あらすじ
“夫のちんぽが入らない”衝撃の実話――彼女の生きてきたその道が物語になる。2014年5月に開催された「文学フリマ」では、同人誌『なし水』を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自伝『夫のちんぽが入らない』だ。同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落”の半生。“衝撃の実話”が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化! いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十余年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。何も知らない母は「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから」と言う。けれど、私は「ちんぽが入らないのです」と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。医師は私に言うのだろうか。「ちんぽが入らない? 奥さん、よくあることですよ」と。そんなことを相談するくらいなら、押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひっそりと生きていくことを選んだ。(本文より抜粋)
...続きを読むドラマ化決定で話題。これは著者が経験している本当の話。同じ大学に通う青年と交際を始めた主人公・こだま。だけど、何をどうやっても彼の性器が入らない。いつか入ることを夢見ながら、入らないまま二人の絆は深まっていく。18歳だった私は38歳になり、兄弟のように植物のように安心で清潔な暮らしを営むのもいいと思えるようになった。セックスをするのは当たり前?結婚して子供を産むのは当たり前?「普通」というイメージに当てはまらない幸せが、ここにある。心も体も痛い描写がたくさんありますが、痛みをユーモアに変換して生きていく強さを感じます。衝撃的なタイトルを上回る、新しい視点をもらえる作品。
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面白い
有名な少女まんが「君に届け」のさわこみたい。筆者のことを単純にたとえるならそんな感じだった。もう少し、ダークな部分もあるかもしれないけど、根本は同じ。自信はない、プラスの自己像もない、けれど健気で、純粋で、人の裏をよむことをしない主人公。
家族とも、夫とも、職場仲間とも、性の面で一夜限り共にした相手とも、不器用にしか付き合えない。
「こんな私ですみません」
という低い自己肯定感が常に見え隠れする。
この人の救いがあるところは、人を蹴落として自分をよく見せようとか、自分だけうまい汁を吸おうとか、そういう、「自分が自分が」というところが全然ないところと、ありのままをさらけだす正直さと、空想の面白さだと思う。そういうところがあるから、暗い出来事や性的なことを書いても、どこか澄んだようなほの白さがあって、すうっと読めてしまう。浮気を繰り返した過去があっても、どこか憎めない。
著者自身が必死に生きてもがいてきた事実が、痛いほど伝わってくるからだ。
夫に愛され、夫を愛している著者は「ちんぽが入らない」事実があっても決して不幸ではない。
ちんぽが入らない、子供を持たない夫婦があったって、いいじゃないか。
自分の幸不幸は決して他人には決められない。世間的な尺度がどうであろうと関係ない。私たちは人と違うけど幸せよ、そう声高に叫んでも非難されない世の中になれば、日本はもっと生きやすい国になるだろうと思った。
Posted by ブクログ
最後にこだまさんの全てが詰まっていると思った。
『目の前の人が悩み抜いて出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよと軽々しく言いたくはないのです。』
告白をしない彼との関係を続けている姉、明らかにモラハラをしてくる彼や彼の家族との結婚に進んだ親友、彼女の親友に言い寄ってきた男と結婚した親友、、
私は私にはわからない、それはおかしいんじゃないかと思った。でもそれは彼女らが悩み抜いた末の答えであり、それが必ずしもいい形で終わらなかったとしても尊重するべきなのだと自覚した。酷いことを言ってごめん、これからは気をつけるよ、と思った。
Posted by ブクログ
同じ境遇ではないのに、この方が描く登場人物たちの気持ちを感じて、胸がキュとなり涙が止まらなかった。
人生って、幸せか幸せでないか、そういう軸ではない。言い表すことは難しいけれど、生きていることの本質というか旨みというかは、こういうどうしようもないことを経験する中で、感じきって考え抜いて、自分自身の気持ちや考えに納得できた時に得られる、と思う。
この方の語り口は不思議だ。最初から最後まで変わらず淡々としているのに、すごく切なさを感じたり、声に出すほど面白さを感じたりする。
