伊藤亜紗のレビュー一覧
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目が見えないことが当たり前の日常ではどのように物事を捉えているのか、目の見えない人に対して目が見えている人が(無意識のうちに)陥りやすい誤解などにはどういったことがあるのかが知りたくて読みました。少し物足りなさを感じましたが、触れずに楽しむ美術鑑賞(本書では「ソーシャル・ビュー」と呼んでいる)については知らなかったので、知ることができて良かったです。「見えないことと目をつぶること」の違いについては、三脚と四脚の椅子が例に挙げられて上手く説明されており、なるほどと腑に落ちました。目が見えないこととは関係ありませんが、著者の専門である「美学」というのも初めて知りました。
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Posted by ブクログ
数年前にNHKスペシャルか何かで生命をテーマにした番組に出ていた著者がずっと気になっていて、何か一冊読んでみたいなと思って読んだ本です。
期待を裏切らず、面白く興味深く読みました。
著者は「視覚障害者」と言わず「見えない人」と言っている意味が、とても分かりやすく述べられています。
見えないことが全て悪いことではない、捉え方が違うだけで、むしろ晴眼者(見える人)よりも多角的に事物をとらえ理解していることは尊敬に値すると思います。
見える人向けに作られた社会なので不便なことがあるだけで、見える人より劣っているわけではない。私たちは見えているけれど、それは一部分でしかないということを感じ、世界が少し -
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障害者と聞くと重く感じてしまいがちだが、本書は視覚障害を1つの特性、生き方として軽やかな語り口で綴っている。
著者の見える人と見えない人の違いを面白がる、見えない人を特別視するのではなく、ご近所さんのように捉えるという視点がとても良かった。
見えない人がハンデを負っているのは事実だが、彼らは彼らの生きる術を持っている。制限がある分、主観を交えずに客観的に物事を捉えると同時に、柔軟に対応してある。
「自立とは依存先が多いこと」という文章にハッとさせられた。これは健常者も同じである。人は1人では生きて行けず、社会は支え合いによって成り立っている。
本書を通して、今まで知らなかった生き方、世界の捉え -
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NHK Eテレ 『理想的本箱』で紹介。
「日本語には触覚に関する2つの動詞があります。 ①さわる②ふれる 英語にすると どちらも「 touch」ですが、それぞれ 微妙に ニュアンスが異なっています。 傷口に「さわる」というと、なんだか痛そうな感じがします。 さわってほしくなくて、思わず 患部を引っ込めたくなる。 では「ふれる」だとどうでしょうか。 傷口に「ふれる」というと、 状態をみたり 、薬をつけたり、さすったり、そっと手当をしてもらえそうなイメージを持ちます‥」
こんな、書き出しで始まります。何やら興味を持ちませんか?
「ふれる/さわる」「ふれられる/さわられる」とはどういうことな -
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これまでの筆者の本とは少し様子の違う内容となっています。主に体の学習やできるようになることについて、最近のテクノロジーを通して見えてきたことについて書いている印象です。
紹介されているテクノロジーが興味深いことはもちろん、それを通して身体がどのように学習をしており、できるがどのように作られていくのかを見る視点となっている気がしています。
特に技能向上の行き詰まりに対して自分のこれまでの運動の枠から出た運動の仕方を示すことで枠から出ることなどは興味深かったです。自分だけの理論では自分の枠から出れず、言葉だけだと枠から出難いが、即時性を持ったテクノロジーによる学習がそれを可能にするなどは可能性を大 -
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大塚国際美術館に行くにあたり、今まで全く縁のなかった西洋美術について色々勉強していた時に出会った本。
ギリシャ神話や聖書、画家たちの経歴などを知ることで鑑賞に厚みが出てはきたけれど、この本に書かれてあるような視点こそ、美術鑑賞には必要不可欠な要素だと思う。世界史が好きで、それと結び付けて鑑賞出来たらいいなと思っていた。
「美術って、その時代を生きた人の感じ方が真空パックされているタイムカプセルみたいなもの」
史実だけでなく、その時代の人の感性までも感じ取ることができたら、こんな素敵なことはない。次回に美術館に行った時は、前回とは全く違う見方ができそうだ。 -
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「できる」ということはどういうことなのか、科学的な視点から論じている本。
五人の科学者へのインタビューをもとに、著者が考える「できる」論が書かれていて、興味深い話が盛りだくさんでした。
ピアニストの脳と指と「できる」ということ、桑田真澄の投球コントロールから得られること、リアルタイムにコーチングする技術、(ついていないはずの)尻尾をコントロールできるようになる不思議、声を出さなくてもアレクサに指示を出せる?…。
昔なら、ドラえもんがポケットから出してくれたようなテクノロジーが、今は現実のものとなっていて、脳と体の関係が少しずつわかっていく。そして、その技術が、障害のある人への助けになった