのまた 翌日も、同じように朝食が無残に廃棄されていた。
・序盤以降の旦那は主人公を癒す役割にない。それは彼の苦しみから来るものかもしれないが、その原因は、と考えると、主人公に帰ってくるもので、どうにも辛い。
P111
アリハラさんは私の口に きんつば を押し込み 私に 咀嚼させてから舌を差し入れ、そのぐちゃぐちゃになった小豆を奪って食べた。その日の私は咀嚼器だった。きんつば が終わると、今度は外郎の包みを解く。名古屋をこんなふうに穢して食べることになると思わなかった。逃げ出したい。しかしアリハラさんはやめようとしない。山と向き合う時の、キチガイの目をしている。有原さんが やめないのならば私も 脱落するわけにはいかない。こんくらべ のような気持ちで付き合う。(中略)あんこまみれになった口を拭おうとすると、アリハラさんが「もう少し そのままでいて」といい 光の速さでスササササとちんぽを擦り、私の口に精液を入れた。
今私は山の代わりなのだと思った 誰かの代わりではなく 山の代理。私は花崗岩で、お花畑で、槍ヶ岳。こういう時はどうすれば良いんだろう。地鳴りを 響かせることもできない。自分の置かれている状況を深く考えないよう心を無にした。アリハラさんに犯され、精子を放たれた山を想像する。雪が溶け、新芽が萌える季節になると 各地の山頂にまかれた アリハラさんの種が一斉に膨らむ。山々が競うようにして クロネコヤマトや 蕎麦屋の電話番号を暗証し始める。山彦が身に覚えのない数字を返してきたならば それは彼が交わった山だ。
・変人だけど悪い人ではないのか...?とか考えていたアリハラさんが悪人へと変貌するシーンな上に、無情さを感じた主人公の想像が異質な世界観を描いている。異常で、印象に残るワンシーン。
そして、申し訳ないことにこのシーンに私は色気を感じてしまった。自分の意志とは無関係に憤るちんぽ。まるで見知らぬ女性に腰をガクガクする犬を止められない飼い主のような情けなさを感じた。
P125
その不穏な空気を刺したのか 日頃から私の指導方法を厳しく批判していた サクライ先生が手招きをして私を廊下を呼んだ。
夕刻と思えないほど空の色が重い 軒下には いくつもの氷柱が垂れ下がっていた。
「もしかしてやめんの?」
「はい…体調がどうしても…申し訳ありません。」
「そうか。きついこと言ってきたけど あんたには期待してたんだ。残念だ。でも 教師だけが 仕事じゃねえよ。やろうと思えば仕事なんていくらだって見つけられる。体が治ったら新しいことを始めてみなさいよ。」
・クソが。
P131
学校の帰りに 写真館 より インスタントカメラを現像してもらった。グラウンドの隅に寄せられた灰色の雪山、ネットのほつれかけた バスケットボール、校長室の前に並べられた寂し系の盆栽、家庭科室のガスコンロ。みゆきの 撮った写真は見事に全部ぶれていた。慌ててシャッターを切り、次の思い出の場所へと駆け出してしまったのだろう。その歪みの一つ一つに彼女の不器用さが映り込んでいる。
・滅茶苦茶良いシーン。この直前のインスタントカメラを渡す少女の「印刷代は自分で払え」という照れ隠しも含めて歌詞にありそうなほどに。
P155
「強い気持ちが実を結んだんだねぇ」
思わず漏れた義母の一言にごめんなさいと胸が締め付けられた。私にはどうしてもこう 授かりたいという気持ちが足りなかった。
「あの子たち あなたの状態 わかってるから電話しにくい みたいなの分かってあげてね」
「おめでたいことなのに気を使わせてしまってすいませんでした」
「生まれてからでいいのでね、「おめでとう」って言ってあげてね。祝ってあげてね」
そこまで 厄介な存在になっていたのだ。面倒な人にはなりたくなかったのに 私はもうその域にいたようだ。義兄夫婦も義理の両親も、誰も悪くない。とてもおめでたいことだし良かったねと心から思っている。子供を持ちたいと思えないこと、ちんぽが入らないという現実、それらを向き直って堂々と生きていないこと、周りに気を使わせてしまっていること、自分の中に巣食う感情全てが悲しかった。
・マイノリティ故に突撃する壁。普通に生きる人に気遣いをさせてしまったことが、自分を苦しめる。
本作の大きな要素が含まれた文章。
P166
「うちの子の体が弱いためにお宅の跡継ぎを産んであげることができず 本当に申し訳ありません。うちの子はとんだ欠陥商品でして。貧乏くじを引かせてしまい何とお詫びをして良いか」
・母は、ひどい人だと思う。この言葉は本作で最も主人公に対する厳しい言葉かもしれない。
その上で、間違った倫理観なりに善人であろうとした母の姿も共に書かれていて、私はひどく苦しさを覚えた。理解できない存在が、理解できる立場にまで近づいてきた故の感情。
P194
私 夫のちんぽが入らないのですよ。他の人のちんぽは入るのに夫のだけ入らないのですよ。夫も他の人とはできるらしいのです。そんな残酷な事ってあります?
私たちが本当は血のつながった兄妹で、間違いを起こさないように神様が細工したとしか思えないのです。ちんぽが入らないから学資保険に入れません。いっぱい 説明してもらったのに すいません。後日また お返事を、と言われても如何せん、ちんぽが入らないのですわ。子を産み、育てることはきっと素晴らしいことなのでしょう。経験した人たちが口を揃えて言うのだから 多分そうに違いありません。でも私は目の前の人が散々考え悩み 抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の育ちや背景全部ひっくるめてその人の現在があるのだから。それがわかっただけでも私は生きていた 意味があったと思うのです。そういうことを 面と向かって 本当は言いたいんです。言いたかったんです。母にも 子育てをしきりに進めてくれるあなたのような人にも。
・彼女の胸の内を全て打ち明けるためには、このエッセイ1冊分の長さになる。それを言うことは到底叶わない。彼女はそれを分かっているから言わない。
この胸の内をさらけ出したこの文章は、言いたい、という衝動にけりをつけるためのものだったのかもしれない。
彼女は自分の弱さをさらけ出す事で、他人の弱さに寄り添う様な人なんだろう。と感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこだまさんは二作品目。
読んでて身を切られるようで泣いてしまうところもあった…
私はからっぽになってしまった心を、相手は制欲を満たす。私はその人でなくてよくて、その人も私なんかじゃなくていい。…私のしていることは痛みから目をそらすために、新たな傷をこしらえるようなものだった。痛みを忘れていられるのは、ほんの少しの間だけ。何もいいことなんてないのに、ただ心と身体が無闇に汚れるだけなのに、自分と同じように荒んでいる人に会うと妙に安心した。その人を通して、自分を見ているような気がした。(p.128)
でも、私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから。それが分かっただけでも、私は生きてきた意味があったと思うのです。(p.216)