Posted by ブクログ
島崎和歌子さんが出てませんが、俺も大変だし俺以外の人も大変だ、という当たり前の事に気づかされました。
笑ったりくらったりしたページの端を折りながら読んでたら、最終的にアコーディオンみたいになりました。
Posted by ブクログ
装丁に一目惚れし、即行で手に取り
改めてタイトルを読み込んだ時の衝撃…
大変なものを見つけてしまったと
思わず周りをキョロキョロ…
しかし店員さんの手書きPOPや
試し読みサンプルによる激推しで俄然興味を持ち、
先日やっと古本屋で購入!三時間で読破しました。
話題になっているだけあり、
もう知ってる人が多いとは思いますが、
内容は全くイヤラシイものではなく
実話による著者こだまさんの切実な叫びです
文章がとても読みやすく、
こだまさんの言い回しが面白くて笑ってしまう場面も
正直多々ありました
しかし深刻な展開になると改めて感じる
"現実の残酷さ"に胸を突き刺されます。
作られた物語のような、奇跡が、全く起きないのです。
どんどん突き落とされます。
普通に生きられなかった、だけどその残酷な日々が
いつか無駄ではなかったと思える日が来る。
それだけで意味のある人生だった。
普通とは何か、夫婦とは何か、幸せとは何か、
そんな深い深いお話でした。
Posted by ブクログ
すごい、すごい、すごい小説を読んでしまいました。この題名を見た時、官能小説かと思ってしまった。違います。もうこれは純文学です。学校の先生を目指し、そして先生になってからの主人公の悪戦苦闘の日々を心苦しく読んでしまいました。こだまするほど言いたい、一気読み間違い無しの鳥肌小説、題名だけで判断してはいけない大傑作でした。
匿名
一気に読みました
タイトルがインパクトがあり、いつか読んでみたいと思っていて、やっと購入しました。文章の運びが良く、読んでいて全く飽きる事なく、大変重い悩みを読みやすくサラッと書いていて、最後まで一気に読了しました。
Posted by ブクログ
読み終えて思うのは、この本に感じるのは透明感だということ。
不思議な本すぎる。
まさに一生に一度しか書けない文章だ。(その後も書いてらっしゃるけど)
いっきに引き込まれて読み終えた。
最初は田舎もんの娘の世間知らずの流されてく様に恐ろしさを感じ、我が娘にはこうならないように口酸っぱくして躾けなければ...と、ちょっとこの本に嫌な予感を感じていた。ちんぽがはいらないっていうのも意味がわからなかった。なんかの比喩か?みたいな(後半に行けば行くほど深刻な状況を理解できた)
嫌な方向には進むんだけど、すごくその後が気になるし心配、全体的に辛いんだけど、所々に希望が光るっていうか。フラットに不幸を享受してるな、とか。
人生の濃縮青汁ジュースみたい。
それにしてもこの性格で教員という職業を選択してるのが意外だ。
賛否両論あったようで、気分悪くなったからメルカリで売りましたという意見が来たという所には笑ってしまった。
私はこの本に出会えて幸運だったな。胸糞悪くてメルカリで売るような感性じゃなくてよかった。
Posted by ブクログ
インパクトのあるタイトルで、読む前はほとんど下ネタの本かとおもったが、そんなことはない 夫のちんぽが入らないという悩みはそれぞれの悩みに置き換えられるし、人生はそれがすべてではなく、それ以外のところでどう前向きに生きていくか 悩み続けたからこそのこの人の言葉が、悩みを抱えている人の肩の力を無意識に抜いてくれるだろう
Posted by ブクログ
タイトルは衝撃的ですが、とてもいい本です。
作者の方はブログから同人誌、そして書籍化された一般の人です。
私もブログから惹きつけられて、生まれて初めて同人誌を購入したほど。
内容は作者の実話です。
事実は小説より奇なりといいますが、本当にそうだと思う内容です。
ブログが元になっており読みやすく、届いたその日に一気に読みました。
ですが、文章はとても面白く優しく切ないです。
ご本人の真面目な、真面目さ故の面白さが文章に溢れ出ているように思います。
タイトルで惹きつけておきながら、中身のしっかりとした文章力とその内容、このギャップにも魅了されます。
このタイトルのまま書籍化することにした出版社の方、さすがプロだと思いました。
Posted by ブクログ
もう、やられた。
こだまさん大好きだわ。
このタイトルでこの素晴らしい内容
まずギャップに驚き。
こだまさんの波乱万丈な人生に
「本当にノンフィクションなの?」と、
また何度驚いたか。
そして、
生徒さんのミユキちゃんとのエピソードでは涙、涙。
旦那さんとのコトにおいても
壮絶なのにユーモアもまじえて描いてあり
笑ったり驚いたりで忙しい。
人それぞれの考え方を尊重する
当たり前であってなかなかできない
このご時世。
人として大事なことが詰まった
沁みる一冊でした。
切ない想いに、、、。
この本のタイトルを耳にしたのは数年前になりますが、今回購入し、読んでみました。夫婦一緒に居る意味や、夫を支える強い精神など、また、度量の深さや生き方に
感動し。切ない想いにもかられます。一気読みしました!
