佐伯啓思のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレただの時事評論にあらず。重厚な思考の形跡を伺わせるような評論です。(本来そういうものなのかな)。
時事の出来事に併せるように顕現してくるものは
かつて見た光景・・・ヒトは進歩というものがないらしい。
すべてに於いて「既視感」を覚えるのか。
いまさら追加執筆が求められるのは、大衆が健忘症を煩っているからだ。
そして売れる・・・。
既に古典内でしつこいくらいに語られている。
その引用と現実の事象を照合させるだけだ。
筆者はため息をつきながら執筆しているのだ。
また、資本主義の本質について納得させるものがある。
嘗ての著書「資本・欲望・なんだっけ」でも詳しく解説されていましたが
改めてアベノミクスと -
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西欧近代の民主主義の発展とその課題について、哲学・社会学・宗教・心理学等の著名人の所説をもとに、独創的な見解を主張してあり、ためになります。▼ルソーの考えでは社会契約論において「一般意思」は個人の「特殊意思」や「全体意思」ではなく、すべての人が共通に持つ利害や関心などであり、抽象的で根源的なもの。「一般意思は代表されえない」という。しかし通常は人民の意思はだれかに代表せざるを得ない。一般意思には絶対的な主権性が与えられているため、代表者は一般意思のもとにあらゆることが可能になる。すなわちルソーの根源的民主主義は、それを実現化しようとすると、独裁主義、全体主義に陥る。現にそれをやったのがフランス
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あとがきで、佐伯啓思氏ご自身が「本書で、うねうねとあぜ道を歩くかのように論じことを、もう少し体系的に論じたいと思うけれど…」と書いているように、読者の一人としては、自問自答の軌跡を歩かされた疲労感が半端ない
佐伯啓思氏は、あぜ道と言っていますが、一人の読者としての感想としては(実際には残りのページ数が少なくなっているのに)体感的には、いつまでたっても頂上に近づいていないように見える登山のようでした(ワインディングロードという意味です)。
…しかし、マイケル・J・サンデル教授の<正義>とは何か?という問いと同じように、答えのない(コンテキストによって変化せざるを得ない)課題に果敢に挑み -
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憲法・民主主義・自由・平等・基本的人権・博愛などなど、結局、すべて西洋発の「観念」を日本社会が受け入れ、借り物として運用しているか、という自覚が必要だろうと筆者は言う。
このようなことは、一貫して述べられている。
一神教であるユダヤ・キリスト教が育んできた価値観、その前のギリシャ・ローマの価値観からなる、西洋社会の価値観と、日本人が歴史的に育んできた価値観とは、根源的に異なるものであり、彼らが構築した、憲法・民主主義・主権なる観念をきちんと分析し、もうそろそろ日本人の歴史観・自然観・死生観にあった政治制度を作るべきだろうということだ。
しかしながら、ギリシャの民主制度でソフィストが行ってきた政 -
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西欧発の、観念・価値観「民主主義」なるものを明治以来日本社会は、一応、その姿を追いながら、国家としてのあるべき理想を求め歩んできたようだ。
だが、われわれは、民主主義あるいは、その根底を支えるとされている憲法について真剣に考えてきたのだろうか?
佐伯氏は、戦後70年で露呈したのは「憲法」「平和」「国民主権」を正義とするのは欺瞞と醜態だったと喝破する。
安保体制、無差別テロ、トランプ現象、直近の出来事から佐伯氏が本質を鋭く衝いたものであり、知的刺激に満ちた本格論考でありました。
内容ですが、
第1章 日本を滅ぼす「異形の民主主義」
第2章 「実体なき空気」に支配される日本
第3章 「戦後70年・ -
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私自身は、イデオロギーやそれを軸とした経済システム、法体系というのは、人間の支配欲から成り立ち、それを統制するべく形成されたという立場である。著者は、経済史家のブローデルによりなされた資本主義と市場経済の区別を用いながら、資本主義の形成を、欧州が中東の舶来品を入手したいとする欲望から順を追って説明する。カール・ポランニーによる欲望の交換などの考察からすれば、些か手順に飛躍があり、資本主義の存在そのものを文明国に限った断定的な感が拭えないが、前提が受け入れさえすれば、著者の考察は理解しやすく、馴染みやすい。
また、欲望の条件は、客体に距離のある状態、すなわち分離された対象に価値を自覚する事、と -
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月刊「新潮45」連載の「反・幸福論」の5冊目の新書である。
第6章 福沢諭吉から考える「独立と文明」
第7章 トマ・ピケティ『21世紀の資本』を読む
第8章 アメリカ経済学の傲慢
第9章 資本主義の行き着く先
第10章 「がまん」できない社会が人間を破壊する
が印象的でした。
佐伯氏がよく言う、「パースペクティブ」でもって彼が終始一貫して主張してきた現象が経済社会で生じている。
そして、その指摘した現象をアメリカの学者が本を出している。ポール・ロバーツの『「衝動」に支配される世界』読んでみようと思います。
また、ピケティを読まずとも、佐伯先生が、概略を説明してくれている。
助かります(笑)。 -
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『「希少性の原理」による経済学の発想は、基本的に間違っていることになる。「希少性の原理」とは、繰り返すが次のようなものだ。
無限に膨らむ人間の欲望に対して資源は希少である。したがって、市場競争によって資源配分の効率性を高め、また、技術進歩などによって経済成長を生み出すことが必要となる。
……
だが、もしも私がここで述べてきたような「過剰性の原理」が支配しているとすればどうなるか。「過剰性の原理」は次のようにいう。
成熟社会においては、潜在的な生産能力が生み出すものを吸収するだけの欲望が形成されない。それゆえ、この社会では生産能力の過剰性をいかに処理するかが問題となってくる。』
佐伯先生 -
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最近の与党・自民党の動きを見ていると、あれ、民主主義ってこういう事だっけ?と思ってしまいます。確かに選挙で選ばれた以上、比較的多くの「民意」が反映されているはずなのに。
そもそも「民主主義」ってなんだ?
と、いうところに立ち戻って考えると、それは想像以上に困難で過酷なものであるようです。
「民意」がひとつであれば問題ないのですが、実際にはそれは各個人の欲望や損得勘定の自由な発露であり、国家の主権者たる国民同士での主権争いに他なりません。かつて絶対王政などのわかりやすい「打倒すべき権力者」が同じ国民となってしまったのが近代民主主義国家であると。
ホッブズの国家契約論に遡ると、「国民主権国家 -
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月刊「新潮45」の連載をまとめた本。
内容は
第1章 時代閉塞をもたらしたもの
第2章 空気の支配
第3章 正義の偽装と「ミンイ」大合唱
第4章 領土を守るということ
第5章 成文憲法は日本人の肌に合うか
第6章 「石原慎太郎」という政治現象
第7章 「維新の会」の志向は天皇制否定である
第8章 「国民主権」という摩訶不思議
第9章 「経済学」はなぜ信用されないのか
第10章 「皇太子殿下、ご退位なさいませ」が炙り出し
だしたもの
第11章 「砂漠の経済学」と「大地の経済学」
となっている。
どの章も、著者の経済学を出自としながらも、幅広い人間学を基礎とした造詣の深い言葉に操