【感想・ネタバレ】反・幸福論のレビュー

あらすじ

無縁社会の何が悪いのか。遁世も悪くない。「ポジティブ」がそんなに善いのか。格差是正なんて欺瞞だ――。権利や豊かさや便利さを追求し「幸せになるべき」と刻苦勉励してきたはずの日本人が今、不幸の底に堕ちている。大震災、政権交代、「正義論」ブームなど近年の出来事を稀代の思想家が厳しく見つめた時、偽善の殻に包まれたこの国の正体が露わになる。柔らかい筆致の中に、日本人の禍福の真理が詰まった至高の啓蒙書。

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Posted by ブクログ

全て然りと思う論理性。民主党政権時代の虚無感、東日本大震災直後によくここまで予測できた。メディア関係者も必読書。

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2016年11月30日

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日本の思想の碩学による東洋西洋の哲学、宗教、歴史認識を踏まえた、なぜ日本人は幸福感を感じられないのか、それは幸福になる「べき」との価値が共有されてしまったことにあると解き明かす、知的刺激溢れる良書。

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2012年04月20日

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いつわりの平和ボケをしている日本社会に対し、ギリシャ・西洋哲学、日本人の仏教観から深く掘り下げられた論理で、真の幸福とはなんぞやを問いかけた著作である。

プラトンとアリストテレスの言説の違い、ニーチェ、ハイデガーの言わんとしたこと。

法然の宗教革命の覚悟、鈴木大拙の考え方。

すべて、目から鱗でした。

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2012年02月06日

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幸福を強迫観念の視点と絡めて面白かった。ルサンチマンの話も説得力がある。
仏教のところは話が難しかった。

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2019年09月12日

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「幸せはこういうもんだ」と言われて「そうですよね」と返せるのならこんな簡単な話はない。それぞれにとっての幸せを考えるうえで、大事なヒントをくれる本だと思いました。

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2014年05月20日

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「幸福」そのものにかかる考察の部分は、その結論が現在の状態を下げて満足すべき、とする点で、その過程にかかわらず得心がいかないが、政治状況にかかる考察については、2014年の現在からしても、未来を的確に、そして深く鋭く言い当てており、さすがの一言。

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2014年03月02日

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戦後から現在に至るまで日本社会で支配的だった「功利主義」と「リベラリズム」に向けられた懐疑。輸入された概念をそのまま模倣するだけではなく、現代日本人はいかに生きるべきか「自前の議論」をしようではないか、と著者は呼びかける。

戦後の近代化の流れの中で日本人が失ったものは多い。
ふるさと、家族、死を基準として生を見る死生観、習俗、自然への畏敬、無私という意味においての「他力本願」……etc.

いずれも「近代化」や「戦後進歩主義」がもたらしたものだと著者は言う。現代人はこれらを捨て去ることによって「よりよい生活」を手に入れてきたわけだが、災害や「孤独死」に直面したとき、ほころびが生じ、矛盾は露呈する。
現代日本人は、これからも「成長」を目指すのか、「脱成長」へ転換するのか、価値観の選択を迫られている。

ニーチェが説いた「ルサンチマン」と民主主義の腐敗の関係を説いた最後の章が興味深い。
著者は「ルサンチマン」が社会を動かす原動力の一つであることを認めつつも、民主主義社会において「悪しきルサンチマン」は政治を常に客体化し、権利だけを追求する無責任な国民を生むと説く。曰く、民主主義の中には屈折した精神が潜んでいる。我々はひとまずそのことを自覚しなければならない、と。
事実、「悪しきルサンチマン」をもった国民は民主党政権を生み、民主党は「反・権力の権力者」という矛盾した存在がたどるべき当然の結果として、おのずと腐っていった。
(個人的にはジョージ・オーウェルの『動物農場』を思い出した。)

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2013年05月28日

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「利益」「権利」の最大化が幸福をである、と考えるとたぶん人は幸せにはなれない、
そのことを「論理」的に語っている本とも言えます。

