麻耶雄嵩のレビュー一覧

  • メルカトルかく語りき

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    なんかもう、すんごいな…
    本格ミステリでありながら、アンチミステリを楽しませてくれる。麻耶さんのことだから何かがあるはずといつも覚悟して読んでるのに、絶対負けちゃう…!!答えのない〜はもちろんのこと、他も全部楽しかったし、メルカトルはほんとメルカトル…。

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    2021年09月20日
  • メルカトルかく語りき

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    何度目かの再読。メルカトル鮎物の中短編が五篇収録されている。最初に書いておく事としては、これを読む前の諸君、この小説を正統な本格ミステリ物と思って読み始めてはいけないということだ。かく言う私は「麻耶雄嵩先生の小説だからな!どんな物でもこいや!」という精神で読み進めたが敢え無く撃沈した。仕方ないよね麻耶先生だもの。この五篇に共通の趣向がわかった時はちょっと復活したけどね。流石は麻耶先生だぜ!

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    2021年08月27日
  • あぶない叔父さん(新潮文庫)

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    再読。何気に気に入っている一冊。霧に覆われた田舎町で起こる数々の事件を、頼れる叔父さんが名探偵よろしく快刀乱麻を断つが如く鮮やかに解決していく、という話ではもちろんない。むしろ叔父さんがやばい。何をおいても叔父さんがやばい。しかし一番やばいのは主人公では…?と最終的にはなる。そういう話である。

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    2021年07月17日
  • 鴉

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    ネタバレ

    弟アベルが死んだ理由を探しに地図のない村に来た兄のカイン。現人神として君臨する大鏡様、半年前に死んだ金を作ろうとしていた男、南に住んでいたが滅ばされた一族、鬼子として殺された娘。人殺しをすると痣が浮かび上がるはずの村で新たに殺人事件が起こる。

    謎の風習が残る村で起こる殺人で、色々な謎がある。
    鬼子の定義(?)が個人的にとても感動した。あと叙述トリックで兄弟と思っていた話が、主人公の過去だとは思わなかった…確かに名前がおかしすぎる…
    ずっと鬱々とした感じだけど、それが村の異質さを表現しているようで良かった

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    2021年07月12日
  • 貴族探偵対女探偵

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    ネタバレ

    「貴族探偵」という強烈なキャラクターと、駆け出しの女探偵。
    対照的な探偵を登場させることで、前作よりも貴族探偵のキャラクターが際立っているように感じる。

    1作目〜3作目は、派手さはないがロジックがしっかりしている。ただ、読んでいてあまり新しさがないのは難点。

    4作目『弊もとりあへず』は前作の『こうもり』でも用いられていたトリックが使われている。
    もちろん驚いたし面白いが、一度味わっちゃってるからな...

    と、ここまでは出来としては及第点といった感じだが、5作目でなんと連作短編集のような作りになっていたことがわかる。
    1作目〜4作目に散りばめられた伏線を回収し、愛香が学んだ"貴族探偵の習性"を用いて事件を解決。

    全体としては、派手さはないもののしっかりしているミステリーといった感じ。第3作、シリーズ初の長編を現在連載中とのことでそちらも楽しみ。


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    2021年07月09日
  • 貴族探偵

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    『こうもり』が圧倒的。
    "フェアすぎてもはやアンフェア"
    こんな叙述トリック初めて見た...!!
    それ以外はまぁ悪くはなく、そこそこといった感じ。同シリーズの『貴族探偵対女探偵』も楽しみ。

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    2021年05月09日
  • メルカトルと美袋のための殺人

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    7編からなるメルカトル鮎シリーズの短編集。相棒?は作家の美袋。

    作中で本人も言っているけど、メルカトル鮎は短編向きだと思うので(登場したらすぐに謎解いちゃうもんな)私的にもサクサク読めて楽しかった。
    もう、ほんとにメルがクズで(笑)美袋も負けず劣らずやし、リアルでなら絶対にお近づきになりたくない二人やけど、掛け合いを見るのはすごい楽しい。
    謎を解くためならなんでもありやし、暇やから〜とかほんま理由がすごい。

