佐伯啓思のレビュー一覧

  • 経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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    素晴らしい。新自由主義の課題をこんなにわかりやすく的確に書いてあるものを読んだことがなかった。

    まず、流動性にとける生産要素と製品の区別。製品は流動性を上げても良いが、土地、雇用者などの生産要素はある程度安定化させないと生産が不安定となる。また雇用者の流動性についても、技能適応などが必要で時間もかかる。単純に流動性を上げれば良いというものではないとの点。議論において、生産要素と製品を分けて市場の話を聞いたこともなく、基礎的ながら理解できていなかった。

    次に財政出動したところで、実体経済や生産要素への投資でなく、金融商品への投資(投機)であれば、雇用は産まず景気も回復しない。

    小泉改悪で土

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    2025年12月14日
  • さらば、民主主義 憲法と日本社会を問いなおす

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    先に読んだ 「欲望」と資本主義 という本が面白かったので連続してこの人の本を読んだ。民主主義から主権、憲法へと流れる論考は大変スムーズで、これまでの憲法議論をバカバカしく思わせてしまうようにも受け止められるが、決してそうではなく批判をせずに自身の論拠を述べている。僕にとってはとても読みやすく、気持ち良く読めた。
    【日常生活の中でわざわざ「自由」や「平等」、「権利」などという言葉を使わずとも、他人との会話の仕方、喧嘩のおさめ方、権威あるものとの接し方、金銭の使い方など、ほとんど習慣となった形でやりくりするのです。こういうことは特に政治的な主題になるわけではありません。しかしある社会における政治の

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    2025年10月19日
  • 「欲望」と資本主義 終りなき拡張の論理

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    別の本で紹介されていて気になり、初めて読んでみた。とても面白かった。論理的なのにテンポが軽快で、資本主義と市場経済、欲望の拡張、バブル経済、豊かさの果てなどの解説は秀逸。主張ではなくてこの人なりの理解と解説。言葉の選び方や定義の仕方も気を使って書かれており大変読みやすかった。
    社会主義と資本主義との比較、消費資本主義、資本主義の歴史と産業革命、資本主義が向く方向(外・内・自分)、豊かさの果ての文化 と進めて行く中で少しも緩めずに書ききっているので、途中で止められずに読み進められる。
    時間を置いてもう一度読んでみよう。

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    2025年10月08日
  • 「欲望」と資本主義 終りなき拡張の論理

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    1993年刊だから、今から32年も前の本だ。日本が繁栄しているという前提で書かれているので、今読むと隔世の感がある。しかし、特に7章・資本主義の病理に書かれているような、自己増殖するという資本主義の本質を確認し、産業社会の行き詰まりから、人間が文化への欲望に目覚める方向にかけたいと語る著者の想いには共感する。残念なことに30年たっても、世界はあまりその方向には行ってないのだが。SNSの登場で欲望は、ルッキズムとお金により向かっている。文化も消費されている。生成AIの登場で、技術的には正確性ではなく偶然性に支配されているが、利用方法としては産業が欲望を加速させる方向に加速している。

    さて、本書

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    2025年08月21日
  • 「欲望」と資本主義 終りなき拡張の論理

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    資本主義、欲望の拡張、大衆社会、消費に対する批判を体形立てて整理してくれる本で非常に読みやすい。

    拡張を至上命題とする資本主義のもとで、欲望を生む「距離」が、外部から人間内部へと取り込まれ、メディア・情報によって開発され、現在の自分が他人からどう見られているかにしか関心がなくなっている。
    東浩紀が言っていたが、資本主義はまさに災害ですね。無論、その恩恵も被っているわけですが。

    全く詳しくないので印象論にすぎないが、欲望を文化的なイマジネーションの世界に取り戻すという点については、むしろ文化的なものすらも資本主義に取り込もうという動きが進んでるのではないかと、現代アートのオークションなどを見

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    2025年06月17日
  • 自由とは何か 「自己責任論」から「理由なき殺人」まで

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    「欲望と資本主義」以来、久々に佐伯先生の著書を読みました。

    日本で起こった事件等を契機にして、自由の定義、あり方、課題等について論じています。
    が、切り口の鋭さが相変わらずで、本当に素晴らしいです。

    ここまで広げた議論をどうやって畳むのか、途中心配になりましたが、見事に帰結させます。
    その技術も素晴らしいですが、何よりも深い洞察力、果てしなく広い知見に脱帽です。