とても笑えてとても泣けた
作者と同年代でとても興味深く読ませて頂きました。私は結婚し子供も育てましたが、それでも妻とはこういう物だとか母親はこうでなくてはという思いに随分と苦しめられた気がします。
作者の子供を持たないという選択肢が周りからどれだけ悪意の無い言葉や態度を取られ苦しんで来たかは想像を超える事と思います。
かつて子供を持たない友人に私もその様な事を言ってしまったのだろうと思うと後悔が絶えません。
色々な事を乗り越えてなお支え合う夫婦愛が本当に羨ましく素晴らしいなと思います。
私は結局セックスレスで離婚してしまいましたし…出来てもしなくなる、したくなくなるのならどっちが幸せか分かりませんよね。
食欲を満たす為に外食するのと性欲を満たす為に外で発散して来るのはそんなに大差無いのではとこの歳になると思います。
どんな問題にせよ、世間体や普通や一般といった物差しが多かれ少なかれ個人を悩ませる。本当はそれぞれが自分らしく生きる事こそが大事な事なんですけどね。
読んで良かった
タイトルを見て気になり購入。
間違いなく重いテーマにもかかわらず、入らない描写がどうしてもせつなく笑ってしまいました。
当たり前とされている事が当たり前に経験できない事が、こんなにもずっしりと、人生に影響してくるのだということを、見せてくれた先生だと思います。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴いた。
ずっと気になっていた本をオーディブルで見つけて早速聴いた!
全く入らない人の話かと思ったら、他の人とはできるのか…!
この本を読んで、世の中の夫婦の子供は産まない理由って、人には言えない、言いたくないような様々な理由が色々あるのかもしれないなと思った。
子供を産まないことがおかしなことと思われたり、子供を産まない(産めない)娘を、実の親が欠陥品と言ったり、夫の両親に謝りに言ったりするところは衝撃的だった。今は結婚しない、子供を産まないことも選択肢の一つと言われているのに、少し前の時代なのかもしれないけど、そんなに悪いことのように言われたり思われたりしてしまうんだ…と思った。
学校の先生も、私は学生の頃に学校の先生達を見て大変そうすぎて、絶対自分はなりたくない職業だと思ってたけど、やっぱり大変すぎると思った。
挿入しなくても、シリンジ法とか不妊治療とかで妊娠できる可能性はあるけど、薬を断つと体調が悪化してしまうのはつらいよな…
他人の人生の経験を、このように本として読める(聴ける)のはとても面白かった!