    私的に読んでいて楽しかったのは「水難」と「シベリア急行西へ」かな。「小人閑居為不善」も好きだな。ブラックユーモア的な感じが。

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    2021年03月17日
  • 7人の名探偵

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    どの作者名を見ても、ミステリ好きなら知らない者はいないと言ってよい作家ばかりで、その人たちの個性が感じられるアンソロジーなのである。
    7人の名探偵とは、とりもなおさず作者達自身のことであり、この名探偵達の生み出す世界にゆったりとひたるのがよい。
    とはいえ、一つ一つは決して長くないので、どんどん読み進めることができる。

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    2021年02月28日
  • 新装版 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件

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    ネタバレ

    「メルカトル鮎」とかいう単語の響きで読んだところが7割くらいなんで、そこにたいした意味がなかったことが一番の衝撃。(笑)


    ただね、読んでから10日くらいして、ある意味かつてないどんでん返しが仕掛けられてたことに気づいたときには笑いとともに感心したよ。


    つまりね、(以下ネタバレ)

    犯人が二転三転する話はよくあるけど、探偵が二転三転するってのは初かもしれん。

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    2021年02月15日
  • 貴族探偵 1

    購入済み

    貴族探偵

    この二人はホタルの高野部長とホタルみたいなコンビニも見えなくもないかな。年齢とか全然違うけど。事件ものも好きになった。

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    2020年12月19日
  • 新装版 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件

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    ネタバレ

    「7人の名探偵」で気になっていたメルカトル鮎シリーズ?が読みたくてこちらをチョイス。麻耶雄嵩氏のデビュー作らしい。
    色々ぶっ飛んだ作品らしいけど……ああ(察し)

    コレはすごいな。以下ネタバレ




    二転三転どころかゴロゴロ転がってるやないかレベルで話が変わる後半(笑)

    結局シリーズでのメルカトル鮎は一番最後に残った人、なんだよね?
    大量殺人な割にはサクサク話が進むのは、出オチかと思ういきなり現れた二人の死体が原因?
    というか、国内ミステリーで警察が名探偵と言われる人物の発言を重要視するのってなんか意外な気がする……気のせいかな。
    探偵がゴロゴロいる世界観が読んでて不思議やった。

    犯人は、なんちゅーかどいつもこいつも悪いからなぁ……というか、なかなかの「マジかーい」って言うトリックだよな。雰囲気で推してるけど種明かしされたら「まさか……」ってなったわ。



    そして、「7人の名探偵収録作」での語り部と今回の語り部は別人なわけだ。違和感あるのはコレか。次の話も読みたいなぁ。(7人の名探偵の語り部くんが好きだったので」

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    2020年11月18日
  • 貴族探偵対女探偵

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    短編集。貴族探偵第二弾。今作は悲しくも咬ませ犬の役割を割り振られた女探偵・高徳愛香目線で物語が進む。前作「貴族探偵」よりパンチ力は低いもののどの話もどんでん返しに満ちている話だと言える。最後の話である「なほあまりある」での愛香の成長ぶりはついつい登場人物に感情移入してしまう読者には感慨深いものがあるかもしれない。まぁそのオチもやっぱり貴族探偵らしいオチになっているのだけど。

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    2020年10月19日
  • あぶない叔父さん(新潮文庫)

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    ネタバレ

    叔父さん、ただのサイコパス!

    ライト?な連作短編集。
    やっぱり麻耶さんのテイスト好きだわ…と再認識させられた1冊。
    年齢的にどうしても叔父さん寄りになり、35歳なのに叔父さん呼ばわりを許容しててエライな、と思った。
    表紙絵に引っ張られて脳内イメージが表紙絵のまんまで読み進めたけど、フケさえ落ちなければかなり好みである。

