【感想・ネタバレ】現代文明論講義 ――ニヒリズムをめぐる京大生との対話のレビュー

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Posted by ブクログ 2011年06月21日

佐伯氏の永遠のテーマである「資本主義はニヒリズムか」ということで、現代の社会の抱えるさまざまな難問について、京大生に問いかけ、語り合ったことをまとめた本。

今回は、従来の西欧社会の思考パターンでは絶対解決しない難問について、日本人の「無の思想」がニヒリズムを解決できる糸口として有効ではないのかとい...続きを読むう仮説が掲げられた。

佐伯氏のユーモア精神に富む授業内容に読んでいて、一瞬の笑を禁じえない楽しい作品であった。

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Posted by ブクログ 2015年08月07日

現在、世界はニヒリズムの危機に瀕している。そしてその最たるは日本である。ニヒリズムとは従来当たり前であった絶対的な価値の崩落、それによる人間の生き方の頽落、そんなところを意味するらしい。例えば絶対的な価値、「人間の命」に対してなぜ人間の命を奪ってはいけないのか、それに対する明確な答えが出せない。そん...続きを読むなニヒリズム状態を脱すべく佐伯先生と京大の学生たちとのディスカッションという形を交えながら話が展開していく。政治などが苦手な僕にとってもわかりやすい説明で読書が捗ったが最後の哲学思想のところでわからなくなった。

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Posted by ブクログ 2015年07月29日

京大の佐伯啓思教授が、ハーバード大学のサンデル教授の白熱教室に着想を得た行った京大生との対話型の講義をまとめている。テーマは、著者が現代文明、特に現代日本社会の最大の課題だと認識する「ニヒリズム(=最高の諸価値の崩落)」である。ニヒリズムが現出しているさまざまな現代社会の問題について考えるとともに、...続きを読むニヒリズムをいかに乗り越えていくかについて考察している。
「なぜ人を殺してはいけないのか」「沈みゆくボートで誰が犠牲になるべきか」という根源的な問いから始まり、民主党政権の問題や尖閣諸島の問題、日本国憲法の問題など時事的な話題に触れ、最後にニヒリズム克服にあたっての日本思想の可能性に言及している。自分の立ち位置について考えさせてくれ、良い刺激となった。また、対話をベースとする講義録なので読みやすく、佐伯氏の主張のよき入門書にもなっている。ただ、京大生との対話が白熱しているかというと、やや予定調和的で少し物足りないという印象も受けた。
佐伯氏の主張自体については、ニヒリズムが根源的な問題ということや、民主主義をうまく機能するには、民主政治の中に民主主義的でないような要素をうまく取り入れることが必要という指摘など、共感するところもあったが、総体としては違和感を覚えた。それは、自分が、価値相対主義にシンパシーを感じているということが影響している。佐伯氏は、価値相対主義は救いようのない矛盾を生むと主張しているが、そもそも命を賭けてもいいと思えるような至高の価値を前提とするから矛盾と感じるのであって、それぞれの人がそれぞれ大切と思うような価値をそれなりに持って共存するということのどこがいけないのだろうか。一種の刹那主義かもしれないが、自分としてはそれでいいのではないかと思う。
また、西田哲学を代表とする日本の「無の思想」の持つニヒリズム克服の可能性については、言わんとすることはわかるような気がするが、もう一つ十分に理解ができなかった。
あと、本筋の議論ではないが、第七講での、天皇理解(天皇の非政治性)は少し皮相的かなと感じた。

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Posted by ブクログ 2012年06月07日

あえて自身の主張はしない.
しかしながら,根をはった思想家,哲学者たちの主張を紹介しながら,あくまで「己で考えること」を大事にさせる.
そんな姿勢で書かれた本.

文体は小気味良く,非常に読みやすい.
しかしながら内容は,現代人が一度は考えたこと,感じたことのある,もやもやとした部分を照らし,「お前...続きを読むはどう思うのか」を問うてくる.

最後は加速度的にのめり込んで一気に読んでしまった.
これをきっかけにより哲学を学んで,何より自分の考えとその根を探り,再構築していきたいと思う.

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Posted by ブクログ 2012年05月07日

サンデルの「ハーバード白熱教室」を横眼で睨みながら、それならサンダルを履いて、サンダル先生の「発熱教室」でもやろうかと持ちかけたら、本当に本になってしまった……と著者である佐伯啓思は漏らしています。

佐伯啓思という人はちょっと珍しい思想家でして、著作は多数に及ぶのですが、毎回、同じような内容が展開...続きを読むされるのです。ところが、毎作、ちょっぴり違うところがある。佐伯啓思のファンは、それを楽しみに読んでいたりします。「あ、今回はここがちょっと違うぞ」  

そして、佐伯啓思のスタイルは原則として問題設定に対して回答を用意しません。従来の西欧思想を追っかけるだけの軽薄な思想家なら「ハーバーマスはこう結論づけた」と説明して終わるのでしょうが、佐伯啓思の問題意識は、「私たち日本人が現に抱える問題は何か」「その問題をどのように切り分けて考えれば良いのか」といった点にあるので、どうしても回答が容易に出てこないのです。

そんな佐伯啓思が学生と対話するとどうなるか。当然に話が噛み合いません。回答を用意されることに慣れている学生と、回答を用意する前に問題設定を考え抜く佐伯とでは、あまりにも隔たりがあり過ぎるのです。笑えるくらいに話が噛み合わない。

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Posted by ブクログ 2014年01月24日

現代はニーチェのニヒリズムに陥っている。
生命をかけるほど大切なものはない。反面、平和な時代では生命の大切さは省みられない。

憲法とは
国防とは

こんな事を考える材料を与えてくれる本。

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