吉川英梨のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレめちゃくちゃ面白かった!!!
吉川英梨さんの海上保安庁ものが読みたいなって思って読み始めたけど、本当に読んで大正解でした。
諒がどうして岸本を襲ったのか、その本当の答えはもう誰にも分からないけれど、それが現実だよな〜って。相手の気持ちなんて想像しか出来ないけど、良くも悪くも、自分にとって都合の良い結論を出して生きていくしかないよなって。
岸本が導き出した「諒はただ顔を確認したかっただけだったのでは」って説を父親が否定したのがとても印象的だった。
親としては、きっとその説が1番希望的だし、息子の人柄からも納得がいくんだろうけど、岸本のことを思って、その説を否定したのは、器が大きいなって思った。
小説内では犯人逮捕後のその後は描かれていないけど、少しでも多くの人が諒が岸本を襲うためにシージャック事件を起こしたわけじゃないってことを知ってくれる世界だったらいいな〜って思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ凄く熱い作品でした。
特に胸を打たれたのが子供を堕ろして、教官としての人生を歩もうとしてた鐵教官に、桃地教官が言った言葉。
「あんたが苦しかったら、あんたが切り開いた道の後に続く女性海上保安官も、みんな苦しむだろうな」
「あんたが職のために子供を堕ろしたら、後に続く女性保安官も同じようなことをしなきゃなんない」
この一連のやり取りに、本当にハッとさせられた。
鐵教官は、新しい道を切り開こうとしていたんじゃなくて、無意識のうちに世間が求める理想の型を崩さないようにしていたのかなって。
私にも身に覚えがあって、世間の「こうあるべき」みたいな形をなぞるのって、身体的にはしんどくても、意外と精神的には楽な部分もあって。
それって、壁に立ち向かっているようで、上手に逃げてるだけだよな〜って。
なんか凄く考えさせられた。
あと生死に関する話題も悩まされるな〜って思った。
大切な人だからこそ、生きていて欲しいけど、生きているから幸せなんて、エゴでしかないよな〜って。
だから、桃地教官が、ただ彩子さんの生を願うんじゃなくて、「彩子さんに生きて欲しい→なぜ?→笑っていて欲しいから」って、なんで生きていて欲しいのかその本質?の部分に着目して行動したのは本当に素敵だなって。
相手を変えることはできないけど、自分を変えることは出来るってこのことか!って思った。
長くなったけど、本当に素敵な作品でした。 -
Posted by ブクログ
大阪市内で起きた強盗殺人とトラック強奪事件。闇バイトによる犯行と思われ、大阪府警本部捜査一課の高城が犯人グループを追って大阪港へ到達すると、犯人らは姿を消していて…。
ブグログで高評価の吉川さん。いつかは読まねばと思いつつ、今からシリーズものを読むのも大変だよなと思っていたら、今作が発売。これは面白そうと手に取った。
警察モノの社会派ミステリーはよく読むけど、海上保安庁がらみのミステリーはお初。ちょっと難しい言葉やコールサインが出てきたり、あまり馴染みのない大阪が舞台ということもあり、第一部は丁寧に読み進めなくてはならなかったが、第二部からは、犯罪に関わった人たちの姿が浮き彫りになり、ページをめくる手が止まらなかった。
海上保安庁特殊警備隊の存在を知ることができ、所々に出てくる大阪弁のやりとりにはほっこりした。
そして、闇バイトは日常生活の場にかなり浸透してるのだなと恐ろしくなった。 -
Posted by ブクログ
夫婦での本屋デートで夫に選んでもらった本。
自分では絶対選ばない海上保安庁が舞台になった小説。単行本だから持ち運び不便だし、こりゃ読むのに時間かかるぞーと思ってたら3日で読んでしまった。
大阪湾で起きた観光船のシージャック事件。それに絡む海保、大阪府警、闇バイト…もつれた糸をほどくように犯人の足跡をたどる海保の岸本と府警の高城。
第一章で主導権争いをしていた両陣営がつながって、真の黒幕に迫る様子には胸が熱くなった。
なんといっても第二章「加害者家族」の重さ。かなりズシンときた。
加害者の親の立場から描かれる事件後の数日間が、本当に読んでいて辛かった。「加害者だから」と子を失った悲しみに無理やり蓋をしようとする、でもやっぱりかわいい自分の子。大切に育ててきた我が子。「あの時ああしていればよかったのかな」「どこで間違えたのかな」という両親の葛藤に胸が苦しくなった。もういい!もういいよ!と同じ親として駆け寄って肩を抱きたくなる。