    一般的に見てそれ(叔父さん)がかなり異様でも、身内的には常態なのでおかしさに気づかないんだよね。分かる。
    優斗の世間知らずに起因する高校生らしい呑気さとか、彼女真紀や元カノ明美や親友陽介らとの高校ライフとか、鄙びていくだけの地方の町の閉塞感とか、よく書けてた。
    叔父さんと優斗のやり取りはほほえましいし、「失敗しちゃったんだ」じゃねぇよそれは過失致死罪だよとか、「叔父さん不運だね」じゃねぇよそれは(以下略)とか、いちいち突っ込みながら読んだ(楽しかった)。
    何より怖いのは、過失とはいえ罪の意識が全くない叔父さんの精神構造だろう。
    ていうか、叔父さんの一方的な話を鵜呑みにしていいんだろうか…叔父さんはこの町で相当暗躍してて多くの町民の弱みを握ってるんじゃないだろうか、とまで妄想した(笑)。

    6編の短編で1年が巡るんだけど、叔父さんの過去とか優斗の今後とか、物語世界そのものに流れるストーリーは解決しない。
    凄く気になるけど、有耶無耶のままだからこその作品の雰囲気なのかもしれない。
    (続きは無いのかな)

    それにしても人がよく死ぬ町だ。

    関係ないけど、新潮文庫の正統派然とした様式と麻耶作品との違和感が半端ない。

    ・失くした御守…この作品のノリを見定めることになる最初のエピソードである。
    名家の箱入りお嬢様が軟禁状態を脱出して恋人と駆け落ちしたと思いきや心中だったと思いきや殺人だったぽい、という話。
    叔父さん、犯人が「早く見つかるといいね」とか言ってるけど、結局叔父さんがお嬢様を逃し、待ち合わせ場所で恋人を過って轢き、転倒した恋人は頭ぶつけて死に、ショックで自殺しようとしたお嬢様を止めようとしたら短刀がお嬢様に刺さっちゃった…って両方叔父さんが殺してる。その感想が「與五さんにはホント悪いことをしたよ」ってのも、優斗の「起こってしまったことは仕方ないよ」って切り返しもめちゃ怖い。その上現場の証拠品を待ち帰ったり証拠隠滅工作したり、完全にクロじゃん。

    ・転校生と放火魔…引っ越した元カノ明美が戻ってきて、優斗の日常もゴタゴタしてきたところに、放火事件が起こる。最初はボヤだったがエスカレートし、ついに放火殺人に発展する。
    四神を隠れ蓑に五獣だった、という事件のからくりには驚かされたけど、うち一件の放火は叔父さんの仕業だった…。なんていうんだろう、良かれと思った行為であれば罪にならないわけないのに、そのあたりの感覚が完全に麻痺してて、怖い。そして真実を聞いても「そうか…」としか思わない優斗、もしかして君がサイコパスかもしれないぞ。

    ・最後の海…医者の次男坊の司は美大に進学したかったのに、長男が不始末を起こしたせいで跡を継ぐ話が浮上する。そんな時父親の首吊死体が発見される。
    2度あることは3度ある、で読者が「どうせ叔父さんでしょ」と考えるのを先回りして優斗に「また叔父さんの仕業なんでしょ?」と言わせちゃう麻耶さん、好き。
    実は唯一叔父さんが関与しなかった事件。

    ・旧友…叔父さんの旧友が恨みを買い、奥さんともども殺される。容疑者は自宅で自殺していたが、実は逆で旧友が妻と容疑者を殺した犯人だった。肝心の旧友はなんで死んだかというと叔父さんと揉み合っているうちに(略)。
    叔父さんと旧友のすれ違った友情を教訓に、優斗に友達の大切さを諭す叔父さん、ちょっと切ない話…って本筋はぐらかしてるよね?

    ・あかずの扉…秋祭りがテレビで紹介されて急に予約で満室となった旅館の客室の準備を手伝うことになった優斗と陽介。作業を終えて旅館の温泉に入っているとどこからともなく死体が出現する。
    はい、犯人は叔父さんです。揉み合ったら相手が足を滑らせて頭を打ちました。
    優斗みたいに「本当に間が悪い事故だったんだね」とは全く思わないけど、事後の証拠隠滅ぶりが過失致死では済まないんだよなぁ。

    ・藁をも摑む…高校の校舎から飛び降りたらしい二人の女学生の第一発見者になってしまった優斗。不仲の二人が抱き合う格好で発見された謎に真紀らがとんでも推理を披露する。しかしそのとんでも推理がほぼほぼ正解、という話。ここでも人が死ぬきっかけになってるのは叔父さんだけどね。「つい彼女が右足を乗せていた丸椅子を蹴ってしまったんだ」って、蹴ってるじゃん。


