佐伯啓思のレビュー一覧

  • 自由とは何か 「自己責任論」から「理由なき殺人」まで

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    非常に考えさせられる本であった。現代において「自由」という言葉の意味はまさに混迷している。例えば、リベラリズムという言葉も新市場主義から社会福祉主義まで意味するところは様々である。また、自由はどこまで認められるべきか。女子高生による売春も「自由」なのか。他国に「自由」を強制できるのか。
    筆者は自由の背後にあるもの=価値観を強調する。そしてその点を無視したところに現代における自由の混迷がある、とする。特に現代では「個人の選択の自由」という局面ー重要な自由の一側面であるにしてもーに矮小化されがちである。結局筆者は、衝突の場面において社会の価値観を自己反省・自己相対化せざるを得ない、として歴史の判断

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    2015年06月04日
  • 自由とは何か 「自己責任論」から「理由なき殺人」まで

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    現代のリベラリズムへの批判。
    後半の抽象的な論理展開は、他の哲学者でもできるので、是非具体とのリンクを保ちながら論じ続けて欲しかった。
    ただ、前半部分については、具体的な視点から論を進めていて、何を問題意識としているのかが分かりやすかった。

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    2015年05月07日
  • 20世紀とは何だったのか 西洋の没落とグローバリズム

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    佐伯啓思のすごい所は、その簡潔さと分かりやすさだと思う。

    階級と権利による政治から、誰もが等しく参加できるようになった政治への移行。
    世界が大衆化することによって、失われてしまった価値があると説いている。
    マニフェストを掲げなければならなくなるほど、均質になった政党。それらが求めている普遍化された自由や民主主義は、反対に中身のない空虚なものとなってしまう。

    社会の方向性に価値を見出せなくなった人間は、今を消費することにばかり目が向いて、長い生を生きるためにせっせとお金を貯めてゆくことで安心する。

    本書を読む中で、ふと筆者が言いたいことを先回りして理解した部分がある。

    結局、私たちは今を

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    2015年03月31日
  • 経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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    リーマンショックからのEU危機の年代に書かれた本。
    主にアダム・スミスとケインズを中心にして、グローバル経済や金融問題について書かれている。

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    2015年01月18日
  • 西田幾多郎―無私の思想と日本人―

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    ネタバレ

    【2015_002】
    およそ100年前の京都大学で独自の哲学を探究し、唯一の日本発の哲学を打ち立てた西田幾太郎。その文章の難解さで知られる「西田哲学」を、佐伯啓思がかみ砕いて解説する。といってもじゅうぶんに難しいのだが。

    グローバリズムが喧伝されて日本独自の思想など旗色の悪くなってきた今だからこそ、西洋の哲学や倫理を知った上でのローカルな知性を守らなければならない。おそらくそんなつもりで筆者は西田哲学を読み返したのだろう。妻子を次々に亡くし深い悲しみの中で西田は決してニヒリズムに走らず、その虚無の中にこそ日本の精神があると考えた。「情」を持つことこそ日本文化の特性だと考え、その特殊性を守るこ

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    2015年01月02日
  • 西田幾多郎―無私の思想と日本人―

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    佐伯啓思を数冊読んできたが、この一冊に様々なエッセンスが詰め込まれているように思う。

    英語は手段であるのに、目的化された現代。
    京大に勤める彼が、京大が第二の東大を目指した時点で破綻していると言えるのがすごい。
    大学や教育が目指しているものは、もはや学問でないという部分から、西田幾多郎の哲学にゆっくりシフトチェンジしてゆく。

    西洋の、現在に至るまで進歩し続けてきた価値観とは対比的な場所に、日本のものの見方は存在すると言う。
    存在が無くなる、死ぬことを前提とした生の煌めきや愛おしさ。無常観。

    それらを放棄することは、真のグローバリズムではないと説く。
    世界が繋がり合う時だから、確固たる己を

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    2014年12月20日
  • 西田幾多郎―無私の思想と日本人―

