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資本主義の駆動力は何なのか。ゆたかさの果て、新たなフロンティアはどに求められるのか。差異・距離が生み出す人間の「欲望」の観点から、エンドレスな拡張運動の文明論的、歴史的な意味を探る。(講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
別の本で紹介されていて気になり、初めて読んでみた。とても面白かった。論理的なのにテンポが軽快で、資本主義と市場経済、欲望の拡張、バブル経済、豊かさの果てなどの解説は秀逸。主張ではなくてこの人なりの理解と解説。言葉の選び方や定義の仕方も気を使って書かれており大変読みやすかった。 社会主義と資本主義との...続きを読む比較、消費資本主義、資本主義の歴史と産業革命、資本主義が向く方向(外・内・自分)、豊かさの果ての文化 と進めて行く中で少しも緩めずに書ききっているので、途中で止められずに読み進められる。 時間を置いてもう一度読んでみよう。
1993年刊だから、今から32年も前の本だ。日本が繁栄しているという前提で書かれているので、今読むと隔世の感がある。しかし、特に7章・資本主義の病理に書かれているような、自己増殖するという資本主義の本質を確認し、産業社会の行き詰まりから、人間が文化への欲望に目覚める方向にかけたいと語る著者の想いには...続きを読む共感する。残念なことに30年たっても、世界はあまりその方向には行ってないのだが。SNSの登場で欲望は、ルッキズムとお金により向かっている。文化も消費されている。生成AIの登場で、技術的には正確性ではなく偶然性に支配されているが、利用方法としては産業が欲望を加速させる方向に加速している。 さて、本書だが軽快に読める。その文章は語られたもののリライトではないかと思えるほどだ。引用は多いが概して分かりやすく、引っ掛かりがなくて、サクサク進む。ウェーバーのプロ倫をバッサリ批判しているあたり爽快だ。いわく、資本主義は高潔さよりもいかがわしさが似合っているとか。ヨーロッパが「外」に欲望を求めたのが帝国主義で、アメリカが移民を受け入れ、機会の平等を徹して求め、その国民を消費者として、市場を作ったのが、ヨーロッパとは反対の「内」なる方向の資本主義だったとか、歴史の捉え方も新書らしく面白い。
資本主義、欲望の拡張、大衆社会、消費に対する批判を体形立てて整理してくれる本で非常に読みやすい。 拡張を至上命題とする資本主義のもとで、欲望を生む「距離」が、外部から人間内部へと取り込まれ、メディア・情報によって開発され、現在の自分が他人からどう見られているかにしか関心がなくなっている。 東浩紀が...続きを読む言っていたが、資本主義はまさに災害ですね。無論、その恩恵も被っているわけですが。 全く詳しくないので印象論にすぎないが、欲望を文化的なイマジネーションの世界に取り戻すという点については、むしろ文化的なものすらも資本主義に取り込もうという動きが進んでるのではないかと、現代アートのオークションなどを見て思う。 立ち止まることができる余白のような場所を意識的に作っていきたい。
資本主義は 国外のフロンティア →国内の大衆消費者 →人々のアイデンティティ →広告で作られた実態のない「好奇心」 の順に欲望を拡張してきた、と言う話。 最近までを綺麗に書いてるなぁと思ったが、読み終わって奥付を見たら1993年出版でびっくりした。 日本の成功は、同質な品を大量生産する米国的製造か...続きを読むら、より細かいニーズに添う生産にいち早く変えたから。 その後は「個々人」に寄り添うことが出来ず、広告代理店が「好奇心」を煽り実態のない消費を作った。 いまIT企業がイケイケなのは、テクノロジーで個々人に寄り添うことを実現したからか。 小麦の罠と一緒で、豊かになって増えるからより作らなきゃいけない。 でも、昨今世界的に突然少子化が進んでいるから、もう作らなくていいというフェーズになった。 これが「モノ消費」から「コト消費」への転換駆動力な気がするな。 30年前の本だけど、近年流行った「お金2.0」とか「モチベーション革命」とかと書いてあることは同質で、なんか気が抜けた… 人間言うことは流転するんだなぁ…
