寺山修司のレビュー一覧
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友人の紹介で戯曲集(いわゆる劇の台本)に初挑戦。
妖艶かつ淫靡な寺山ワールドが余すところなく詰め込まれた名作。
美しい表現とは対照的に醸し出される淫らな空間。
何かに酔っぱらったような感覚に襲われる表題作「毛皮のマリー」。
一方で、戯曲ならではの音楽じみた文学的表現を用いて、人の心の闇をえぐりだす技術も素晴らしい。
安保闘争を描いた「血は立ったまま眠っている」、愚かな人間家庭の堕落ぶりを神格化して描いた「アダムとイヴ、私の犯罪学」はその最たるもの。
サン・テグジュペリの名作星の王子様を独自の視点で描く「星の王子様」も魅力的だ。
戯曲集は読んだことない人も、一度は読むべき。 -
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Posted by ブクログ
著名作家陣が書いた『優駿』誌上のダービー観戦記と、それに編集部が「蹄跡」としてダービーの解説を付したものを10レース分あつめている。
何より興味深かったのは、かつては日本中央競馬会職員がレース後の記述を執筆していたこと(本書では第1章のシンザンについてがそれ)、そしてその際にハロンタイムを意識しまくった文章になっていたこと。客観的に書かざるをを得ないとしても、シンザン時代にこんなにハロンごとのラップタイムを意識していたとは。
そのあとは、競馬好きな作家(寺山修司、古井由吉)もいれば初観戦(はっきりしないが、影山圭二氏は競馬も初生観戦のよう)の人もいて、目の付け所は人それぞれ。しかし、せっかくの -
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若い頃の青臭さといったら目をそむけたくなる。夢や妄想で頭がいっぱいになって高揚したり落ち込んだり、心と体が同時に異性を求めて悶々としたり。
「コンプレックスを抱えることは普通のことなんだよね」って大人の階段を踏み外しながらもちょっとずつ昇ってる今となっては微笑しながら言える。だけど10代20代の若い頃なんて「なんだ自分だけこんなに悩んでるんだ」ってつい考えてしまう。
いつの時代でも人間の本性なんて同じなんだね。みんな一見普通に見えても、心の中はいろんな「ひずみ」を抱えている。
いやあしかし、やっぱり古臭さは否めない。どんなに新しい油も古くなると黒ずんでくる。いくらテラテラピカピカ輝いていても -
Posted by ブクログ
詩人、劇作家、映画監督、写真家等、マルチに活動し47歳で逝去された寺山修司さん。
本書は1966年に刊行された著者唯一の長編小説です。ボクシングに関わる2人の若者と、周辺の人間模様が描かれ、中心に2人の絆、友情、成長、そして逃れられない宿命を置いた物語です。
寺山修司さんといえば、1968年から連載が始まった『あしたのジョー』の主題歌の作詞を手掛け、ジョーのライバル・力石徹が死亡した際に、実際に喪主として葬儀を執り行い、弔辞を述べるという、今では信じ難い逸話もあります。
『あしたのジョー』がもつ若者の孤独、友情、挫折、再生といった普遍的なテーマが、何となく寺山修司さんの生き方と重なる