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無縁社会の何が悪いのか。遁世も悪くない。「ポジティブ」がそんなに善いのか。格差是正なんて欺瞞だ――。権利や豊かさや便利さを追求し「幸せになるべき」と刻苦勉励してきたはずの日本人が今、不幸の底に堕ちている。大震災、政権交代、「正義論」ブームなど近年の出来事を稀代の思想家が厳しく見つめた時、偽善の殻に包まれたこの国の正体が露わになる。柔らかい筆致の中に、日本人の禍福の真理が詰まった至高の啓蒙書。
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Posted by ブクログ
全て然りと思う論理性。民主党政権時代の虚無感、東日本大震災直後によくここまで予測できた。メディア関係者も必読書。
日本の思想の碩学による東洋西洋の哲学、宗教、歴史認識を踏まえた、なぜ日本人は幸福感を感じられないのか、それは幸福になる「べき」との価値が共有されてしまったことにあると解き明かす、知的刺激溢れる良書。
いつわりの平和ボケをしている日本社会に対し、ギリシャ・西洋哲学、日本人の仏教観から深く掘り下げられた論理で、真の幸福とはなんぞやを問いかけた著作である。 プラトンとアリストテレスの言説の違い、ニーチェ、ハイデガーの言わんとしたこと。 法然の宗教革命の覚悟、鈴木大拙の考え方。 すべて、目から鱗で...続きを読むした。
幸福を強迫観念の視点と絡めて面白かった。ルサンチマンの話も説得力がある。 仏教のところは話が難しかった。
「幸せはこういうもんだ」と言われて「そうですよね」と返せるのならこんな簡単な話はない。それぞれにとっての幸せを考えるうえで、大事なヒントをくれる本だと思いました。
「幸福」そのものにかかる考察の部分は、その結論が現在の状態を下げて満足すべき、とする点で、その過程にかかわらず得心がいかないが、政治状況にかかる考察については、2014年の現在からしても、未来を的確に、そして深く鋭く言い当てており、さすがの一言。
戦後から現在に至るまで日本社会で支配的だった「功利主義」と「リベラリズム」に向けられた懐疑。輸入された概念をそのまま模倣するだけではなく、現代日本人はいかに生きるべきか「自前の議論」をしようではないか、と著者は呼びかける。 戦後の近代化の流れの中で日本人が失ったものは多い。 ふるさと、家族、死を基...続きを読む準として生を見る死生観、習俗、自然への畏敬、無私という意味においての「他力本願」……etc. いずれも「近代化」や「戦後進歩主義」がもたらしたものだと著者は言う。現代人はこれらを捨て去ることによって「よりよい生活」を手に入れてきたわけだが、災害や「孤独死」に直面したとき、ほころびが生じ、矛盾は露呈する。 現代日本人は、これからも「成長」を目指すのか、「脱成長」へ転換するのか、価値観の選択を迫られている。 ニーチェが説いた「ルサンチマン」と民主主義の腐敗の関係を説いた最後の章が興味深い。 著者は「ルサンチマン」が社会を動かす原動力の一つであることを認めつつも、民主主義社会において「悪しきルサンチマン」は政治を常に客体化し、権利だけを追求する無責任な国民を生むと説く。曰く、民主主義の中には屈折した精神が潜んでいる。我々はひとまずそのことを自覚しなければならない、と。 事実、「悪しきルサンチマン」をもった国民は民主党政権を生み、民主党は「反・権力の権力者」という矛盾した存在がたどるべき当然の結果として、おのずと腐っていった。 (個人的にはジョージ・オーウェルの『動物農場』を思い出した。)
「利益」「権利」の最大化が幸福をである、と考えるとたぶん人は幸せにはなれない、 そのことを「論理」的に語っている本とも言えます。 あと、ポジティブシンキングをボロクソいってます(笑) イラク戦争はブッシュ元大統領のポジティブシンキングが原因だとも。 あと、喜怒哀楽では「哀」を大切にすべき、という...続きを読むのも共感しました。 「不倫は文化だ」ではないですが、 「哀」がなければ文化は生まれないと僕は思っているので。 連載をまとめたもので、9章にわかれていて、それぞれの章が別な切り口で 深く考えさせられるので、簡単には書評はかけません。 ただ言えることは、この本を読んでなお、僕は人が目指すべきものは「幸せな生」だと思います。 そもそも「幸せ」ってなんだ?ということを考えさせられる本です。 考えさせられる本であって、答えは書いてありません。
久しぶりの佐伯さん。読み飛ばしたくないと思いつつ先を急ぐように読んだ。 「人は誰でも幸せになれるしなるべきだ」に異議を唱える。 幸福は有難いこと=滅多にないことであり、プラスである。基準=通常時を幸せな状態ではなく不幸で思うようにならないこの毎日におきなさい、という。 もちろん、お坊さんのような人生...続きを読む訓ではなく、思想史をたどって理屈っぽく言う。ただし、箸で重箱隅ではなく、弓矢で的とでも言おうか、スカッとした理屈なのが楽しい。 本書の元になった連載の最中に東日本大震災があったのだけど、あの震災を挟んでも論旨をまったく変える必要がなく、むしろ、震災後のために前から書かれたと言いたくなるほどの射程の長さブレなさが格好いい。
利益と権利の追求というこれまで幸福の素であったものがいまやそうではないという逆説的な反幸福論です。確かに転換期がきていることは自明の理ですが、我々個人が今後何を是とするのか考察・議論が必要です。若い人たちがどう考えているのかも聞きたいところです。
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