    あーヤバイ。まとめてみたら改めてマジヤバイ。

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    2020年09月14日
  • 貴族探偵

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    ネタバレ

    貴族探偵と名乗る探偵が様々な事件を解決していく話…。
    しかし、貴族探偵自身が自分で調査したり、推理したりするといったことはなく、従者やメイドが推理していくというちょっと変わった探偵だった。

    短編がいくつかあるというものだったので、読んでいくうちに探偵推理したり、探偵の正体が分かるのかと思ったが最後まで分からずじまいだったのは個人的に残念だった。
    ただ、謎のままにしておくことで想像するという楽しみはあるのかなと思う。

    すらすら読むことができ、どのように推理していくのか楽しみながら読むことが出来た。

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    2020年08月30日
  • メルカトルと美袋のための殺人

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    ネタバレ

    メルカトル短編集。もしかしてこの短編集が美袋くん初登場なのかな?
    文庫の最後に初出一覧があるといいのにな。まさか「瑠璃鳥」が美袋くんのシリーズ初登場ってことないよね?だったらどうしよう……。しょっぱなからやばいやつじゃん。それはメルもだけどさ。

    麻耶雄嵩はこれを含めてまだ三作しか読んでない(しかもすべてメルカトルもの)けど、タイトルのセンスがすごく好き。「メルカトルと美袋のための殺人」というのも、殺人をほんとに道具か何かのように粗雑に扱うこの二人にはふさわしいタイトルで面白い。

    「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」 美袋の恋愛顛末。メルの説明に納得しちゃうのうそでしょ? メルの説明通りだとしたら、ワンナイトの相手としても選び方の無意識やばいでしょ。それに納得しちゃう人格でいいのか美袋くん……。でも大阪から長野までわざわざ車で来てくれるんだからメルも意外と友達甲斐があるのかしらね。

    「化粧した男の冒険」 メル、いくらなんでも……証拠の偽造でしょうが。無茶苦茶でひどすぎて笑う。むしろ犯人はよく納得したな。

    「小人閒居為不善」 これもひどい。というか、「小人」って、誰のことだろう? 暇を持て余してとんでもないDM送って殺人教唆するという不善をなしたのはメルだと思うんだけど、とすると、この「つまらない人」を意味する「小人」が示すのはメルのことだよね。「翼ある闇」が最後の事件となるメルにとって、その他の作品・事件は常にそれ以前に起きたことの振り返りになるわけで、その最後の事件で「ああ」なってしまうメルカトルに対する、「こんなに傲岸不遜な人間だけど、結局のところは小人である」という、作者のものすごく冷たい目線のように思えてびっくりした。麻耶雄嵩のタイトルセンス好きだけど、このタイトルは特に秀逸だと思う。

    「水難」 これも偽名名乗ってるから事件がどうなろうとかまわない、ってひどい(笑) ミステリ的には面白かった。幽霊の扱いは、メルの世界だとそうなのね、と納得しちゃうのがずるい~。メルの力技じゃん。でも面白い。

    「ノスタルジア」 メルの文章力(笑)作中作の中の警部の考え方に、メルの考え方がおそらく結構反映されているのが興味深い。メル、作中に王将に行きたいとか書いちゃってるけど、これそのまんま掲載されちゃうの?(笑)美袋くんも、まあ、裏でも表でも従兄弟のために角膜が手に入ればいいって、そんな無茶な。

    「彷徨える美袋」 これノックスが欲しくて仕組んだな……。うまくやった犯人に対する意趣返しにしたってひどすぎて笑ってしまった。「たぶん殺されたんだろうと思ったね」って、そんな冷静に言うなよ~、友達だったんじゃないの?? 美袋くんもねえ、なんでこんなひどい目に合ってるのにメルとつるみ続けるのか。「いつか殺してやる」って、「水難」で殺人未遂の未遂しかかってるけど(笑)、どっちが先だったのかな。

