佐伯啓思のレビュー一覧

  • 経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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     本書は「経済書」なのだろうか、それとも「経済思想書」なのだろうか。本書を読んで、現在の世界と日本で起きている経済的事象の全体像がより鮮明になったように思えた。
     1990年代からの「失われた20年」については、マスコミでよく語られるが「構造改革」は小泉政権のみではなく、歴代の政権が常に声高に叫んでいた。そう考えれば、日本経済は相当「構造が改革」されているはずなのに一向にその成果が上がっていないと疑問に思っていたが、本書は「デフレに陥っている経済に対して新自由主義政策は明らかにマイナスに作用する。一層にデフレ圧力をかける」と喝破する。なるほど、説得力がある。
     「グローバル資本主義の危機」「変

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    2013年10月18日
  • 自由と民主主義をもうやめる

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    たまたま、この本と中島義道の「生きることも死ぬこともイヤな人のための本」を同時並行して読んでいたのだが、対極にあると思っていた二人の思想の根本が実はニヒリズムで繋がっているように感じた。どこか二人の対談でも企画してもらえないかな。ひとつ忠告するとすれば、どちらの本も普通に世間を生きている人には何の役にも立ちません。
    「なんかイヤなんだよねー」とか「世間ってウザイなぁ」と思っている人が読んで少し安心する、といった本ですね。

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    2013年05月28日
  • 反・幸福論

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    尊敬する思想家の書籍。尊敬していたが正しい。もう身体が右翼的な考え方を吸収しなくなってきている気がする。保守派卒業。これからは中道右派ってことで。

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    2013年05月28日
  • 日本の宿命

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    ネタバレ

    自分のことを棚に上げて書いてしまうけれども、佐伯さんはずるいと思う。

    そう感じてしまう理由として、佐伯さんの評論家的立ち位置である。とりあげるどの問題に対しても、結局最後まで解決策や道筋を示すことなく、それぞれの課題に個別に取り組んでいる政治家や専門家、学者、行政等の振る舞いを批評するスタンスをとっている。
     その都度、「その問題を論じること自体が目的ではない」と断りを入れて、「その背景にある○○が問題なのだ」というが、その「○○」に対する解決の道筋も示していないように思われる。
     とりあげる諸問題の裏には「日本の無脊椎化」がある、と言っているが、「無脊椎化」がどんな価値観の喪失によるものな

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    2013年03月25日
  • 日本の宿命

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    幅広い内容があり、ここから他の専門書へと広げることが出来そう。

    直接民主主義と間接民主主義、無脊椎、サンフランシスコ講和条約、開国論、福沢諭吉などなど。より知りたいことがたくさん散りばめられている。

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    2013年02月28日
  • 反・幸福論

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    今の日本では所謂マイノリティに分類される人が、なんとなく思ってはいるが論理的に説明できないもどかしさ、というものをある程度わかりやすく解説している良書だと思う。さすがに知識量が豊富すぎてわかりにくい所もあるが、他の著作も読んでみたくなった。

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    2013年02月02日
  • 自由と民主主義をもうやめる

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    前半の保守、革新、左翼、右翼の説明は分かりやすく良かった。

    後半はなんとなくいつもの佐伯先生の主張かなと。

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    2012年12月29日
  • 経済学の犯罪 稀少性の経済から過剰性の経済へ

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    本書は現代のグローバル化した経済と、それを支持する経済学的思考を批判するものである。筆者の主張は、そのような一辺倒な経済学の視点を改め、本質を見なければならないとするものである。

    ワルラスらの限界革命以後、経済学は「希少性」を扱うものと定義されてきた。すなわち、無限に増加する人間の欲望に対して資源の量は決まっているため、その適切な配分を考えるのが経済学なのであった。

    このような経済学の原点に対して筆者は、経済学が「過剰性」に支配されていると指摘する。モノが安価で大量に生産される社会である現代においては人間の欲望が大量生産される商品に追いつくことができない。かくて供給の過剰が発生する。また、

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    2012年12月26日
  • 自由と民主主義をもうやめる

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    タイトルからは分かりにくいけど、本当の「保守」とは何かを主張する本。国が豊かになり、自由や民主主義が過剰に浸透した結果としてニヒリズムが蔓延してしまった現代社会に対する処方箋が、いわゆる「保守」思想であるという。著者は、単なる進歩主義として自由や民主主義を追いかけるのではなく、地域における伝統や慣習を活用して社会秩序を継続していくことが「保守」の基本的な考え方だと主張している。全体的に専門用語が多くて、政治学の基礎を知らないと論旨をきちんと捉えることが難しいのだが、タイトルは刺激的で面白いし、実際、自由や民主主義が日本でうまく機能しているようには思えないので、提起された問題は的を得ていると思う

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    2012年12月17日
  • 自由とは何か 「自己責任論」から「理由なき殺人」まで

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    サンデル、正義の話と主張が重なって見える。理論、論説の語り口も同じように見えるので、サンデル教授に軍配を上げる。3段階の論理はこびがスムーズ。例が良く分かり、複数上げられていた。
    最後に収束するところ、サンデルは倫理、徳であったが、本書は義である。
    日本と西洋の違いか?宗教の違いだろう。
    キリスト教vs東洋儒教
    自由を語るときには、対になる何かを明確に規定がありそうだ。
    イラクの人質事件と「自己責任論」、自己責任とは、あいまいなことばである。自由があっての責任と捉えられているが、本当にそうか?

