あらすじ
トランプ大統領誕生とポピュリズムの嵐に驚いてはいけない。ウソとハッタリこそが、民主主義の本質である。憲法、日米同盟、国防、ポスト真実──稀代の思想家が現代日本の欺瞞を撃つ。私たちは何を捨て、何を守るべきか。
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Posted by ブクログ
先に読んだ 「欲望」と資本主義 という本が面白かったので連続してこの人の本を読んだ。民主主義から主権、憲法へと流れる論考は大変スムーズで、これまでの憲法議論をバカバカしく思わせてしまうようにも受け止められるが、決してそうではなく批判をせずに自身の論拠を述べている。僕にとってはとても読みやすく、気持ち良く読めた。
【日常生活の中でわざわざ「自由」や「平等」、「権利」などという言葉を使わずとも、他人との会話の仕方、喧嘩のおさめ方、権威あるものとの接し方、金銭の使い方など、ほとんど習慣となった形でやりくりするのです。こういうことは特に政治的な主題になるわけではありません。しかしある社会における政治のあり方は、こうした習慣と不可分なのです。】【もっとはっきりと言えば、ギリシャの風土のなかで誕生し、キリスト教文化のなかで整えられた西洋の民主主義や主権や憲法(立憲主義)の概念を、日本という異なった文脈に持ち込んでもなかなか上手く機能しない、ということです。】
「神」−「モーセ」−「民」の契約の話と上の引用部分は妙にしっくりくる。こういう憲法論議を進めて欲しいと思った。
Posted by ブクログ
濃い書籍だわ・・・時事評論思うておったら大間違いやぞ。
佐伯氏の思想が随所に炸裂しておる。
10年以上かければ、ワシのような阿呆でも読み方を
覚えるもんやな。いつの間にかお迎えが近うなってしもたわ
もうちょい深い読み方できんかな
Posted by ブクログ
憲法・民主主義・自由・平等・基本的人権・博愛などなど、結局、すべて西洋発の「観念」を日本社会が受け入れ、借り物として運用しているか、という自覚が必要だろうと筆者は言う。
このようなことは、一貫して述べられている。
一神教であるユダヤ・キリスト教が育んできた価値観、その前のギリシャ・ローマの価値観からなる、西洋社会の価値観と、日本人が歴史的に育んできた価値観とは、根源的に異なるものであり、彼らが構築した、憲法・民主主義・主権なる観念をきちんと分析し、もうそろそろ日本人の歴史観・自然観・死生観にあった政治制度を作るべきだろうということだ。
しかしながら、ギリシャの民主制度でソフィストが行ってきた政治論争の手法は、あくまで、空虚の議論に陥ってしまう。論争の手段であるロゴスとは、構造的にそうなってしまうという。特に、開かれた「場」における論争は大いなる嘘の積み重ねとなってしまう。
結局、ソクラテス・プラトンが守ろうとした政治の対極にある哲学的思考・論争が重要となってくる。
最後に、究極の主権者たる一個人が歴史観・死生観・自然観を共有しながら、ユーモアや皮肉にまぎれて、なかなか公然とはいいにくい本心を伝える会話空間をその社会がきちんと持っているのかがもっとも大切なことだと締めくくっている。
蛇足で申し訳ないのですが、現代におけるあまりにも皮相的で・刹那的で・享楽的な情報流通空間に身を置けば置くほど、人生つまらなくなるので・・・(涙・笑・・・)