伊藤亜紗のレビュー一覧
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「利他」に偽善的なものを感じつつも、必要なものだよなあという気持ちもあり、興味のあるテーマなので読んでみた。
正直3章以降は難しすぎたのだけれど、伊藤亜沙さん、中島岳志さんの文章に、何度も視野を広げてもらった。以下、特に印象的だった部分のメモ。
伊藤亜沙さんの文章では、効果的利他主義という考え方を知った。徹底的な「評価と比較」をして行う利他だ。
例えば、他者のために働きたいと考える若者が、限られた給料のNPOに就職したりせずに、ウォール街でお金を稼いで寄付する方を選ぶというような考え方となる。
利他の原理を「共感」にしないのが目的らしい。共感によって行う利他では、ふだん出会うことのない遠い国 -
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ネタバレこれも脳の多様性なんだろうなーと思いながら、
目の見えない人に焦点を当てるすることで、そのおもしろさをあらためて感じました。
本書はとても読みやすく、空間、感覚、運動、言葉、ユーモアの5テーマから、著者が5人の今は目の見えない方々とのやり取りなどを通して気づきを受けた言動などを組み合わせ、見えない人が世界をどのように見ているかを、考えていく作品になっています。
とくに現代社会のさまざまな事柄が、視覚に偏重気味であることにも気づかされ、だからこそ、目が見えない場合を想像したり、目の見えない人の脳や身体のつくりを学ぶことは、普段の当たり前の世界を相対化させるための触媒になるのですね。
言葉 -
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見るために使われる脳の機能を、他の情報を得るために使われる。「何を使おうができれば良いじゃないか」という筆者の言葉が好き。
筆者自身は視覚障害者ではなく、彼らの堂々とした言動に毎回驚かされるという。
個人的に面白かったのは、電車が急ブレーキしたときに視覚障害者はしっかりと軸がぶれずに立っている話。細かな振動も足の裏や音で敏感に反応しているから、事前にある程度予測ができるそう。
これは動物にも似たところがあるのでは?
よく留守番しているペットが、飼い主が家に近づくだけで(まだドア付近にではないのに)敏感に反応する。これも地面に近いからこそ、さらに「見える」世界があるんだろうなぁ。ロマンだ。 -
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「できない→できる」のためには未知のやり方で体を動かす→意識が正しいやり方を体に指示する→しかし未知なので意識は正しくイメージできない→体はそれを実行できない
と言うジレンマを超えるジャンプ。これを可能にしているのが、体の「ユルさ」。体は、意識を超えて「ゆく」のです。
これがこの本の趣旨。この実践方法として色んな具体的な例、研究者を紹介している。
例えば、元ジャイアンツピッチャーの桑田のピッチングフォーム、バーチャルしっぽを振る実験、など医療に応用したり、アスリートや演奏家の技術向上に使ったり、新たな科学技術のヒントになったり、面白い実験ばかりだ。とても書ききれない。
読んでいて、ひと -
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タイトルの通り、「見えない」人が世界をどう「見て」いるのか、空間・芸術・スポーツ・ユーモアなどの観点から書いている本
前書きにあったとおり福祉の本ではなかった
障害はアンタッチャブルなものではないのでは、距離を置いて大事に大事に接するのではなくもっと近所の人と話すみたいに接したらいいのでは、という筆者の考えが伝わってきた
引っ越した先がたまたまよく白杖を持った人を見かける土地で、でも白杖がなかったら気づかないくらい待ち合わせしたり集団で笑いながら歩いてるから、どんな風に世界を見ているのかなと思って読んだ本
普段から地形を立体的に捉えてるから富士山のイメージも3次元の円錐形、対して見える人 -
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新しい発見の宝庫だった。
目の見えない人の世界の見方、所謂、環世界を味わうことができたと同時に、障害者との繋がりの選択肢が開けた気がする。
どうしても健常者は障害者のことを「自分とは違う存在」として福祉的に接したり、距離を取ってしまったりすることがある。
その凝り固まった先入観や距離感を、視覚障害のリアル知り、理解することでほぐすことに本書は成功している。
視覚障害者の身体の使い方や世界を「見る」方法、健常者と共に「作り直す」新しい美術鑑賞など、知らなかった事をたくさん知ることができた。
当たり前が覆される、それとして認識していたものに新しい見方が生まれてハッとさせられる。そんな感覚を覚え -
