佐伯啓思のレビュー一覧
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佐伯啓思(1949年~)は、東大経済学部卒、東大大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、滋賀大学経済学部教授、京大大学院人間・環境学研究科教授等を経て、京大名誉教授。京大こころの未来研究センター特任教授。専攻は社会経済学、社会思想史。一般向けを含めて多数の著書あり。
本書は、月刊誌『新潮45』に連載された「反・幸福論」(2018年6~9月)(同誌はその後廃刊)に、書下ろしを加えて出版されたもの。同連載は、2010年12月から、その時々の時流を勘案したテーマを論じ、いずれも後に書籍化されているが、死生観的な論考がまとまっているのは『反・幸福論』(2012年)、『死と生』(2018年)で、本書はそ -
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経済学という科学的な装いをしているが、どうも怪しい学問について、初めて親近感を持って読めた本である。
市場原理主義者が構造改革が必要だとして行った「改革」は悉く日本人の普通の人の自信を奪い、希望を抱くことを諦め、大胆なチャレンジなんて考えない大衆に変えた。
経済学者が言ってきたことのほとんどが、日本人を幸せにしてこなかった。この本は、まずそのことを認めている点がすごい本だと思った。しかも、スミスやケインズの考えていたことの本当をわかりやすく教えてくれる。我々は、スミスこそ市場原理主義者と誤解していたし、ケインズこそ成長至上主義者と誤解している。
そんな私たちに本当の経済学をわかりやすく -
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経済学者・思想家である佐伯啓思が、月刊『新潮45』に連載する「反・幸福論」の2017年7月~2018年4月発表分をまとめたもの。同連載の書籍化は本書が8冊目で、いずれもその時々の時流を勘案したテーマを論じている。
本書は、日本が、もはやモノを増やして、生活の物質的な向上を求めるような経済段階ではない“高齢化社会”、換言すれば、長い人生の生の意味づけや、やがてすべての人に訪れる死への準備へと人々の関心が向けられるべき “成熟社会”に直面する中で、著者としての“死生観”を様々な角度から語りつくしたものである。
内容は、仏教的な死生観を中心に、トルストイが『人生論』で表した死生観のほか、三木清、ソク -
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内容
まえがき
巻頭二論
無秩序化する世界のなかで「保守思想」とは何か
「近代日本のディレンマ」を忘れた「現代日本の楽園」
第1章 価値の喪失
革命幻想の末路
「あの戦争」は風化していない
シニシズムと喧噪
「現代の危機」の本質
<無・意味な政治>をもたらすテレビメディア
マルサスの悪夢は再来するのか
第2章 意味ある生とは何か
「働くこと」の再構築
反核国家の「資格」
教育のディレンマは超えられるか
「もの」の背後にある「こと」
失われた「会話」を求めて
第3章 歴史について
回帰する歴史と漂流する歴史観
ポツダム宣言の呪縛
日本共産党への「皮肉」
戦後日本 -
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80年代のアンソロジー的な懐古はあまりに秀逸。
滲み居るように胸に刻み込んで来ます。
自分たちはこの時代の人間なんだと思うのですが。
最近大学の大掛かりなOB会で名簿を作りたい旨述べて来たのです。
そこに平成の表記はありませんでした。
自分たちこそ「平成」を実際に名乗り、この御代の終焉の
総括というか、まあなんかあるんじゃないのかなって。
西暦要求されている時点で「こいつ等とはなんか違う」そう感じました。
東京或は関東で豊かな都市文明を浴びていたのでしょう。
実家に帰りUターン就職でまさしく田舎モノになりきり意識の面で決定的な違いがある(上下ではないですよ)だろうと
彼処(都心)に居ると見喪う -
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各章が(ほぼ)独立しているので、別々に読んでも支障ない書籍。
個人的にはピケティのテーゼの解説、つまり、資本主義は成長していない、成長した時期は戦後30年程度でそれは戦後復興によるもの、まして況んや市場原理主義以降の成長率は年率1~2%程度の低成長が続いている、というのが目をひきました。
働けど働けど・・・と言った状況をデータで示してくれたと思います。
あとは、欲望の話。
忘れかけていた『欲望と資本主義』を思い出す内容で、かつそれを補足するようなことが書かれていてよかったです。
全体を通して、ポスト資本主義の人々の立脚点を、無宗教の日本で作ろうとしている力作だと思います。 -
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経済学者・思想家である佐伯啓思が、月刊『新潮45』の連載「反・幸福論」の2012年7月~2013年6月発表分をまとめたもの。同連載の新書化は、『反・幸福論』(2012年1月刊)、『日本の宿命』(2013年1月刊)に次いで3冊目。
連載の時期は、民主党政権の末期から第二次安倍政権への移行を挟んでいるが、時論に留まらずに、著者が「まえがき」で「ひょこひょこと時々の状況に応じてムードが変わること自体が問題というほかありません。そして、それこそがまさに今日の民主政治の姿なのです。・・・私には今日の日本の政治の動揺は、「民主主義」や「国民主権」や「個人の自由」なる言葉をさしたる吟味もなく「正義」と祭り上 -
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ネタバレ経済学、哲学、社会学などの見地から今の日本、世界の情勢を切ります。
ピケティなど最新のワードも登場します。
結局、経済成長は、第二次世界大戦の復興、ということにしが過ぎず、その30年を除いて一貫して資本は増殖し続け、格差は広がっている、とします。
経済税調をもたらすような新しく斬新なイノベーションはもう望むべくもない。
グーグルやFacebookは新しい価値を提供したが雇用という意味ではほとんど貢献していない。
今、技術が向かっている先は「我慢しなくてもよい世界」。そこがいくら開拓されても付加価値はなかなかついてこない。それができたから、といってそのあとの世界が成長し続けら -
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長い間、この本の刺激的なタイトルが記憶に残っていて、内容も興味深かったので読んでみた。ところが、本文では「民主主義や個人の自由も基本的には大事」とあって、だまされた感はある。ただ、前半の2章までは、保守と左翼の本来の意味、日本における左翼と保守の変遷、アメリカの保守がヨーロッパの保守とは異なることが丁寧に整理されていてわかりやすかった。
冷戦時代、左翼は革命を起こして社会主義を実現しようとする反体制派で、保守は自由主義的な資本主義を守ろうとする体制派だった。しかし、冷戦後、左翼は戦後日本の柱である国民主権、基本的人権、平和主義を守ることを主張する体制的なものに変わり、保守の側が戦後日本を変え