あと、ポジティブシンキングをボロクソいってます(笑)
イラク戦争はブッシュ元大統領のポジティブシンキングが原因だとも。

あと、喜怒哀楽では「哀」を大切にすべき、というのも共感しました。
「不倫は文化だ」ではないですが、
「哀」がなければ文化は生まれないと僕は思っているので。

連載をまとめたもので、9章にわかれていて、それぞれの章が別な切り口で
深く考えさせられるので、簡単には書評はかけません。

ただ言えることは、この本を読んでなお、僕は人が目指すべきものは「幸せな生」だと思います。

そもそも「幸せ」ってなんだ?ということを考えさせられる本です。
考えさせられる本であって、答えは書いてありません。

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2012年04月11日

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久しぶりの佐伯さん。読み飛ばしたくないと思いつつ先を急ぐように読んだ。
「人は誰でも幸せになれるしなるべきだ」に異議を唱える。
幸福は有難いこと=滅多にないことであり、プラスである。基準=通常時を幸せな状態ではなく不幸で思うようにならないこの毎日におきなさい、という。
もちろん、お坊さんのような人生訓ではなく、思想史をたどって理屈っぽく言う。ただし、箸で重箱隅ではなく、弓矢で的とでも言おうか、スカッとした理屈なのが楽しい。
本書の元になった連載の最中に東日本大震災があったのだけど、あの震災を挟んでも論旨をまったく変える必要がなく、むしろ、震災後のために前から書かれたと言いたくなるほどの射程の長さブレなさが格好いい。

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2012年04月03日

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利益と権利の追求というこれまで幸福の素であったものがいまやそうではないという逆説的な反幸福論です。確かに転換期がきていることは自明の理ですが、我々個人が今後何を是とするのか考察・議論が必要です。若い人たちがどう考えているのかも聞きたいところです。

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2012年04月02日

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これからの日本の行方を考えていく上で、欠かせない一冊。日本人は一度「幸福」というものを考えてみるべきだと思う。

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2012年03月14日

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先日読んだ安冨先生とは逆の学歴の東大卒、京大教授の著作。新潮45に連載されていたものをまとめたもの。同じ事象でも見方が違えば自ずと考え方も異なってくるが、、、個人的にはこちらの方が読みやすく、納得しやすい。
加賀乙彦先生のように、震災のような「無意味さ」から人を救い出すものは、宗教(的なるもの)P176とするのは当然の帰結か?
まさに末梢だが、文の最後に「ですます調」以外が混ざっていて、統一感がないのが気になった。

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2012年03月09日

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五木寛之「下山の思想」の延長線上にある本。
現代日本人の幸福観を宗教、思想から解き明かす。

面白かったのが、「第五章 人間蛆虫の幸福論」。蛆虫と書いて、ウジ虫と読む。これが、あの福沢諭吉のことばだというのだからビックリ。

「宇宙という広大な視点から自らを見れば、人間などは無知無力で見る影もない蛆虫のごときもので、・・・だが、この世に生まれた以上は、蛆虫とはいえそれなりの覚悟が必要である」

あの一万円札のおじさんが自らを蛆虫と称し、蛆虫なりに生きていくことの必要性を説いている。そうか、万券ですら蛆虫なんだ。だったら、オイラは小蝿ぐらいか。何だか気分が楽になるね。小蝿なりに生きればいーじゃないか。


ポジティブシンキングや、他人と比較する幸福の不幸さなど、面白いところはいくつもあるのだが。特に秀逸なのが、先述の第五章。ここだけでも買う価値あり。

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2012年02月10日

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脱原発は脱成長。確かにその通りだと思いました。これ以上開発、成長、負けたくない、で成長ばかり目指してよいのか疑問です。資源を食い尽くして、隣国を不幸にして、自分だけ幸せで、それが幸せなのか?目指すべきところなのか?そう考えるとニヒリズムが頭をもたげてきますね。次はニヒリズムについて考えようと思う一冊でした。

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2024年10月17日

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以前読んで、本棚にしまってあったが、本棚の整理の際に読み直してみた。

