麻耶雄嵩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレメルカトル鮎の神出鬼没っぷりはそういうものとして諦めるとして、解き明かした(と思った)謎が綺麗にひっくり返る不意討ち感が気に入った。
殺された弟・襾鈴の真相を探るため、弟が滞在していた地図にない村に潜入する珂允。そこは大鏡様を信仰する村だった。そのうちに起きる、殺人のないはずの村で起こる殺人事件。半年前の村人の自殺と絡んでいそうなのに珂允は犯人に仕立てあげられていく。
いったい何が起こっているのか?
果たして真相は?
みたいな話。
ちょっと浮世離れした時代錯誤的な村の雰囲気は、何となく伊坂さんの『オーデュポンの祈り』みたいだった。
でも麻耶ワールドは、ずっとおどろおどろしい。
ミステリを読み慣れちゃって、櫻花が橘花の兄だと思わせるミスリードに引っ掛からなかったのが、逆に残念だった。もっと驚けたのに。
麻耶さんの話って、高い確率で宗教が絡んでくる。
で、だいたい教祖的な人が犯人なの。
途中でがっかりしかけたけど、宮の御簾の奥にメルが座ってた時は本気で「メル教祖だったの??」と思ってしまった(思う壺)。
大鏡様信仰に隠された村のシステム、村人の遺伝子的欠陥(色盲)、鬼子の正体(正常識別者)、大鏡様の正体(野長瀬)、そういうのがとても論理的で唸ってしまった。
メルはやっぱり有能。能力は。人として駄目だけど。
でももはやメルカトル鮎は私にとって、登場するたびに『翼ある闇』での死に様がフラッシュバックして、可哀想な人にしか見えなくなってる。
珂允=櫻花は15年も前に弟を殺していて、珂允=襾鈴なわけで、自作自演というか、多重人格者になっちゃってるんでしょ。
病み人じゃん。
後出しで茅子が襾鈴の恋人だったとか言い出すの、いかにも病んでる人っぽい。
ひたすら茅子さんが不憫すぎる。
弟と出来てるだろ、とかワケわからないことで責められてたんでしょ。
離婚して正解だよ、事故に遭ったと思って幸せになってほしい。
結局鴉は何だったのか。
村人に知られずして綻びかけていたシステムに呼応するかのような振る舞いは、案外と神の遣いというのは正しいのかも、という余韻を残してる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ貴族探偵シリーズの第二弾。今回は新キャラの女探偵、高徳愛香が登場し、多重解決ものとしての様相を呈している。推理は前作よりも複雑化しているが、女探偵の消去法を駆使した推理のほころびを、貴族探偵の使用人が訂正するという分かりやすいテンプレになっており、毎回貴族探偵を犯人だと誤認するという一種のシチュエーションコメディのような趣もある。それがある種の様式美になっており、その点は前作よりも面白い。
本格としての練度も高く、特に「幣(ぬさ)もとりあへず」は誤認トリックの仕掛けが絶妙で、地の文では一切嘘をついていないため、簡単に騙されてしまった。認識の違いがそのまま誤認に繋がり、それが後に訂正され真相が明らかになるというのは、多重解決ものならではの鮮やかな手腕である。三度貴族探偵を疑い、その都度煮え湯を飲まされてきた女探偵だが、最後の短篇「なほあまりある」でようやく女探偵は真相へと辿り着く。探偵としての責任から逃れ続ける貴族探偵が、事件を隠匿する側に立つというのも面白いが、コッタボスがその看破の鍵となるのも良く、隠匿した理由も「女性の部屋に行ったことが知られれば相手の名誉に関わるから」という紳士故の動機というのがキャラクターに合っていて素晴らしい。またこの短篇は最後にふさわしくいくつかの重大なテーマを内包している。一つは「女探偵は汚名返上できるのか?」と、もう一つは「下僕がいない場合に貴族探偵は推理ができるのか」である。前4作のお約束である貴族探偵を疑うという流れを踏襲しつつ、無能で終わるのかどうなのか読者にギリギリまで悟らせなかったのは上手いと思った。ドラマ版は恐らくこれを最終回にするのではないだろうか。そして一見すると女探偵の勝利に見えたかのようでいて、実は女探偵は貴族探偵に依頼されてここまで来ていたという、貴族探偵のひっくり返しは素晴らしいオチだった。探偵は依頼がないと探偵にはなれず、また探偵が唯一の真相を確定できないという命題を盤外から仕掛けることで嘲笑った至高のオチといえるだろう。