    「シベリア急行西へ」
    ずいぶんまっとうなフーダニット。でも一筋縄ではいかないのがこの作者らしい。
    この原型を大学一年生の時に書いてたのか。すごいなあ……。
    舞台がロシアってところも面白いな。解説のネタバレはひどすぎるけど。

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    2020年07月27日
  • メルカトルかく語りき

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    ネタバレ

    斜め上を行く麻耶ワールド全開。

    マジでクソ(褒めてる)なメルカトル鮎は、本作品でも相も変わらずマジでクソである。
    クソ人間は好きじゃないので、私が本シリーズを読んでしまうのは麻耶ワールドが好きだからと、一編一編の質の高さゆえであろう。

    本作品では、メルカトル鮎が類い稀なる推理力を発揮して、論理的に犯人がいない(または絞れない)ことを明らかにする。
    言ってることがよく分からないと思うけど、書いてる私もよく分からない。
    普通、犯人がいないという結論に達したら、推理の方が間違ってるってことになるけど、論理は破綻してないので、「犯人がいない」という結論と「メル優秀」という評価が併存できている。
    この奇妙な読後感が、麻耶ワールドの麻耶ワールドたる所以だ。

    場合によっては、誤った結論に誘導されてる気がしないでもない。
    まぁメルならやりかねないと思わせて終わるあたりが、メルがこれまで獲得した人徳(の無さ)のなせる技か。

    真相が解明されてスッキリしたい読者には向かないと思う。


    「死人を起こす」…学生グループが父親の伝で借りた風変わりな物件でお泊まり会を催すが、一人が転落死してしまう。一年後、弔いのために同じメンバーが現場に集って一夜を明かすことになり、ついでに真相を解明すべくメルに探偵を依頼する。しかしその夜、さらにもう一人が撲殺される。
    メルはあろうことか、一年前に転落死した学生が今回の殺人事件の犯人だとする無茶苦茶な推理で関係者を論破。
    もちろん有り得ないんだけど。
    それより、遺棄された(らしい)第三の死体の行方が気になるわ。

    「九州旅行」…美袋くんのマンションの同じ階の一室で住人が殺されているのをひょんなことから発見してしまう美袋くんとメル。小説のネタに困る美袋くんに、メルはネタ提供がてら状況から犯人を推理し出すも、ラストで「あくまでもフィクションの話だからね」と言い放ち、果たして現場に戻ってきた犯人は推理とは全く違う人、というね。
    メルの美袋くん虐めが特に酷い一話。ウィルスが仕込まれてるかもしれないディスクを美袋くんのPCで試し(そして壊し)、巧みな話術で美袋くんを犯人が戻る現場に留まらせるメル、最低である。

    「収束」…幻の書カテジナ書を入手した男と、彼を宗主と崇める若者たちが暮らす島。その島から戻らない娘を取り戻すよう依頼されたメルだったが、島に渡った日の夜にその宗主が射殺される。メルは推理で次に起こるだろう殺人の被害者と犯人候補を各三人にまで絞る。終わり。
    三人に絞れたのはさすがだが、一人に絞れないのはメルの限界なんじゃなかろうか。でも堂々と「どれもが等しい確率で起こりうる」「明日になれば分かる」と言い放つメル、最低である。
    真犯人はみすみす第二の殺人を起こして、連続射殺事件に発展するのだが。
    探偵がいながら事件が未然に防げないからくりを見てしまった気分。まぁメルが依頼されたのは依頼人の娘の奪還であって、事件を解決する義務はないんだけど。

    「答えのない絵本」…放課後、メフィスト学園の四階で物理の教員が撲殺される。四階にいた生徒は16人。そのうち二人の親から別個に事件を解決する依頼を受けたメルは、さまざまな条件から各容疑者の犯行可能性を潰してゆき、しまいには誰にも可能性が残らない、という話。
    これなんか確実に誤った推理に誘導されてる気がしてならない。麻耶さんはちゃんと犯行可能な犯人をひとり用意してるんじゃないだろうか。
    じっくり考えたくなる。

    「密室荘」…美袋くんとメルがメルの別荘で寛いでいると、地下室から絞殺体が発見される。別荘は完全な密室で、犯行可能なのは中にいたメルと美袋くんだけ。お互いに自分はやってないと主張し、メルは不条理な死体をセメントで埋めて、無かったことにしようとする。
    この話は滅茶苦茶だ。メル、マジでクソである。
    ていうかメル別荘持ちすぎじゃね?