    いまの世界、いまの日本を理解するためにもう少し哲学の世界に浸りたいと思いました。

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    2025年04月22日
  • さらば、欲望 資本主義の隘路をどう脱出するか

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    あとがきにありますが、
    本書は、2018年の秋から2022年の3月にかけて、佐伯氏が書き記してきた「社会時評」と「文明論」をまとめたものです。
    病める時代には戦役も病疫も同居するものと著者は言う。
    きれいごとが跋扈する「ポリティカル・コレクトネス」や、作り笑顔で未来の技術に希望を託するような時代精神に見合った、しかしその正義や笑顔とは正反対の現身が現れ出てくる。
    これが現代文明の実際なのであろう。
    私にできることは、せいぜい目を逸らさず、ひたすら凝視することでしかない。
    よき傍観者であるほかはない。だがそれこそが、今日、社会や思想に関わる者に課せられた態度なのである。

    ということで、
    序章「

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    2025年04月02日
  • 死にかた論(新潮選書)

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    第8章「死」とは最後の「生」である

    214頁から215頁で、佐伯啓思氏が伝えたかったことが書いてあります。
    それを紹介します。

     本書で私が提起した問題。つまり、現代人の死に方、という問題について、本書は何かしらの結論めいたものを提出したわけではない。
     ただ、「死生観」という観念からこの問題の困難さを洗い出し焦点をしぼろうとしただけである。
     あるいは、現代人の死の困難の背後には「死生観」という問題がある、といいたかっただけである。
     そして、死生観は、倫理観と同様に、多くの場合、論理的に導出できるようなものではなく、その国の歴史が積み上げてきた文化のなかに何層にもわたって重なりあい、ま

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    2025年01月12日
  • 神なき時代の「終末論」 現代文明の深層にあるもの

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     ずっと佐伯節を読んで来た私にとっては、一気に読める内容でした。
     現代日本人が日々漫然と受け取る世界の情報と言えば、戦後やむなく組み込まれたアメリカを中心とする西側諸国の価値観に基づく情報だろう。
     余程意識して多面的な情報を入手しようとの心がけがなかったら、一面的で、薄っぺらでステレオタイプの情報に洗脳されてしまう。
     現在展開されているロシア・ウクライナ問題、イスラエル・パレスチナ問題の裏側に潜む掘り下げた問題意識を持てるきっかけになる一つの見識だろうと思う。
     佐伯啓思さんの考え方の「ものさし」、ギリシア哲学、ユダヤ・キリスト教を基盤とし、そして、西欧社会の過去・現在・未来を分析・予言

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    2025年01月02日
  • 死にかた論(新潮選書)

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    現代の日本人は死ぬことに対してどの様な心構えを持てば良いのか、について考えるヒントを提示している。古来からの思想と仏教伝来以後の思想、特に大乗仏教の死生観を顧みながら、生死一如と考えれば良いと提案している。非常に参考になったし、評論として優れた文章だと思った。

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    2024年10月31日
  • 経済学の思考法 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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    経済成長が全てに疑問を持っていたが、本書に出会って間違っていなかったことがよく理解できた。

    経済学の本より、世の中を大きく捉えるための本。とても素晴らしい内容である。

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    2024年05月12日
  • 自由とは何か 「自己責任論」から「理由なき殺人」まで

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    自由にまつわるジレンマから説き起こし「個人の自由」について相対化した見方を提示した本。

    自由と一口にいってもいろいろある。
    ・自然権として自由と国家の存在を前提とした市民の自由
    ・共和国を前提とした普遍的自由と多文化社会を前提とした多元的自由

    そもそも自由というのが自由な言葉なので、XXの自由といえば、様々なところで互いに対立が起きるのは当然なのだが、問題は、自由という名のもとに、自由が抱えている規範がおそろかになってしまうということだ。
    ・・・・

    と最後まで読んで、自由が個人の選択の自由であることを認めたうえで、実は、その背後に価値の問題を二層想定することがポイントであるいうのが斬新で

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    2021年08月10日
  • 経済学の思考法 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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    著者・佐伯啓思氏は、経済学が経済を扱うには、経済現象は複雑過ぎると言い、経済学が扱っているものは、経済学が『経済』と定義しているものに過ぎないという。
    また、経済学が政治に介入し、経済現象を形作っているとも。