Posted by ブクログ
タイトルを見た時、私は、推察よりも先に面白さを感じてしまったのだが、読み進めて今、その真面目に取り合ってもらえなさも内包する狙いがあって作者様はこのタイトルにしたのだろうと感じた。
本作の内容は大きく分けて、
夫との関係性
仕事場での関係性
傷ついた自身を慰める行為
母との関係性
これらの部分が大きい。
傷ついた自身を慰める行為に関しては、他と質感があまりにも違い、衝撃を受けた。夫が風俗に行っている事に対し、悲しみを覚える主人公の下りがあった分、それが主人公自身に降りかかる事、内容の衝撃も相まってここだけケータイ小説読んでる気分になった。特にアリハラさんの部分やらおっさんの部分。
夫との関係性は、基本的にちんぽ周りがメインに据えられていたため、序盤以外は二人の日常的な関係性が描かれていない。
仕事で忙しく2人の関係性が取れていないのか、序盤の延長として2人だけの関係性を築けているのか。レスによる倦怠期のような日常なら、辛いが後者の方がしっくりもくる。
ただ、ここで理解のある彼、のような作中における都合のいい、しっかりとした人なら、この作品は薄っぺらいものになっていたのだろうとも思う。
仕事場での話は、辛い。
生徒との関係から精神を蝕まれていく様が辛い。ただ、その原因を作った少女を、私はインスタントカメラの下りで許してしまった。
主人公が許す場面でなおも許せなかったのはサクライ先生である。
人が限界を越えてから「あなたには期待していたんだがな。」とか言い出す。その原因の一端に自分がいるとは考えもせずその人生を過ごしていくのだろうと思うと歯噛みせずにはいられない。多分自分に酔ってその発言をしている。自分が悪人だとは毛ほども考えていない真の邪悪。それほどに許せない。
最後の部分、保険のしつこい女性に心の中で半生を振り返る下りがある。
その時の主人公はその宿命を、じたばたせず達観しているような描かれ方をしていて、強い女性として熟成している。
それは序盤、彼女が学級崩壊している場所の担任になる前に求めた強さかもしれないが、彼女の半生を共に見てきた人間からしてみれば、それは強くならざるおえなかった悲しみを含んだものに感じた。
P62
ちんぽは返り血を浴びた人殺しのように赤く染まっていた。
・真面目なシーンであるにも関わらず、面白さに拍車をかけようとしているような比喩。思わず笑ってしまった。
P93
ある日帰宅すると三角コーナーの網目の中で味噌汁に入れた豆腐とわかめが乾いていた。生ゴミボックスの中にはご飯とおかずが そっくりそのまま捨てられている。全く手をつけた形跡がない。寝坊して食べる暇がなかったのだろうか。その時はそう思ったのだが、翌日も、そのまた 翌日も、同じように朝食が無残に廃棄されていた。
・序盤以降の旦那は主人公を癒す役割にない。それは彼の苦しみから来るものかもしれないが、その原因は、と考えると、主人公に帰ってくるもので、どうにも辛い。
P111
アリハラさんは私の口に きんつば を押し込み 私に 咀嚼させてから舌を差し入れ、そのぐちゃぐちゃになった小豆を奪って食べた。その日の私は咀嚼器だった。きんつば が終わると、今度は外郎の包みを解く。名古屋をこんなふうに穢して食べることになると思わなかった。逃げ出したい。しかしアリハラさんはやめようとしない。山と向き合う時の、キチガイの目をしている。有原さんが やめないのならば私も 脱落するわけにはいかない。こんくらべ のような気持ちで付き合う。(中略)あんこまみれになった口を拭おうとすると、アリハラさんが「もう少し そのままでいて」といい 光の速さでスササササとちんぽを擦り、私の口に精液を入れた。
