寺山修司のレビュー一覧
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著名作家陣が書いた『優駿』誌上のダービー観戦記と、それに編集部が「蹄跡」としてダービーの解説を付したものを10レース分あつめている。
何より興味深かったのは、かつては日本中央競馬会職員がレース後の記述を執筆していたこと(本書では第1章のシンザンについてがそれ)、そしてその際にハロンタイムを意識しまくった文章になっていたこと。客観的に書かざるをを得ないとしても、シンザン時代にこんなにハロンごとのラップタイムを意識していたとは。
そのあとは、競馬好きな作家(寺山修司、古井由吉)もいれば初観戦(はっきりしないが、影山圭二氏は競馬も初生観戦のよう)の人もいて、目の付け所は人それぞれ。しかし、せっかくのクライムカイザーのダービーでレースそれ自体の感想はほとんどなくてもったいないなあと思ったりも。
編集部の「蹄跡」部分が多くて、ちょっと方針がずれているというか、編集部がダービーについて色々書きたいのがメインで、それじゃあ売れないから優駿上の観戦記をつ買ったんじゃないかという気もした。著作権などの扱いは難しいのだろうが、いっそ10番勝負とせずに作家さんの観戦記だけをまとめてもらった方がよかったように思う。
なお、各レースの観戦記のあとに載っている着順表、制裁も載っていて面白い。ダイシンボルガードの厩務員さんは戒告だったのか。そして、タニノムーティエとタケホープは制裁金取られてることも知れた。また、ヒカルイマイの位置取りは本当に絶望的で、よく勝ったなと改めて思う。 -
Posted by ブクログ
若い頃の青臭さといったら目をそむけたくなる。夢や妄想で頭がいっぱいになって高揚したり落ち込んだり、心と体が同時に異性を求めて悶々としたり。
「コンプレックスを抱えることは普通のことなんだよね」って大人の階段を踏み外しながらもちょっとずつ昇ってる今となっては微笑しながら言える。だけど10代20代の若い頃なんて「なんだ自分だけこんなに悩んでるんだ」ってつい考えてしまう。
いつの時代でも人間の本性なんて同じなんだね。みんな一見普通に見えても、心の中はいろんな「ひずみ」を抱えている。
いやあしかし、やっぱり古臭さは否めない。どんなに新しい油も古くなると黒ずんでくる。いくらテラテラピカピカ輝いていても、時間がたてば劣化する。時間の暴力から逃れられるものなんて何ひとつない。時間の暴力にさらされたアンティーク小説、といってもいいと思うけど、だからといって読む価値がないなんて言わないよ。
「何かを見ないために目を閉じる奴もいるかも知れない。しかし、俺は見るために目を閉じるのだ」と禅問答のような分かったような分かんないような部分もあるけど、令和にはない世界観、空気感、「こんな時代も昔の日本にはあったんだなー」という遺伝子レベルでの懐かしさで温められたぬるま湯に、じんわりと足元を浸しているような心地良さもあるんだよね。それと、だいぶ変わってるけど憎めない登場人物たちにちょっと共感したりもする。
この小説の世界観は一過性のものかも知れない。でも人間の本質が今も昔もたいして変わんねえな、っていうありふれてるけど大切な何かがこの場所にはある。そんな気がする。 -
Posted by ブクログ
詩人、劇作家、映画監督、写真家等、マルチに活動し47歳で逝去された寺山修司さん。
本書は1966年に刊行された著者唯一の長編小説です。ボクシングに関わる2人の若者と、周辺の人間模様が描かれ、中心に2人の絆、友情、成長、そして逃れられない宿命を置いた物語です。
寺山修司さんといえば、1968年から連載が始まった『あしたのジョー』の主題歌の作詞を手掛け、ジョーのライバル・力石徹が死亡した際に、実際に喪主として葬儀を執り行い、弔辞を述べるという、今では信じ難い逸話もあります。
『あしたのジョー』がもつ若者の孤独、友情、挫折、再生といった普遍的なテーマが、何となく寺山修司さんの生き方と重なる気がします。
1960年代、新宿の猥雑な雰囲気とネオンを荒野に喩え、プロットも作成せずに即興描写による実験的手法作品とのこと。
全15話の冒頭に巻頭歌(?)が添えられ、ふんだんに名言・詩・流行歌等の引用がありますが、直接物語との関係性は? とやや困惑し‥。個人的には、その既成概念を壊すような挑発、退廃的な性、薄暗い新宿の土着文化が多い描写になかなか入り込めませんでした。泥くさいのはいいのですが‥。
寺山さんの遊び心が散りばめられ、時代と著者の考証には欠かせない作品には違いないと思います。 -
Posted by ブクログ
途中です。
こわい。不気味。
おもってたのと、、、違うんたけど。
思ってたのは、ふわふわのお砂糖のような可愛さやせつなく甘酸っぱい青春のヒトコマ。
男性が少女に抱く幻想をとことんなりきって自由に描いた女の子らしい女の子。
トイレに行くたび少しずつ読んでいる。
短時間だけど一瞬でこの世界に飛び立てる、というか、飛び込んでしまう。
短い言葉だけど、頭の中にイメージが鮮明に湧く。
すごい。
でも、こわい。不気味。残酷。
何か心を動かされることもなくはっとすることもなく、全ては完全なるフィクションで世界に浸るためだけのもののように感じる。
実益がない感じが私にはするのだが、それこそが、文学性なのか。
よく分からないけれど、まだ何かに期待しながら、違う本と取り替えることもなくトイレに行くたび、読み続ける。