佐伯啓思のレビュー一覧
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アリストテレスから、カント、ロールズ、ミル、バーリン、ベンサム、ウィトゲンシュタイン、ニーチェ、サンデルまで古今の哲学者を引き合いにだし自由とはどのように考えられてきたのか述べている。サンデルの『正義とは何か』を自由という視点から考えていると言っても良いかも知れない。
自分の理解の及ぶ範囲で要約してみる。
現代では「何故人を殺してはしけないか」「何故援交をしてはいけないか」といった問いに明確に答えられなくなっている。個人の選択の自由と言ってしまえばそれまでだからだ。
その価値観の基礎にあるのは個人主義、主観主義、相対主義を前提とするリベラリズム(自由主義)である。何を善いと思うかは個人の主観 -
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▼幻想のグローバル資本主義の下巻。上巻とともに手に取った。
▼ある程度経済成長が進むと「豊かさの中の停滞」を向える――現状を見る限り、ケインズの「予言」は正しいと言わざるを得ないだろう。先行くイギリスはもちろんのこと、日本もまた例外ではない。
▼グローバル化が進むと、資金が海外に流れ、国内市場が不活性化してしまう――とても耳が痛い指摘ではあるが、決して的外れな議論ではない。無規制も考えものではあるが、一方では、国内経済の魅力を高める自身の努力も必要だろう。
▼資本主義経済体制を選択した上で、自由民主主義と社会民主主義のバランスをどうとっていくか。「豊かさの中の『退屈』」しのぎに取り組んでみるの -
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ネタバレ[ 内容 ]
アメリカの金融破錠は、自由と民主主義の名の下に個人の飽くなき欲望を肯定し、グローバル化を強引に主導してきたアメリカ的価値の破錠でもあった。
それに追随し、経済だけでなく政治、人心のあらゆる局面で崩壊の危機に瀕する日本。
もはやアメリカとの決別なくして再生はありえない。
今こそ、「私」ではなく「義」を、「覇権」ではなく「和」を是とする日本的価値を、精神の核に据え直すときなのだ。
今日の危機に早くから警告を発してきた思想家があらためて問う「保守」という生き方。
[ 目次 ]
第1章 保守に託された最後の希望(簡単だった対立の構図;現状維持の「左翼」、変革を唱える「保守」 ほか)
第 -
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ネタバレ[ 内容 ]
グローバリズムとナショナル・エコノミーの対立を警告したもう一人の経済学者、J・M・ケインズ。
その現代的意義を独自の視点で再検証。
「大きな政府」がもたらす非効率的な経済ゆえに、もはや破綻したとまでいわれるケインズ主義。
しかし、ケインズが自由な市場競争主義を批判したのは、確かな基礎を持たないグローバル経済への危機感からであったと、著者はいう。
また、豊かさの中の停滞と退屈が人間を衰弱させるという、今から70年近くも前の彼の「不吉な予言」は、「自立した個人」が「経済の奴隷」と化しつつあるこの世紀末の世界で、きわめてリアリティを帯びつつある。
今、われわれがケインズから学べることは -
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ネタバレ[ 内容 ]
「市民」のためと銘打つ政党が結成され、また、外国人ジャーナリストによる官僚社会批判が「市民運動」のテキストとしてベストセラーとなる現代日本。
そこで描かれるのは、権力を我がものとする官僚VS.「市民」が主役の民主主義、という構図である。
「市民」が、単なる「都市の住民」であることを超えて、神聖な存在に祭り上げられた思想的背景とは何だったのだろうか?