闇バイトって遠い世界の話みたいに感じていたけど、「なんだか人生うまくいかないな」から一気に絡めとられてしまう可能性があるんだって怖かった。もちろん闇バイトを選んでしまったその人自身にも責任はある。その一方で、一個人の問題と片付けてしまうのも乱暴に感じた。
うまくいかない時、躓いた時に立ち上がりやすい社会であってほしいなと思う。
2026年 71冊目。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ吉川英梨さんの作品は初めて読んだ。小島秀夫氏が絶賛していたので手に取った。今年最高だったと思う。前半のアクションとサスペンスは迫力があったし、中盤の加害者とその親の話は丁寧に感じた。主人公の挫折と立ち直り。犯人一味のサイドストーリー。真相。被害者だと思ったら…。ストーリー、人物描写、どれもよかった。てんこ盛りだった。大阪弁も愉快だった。悲しい場面なのに、それがいい味出していた。府警の高城はいいキャラだった。言葉は乱暴だが優しく熱い。海保の岸本とのバディも最高だった。シリーズ化されているのかわかっていないが、また彼が出ている作品を読みたい。
-
Posted by ブクログ
これほどまでに胸を締め付けられ、そして最後には深い優しさに包まれる警察小説に出会ったのは久しぶりだ。
埼玉で起きた、小5女子の失踪事件。
「日本は安全」と言われがちだが、それは絶対に言い切れないのだと、本作のリアルな描写に終始背筋が寒くなった。
いつもの通学路、いつもの下校時間という日常のすぐ隣に、これほど深い闇が潜んでいる。今や子どもを一人で学校から帰らせるのは危険だと、地続きの危機感を強く突きつけられる。
何より辛いのは、被害者であるはずの家族が置かれる不条理な環境だ。
事件直後はプライバシーを暴くマスコミの過熱報道に追い詰められ、時間が経って世間が忘れる頃になると、今度は事件の風化を防ぐために「マスコミの報道がありがたい」と願わざるを得なくなる。このどちらに転んでも地獄という皮肉な構造には、胸が苦しくなる思いがした。
しかし、そんな絶望の中でも、家族が地に足をつけ、必死に生きようとする姿には、こちらが本気で「負けないで」と応援したくなるほどの強さがある。
そして、この物語の主人公は、間違いなく刑事の奈良である。
組織が諦めかけても少女を捜し続ける彼を突き動かしているのは、被害者に寄り添う不退転の覚悟と、過去に救えなかった妹への深い悔恨だ。その二つが入り混じった強い覚悟があるからこそ、彼は事件を決して諦めず、同時に、最後まで傷ついた人々への細かな配慮を忘れない人物であり続けられるのだと思う。彼の徹底した優しさがあるからこそ、読者である私たちも救われ、最後まで彼と共に走り切ることができた。
これほど過酷な現実を描きながら、これほど優しい作品を紡げるのは、作者の吉川英梨さんご自身がきっと、理不尽に苦しむ人々に寄り添えるとても優しい方だからなのだろう、と感じずにはいられない。
単なる犯人当てのミステリーではなく、社会の歪み、人間の底力、そして「人の優しさ」を描ききった最高傑作です。 -
Posted by ブクログ
すぐにでも映像化できるような臨場感が伝わってくる。
夢中になり一気に読んでしまったほど。
大阪市内で起きた強盗殺人事件は、闇バイトによる犯行と思われたが、大阪府警捜査一課の高城が犯人グループを追って大阪港へ到達すると観光帆船のシージャックへと発展してしまう。
制圧のために海上保安庁特殊警備隊(SST)の岸本らが突入するが、思いもよらぬ事態に…。
高城と岸本のスナックでの出会いから始まり、どういう流れになるのだろうと予想もつかなかった。
真相に辿り着くまで一捻りのみならず、何度となく惑わされたが、その分、心拍数は跳ね上がる。
もちろん岸本の苦悩は計り知れないが、それ以上に加害者家族や周りの気持ちを読んで動く高城もこれこそ真の刑事なのかもと思った。
大阪近辺の地理がわかるだけに余計にのめり込んだのかもしれないが、大阪府警と海上保安庁による圧巻の社会派エンタメに痺れた。
-
Posted by ブクログ
ネタバレコールサインと本名がそれぞれあるので、なかなか難しい。けどそこが大切になってくる。闇バイト5人が大阪湾で観光船をシージャック。海保の特殊警備隊(SST)や警視庁、府警のSAT、MAATなど棲み分けがあるらしく内部モメしてる場合じゃないのに!とヤキモキする。制圧するとき相手が知人だったら、それでも任務遂行のため秒単位で判断する…加害者家族、特殊任務ゆえの苦悩、隠れがちな第二の被害者は大切だ。田路玲奈の右腕のリストカット跡、左利きって書いてあったかな?これからもう一度読む。
子の年表を作る、親としてやりきれない。用語がわからなくてスマホで調べながら読んだが一気読みがおすすめ。シリーズ化希望。