本格ミステリとしても面白く、何もしないのに存在感だけはあるという貴族探偵のキャラクターを生み出しただけでも価値のある作品だと思う。特に最後の短篇の出来は単なる殺人事件だけに留まらず、貴族探偵の思惑も絡んでおり、謎も事件も魅力的でオチも最高だったので☆一つプラス。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ控えめに言ってクソである(褒めてる)。
「探偵は善人である」というミステリの暗黙の設定を変えてみた、という作品。
銘探偵メルカトル鮎、これ以上にない極悪人である(褒めてる)。
『翼ある闇』以降、メルの出てくる作品は読んできてるけど、まぁ確かに個性的だったしヤバさの片鱗は見せてたけど、メルにスポットを当てるとこれほどまでにクソ(褒めてる)が際立つとは。
ひとつ分からないのは、美袋くんがなんで友人を続けてるのか、ってところ。
例えば変人探偵・御手洗は、変人だけど根底に優しさがあって、人としての魅力に溢れたキャラクターだけど、メルは全くのクソ(褒めてる)でしかない。
メリットとしたら、事件に遭いやすい体質の美袋くんの嫌疑を晴らしてくれる(しかし友情からではない)ところくらいじゃないか。
まぁ重要かもしれないけどさ。
メルのキャラが立ちすぎてて、美袋くんが没キャラになりすぎてるのが残念。
主体性のない子、ってところが特徴か。
各短編のミステリとしての骨子は本当にしっかりしてて、素晴らしい。さすが麻耶さんである。
その上での味付け(クソメル)だから、こんなに読ませる作品になるんだろうなぁ…。
「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」…美袋くん初登場作品。旅先で知り合った女が殺されることが予知できちゃう話。すごくシリアスな展開だった。睡眠学習的な作用を取り込んだミステリとしては異色作だと思う。
この時の美袋くんは普通の男子っぽかったのになぁ…。それにしても被害者の佑美子は軽い女だ。
「化粧した男の冒険」…他殺体(男)に化粧が施されてる話。証拠を捏造するメル、マジでクソである。
「小人閑間居為不善人」…暇にかまけて事件を誘導するメル、マジでクソである。
「水難」…十年前の土砂崩れで犠牲になった女学生が幽霊になって出てくる。幽霊が幽霊で終わったのがなんか新鮮だった。
それにしても事件の全容が分かっても解決しないメル、マジでクソである。
「ノスタルジア」…メルの書いたミステリを読んで美袋くんが犯人を当てなければいけない話。メルの思惑のとおりに読む力のある読者なんてどのくらいいるだろう。メルの言うように世界のほとんどの人間は凡人なんだから、大衆をクライアントにしてるプロならそこは考えないと。その意味でメル作のミステリは破綻してる(メルはプロのミステリ書きしゃないからいいんだけど)。
ところで、メルの書く文章は結構面白い。ただこれをプロが書いちゃダメだ。まるっと自分の名前で発表させられたであろう美袋くんが不憫でならない。
「彷徨える美袋」…友人さえも駒として扱うメル、マジでクソである。
「シベリア急行西へ」…二重にトラップが仕掛けられた殺人、犯人(冤罪)にたどり着く最初のトラップがすでに高度で、このトラップを考えた犯人に感心した。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ貴族探偵シリーズ第二弾となる連作短編集。
ライトに楽しめる一冊。最初の『貴族探偵』のノリが好きだったので、この作品も楽しめた。
女探偵・高徳愛香が行く先々で貴族探偵に遭遇する水戸黄門的展開、ベタだけど好き。使用人が貴族探偵を「御前」と呼ぶのも、ちょっと古めかしいのが新鮮でいい。
話の骨格や文体がしっかりしてるから、チャチにならないんだろう。
愛香の推理がことごとく貴族探偵犯人説にたどり着くの、笑える。愛香がどこまでも真面目なのが、却って笑いを誘うというか…。
多重解決モノでもあり、館モノでもあり、たまに叙述トリックがあったりと、何層にも仕掛けが施されていて読者を飽きさせない。ただ、五話中三話の舞台が誰かの別荘なので、読み終わってから思い出そうとすると混ざる。死体の発見されたシチュエーション(犯人とお茶を飲んでたらしい、とか)、死体発見後の展開(天候不良で警察がすぐに来れない)、動機(痴情のもつれとか)なども似てて、余計に混ざる。