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    難しいけど面白かった。
    本の中で書かれてある所謂『西田中毒』になりそうな
    かんじを受けます。ただ、西田本人が言っているという
    ことですが、非常に難解な文書だそうで、読めるか
    どうかはわかりません。
    歎異抄や、仏典・御経など日本の精神・難解な考え方、
    究極の屁理屈的な理論は非常に面白いと思います。
    色即是空空即是色。人は人であらずして人である。
    永遠の今。無常。絶対の無。無私。。。
    そういえば、西田幾太郎氏は京都の哲学の道の
    由来の人物。

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    2014年11月08日
  • ケインズの予言 幻想のグローバル資本主義(下)

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    ネオ・リベラリズムが席巻する中で凋落の憂き目を見ることになったケインズの思想の新たな可能性を取り出し、国民経済に足場を置いて市場主義の幻想を批判することを試みた本です。

    ケインズは、金本位制からの脱却を支持しましたが、それはグローバルな貨幣の無制限な流動を認めることではなく、むしろ貨幣に対する人びとの信頼が国家に置かれていることによるものだったと、著者は指摘しています。そして、ケインズの経済理論のさまざまな側面に、国民経済を信用の基礎とする考え方が見られることを明らかにしてきます。

    著者の理解するケインズは、アダム・スミスの経済学と対立するものではありません。上巻で論じられたように、アダム

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    2015年05月28日
  • アダム・スミスの誤算 幻想のグローバル資本主義(上)

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    経済のグローバル化が叫ばれ、市場がすべての問題を解決するかのような勇ましい言葉が聞かれる現状を横目で睨みながら、市場主義経済学の鼻祖と目されるアダム・スミスが、じつは共同体の価値を重視し、当時のグローバリズムともいうべき重商主義に対して厳しい批判をおこなっていたことを明らかにしようと試みています。

    著者はまず、スミスが「自然価格」を「市場価格」として規定していたのではなく、反対に理想的な自由競争のもとでは「市場価格」が「自然価格」に落ち着くはずだとしていることに着目します。その上で、スミスの考える「自然価格」は、土地に根ざした共同体的な価値によって決まるとみなされており、そこに彼の道徳哲学と

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    2015年05月28日
  • 正義の偽装

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    日本の「正義」を考えると、民主主義とか民意とか、国民の多数が考えて述べることが適当なのかもしれない。その結果、かつての民主党政権やアベノミクスは「正義」となった。しかし、ちょっと考えると民意を唱えるのは国民の多数ではなく、民主党や自民党だ。

    木に止まったセミのごとく、ひたすら「ミンイ、ミンイ」と鳴いていれば「民主主義」ができあがる。実は独裁者こそが民意を語り、国民を代表することができる。それが著者の言う「正義の偽装」だ。

    こうした欠陥をはらんでいる民主主義ではあるが、現状ではその体制を選択するしかない。それもまた、大きな矛盾。

    「正義」とは考えれば考えるほど、ループしてしまうものなのだ。

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    2014年07月25日
  • 反・幸福論

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    「幸せはこういうもんだ」と言われて「そうですよね」と返せるのならこんな簡単な話はない。それぞれにとっての幸せを考えるうえで、大事なヒントをくれる本だと思いました。

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    2014年05月20日
  • アダム・スミスの誤算 幻想のグローバル資本主義(上)

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    一度読んだ本を読み直しました。グローバリズムが叫ばれた時の本ですが、今、読んでも、まったく本質論から外れていません。

    IT、インターネット環境がより進展した現在の社会経済状況において、ますますグローバリズムの進化が増しています。

    それでも、佐伯啓思氏の、社会経済活動に対する深い洞察力からなる分析は、何ら、陳腐さを感じさせないものであります。

    原理原則を外さない、論理。

    この本においては、アダムスミスが生きていたイギリスを中心としたヨーロッパ社会と南北アメリカ、アジアとの絡みは外せません。

    なぜ、イギリスが重商主義に走らなければならなかったのかという因果関係の分析もよく理解できました。

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    2014年04月12日
  • 反・幸福論

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    「幸福」そのものにかかる考察の部分は、その結論が現在の状態を下げて満足すべき、とする点で、その過程にかかわらず得心がいかないが、政治状況にかかる考察については、2014年の現在からしても、未来を的確に、そして深く鋭く言い当てており、さすがの一言。

