百田尚樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
主人公のマリアはオオスズメバチのハタラキバチ。夏の終わりに生まれ、巣が終焉を迎える秋の直前まで生きたドラマチックな人生が描かれている。闘争本能に突き動かされて他の虫を狩りながら、ちらっと他の虫と比べて自分の人生とは何かと頭をかすめる。もしも生き物を擬人化するとすると、このくらいなら許されるのかなと思われる。オオスズメバチの生態や遺伝的特性など、これだけ科学情報を盛り込んで物語になっているのがすばらしい。
社会性昆虫は、子どもを産まずに自分の妹の世話だけに明け暮れてわれわれの間隔からは理解しづらいが、社会全体が一つの生き物だと考えると、納得がいく。これは以前、働かないアリがたくさんいて、その方が長生きだということを知って感じた。1個体ごとの人生だと思うと、一生懸命働くと危険にさらされて命を縮めるのが納得いかないけれど。 -
Posted by ブクログ
知人が絶賛して進めたので読んでみました。予想していた範囲の内容でまあまあでした。
主人公の祖父が終戦を迎える一週間前に戦死した。何故、家族の為に生きて帰ることに執着した祖父が特攻部隊に加わったのか。主人公が祖父はどんな人だったのかを調べる話。
やはり戦争体験者みずからの文章と、体験者からの伝聞の文章との違いを考えてしまう。世に多くの戦争体験者の方々の本が出版されている。体験者達の文章は、どんなに辛く厳しい戦時中でさえも、不思議な強さと明るさ、ユニークさが現れて、人間の人間らしさがにじみ出ている。
ところが、非戦争体験者が描く文章は、ただただ悲惨さを訴えるだけ。人の逞しさ、本当の強さ、国の為に死ぬ覚悟ができていても人としての本能は生きようとする行動をとってしまうこと等がやっぱり表現できない。
そういう意味で、良い小説でしたが、やっぱり戦争を知らない人が描いた文章だということで、表面ごとばかりという印象でした。
ただ、戦争について知らない人達にとっては、興味を持つとっかかりになるという面で、ヒットして良かったなと思う。 -
Posted by ブクログ
3カ月近くの予約待ちでようやく読むことができた作品です。
小説家、物書きになりたい人の自尊心をくすぐり、
「自社でぜひ本の出版を!」と持ちかけて、自己負担をさせて
本を出版するという詐欺にも近い商業方法。
丸栄社の敏腕編集者・牛河原は、口上手褒め上手な営業方針で
着々と犠牲者(?)を出して利益を上げていました。
やがてよく似た商業方法で設け出したライバル会社が現れて・・・・
小説と金儲けを考えると
嫌でもこのような経営方針が出てきてしまいますね。
ペテン師かと思うような牛河原ですが、
小説に対する考え方や出版業界の内部については、
なるほどと思う鋭い感性を持っていました。
5章の「小説家の世界」では、
牛河原と部下の荒木の会話の中から、
近代小説と出版業界というものがよくわかりました。
ベストセラー小説のほとんどが映像化作品、
SNSで自己表現できる喜びを覚えた日本人、
小説家ではなく、物書き志望者が増えた、etc。
自分のことを言われているような、自分もワナにはまりそうな・・・。
なんだかとても耳に痛い会話です。
この会話、作者の考えがかなり入っているのかなと思いました。
本を出版するということは、作者の言わんとすることを形にすることで、
いわば、作者の「夢」を出版するということになります。
多少、薄汚いやり方をする牛河原ですが、
その本質は、売れる売れないは二の次として、
本当に読んでほしい原稿を本にしたいというものでした。
そして、本好きな一読者としては、
本当に胸のすくようなありがたいラストが待っていました。
これから先、日本の出版業界がどうなるのか、
ふと、不安を覚えましたが、読む本を選ぶのは読者です。
裏でどんな操作をしようとも、人の心を掴む作品はやっぱりいいのです。
そんな作品を、どんどん自分でも見つけていければいいなと思います。
牛河原が「夢を売る」なら、読者は夢を選びましょう!