又吉直樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最後に、自分は人間が拙い、と表現してるのが心に残りました。未熟とか幼いとか弱いとか、そんな言葉で片付けるのとは違っていて、不器用で下手くそでもあるががままでいていいと優しく包み込み、背中を支えてくれるような強さを与えてくれました。そもそもこの拙さは、社会生活における様々な経験を経て形成されたものだと思うし、単純な人間の青さとは違うように思う。今もってる漠然とした不安や悩み、矛盾を消化できないモヤモヤ、たびたび邪魔をしてくる自己意識など、それらはおそらく、ある生きづらさの中でも自分が大事にしたいと信じてた価値観や関係性で生まれたものだと思うからこそ、みんな抱えたまま生きていい。これまで否定したかった自分を肯定させてくれるような小説でした。
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Posted by ブクログ
本当に素晴らしかった。間違いなく今年1番の本です。
又吉先生の作品は火花以来の2つ目で、読んで冒頭は火花のような展開と内容になると思いましたが全く違いました。今作は極めてストーリー性があり、展開もしっかり有る内容でした。
主人公を通して、様々な瞬間への感情を言葉にする力が本当に素晴らしいです。
自分に経験があった感情や、それに近い感情がスルスルと言語化されているようで、過去の自身の形の掴めない感情が、形を帯びた様な感覚になりました。
もちろん自分が経験したことの無い事すら、自分にあったかの様に思う程でした。
作品は大阪が舞台ですが、今作も火花同様にどこか又吉先生の人生を少し変えて、経験したことを書いてるかと思いました。しかし内容からそれはあり得ず、少しばかりは重なったとしても、やはりこのフィクションを読者にそう思わせるところは、又吉先生の感情の言語化と、抽象を具体化する力にあるかと思います。
何故フィクションを、作者が経験した人間かの様な言葉と、感情でここまで表せるのか?
そして読者にもその様な気持ちにさせるのか驚きでした。
決して主人公が自分の様だと重ね読むのでは無く、全く別の人間と終始読んでいたのに、一方では自分に起こった内容であると感じるさせるって、凄くないですか?
又吉先生の他の作品も見ていきます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めた時はなんというか文章に起伏がなくて、自分の好みではないかもと思いながら読むことになったが、しっかりと最後まで読むと等身大であるからこそ描けるものもあるんだと説得された気がした。それに加えて他の芥川賞作品では終わり方がなんとなくぼんやりとして曖昧なものが多いのに対して、「火花」の終わり方は、確かに日常がこれからも続きそうだが、相対的に見れば個人的にオチがついている気もした。それはもしかしたら又吉さんが芸人であるが故のものであるかもしれない。
芥川龍之介への手紙での、作品鑑賞に関する意見は自分も心底思っていたことだったので少し報われた。この意見がきっかけで自分も分からないからと言って考えることを放棄しないで、歩み寄って楽しもうとしようと思えるようになった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ初めは永田は又吉さんの脳内に近いのかと思っていたが、そうではないのかもしれない。『火花』の主人公の方が又吉さんに近くて、永田は又吉さんの考える劇作家、つまり又吉さんの一歩その先や又吉さんの脳内の芸術家的な要素の部分を取り出した存在なのかもしれない。 あとがきで触れられるまで忘れていたが「まぶたは薄い皮膚でしかないはずなのに、風景が透けて見えたことはまだない。」という書き出しがいかにも永田らしい。永田はこういう語り出しがないと自分のことなど語ることはできないだろう。 前半は永田の変人的な部分が描写されていて、だんだんそれがクズさにつながっていき、沙希との別れの雰囲気が出た後は、なんとか沙希に対して正直になり始めることができるという感じになっている。前半〜中盤はなかなか読むのがしんどいと感じた。別れの雰囲気は辛かった。最後は多少のカタルシスを感じた。セリフと畳み掛けて感動を呼ぶのは又吉さんの得意な手法なのだろう。おそらく又吉さん自身が頭で色々考えるたちで感情が乗った時や何か心の深いところにあることを言いたいときはそうなるのだとも思える。 この物語の後は沙希は地元で就職するのだろうが、永田はどうなるのだろう。二人の関係は?個人的には沙希がしきりに謝っていたことからも別れるのだと思う。沙希は東京から離れるとともに永田からも離れるのだろう。永田は劇を作りそうだ。『まだ死んでないよ』の劇を見た後のカウンターもできていないから、きっと東京での恋愛を描いた劇を作るのだろう。つまりこの小説は永田の劇の内容なのかもしれない。そう考えると語り出しも納得がいく。永田のことだから最後のアドリブでセリフという部分は本当にアドリブでさせそうだ。 又吉さんの書く恋愛が好き。不器用でお互いや環境が変化をしていく。二人が変わらなくても環境が変わっていくのでうまくいかなくなる。そして二人が変わるところにはカタルシスを感じる。不器用さと簡単には変われない人間味に閉塞感を感じる。