今私は山の代わりなのだと思った 誰かの代わりではなく 山の代理。私は花崗岩で、お花畑で、槍ヶ岳。こういう時はどうすれば良いんだろう。地鳴りを 響かせることもできない。自分の置かれている状況を深く考えないよう心を無にした。アリハラさんに犯され、精子を放たれた山を想像する。雪が溶け、新芽が萌える季節になると 各地の山頂にまかれた アリハラさんの種が一斉に膨らむ。山々が競うようにして クロネコヤマトや 蕎麦屋の電話番号を暗証し始める。山彦が身に覚えのない数字を返してきたならば それは彼が交わった山だ。
・変人だけど悪い人ではないのか...?とか考えていたアリハラさんが悪人へと変貌するシーンな上に、無情さを感じた主人公の想像が異質な世界観を描いている。異常で、印象に残るワンシーン。
そして、申し訳ないことにこのシーンに私は色気を感じてしまった。自分の意志とは無関係に憤るちんぽ。まるで見知らぬ女性に腰をガクガクする犬を止められない飼い主のような情けなさを感じた。
P125
その不穏な空気を刺したのか 日頃から私の指導方法を厳しく批判していた サクライ先生が手招きをして私を廊下を呼んだ。
夕刻と思えないほど空の色が重い 軒下には いくつもの氷柱が垂れ下がっていた。
「もしかしてやめんの?」
「はい…体調がどうしても…申し訳ありません。」
「そうか。きついこと言ってきたけど あんたには期待してたんだ。残念だ。でも 教師だけが 仕事じゃねえよ。やろうと思えば仕事なんていくらだって見つけられる。体が治ったら新しいことを始めてみなさいよ。」
・クソが。
P131
学校の帰りに 写真館 より インスタントカメラを現像してもらった。グラウンドの隅に寄せられた灰色の雪山、ネットのほつれかけた バスケットボール、校長室の前に並べられた寂し系の盆栽、家庭科室のガスコンロ。みゆきの 撮った写真は見事に全部ぶれていた。慌ててシャッターを切り、次の思い出の場所へと駆け出してしまったのだろう。その歪みの一つ一つに彼女の不器用さが映り込んでいる。
・滅茶苦茶良いシーン。この直前のインスタントカメラを渡す少女の「印刷代は自分で払え」という照れ隠しも含めて歌詞にありそうなほどに。
P155
「強い気持ちが実を結んだんだねぇ」
思わず漏れた義母の一言にごめんなさいと胸が締め付けられた。私にはどうしてもこう 授かりたいという気持ちが足りなかった。
「あの子たち あなたの状態 わかってるから電話しにくい みたいなの分かってあげてね」
「おめでたいことなのに気を使わせてしまってすいませんでした」
「生まれてからでいいのでね、「おめでとう」って言ってあげてね。祝ってあげてね」
そこまで 厄介な存在になっていたのだ。面倒な人にはなりたくなかったのに 私はもうその域にいたようだ。義兄夫婦も義理の両親も、誰も悪くない。とてもおめでたいことだし良かったねと心から思っている。子供を持ちたいと思えないこと、ちんぽが入らないという現実、それらを向き直って堂々と生きていないこと、周りに気を使わせてしまっていること、自分の中に巣食う感情全てが悲しかった。
・マイノリティ故に突撃する壁。普通に生きる人に気遣いをさせてしまったことが、自分を苦しめる。
本作の大きな要素が含まれた文章。
P166
「うちの子の体が弱いためにお宅の跡継ぎを産んであげることができず 本当に申し訳ありません。うちの子はとんだ欠陥商品でして。貧乏くじを引かせてしまい何とお詫びをして良いか」
・母は、ひどい人だと思う。この言葉は本作で最も主人公に対する厳しい言葉かもしれない。
その上で、間違った倫理観なりに善人であろうとした母の姿も共に書かれていて、私はひどく苦しさを覚えた。理解できない存在が、理解できる立場にまで近づいてきた故の感情。
P194
私 夫のちんぽが入らないのですよ。他の人のちんぽは入るのに夫のだけ入らないのですよ。夫も他の人とはできるらしいのです。そんな残酷な事ってあります?