    『経済学の思考法』というタイトルだけあって、経済学の哲学面、考え方に重きを置いている。

    目次
    第1章 失われた20年 構造改革はなぜ失敗したのか
    第2章 グローバル資本主義の危機 リーマン・ショックから
    第3章 変容する資本主義 リスクを管理できない金融経済
    第4章 『経済学』の犯罪 グローバル危機をもたらす市場中心主義
    第5章 アダム・スミスを再考する 市場主義の源流にあるもの

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    2021年02月03日
  • 自由とは何か 「自己責任論」から「理由なき殺人」まで

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    リベラリズムの立場をわかりやすく整理した上で、現在、私たちが自由に倦怠している理由を探ろうとする。全体主義への反省から自由な状況で、何を目的として生きるのかを議論できない状況が、かえって自由の意義を見えにくいものにしているという論旨。本筋とは違うけど、ハイエクやフリードマン、ロールズ、アマルティアセン、ドゥオーキンの立場の説明がわかりやすかった。

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    2020年11月18日
  • 経済成長主義への訣別(新潮選書)

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    『「成長」というものにこだわるのをやめよう』
    いつまでも、経済成長なんて続くもんじゃない!
    誰かに言ってほしかったし、そう思っている人がいると知って、何だかホッとしました。

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    2020年09月01日
  • 自由とは何か 「自己責任論」から「理由なき殺人」まで

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    執筆のきっかけを「(現代で掲げられる『自由』に対し、)あまりに違和感や不気味な感じを持たざるを得なかった」とし、その違和感の根源を「自由」への議論を通じて探った本。佐伯啓思2冊目。
    冒頭、現代では人類共通の目標のように掲げられる「自由」に対して、イラク戦争を「フセイン政権からの解放(自由化/民主化)」とし正当化したアメリカを持ち出すことで疑問を提示する。
    そこからリベラリズムの根幹である、何事も個人の自由を侵害すべきではないとする思想に対し、背景を探っていく。
    君主による抑圧の時代において、自由は「抑圧からの解放」を目的とし推進されてきた。
    概ね抑圧は去った現代でも、万人が理解しうるその背景

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    2020年05月24日
  • 「欲望」と資本主義 終りなき拡張の論理

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    資本主義は
    国外のフロンティア
    →国内の大衆消費者
    →人々のアイデンティティ
    →広告で作られた実態のない「好奇心」
    の順に欲望を拡張してきた、と言う話。
    最近までを綺麗に書いてるなぁと思ったが、読み終わって奥付を見たら1993年出版でびっくりした。

    日本の成功は、同質な品を大量生産する米国的製造から、より細かいニーズに添う生産にいち早く変えたから。
    その後は「個々人」に寄り添うことが出来ず、広告代理店が「好奇心」を煽り実態のない消費を作った。
    いまIT企業がイケイケなのは、テクノロジーで個々人に寄り添うことを実現したからか。

    小麦の罠と一緒で、豊かになって増えるからより作らなきゃいけない。

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    2020年03月04日
  • 経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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    いろいろと考え、感じていたことが、昔から経済学でちゃんと扱われてきたことが分かった。そして、私は左派なのだと理解した。
    二重の経済という考えがとてもしっくりきた。

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    2019年11月03日
  • さらば、資本主義

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     以前小林よしのり氏が「自民党は保守じゃない」と言って、公然と自民党批判を展開しておられました。その時はどういうことかよく分かっていなかったのですが、今回本書を読んで、なんとなく分かったような気がします。小林よしのり氏と佐伯啓思氏を同列に並べるなとおこられる気もしますが。

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    2019年03月01日
  • 死と生(新潮新書)

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    経済学の大家が書いた「死と生」
    ギリシア・キリスト・西洋文明そして、東洋文明、日本文明の情報を駆使しての「死と生」、論理的でメチャクチャ解りやすく、自分なりに理解できました。
    丁度、般若心経の写経を継続しており、その一字一句の奥深さがよりはっきりしてきました。
    西部邁さんの「自死」にいたる経過も含め、少なからず影響を受けられてと思います。
    経済学者の日本文明の解析、ますますの進化を期待している所です。

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    2018年11月29日