戦後日本の思想の歪みを鋭く衝いた意欲作。
[ 目次 ]
第1章 二十一世紀は「市民の時代」か
第2章 戦後日本の「偏向」と「市民論」
第3章 「近代市民革命」とは何だったのか
第4章 ポリスの市民、都市の市民
第5章 「祖国のために -
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ネタバレ[ 内容 ]
自由主義市場経済の父と称されるアダム・スミス。
しかし彼は最初に「グローバリズム」について警告した人物でもあった。
スミス、ケインズの思想を問い直し、グローバリズムの本質的矛盾と危うさを抉り出す。
[ 目次 ]
●序章「誤解されたアダム・スミス」
●第1章「市場における「自然」」
●第2章「道徳の基盤」
●第3章「富の変質」
●第4章「徳の衰退」
●第5章「経済と国家」
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人 -
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ネタバレ自由という価値を無条件にまつり立てることに対して警鐘を鳴らすこの本は、タイトルの通り「自由とは何か」考えるきっかけを与えてくれます。全6章からなりますが、どの章も内容が濃縮されていて、読みごたえがあります。
著者は、自由を盲目的に礼讃することへと至ってしまう理由として、善い生を営むための自由という手段が目的化されてしまうことを挙げています…まさにこれは、現代社会における自由を再認識する上で基本的なことではありますがとても重要な問題でしょう。
個人的には、人生における失敗やうまくいかないことの合理化がこの手段の目的化を引き起こしてしまうのではないだろうか…と読みながら考えていました。よく言われ -
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[ 内容 ]
資本主義の駆動力は何なのか。
ゆたかさの果て、新たなフロンティアはどに求められるのか。
差異・距離が生み出す人間の「欲望」の観点から、エンドレスな拡張運動の文明論的、歴史的な意味を探る。
[ 目次 ]
●資本主義という拡張運動
過剰の処理としての資本主義
「欲望」についての考察
●「外」へ向かう資本主義
産業革命とは何だったのか
●「内」へ向かう資本主義
20世紀アメリカが生みだした資本主義
●ナルシシズムの資本主義
モノの意味の変容
欲望のフロンティアのゆきづまり
●消費資本主義の病理
「ネオフィリア」の資本主義
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆ -
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1993年発行でそれから17年経つけれども色褪せないのは、欲望を軸においた資本主義論だから。ウォーラースタイン的な世界史観から行くと、水野和夫氏の著書と並べて読むと面白そうだ。
オーソドックスな経済学が構築してきたデカルト的な資本主義の見方から、欲望という人間らしさを軸とした有機的な見方へと、うまく読書を連れて行ってくれる。
また、外への拡張から内への拡張という欲望の話も面白かった。19世紀の帝国主義から20世紀のアメリカ型消費者主導社会へという動き。本書では触れられなかったがその後のアメリカ文化輸出型、ブレトンウッズ体制崩壊後の金融資本主義、という内から外への動きも興味深い。
それが崩 -
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[ 内容 ]
「個人の自由」は、本当に人間の本質なのか?
イラク問題、経済構造改革論議、酒鬼薔薇事件…現代社会の病理に迫る。
[ 目次 ]
第1章 ディレンマに陥る「自由」
第2章 「なぜ人を殺してはならないのか」という問い
第3章 ケンブリッジ・サークルと現代の「自由」
第4章 援助こうさいと現代リベラリズム
第5章 リベラリズムの語られない前提
第6章 「自由」と「義」
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度 -
Posted by ブクログ
非常に共感するところが多かった。
読書メモです。
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「市民主体のまちづくり」など市民主権を宣言しているまちが多いように思われる。だけど日本で言われている「市民主権」はキレイごとを並べているだけであり、空虚なものであることが述べられている。
日本で「市民」という言葉が用いられる文脈には市民(=民主主義)が官僚(=権力)に対抗する構図がある。しかし日本人には「個人の意見」というものが確立していないため民主主義(=市民社会)が育っておらず、それが育っている欧米に比べ劣っているという感情がある。この市民VS権力という構造は、マルクスの持つ進歩史観に基づいているという。つまり古代→ -
Posted by ブクログ
戦後の日本人にとって絶対的な善であった「自由」と「民主主義」。本書はこれら自体の否定ではなく、その名の下に行われた経済、文化のグローバル化に対する警鐘であるように思う。我々日本人がその文化や伝統に誇りを持って生きていく事の大切さを訴えている。
・冷戦後の「保守」と「革新(左翼)」とは
日本では保守政党が変革、改憲を、革新政党が現状維持、護憲を唱えるという逆転現象が起こっている。
そもそも戦後体制そのものが軍国主義に対してリベラル=左翼的であったためか。その後ソ連の台頭によって反共の必要性からアメリカはより右傾化したにもかかわらず日本の体制が置き去りにされた
事が現在の歪みを生んでいるように思 -
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資本主義を「欲望」という観点から捉えて説明している。
社会主義と資本主義の違いというと、「競争があるかないか」の違いだと漠然と考えていた。
だけどそこに「消費者」が入っているかという違いでもある。
社会主義は、国が生産量・価格を決めるもので、そこに消費者の「欲望」は入ってないんだよね…
これに対して資本主義は、消費者の「欲望」がなければ成り立たない。
フォード生産方式と、トヨタのカンバン方式の違い(効率を重視か消費者重視か)、そこからトヨタがマーケティング部門に力を入れるようになったのだとか。
あと「欲望」というと、「無限」のものってイメージがあるけど、この本では逆に「過剰」っ