私自身は、イデオロギーやそれを軸とした経済システム、法体系というのは、人間の支配欲から成り立ち、それを統制するべく形成されたという立場である。著者は、経済史家のブローデルによりなされた資本主義と市場経済の区別を用いながら、資本主義の形成を、欧州が中東の舶来品を入手したいとする欲望から順を追って説明す...続きを読むる。カール・ポランニーによる欲望の交換などの考察からすれば、些か手順に飛躍があり、資本主義の存在そのものを文明国に限った断定的な感が拭えないが、前提が受け入れさえすれば、著者の考察は理解しやすく、馴染みやすい。 また、欲望の条件は、客体に距離のある状態、すなわち分離された対象に価値を自覚する事、としたジンメルの欲望論を引いている。これについても、希少性や対象への競争が価値を高めるという説明だが、これも一つの条件に過ぎず、言葉の定義としては物足りない。労働を生み出す労働者の価値、商品の価値を限界効用に照らしながらも、では、普遍的価値とは何か、もう少し掘り下げられたかも知れない。 グダグダ述べたが、種々参考文献を引きながら、著者のように論理的に資本主義を考察するには、私自身には参照用のストックもなければ、事実関係を確かめる時間、実力もない。然るに、考察の助長として非常に有益な著作であると言える。 欲望の果てにあるもの。資本主義の終焉、それはシュンペーターの言う社会主義への移行では決してない。価値追求が即ち競争であるなら、その果てにあるのは、支配の許容、つまり究極の格差社会だ。支配欲の統制システムが瓦解するのだから、当然、支配世界が復活する。
「資本主義はニヒリズムか」の中で紹介されていた本作品を読んでみた。今日のこの高度に情報化し、グローバル化した社会で「資本主義」という概念をどのように理解すればよいのか、そして文明論的に、歴史的にみればどのような意味をもつのかを問う作品である。 第1章が、社会主義はなぜ崩壊したのかということで、「効率...続きを読む的」は自明的なことかを問いながらも、社会主義が欠けていたものを論証している。 第2章は、80年代と日本の成功について、理念なきテクノロジズム、歪んだ資本主義?としながらも、消費資本主義を誕生させたということで総括している。 第3章は資本主義という拡張運動ということで、ブローデルの三層理論、バタイユの発想、ジンメルの欲望論などを参照しながら、その時代時代の資本主義の変遷を語っている。 第4章は、「外」へ向かう資本主義ということで、ゾンバルトの説、産業革命とは何だったのかとして、それ以前のアジア・イスラムの商業活動に言及している。 第5章は「内」へ向かう資本主義として、20世紀アメリカが生み出した資本主義について分析を行った。 第6章はナルシズムの資本主義として、欲望のフロンティアのゆきづまり、浮遊する好奇心、情報資本主義における消費者といういままでになかったタイプの資本主義の到来について語っている。 第7章は、消費資本主義の病理で締めくくっている。ゆたかさの果てに、つまり、「成功するがゆえに没落する」資本主義について、シュンペーター、マルクス、ケインズらの予言を紹介している。 最後に、著者は以下のように締めくくった。 モノはほんらい、技術だけではなく文化の産物でもある。経済活動自体が、ほんらいは広い意味で文化という土壌と不可分なのである。今世紀の産業主義は、それを技術の次元に還元し、文化から切り離そうとした。いま限界にきているのはそうした今世紀の産業主義である。だが、その限界地点で、ようやく、欲望を産業技術のフロンティアの奴隷にすることから解放されようとしているのではないだろうか。欲望を文化的なイマジネーションの世界へ取り戻すことができるようになってきたのではないだろうか。わたしはといえば、やはりこの可能性にかけてみたいのである。
主に資本主義の歴史についてかいてあります。 「資本主義はその成功のために没落する」ってゆう言葉を聞いて思い当たりました。 それで日本こんな不自然なんですね。 あと、投機マネーのせいで石油が高いとかなんとかゆうてますが、 資本主義の恩恵にあやかっている限りそんなことを言う資格はありません。
資本主義は「欲望」によって成り立っている。人間の欲望はとどまるところを知らず、資本主義は欲望のフロンティアを拡張し続けていくというのが本書の内容。非常におもしろい。買ってよかったと思える一冊。
とても面白かった。出版されてからもう10近くになりますが、今までの経済の歴史を振り返って、今はどんな状況なのか、筆者の意見が出ています。本当は経済に分類したいのですが、内容的には思想だと思ったので思想に分類しました。 「外に向かう資本主義」「内に向かう資本主義」「ナルシズムの資本主義」の展開はかなり...続きを読む興奮です。
ヴェーバーのプロテスタンティズムの倫理と資本主義の成立を関連づけた議論ではなく、資本主義の成立をバタイユの蕩尽やゾンバルトの理論を援用しながら展開し、その特徴や病理をあぶり出している。 ヴェーバーに対して漠然と抱いていたモヤモヤ感が少し明快になる感じ。
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