麻耶雄嵩のレビュー一覧
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ネタバレ斜め上を行く麻耶ワールド全開。
マジでクソ(褒めてる)なメルカトル鮎は、本作品でも相も変わらずマジでクソである。
クソ人間は好きじゃないので、私が本シリーズを読んでしまうのは麻耶ワールドが好きだからと、一編一編の質の高さゆえであろう。
本作品では、メルカトル鮎が類い稀なる推理力を発揮して、論理的に犯人がいない(または絞れない)ことを明らかにする。
言ってることがよく分からないと思うけど、書いてる私もよく分からない。
普通、犯人がいないという結論に達したら、推理の方が間違ってるってことになるけど、論理は破綻してないので、「犯人がいない」という結論と「メル優秀」という評価が併存できている。
こ -
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ネタバレ殺された弟、襾鈴の足取りを掴むため、「大鏡様」を神と崇める独特の宗教が信仰されている村に潜入した珂允。
その村では夕刻になるとカラスが人を襲うのだが、そのせいで祭り事が中止になった翌日、男が死体で発見される。
よそ者ということで疑いの眼差しを向けられる主人公だが、さらに第2、第3と殺人が起こっていく。
探偵役は主人公かと思いきや、メルカトル鮎が出てくるし、謎解きもメルカトルが行うため探偵はメルカトル鮎だろう。
トリックについては、複数の人物による一人称(珂允、橘花、櫻花)を使うことで、珂允視点では『赤色』と描写されているものをを村の住人である橘花が『緑』と称することにより、村人 -
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摩耶さんの本が面白かったので、初めてメルカトルという探偵物を読んだ。
本格ミステリといわれている作品は、少し噛み応えのある硬い印象がある。
一般のミステリは結末が明かされていく開放感は謎解きが探偵でなくてもいい、登場人物たちの関係を解いて行くと、次第に謎が解けるといった作者の意図で解決することもある。
メルカトルという探偵は、天性のひらめきと判断力、事と事を結びつける、特殊なニューロンのような物質を持っている。
ということは探偵になるしかない人物のようで、そのいやみで高飛車で歯に衣着せない物言いといい、不可解な謎にでも出会わなければ逢いたくないという、実に可愛げがない人物に仕立てられている。 -
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ネタバレメルカトル鮎の神出鬼没っぷりはそういうものとして諦めるとして、解き明かした(と思った)謎が綺麗にひっくり返る不意討ち感が気に入った。
殺された弟・襾鈴の真相を探るため、弟が滞在していた地図にない村に潜入する珂允。そこは大鏡様を信仰する村だった。そのうちに起きる、殺人のないはずの村で起こる殺人事件。半年前の村人の自殺と絡んでいそうなのに珂允は犯人に仕立てあげられていく。
いったい何が起こっているのか?
果たして真相は?
みたいな話。
ちょっと浮世離れした時代錯誤的な村の雰囲気は、何となく伊坂さんの『オーデュポンの祈り』みたいだった。
でも麻耶ワールドは、ずっとおどろおどろしい。
ミステリを -
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ネタバレ貴族探偵シリーズの第二弾。今回は新キャラの女探偵、高徳愛香が登場し、多重解決ものとしての様相を呈している。推理は前作よりも複雑化しているが、女探偵の消去法を駆使した推理のほころびを、貴族探偵の使用人が訂正するという分かりやすいテンプレになっており、毎回貴族探偵を犯人だと誤認するという一種のシチュエーションコメディのような趣もある。それがある種の様式美になっており、その点は前作よりも面白い。
本格としての練度も高く、特に「幣(ぬさ)もとりあへず」は誤認トリックの仕掛けが絶妙で、地の文では一切嘘をついていないため、簡単に騙されてしまった。認識の違いがそのまま誤認に繋がり、それが後に訂正され真相が -
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ネタバレ控えめに言ってクソである(褒めてる)。
「探偵は善人である」というミステリの暗黙の設定を変えてみた、という作品。
銘探偵メルカトル鮎、これ以上にない極悪人である(褒めてる)。
『翼ある闇』以降、メルの出てくる作品は読んできてるけど、まぁ確かに個性的だったしヤバさの片鱗は見せてたけど、メルにスポットを当てるとこれほどまでにクソ(褒めてる)が際立つとは。
ひとつ分からないのは、美袋くんがなんで友人を続けてるのか、ってところ。
例えば変人探偵・御手洗は、変人だけど根底に優しさがあって、人としての魅力に溢れたキャラクターだけど、メルは全くのクソ(褒めてる)でしかない。
メリットとしたら、事件に遭い -
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ネタバレ貴族探偵シリーズ第二弾となる連作短編集。
ライトに楽しめる一冊。最初の『貴族探偵』のノリが好きだったので、この作品も楽しめた。
女探偵・高徳愛香が行く先々で貴族探偵に遭遇する水戸黄門的展開、ベタだけど好き。使用人が貴族探偵を「御前」と呼ぶのも、ちょっと古めかしいのが新鮮でいい。
話の骨格や文体がしっかりしてるから、チャチにならないんだろう。
愛香の推理がことごとく貴族探偵犯人説にたどり着くの、笑える。愛香がどこまでも真面目なのが、却って笑いを誘うというか…。
多重解決モノでもあり、館モノでもあり、たまに叙述トリックがあったりと、何層にも仕掛けが施されていて読者を飽きさせない。ただ、五話中三