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    2020年04月19日
  • 鴉

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    山下和美のランドが脳裏を過ぎりつつ、独特の閉鎖的世界観に魅了される。面白くて引き込まれるけど、読破後に解説プリーズな麻耶作品。

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    2020年04月14日
  • 鴉

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    ネタバレ

     殺された弟、襾鈴の足取りを掴むため、「大鏡様」を神と崇める独特の宗教が信仰されている村に潜入した珂允。
     その村では夕刻になるとカラスが人を襲うのだが、そのせいで祭り事が中止になった翌日、男が死体で発見される。
     よそ者ということで疑いの眼差しを向けられる主人公だが、さらに第2、第3と殺人が起こっていく。

     探偵役は主人公かと思いきや、メルカトル鮎が出てくるし、謎解きもメルカトルが行うため探偵はメルカトル鮎だろう。


     トリックについては、複数の人物による一人称(珂允、橘花、櫻花)を使うことで、珂允視点では『赤色』と描写されているものをを村の住人である橘花が『緑』と称することにより、村人のほとんどが色盲であると判明し、事件の手がかりを掴むこととなる。
     色盲のトリックはダイナミックで上手いと思ったが、橘花が『紫色』を認識している描写があり、赤色が認識できないのに赤と青の混ざった紫が認識できるのだろうかと少しだけ疑問には思った。
     しかし、自然現象による密室や、暗示による放火殺人などの作品よりも、ロジックはきっちりしていたと思う。
     人を襲うカラスは説明がなかったので自然現象で、人を殺すと浮かぶ痣は信仰心による暗示かもしれないが。
     さらに、村での殺人とは関係がないが、襾鈴の殺人と関わる複数の一人称によるトリックとして、村の外に出るという夢を持つ橘花のパートの次に『櫻花』という橘花によく似た名前の兄の奔放な弟に対する憎しみの心境を語らせることで、『櫻花』が『橘花』の兄であると思わせているが、終盤メルカトルによって『櫻花』は『橘花』の兄ではなく、『珂允』自身の過去であると判明する。
     一瞬混乱したが、そう知らされると、確かに橘花の一人称中に、兄の名前はどこにも出てこなかったし、櫻花の一人称中にも、弟の名前は出てこなかった。
     名前が似ているからといって、同じ時代の兄弟とは限らない。終盤で、櫻花に殺されたはずの橘花が出てきたのは、珂允の妄想ではなく、橘花は殺されていなかったからなのだ。
     珂允(カイン)と襾鈴(アベル)と聞くと聖書の、兄が弟を殺す人類最初の殺人を思い出すが、よりによって男兄弟にそんな名前をつけるなんて親は変わっているなと思っていたのだが、弟を殺し、それを忘れた櫻花が無意識に自分の罪の記憶から偽名として名乗ったのかもしれない。
     主人公は死ぬし、主人公を庇った親切な村人一家も殺される。
     決して後味は良くないものの、散りばめられた伏線が見事で一度読むとすぐもう一度読み返したくなる作品だった。

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    2020年01月28日
  • メルカトルかく語りき

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    摩耶さんの本が面白かったので、初めてメルカトルという探偵物を読んだ。
    本格ミステリといわれている作品は、少し噛み応えのある硬い印象がある。
    一般のミステリは結末が明かされていく開放感は謎解きが探偵でなくてもいい、登場人物たちの関係を解いて行くと、次第に謎が解けるといった作者の意図で解決することもある。

    メルカトルという探偵は、天性のひらめきと判断力、事と事を結びつける、特殊なニューロンのような物質を持っている。
    ということは探偵になるしかない人物のようで、そのいやみで高飛車で歯に衣着せない物言いといい、不可解な謎にでも出会わなければ逢いたくないという、実に可愛げがない人物に仕立てられている。
    人間離れした趣味嗜好の持ち主だが、慣れれば、というか興に乗ればそれが病みつきになる魅力になりそうな気もする。
    ワトソン役は憎めない人柄で即座のひらめきはないが、人柄としては普通人に近い。