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    2012年09月22日
  • 反・幸福論

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    様々な幸福に関する哲学が紹介されているけど、結局何が言いたいのか不明。幸せって何?って考えていく事自体が重要なのかもね。

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    2012年08月20日
  • 反・幸福論

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    ★★★☆☆3

    すっきりしない本だよ〜。
    たくさんの引用知識で埋めつくされていて、結論が分かりにくいよ。連載を纏めた本だからこうなるのは仕方ないのかな…
    ニーチェやサンデル教授もでできたけど、一番興味深かったのはトルストイの話かな。「真の生命」という概念が、アルケミストにおける「大いなる魂(だっけ?)」と似ている、繋がりがある!と思ったよ〜。
    著者の主張はあまりグッと来なかったけど、引用のほうは為になる本。

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    2012年08月19日
  • 「欲望」と資本主義 終りなき拡張の論理

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     ヨーロッパの資本主義からアメリカの資本主義への変遷が、外向きの欲望から、マーケティング、広告により内向きにあおられる欲望により形成されたという節。
     生産力などには一切触れず、欲望が生産を生み出していくかのように描かれている、ある意味珍説として受け止めた。

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    2012年07月05日
  • 反・幸福論

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    実は震災後に石巻を訪れて以来、ずっとカントを読んでいるのですが、カントが判断力批判を書き「崇高」に辿り着いた背景にもヨーロッパの大地震があったのですね。震災後に何が生まれようとしているのか、その思潮、この本は9割、正しいと思います。残りの1割は政治的な立場によるでしょう。

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    2012年06月06日
  • 反・幸福論

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    日本人が忘れてしまった価値。人生観や死生観や自然観を見失ったために、自由を求めても、経済成長しても、幸せ感が得られない。

    アメリカのマインドコントロールが解けつつあるのかな、なんて思いました。

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    2013年02月23日
  • 反・幸福論

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    日本はイエ、ムラなどの縁をなくす方向に進んで来たのだから、無縁死に行きつくのは当然という主張は切れ味のよさを感じた。

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    2012年05月04日
  • 「市民」とは誰か 戦後民主主義を問いなおす

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    著者は最近「反幸福論」などで話題を集めているが、基本的に氏の戦後民主主義に対する疑念・懸念に同じような考えを持っている。

     もともとはヨーロッパからの言葉を訳した「市民」が日本においては欧州と異なる定義・意味で使われている。一般に日本では市民は「自由・平等を求め国家からの束縛・義務を回避する民」を意味している。

     結局のところ端的に言えば、市民を強調する日本人は反抗期にある中学生のようなものなのである。保護され、教育され、囲われる立場にありながらしだいにカミソリのような脆い自我の目覚めを保護者との作用‥反作用によって確認していくものである。何故民主主義を明治期に導入しながら、戦後になって遅

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    2012年04月28日
  • 反・幸福論

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    流して読んだところは宗教、特に仏教のところ。私はニヒリズムみたいなダークな考えで世の中を斜めに見る、ってのも好きだなと思った。震災のことや原発事故についても書いてあって、福沢諭吉のくだりが心に残った。われわれなんて小さな宇宙からしたら一時の存在であることを、時々思い出して心に余裕も作りたい。

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    2012年03月16日
  • 反・幸福論

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    人は幸福にならなければならないという脅迫観念に異議を唱える。功利主義・権利主義・公共主義から無縁社会を論じ、家族論、宗教論、技術論、政治論を説く。読んでいて、疑問を感じざるを得ないところが多い。この感じ方の差に世代間を感じざるを得ない。

    世の人が「利益」「権利」による幸福を目指しているかというと、そうではないと思う。
    「利益」「権利」に縛られない幸福というのが、最近流行の「絆(俺はこの言い方嫌いだけど)」であり、社会のつながりを認識することで幸福を感じる人も多いと思う。社会的起業、ボランティア、などなど。

    「利益」「権利」にとらわれた前の世代の反動が今の世代なのではないか。世代間の価値観の

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    2012年02月01日
  • 「欲望」と資本主義 終りなき拡張の論理

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    資本主義を「欲望」という観点から論じている。第4章「外」へ向かう資本主義における、ヨーロッパの消費革命についての記述が面白かった。また、書籍のテーマである「欲望」についても頷かされることが多い。昨今では、これに類似したテーマが扱われることが多いが、本著は20年以上も前に記されたものである。そのような点からみても一読の価値はあると思いました。

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    2012年02月01日