・白きをみれば…愛香の親友の別荘の、伝説の古井戸がある地下室で招待客の一人(学生)が死んでる話。
・色に出でにけり…本書にたびたび登場するワガママお嬢様依子の別荘で、招待した恋人の一人が死体で発見される。真相が依子の家をメチャクチャにするものだったけど、大丈夫だったんだろうか…。
・むべ山風を…大学の研究室で院生が殺される。ていうか、愛香の行く先々でヒト殺されすぎ(笑)。
・幣もとりあえず…民間信仰的な「いづな様」を祀る旅館での殺人。これが叙述トリックになっていて、最初読んだときは理解できずに、誤植だと信じて疑わなかった私…。名前が入れ替わってるネタは『貴族探偵』にもあったね。動機にもなってるネット世界でのトラブルは、愛香の語りで読者は初めて知るので、ちょっと行き当たりばったり感があったな…。
・なほあまりある…依子の遠縁の別荘で二人も殺される。これ二人目が殺されたのって間接的に貴族探偵のせいじゃん? 変なところから部屋に入ってくるから…。 -
購入済み
アンチミステリの定番
麻耶雄嵩のデビュー作でありながら、初めて麻耶作品に触れる人にはお勧めしない。しかし本格ミステリを幾つも読んでそろそろ目新しいものを読みたいと思った方には、是非一読頂きたいと思う。読んで、壁本と思うか面白いと思えるか評価が分かれる作品ではあるだろう。
館モノ・いわくありげな旧家・テンプレート的な名探偵と助手のコンビと三拍子揃えた、絶対に真犯人を見破れないミステリ。 -
Posted by ブクログ
現在、テレビでドラマ放送されているのに合わせて、購入。
前作『貴族探偵』から、新たにライバル役として、女探偵が登場。と言っても、貴族探偵こと御前様は女探偵のことを何とも思っていないご様子だが。
調査も推理も使用人任せでひたすら愛に生きる貴族探偵が、女探偵を小馬鹿にしてからかうさま、気障で嫌味な物言い、神出鬼没な登場の仕方が見所になっている。
ミステリ―としては、前作の方が真相の意外性のあるものが多く、本短編集は論理的推理を前面に打ち出して、真相自体は地味なものが多い。探偵が示すロジックの過程を追うのが面倒、という人には面白くないだろう。
女探偵のダミー推理の方も楽しめる。
「白きを見れば」
"鬼隠しの井戸"のあるガスコン荘で起こった殺人事件。
梁に残った凶器の跡(犯人の身長)、スリッパで踏みつけられた血の跡、停電の時刻のアリバイ、紗知のボタンを入手できた人物、シャッターを片手で持ち上げた理由などからの消去法による犯人特定の推理。執事山本の推理は逆転の発想によるものだが、○○が自分のスリッパを履いていた理由が説得力に乏しい。
「色に出でにけり」
三人の恋人を家族に会わせるために別荘に招待した"女王様"依子。その内のひとりが自殺を装って、殺害される。
タオルが違う色に入れ替わった謎、臭いと氷の解け具合から推定された犯行時刻、手帳が盗まれた謎。
手帳が盗まれた謎は面白い真相ではあるが、ある方面の専門知識がないと推理できない。
使用人として、料理人の高橋が初登場。
「むべ山風を」
大学の研究室で起こった殺人事件。
シンクに残されていたティーカップの色、ゴミの分別を知らなかったことから熊本組と推定されること、死体発見時の被害者の位置と上座・下座の関係などから紡ぎだされるロジック。矛盾を解決する逆転の発想はなかなかのもの。
「幣もとりあへず」
"いづなさま"に願い事を頼むために、旅館に集まった6人と、その付き添いの貴族探偵と女探偵。6人の内のひとりはネットで話題になった人物。ひとりが浴場で殺される。
女探偵の説明を読んでいると、ある箇所で「あれ?」と混乱。よく考えてみると、「作者は地の文の中で嘘を書いてはいけない」というルールが守られたためであることがわかった。実際に、前に戻って、確認してみると、ちゃんとルールが守られていた。書物で読むよりも、ドラマで見た方がわかりやすい作品の一例。
「なほあまりある」
ウミガメの産卵を見学するために、無人島の別荘に集まった人たち。女探偵は謎の人物に招待される。そこには貴族探偵の姿も。連続殺人が発生するが、使用人不在の中で、いよいよ貴族探偵自らが推理を披露するのだろうか……。
テラスから部屋まで続く濡れた痕跡、バラの花を動かした理由、別荘の管理人が殺された理由などから、女探偵が推理を展開するが……。
ラストのオチが何とも痛烈。