私たちが本当は血のつながった兄妹で、間違いを起こさないように神様が細工したとしか思えないのです。ちんぽが入らないから学資保険に入れません。いっぱい 説明してもらったのに すいません。後日また お返事を、と言われても如何せん、ちんぽが入らないのですわ。子を産み、育てることはきっと素晴らしいことなのでしょう。経験した人たちが口を揃えて言うのだから 多分そうに違いありません。でも私は目の前の人が散々考え悩み 抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の育ちや背景全部ひっくるめてその人の現在があるのだから。それがわかっただけでも私は生きていた 意味があったと思うのです。そういうことを 面と向かって 本当は言いたいんです。言いたかったんです。母にも 子育てをしきりに進めてくれるあなたのような人にも。
・彼女の胸の内を全て打ち明けるためには、このエッセイ1冊分の長さになる。それを言うことは到底叶わない。彼女はそれを分かっているから言わない。
この胸の内をさらけ出したこの文章は、言いたい、という衝動にけりをつけるためのものだったのかもしれない。
彼女は自分の弱さをさらけ出す事で、他人の弱さに寄り添う様な人なんだろう。と感じた。
Posted by ブクログ
最後の一文までの前置きがぎっしり詰まっていた。
入らない問題がなければ、
そこまで深刻にならなくて済んだかもしれないことが重なって傷つき、苦しむところが辛い。
真面目で優しいところも相まって余計に辛い。
でも、そんな経験も無駄にはならないね。
今穏やかに過ごせてるといいな。
読み終わって、
何気なく発する言葉もある人にとっては
余計なお世話だし傷ついたりする。
相手の事情など全て把握できないけど、
特にセンシティブな面は気をつけよう。
Posted by ブクログ
こだまさんの名前もタイトルも知っていたけれど、何となく手に取りにくくて今になった。ふざけているのかと思いきや、真剣で重い内容だったことに驚く。色々な生き方がある。それでいいじゃないか。そう思えるエッセイだった。
Posted by ブクログ
ずっと気になっていましたが、やっと読めました。とても良かったです。最後まで読んで、タイトルにすごく納得しました。
文章も読みやすく、前半は思わず笑ってしまうほど面白かったです。
Posted by ブクログ
小説と思ってしまったけど、
これは事実でエッセイなのだ。
作者の自己肯定感の低さとか、
どんどんと堕ちていく感じとか
読んでいて気持ちが暗くなったけど
引き込まれる文章や気になる結末ですいすい読めた。
この夫婦は夫婦というよりも、
何かでがんじがらめになっていて、
仲間で
共犯者で
家族で
兄弟で
不思議な関係。
Posted by ブクログ
まぁーーーー、夫婦関係に年季が入ったヒビ割れのあるストーリーを期待したのに。序盤で、あっ、これは逆のやつ。あったかい話になるのではと不安がよぎった。
筋違いの落胆は、散々ちんぽが入らなかった結婚生活の中盤にさしかかりガッツポーズに変った。よーしきた。落ちろ落ちろ。
…もう人としてゴミだなと自分を呪う。
実際、歪みきっていても心暖まるストーリーだった。
作者の言う、身近な人にほど大切なことが伝えられない病。それを私の妻も患っている。彼女の苦しみを、この夫のように泰然と受け止められない。私も渇いているし、悔しいし力不足を散々悔やんできた。そんなダメ夫100%目線で読んでしまい、100%ブーメランで返ってきてさらに落胆。お釣りも出ない。
妻に入らず風俗で紛らわす夫に対し、それでも尽くす気持ちを捨てなかった作者はバリカンを持って夫の髪を刈る。
── 夫の頭は、カラスに食い荒らされた玉ネギのようにデコボコになった。
笑ったー。油断した。
ふと漫画家のカレー沢薫先生の夫が頭をよぎる。
なんだよ。どうしてみんな笑えるんだよ。
笑えない自分だけが置いて行かれた気分。渇き。
私も身近な人ほど大切なことを伝えられない病人だからなのか。そうなのか?