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ネタバレ薦められて読んだ本。
いちばん影響を受けた本であり、価値観をひっくり返してくれた本、と聞いて読んでみようと。
自分の考えがいかに浅かったか。そりゃそうだよね、と驚きの連続。想像力の欠如に情けなくもなったけど、それよりすごい!おもしろい!の方が強くてポジティブに読ませてもらった。
障害は欠損ではない、というようなニュアンスの言葉はよく聞くけど、その意味を本当には理解してなかったように思う。そう思うべき、そうであるべき、というか教科書的なというか。
4本足の椅子から1本抜いたら倒れるけど、もとから3本足で作られた椅子はバランスの取り方が違うので倒れない、という話がわかりやすかった。
見える人 -
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脳に作用して体の「できる」を研究した例を挙げている。「脳を操る」の領域であり、悪用される危険性に少し言及しつつも、スポーツや学習、リハビリなどに非常に有効な方法を示している。
非常に読みやすい。VR技術を使っての練習で効率よく「わざ」を習得できる話など、根性論だけで間違った方法で練習して身体を壊してしまうことを防げるという話が出てくる。脳は「学習することはできても、身につけてしまったことを忘れられない」習性もあるというのが印象に残った。勉強にしても、ここで紹介されている学者の一人は小学生の頃、「効率よく学習効果を出すために、先生の教えることを感動して聞くように自己暗示をかけていた」とか。
技 -
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【目次】
第1章 体の声を聞く
第2章 体、この不気味なもの
しゃべれるほうが変。
勝手にやってくれてる
ふたつの「ん」
「ん」と「ぶ」のあいだ
体の身になって考える
体のアイデンティティ
第3章 体がエラーを起こす
連発
体が試行錯誤してる
吃音は「あいだ」で起こる
「伝える」と「伝わる」
楽にどもれている
第4章 恥ずかしいのはいやだ
難発
三島由紀夫『金閣寺』
眠る前の孤独
敵でもあり味方でもある
自分をつくる
第5章 自分らしい体
言い換え
固有名詞の壁
本当じゃない自分が出てくる
ずれるから発見する
どもることで自分をとりもどす
体の多様性
第6章 メタファーを味 -
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伊藤亜沙さん著「目の見えない人は世界をどう見ているのか」
久し振りに実用書的な本に手を出した。
なおすさんのレビューを観て自分も読んでみる事に。かなり評価が高い本なので年末に購入し内容に期待していた。
自分の経営する居酒屋に今は亡くなってしまったが先天的に全盲の方が頻繁にいらしていた。その方はただ目が不自由というだけで普通に飲食していたし、ベロベロに酔っぱらって帰る事も多かった。
「右から皮、ネギマ、つくねですよ」とか言ってあげれば手探りで串を触りながら焼鳥を楽しみ、毎日替わる「本日のおすすめ品」や「本日の日替わりメニュー」等の黒板等に書き込んでいるメニューも口頭でお勧めすれば他の健常者の方 -
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数値化すればするほど減っていく利他性。言動が内発的な利他性から、外発的もしくは内発的な利己性になってるから?
人は信頼してる時、他者の自立性を尊重。悩んでる人に対して諭すことなくツンツンして自らの解決を待つ感覚
利他とは聞くことを通じて相手の隠れた可能性を引き出すこと、と同時に自分が変わること
二つそれぞれあるのに、不ニであり、一に似たのも。主語が2人の考えに似てるような気がした
現代では、論理上の矛盾がないことが正しさの証とされるが、現実世界の説明としては非常に脆弱。むしろ矛盾のまま表現できる方がよほど現実的です。
計算された利他は、本質的な意味では利他にはなりえない。
自分がした -
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東京工業大学のなかにある人文社会系の研究拠点「未来の人類研究センター」に集まった研究者のうち、「利他プロジェクト」の5人のメンバーでそれぞれ<「利他」とは何か>について執筆したものをまとめたものが本書です。発刊は2021年。
「利他」といえば、「利己」の反対の行為で、つまり自分の利益を考えて振舞うのではなくて、他者の利益になるように助けてあげること、力になってあげることとすぐにわかるじゃないか、とせっかちにも僕なんかはすぐに答えを出してしまったりするのですが、本書を読んでみると、一言に「利他」といっても、たとえばそこに「利己」が裏面にべったりとひっついていることがわかってきて、かなり難しいの