    この5編の短編集は、面白い仕掛けがさすがに理系工学部出身の作家だと再認識した。


    「死人を起こす」
    高校生たち6人が山中の別荘(カレー荘)で一夜を明かす。左右を線路に挟まれ、一階はレンガの壁の洋風建築で二階が純和風の木造建築という風変わりな建物だった。部屋には入り口の引き戸の内外に襖絵のような日本画が描かれていた。
    二階に寝ていた一人が窓の下で死んでいた。それから一年後、メルカトルが呼ばれ死因を解明することになる。当時の状況は何かスッキリしない思いが残っていた。そしてまた一人が死んだ。自殺か他殺か、他殺なら誰が殺したか。部屋の配置、両脇にある線路を通過する列車の時間、探偵は短時間で結果を出した。

    「九州旅行」
    美袋のマンショの端の部屋でメルカトルが「血のにおいがする」といった。中で男が死んでいた。
    死んだ男はキャップの閉まったマジックペンを持っていた。凶器らしいガラスの灰皿、宅配の不在通知、見つけた小物から様々に推理をめぐらす。美袋は予定の原稿が早く上がったので九州旅行を計画していた。解決が長引けば時間がなくなる。メルカトルは推理を提供して話のネタにするように言う。そして意外な結末が訪れる。

    「収束」
    島の宗教施設を訪れた二人は、台風に閉じ込められる。中庭で宗主と呼ばれる指導者が死んでいた。教会にはカテジナ書という幻の書物があった。目を通すと人神になって甦ると言う。
    信者たちには様々な過去があり、島に來てからも複雑な人間関係があった。メルカトルは犯人の心理をシミュレートしながら推理する。

    「答えのない絵本」
    アニメやギャルゲーオタクで注意を受けていた、物理教師が理科の準備室で死んでいた。死亡時間に周りの4教室にいた生徒は20人。学校内部で処理するためにメルカトルが依頼を受ける。物理教師に来客があり、死亡時間の前後10分おきに呼び出しの校内放送が4回流れている。それを手がかりに生徒の行動を調べ、一人ずつ消去していく。

    「密室荘」
    二人は信州のメルカトルの別荘に来ていた。メルカトルは朝からセメントが届くといって待っている。訳を聞くと台所の床を上げて、地下室に入っていった。そこに男が首をしめられて死んでいた。
    窓は全部鍵がかかり密室状態だった。
    犯人は君か?僕か?
    「密室には死体という不条理が存在する。この不条理を解決しない限り私か君かどちらかが犯人であると言うジレンマがつきまとう」
    「不条理の根源は地下室の身元不明の男の死体だよ」
    思いがけない、実に意外な方法でメルカトルはこれを解決する。



    面白かった。こういうスタイルだってありなのだ。メルカトルの一見奇矯な人柄も、ある意味愛すべきではないかと思えてくる。
    犯人はこの中にいない、ということは外の人々全てが被疑者ということもある。
    メモしながら読むしかないという事件相手に、勘の鈍い読者(私)はメルカトル(作者)に頼るしかないと言うのも我ながら潔い感じで、その上事件が起きる環境の描写も何かありそうで、依頼されてメルカトルが来るまで、お決まりの事件はいつ起きるのか引っ張られ具合もいい。
    だが一番の読みどころは、犯人探しではないという、いや、それはそうなのだが、最終でメルが下す結論の、珍しいアイデアに負けてしまうことだ。

    「収束」は読みはじめから引き込まれ、その構想はどういうことかと二度読みしてしまった。
    最後の「密室荘」でこの短編集のアイデアの意味を知ることが出来た。

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    2020年01月13日
  • あいにくの雨で

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    青春ミステリではあるんだろうけどそこはそれ麻耶先生だから、というミステリ。それにしても酷な結末だなぁ…。最初にいきなり密室トリックが暴かれる章が書かれているが勿論それも結末で読者が得られるカタルシスに一役買っている。これからこの二人はどうなるんだろう、という余韻がすごい。

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    2019年12月02日