そうなのか…と1%くらい思った。
デコボコ夫婦まで、いや出来た夫まであと何冊本を読めばなれるかわからない。
Posted by ブクログ
本が出版された当時、話題になっていたのを知っていた。読みたいなーと思いつつ、なんとなく先延ばしになっていた。
ようやく手をつけ読み始めた。
止まらなかった。
はじめは、自分とは全然関係のない人の話だなあと外側から覗くように読んでいた。中盤アリハラさんのぶっ飛んだ話に驚嘆しつつ、気づいたらかつての自分の精神状態とリンクしていた。
何この本。
と、思いながら読み進めていたらまた思わぬ方向にすすんでいく。
苦しい。
苦しいけど目が離せない。
これは一つの人生。
当たり前のことは当たり前じゃない。
知らずに人を傷つけているのかもしれない。
読書はいろいろな事を教えてくれる。
Posted by ブクログ
ひりひりする。
タイトルに嘲笑い、発売当時に仲の良い先輩と「ノリで」買ったことを覚えている。
最近、家に本を置く場所がなくなってきて、整理していたときに久しぶりに手に取った。
「もうこんなふざけたタイトルは手放そう」と思い、最後にどんなんだっけと読み返したのがだめだった。
ああ、ひりひりする。
この作者の生きてきた人生。分からないようで分かる、異常なようで、誰にでもありうる普遍的な生きづらさ。「普通」という呪いにとらわれて苦しむつらさ。
「どうしても入らない」という精神性。家族との関係。
そして、最後の手書きの迫力。
誰の人生もみな、「名作」になるのかもしれない。ひっそりと耐えて生きてきたこの人のように。
読み終えた後にはやっぱり、まだ家に置いておこうと思わされた。
(そして再読すると、あの時は知らなかった乗代雄介さんの名前があとがきに載っていて驚いた。いまや芥川賞ノミネート作家…!)
誰にも悩みはある
タイトルからして中々購入出来ないでいましたが今回思い切って読んでみることにしました。リアルにタイトルどおり現実の悩みを抱えて生きてきた内容でした。誰にも相談出来ず仕事でも心が崩壊してしまいそうな出来事があってもなんとか踏ん張ってきた作者を応援したくなりました。夫婦には他人には分からない様々な悩みがあるものです。自分の人生は自分だけのもの!楽しく謳歌させなくては勿体ないとつくづく考えさせられました。
Posted by ブクログ
壮絶ですね。
面白おかしく書いていますが、どうしようもない現実とどう向き合うか。そして心の弱さが生々しい。
客観的な書き方なので、すらすら読める作品でした。
Posted by ブクログ
タイトルとは裏腹に、重たい内容でした。でも、文調はわかりやすく、楽しく、ニヤリとさせられる表現が散りばめてあって一気に読めました。私も結婚して15年。子供なし。人ごとではなかったので共感を覚えました。
仕事に行き詰まっていたり、夫婦のあり方に悩んでいる方にオススメです。ただ、内容がリアルすぎて苦笑、の連続でした。この感覚、昔あったよなぁという照れくさいような、呆れたような、不思議な感覚を味わえると思います
。
Posted by ブクログ
初めてタイトルを見たとき、なんて破廉恥な!という印象とともに、表紙の優しげなイメージから人間らしい弱さと暖かさを感じた。
セックスレスの問題は単にセックスをしないだけではなく、挿入できないという、夫婦において致命的とも言える問題があったんだ、と独身のわたしは気付く。
著者のこだまさんが夫さんと出会い、一度もセックスできないまま、それでも結婚に至ったというのがまず感動で。男女の関係においてセックスは重要だけれども、それ以上に心のつながりがあったのかなぁと思った。
といっても、2人の結婚生活があま〜く描かれてるわけでなく、自身の仕事の辛さや不器用さ、病んでいく姿には共感してしまった。マヒしてしまうのだ。
退職後は病に倒れ、前向きに頑張った不妊治療も続けていくことが困難になり、夫までもがパニック障害になる。
生きていれば何かしら問題にぶち当たり、うまく回避できることもあれば、まともに受けてしまうこともある。この夫婦を不器用だと笑えるだろうか。病院に行けば済む話だという人もいるかもしれないが、自己肯定感が低い著者にとって、それはハードルが高いと言える。
では、自己肯定感が低い人間が悪いのかというと、そんな風に片付けてしまうのはあまりに冷たい。
多様な生き方が増えてきているにも関わらず、結婚したら子どもができるのが当たり前という世間の考えが苦しめていることはまだまだ多い。
こだまさんはこうして表現することで、吐き出すことができているけど、もっと自分だけの殻に閉じこもって苦しんでいる人はたくさんいると思う。そういう人たちの励みになったんじゃないだろうか。
女性の性に対する前向きな表現が一歩前進したとも言える。
Posted by ブクログ
著者は20年間、
大好きな夫の ちんぽ が入らない。物理的に。
でも、初対面の汚いおっさんの ちんぽ は入るのだ。
「ねぇ、そっちは ちんぽ 入ってる?」