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    2014年03月02日
  • 正義の偽装

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    時事的な問題を、様々な視点から論じている。
    範囲の広さは良い点でもあるが、個別の章について、さらに詳しく知りたいところもあり、消化不良感もある。

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    2014年02月14日
  • 経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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     「生活の経済」、つまり基礎的な衣食住という必需品への需要が容易に満たされるようになった後には、物の「過剰性」をいかに処理するかが経済の課題となります。
     その「過剰性」は、商品に付与された社会的イメージを基礎にして「他人の模倣」という「欲望」を抱いてしまう人間の本性に依ります。そのように生み出された「欲望」から資源の「稀少性」が派生するのであって、稀少だから欲するのではないということです。
     
     社会的イメージによる欲望は必需ではないという意味で本質的に過剰なのであるから、過剰から欲望が生まれ、その欲望から稀少性が生まれるということになります。したがって、過剰こそが根本的現象なのであって、故

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    2014年02月04日
  • 日本の宿命

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    江戸幕府最後からの歴史を勉強しないといけないと思った。大東亜戦争への宿命、必然。
    アメリカへの従属。それに、満足というか知らない内に、取り込まれている。それも気づかないまま。

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    2014年01月19日
  • 経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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    タイトルは経済学となっていますが、内容は経済を中心としたグローバリズムや国家に関する全体像が書かれています。特に前半1章〜3章は現代の諸問題の裏にある要因がわかりやすく解説されています(中盤はちょっと難しい面もあり)。市場(大企業)と国家の現状に興味ある人にはお勧めです。

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    2013年08月09日
  • 日本の宿命

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    現在の日本の抱える問題を「精神の無脊椎症」と批判し、日本は自らが立つ拠りどころ、揺るぎない考え方を得る必要があると主張する。
    現象として批判されるものが「アメリカ化」や「政治のポピュリズム」。
    なぜ、そのような状況に陥ったのか、黒船来航から遡り検証する。
    ひとつの解として明治維新に植民地化を避け、「一国独立」を志した際の志士たちの精神構造を振り返る。福澤諭吉も登場。

    政治家としてあるべき姿を論じる箇所では、現代の政治家であればトニーブレアを思い浮かべた。


    以下引用~
    ・ナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」、、、ショックによって社会を活性化しようというのです。
    ・最初に政治学という学

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    2013年06月30日
  • 日本の宿命

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    ネタバレ

    現在の日本を覆う、何となく筋が通らなくて、リーダーも人々も、どこもかしこもブレている感じ。著者はこれらの根本原因を、江戸時代後期まで遡って、西欧列強との立ち位置を巡っての日本人の態度、思想の変遷に見出そうとします。

    以下、本書を思い切ってまとめてみます。

    列強からの侵略を恐れた日本人は、武力による防衛を目指すが、あまりの実力差にそれが叶わかったため、西洋文明を取り入れて、国としての力をつけることを優先する。しかしいつのまにか「開国」自体が目的化してしまう。やがて力をつけた日本が欧米と衝突するのは歴史的必然であった。戦後は、防衛を米国に委ね、文化や経済のアメリカ流を受け入れ(これも「開国」と

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    2013年06月20日
  • 反・幸福論

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    戦後から現在に至るまで日本社会で支配的だった「功利主義」と「リベラリズム」に向けられた懐疑。輸入された概念をそのまま模倣するだけではなく、現代日本人はいかに生きるべきか「自前の議論」をしようではないか、と著者は呼びかける。

    戦後の近代化の流れの中で日本人が失ったものは多い。
    ふるさと、家族、死を基準として生を見る死生観、習俗、自然への畏敬、無私という意味においての「他力本願」……etc.

    いずれも「近代化」や「戦後進歩主義」がもたらしたものだと著者は言う。現代人はこれらを捨て去ることによって「よりよい生活」を手に入れてきたわけだが、災害や「孤独死」に直面したとき、ほころびが生じ、矛盾は露呈

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    2013年05月28日