特に第4章で語られる生と死のどうしようもない断絶というのが、最初に読んだ時にはなるほどと思ったが、今回読み返して感想が変わった。

というのも、平野啓一郎氏の「私とは何か 「個人」から「分人」へ」で語られる「分人」という概念を用いると、必ずしも断絶とは言い切れないからである。

Aさんが死んでも、Bさんの中のAさん向けの分人は残り、Bさん全体に影響を与え続ける。そう考えると、自分の死後も自分の存在の影響は残るわけで、そのことも頭の片隅において生きていきたいと思った。逆に大事な誰かを失ってしまったときには、その人の存在を胸に生きていきたいと思う。

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2021年08月24日

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新潮45への連載したエッセイという事で一つ一つのテーマは気を引く仕立てになっているが、中々頭に残らない。幸せとは何か、という事については、この本を読むよりは自らの価値観を改めて見つめ直す方がよっぽど有意義かもしれないし、その自分自身の価値観のフィルターがあるから、すんなり頭に入らないのかも。

幸福とはなんだろうか。感覚で実感する幸福感などは、所詮、言葉で定義すべきことではないのかも知れない。

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2018年03月03日

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尊敬する思想家の書籍。尊敬していたが正しい。もう身体が右翼的な考え方を吸収しなくなってきている気がする。保守派卒業。これからは中道右派ってことで。

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2013年05月28日

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今の日本では所謂マイノリティに分類される人が、なんとなく思ってはいるが論理的に説明できないもどかしさ、というものをある程度わかりやすく解説している良書だと思う。さすがに知識量が豊富すぎてわかりにくい所もあるが、他の著作も読んでみたくなった。

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2013年02月02日

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様々な幸福に関する哲学が紹介されているけど、結局何が言いたいのか不明。幸せって何?って考えていく事自体が重要なのかもね。

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2012年08月20日

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★★★☆☆3

すっきりしない本だよ〜。
たくさんの引用知識で埋めつくされていて、結論が分かりにくいよ。連載を纏めた本だからこうなるのは仕方ないのかな…
ニーチェやサンデル教授もでできたけど、一番興味深かったのはトルストイの話かな。「真の生命」という概念が、アルケミストにおける「大いなる魂(だっけ?)」と似ている、繋がりがある!と思ったよ〜。
著者の主張はあまりグッと来なかったけど、引用のほうは為になる本。

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2012年08月19日

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実は震災後に石巻を訪れて以来、ずっとカントを読んでいるのですが、カントが判断力批判を書き「崇高」に辿り着いた背景にもヨーロッパの大地震があったのですね。震災後に何が生まれようとしているのか、その思潮、この本は9割、正しいと思います。残りの1割は政治的な立場によるでしょう。

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2012年06月06日

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日本人が忘れてしまった価値。人生観や死生観や自然観を見失ったために、自由を求めても、経済成長しても、幸せ感が得られない。

アメリカのマインドコントロールが解けつつあるのかな、なんて思いました。

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2013年02月23日

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日本はイエ、ムラなどの縁をなくす方向に進んで来たのだから、無縁死に行きつくのは当然という主張は切れ味のよさを感じた。

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2012年05月04日

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流して読んだところは宗教、特に仏教のところ。私はニヒリズムみたいなダークな考えで世の中を斜めに見る、ってのも好きだなと思った。震災のことや原発事故についても書いてあって、福沢諭吉のくだりが心に残った。われわれなんて小さな宇宙からしたら一時の存在であることを、時々思い出して心に余裕も作りたい。

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2012年03月16日

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人は幸福にならなければならないという脅迫観念に異議を唱える。功利主義・権利主義・公共主義から無縁社会を論じ、家族論、宗教論、技術論、政治論を説く。読んでいて、疑問を感じざるを得ないところが多い。この感じ方の差に世代間を感じざるを得ない。

世の人が「利益」「権利」による幸福を目指しているかというと、そうではないと思う。
「利益」「権利」に縛られない幸福というのが、最近流行の「絆(俺はこの言い方嫌いだけど)」であり、社会のつながりを認識することで幸福を感じる人も多いと思う。社会的起業、ボランティア、などなど。

「利益」「権利」にとらわれた前の世代の反動が今の世代なのではないか。世代間の価値観の違いについては島田裕巳「人はひとりで死ぬ」に詳しい。これが一番しっくりくる。

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2012年02月01日

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