なんて友達に相談できるわけがないし。
葛藤と堕落を繰り返し、
夫婦の形を見つけていく実話。
タイトルに惹かれて買ってしまったのは、私だけじゃないはず。
Posted by ブクログ
こだまさんのエッセイがあまりにも面白かったので、一番最初に読んだこちらを再読。申し訳ないけど初めてのセックスシーンには笑ってしまった。でん、ででん。太鼓かーい!とは言え、なかなかの葛藤や経験をされていて読んでいてきついものがあるが、2人が決めたことを外野がとやかく言ってはいけないなと思う。人には色々な事情があるのだから。
Posted by ブクログ
タイトルから色物系かと思ったが、実話であり、文学的な内容でした。
ユーモアを交えたドラマでした。
また、少子化問題や子供のできない方の想いが込められている作品である。
ドラマ化決定。話題沸騰!
“夫のちんぽが入らない"衝撃の実話――彼女の生きてきたその道が物語になる。
2014年5月に開催された「文学フリマ」では、同人誌『なし水』を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自 伝『夫のちんぽが入らない』だ。
同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人 は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。
交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落"の半生。“衝撃の実話"が大幅加筆修正のうえ、 完全版としてついに書籍化!
いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十余年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間 に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。
何も知らない母は「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから 」と言う。けれど、私は「ちんぽが入らないのです」と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。医師は私に言うのだろうか。「ちんぽが入らない? 奥さん、よくあること ですよ」と。そんなことを相談するくらいなら、押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひ っそりと生きていくことを選んだ。(本文より抜粋)
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Posted by ブクログ
経験談や治療などの話かと思ったが、著書の半生のエッセイだった。
すらすらと読みやすい文体であっという間に読み進められる。
結局なぜ入らないのか、謎のまま終わったのがもやもやする。
Posted by ブクログ
ネットのインタビューかなんかで知った本。
18歳で出会い、そのまま結婚したものの、付き合い当初から彼のちんぽが入らない、入れても半分、痛みと多量の出血を伴う…他の人のは入る。大きさの問題か?本当に著者は悩んだだろう。加えて、仕事のトラブルからの病み、免疫系の病気…。他人だけど、勝手に幸せになってほしいと願うばかり。
おもしろかった
もう少しはやくよんでいたらいろいろと人生感もちがっていたかもなと思った。
タイトルに戸惑いがあって店頭では手にできなかったのでブックライブで読めてほんとうによかった。
考えさせられる作品だったので是非いろんな人に読んでもらいたい。
Posted by ブクログ
文章が巧い。初めて読んだときは、なんだこの人!?と、想像と違った内容に少し嫌悪感のようなものを抱いてしまったのだけれど、今になって再読してみると、ものすごく肯定的になり、最後の数行に頷いてしまった。私の受け取り方が変わったのかわからないけれど、この夫婦の答え、この人の生き方に、何も誰も関係なく人間としてただただ必死に生きてきたんだな、生きてるんだな、と感動するのみ。逃げてるようで、向き合ってきた人。でなきゃ、これは書けない。
あと、本の装丁が美しくて手放したくなくなる。あとがきのしかけも。
再読 2020.4.24
Posted by ブクログ
ちょっとだけ信じ難かったが
でもやけにリアルな感じがした。
エッセイだった。まじだった。
色々と心に来るものがあった。
どん底を持ってると人は強くなる
確かにそうだと思う。
読み終えたあと、心にズドンと重い得体の知れない物が居座っている。
あとがきはよりもっと「先」を見せてくれた。
全体的に良い本だったけど
自分はこれを読む状態ではなかったなぁと
そこだけ後悔。
元気な時、余裕がある時
また読み返してみよう。