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Posted by ブクログ
これほどまでに胸を締め付けられ、そして最後には深い優しさに包まれる警察小説に出会ったのは久しぶりだ。
埼玉で起きた、小5女子の失踪事件。
「日本は安全」と言われがちだが、それは絶対に言い切れないのだと、本作のリアルな描写に終始背筋が寒くなった。
いつもの通学路、いつもの下校時間という日常のすぐ隣に、これほど深い闇が潜んでいる。今や子どもを一人で学校から帰らせるのは危険だと、地続きの危機感を強く突きつけられる。
何より辛いのは、被害者であるはずの家族が置かれる不条理な環境だ。
事件直後はプライバシーを暴くマスコミの過熱報道に追い詰められ、時間が経って世間が忘れる頃になると、今度は事件の風化を防ぐために「マスコミの報道がありがたい」と願わざるを得なくなる。このどちらに転んでも地獄という皮肉な構造には、胸が苦しくなる思いがした。
しかし、そんな絶望の中でも、家族が地に足をつけ、必死に生きようとする姿には、こちらが本気で「負けないで」と応援したくなるほどの強さがある。
そして、この物語の主人公は、間違いなく刑事の奈良である。
組織が諦めかけても少女を捜し続ける彼を突き動かしているのは、被害者に寄り添う不退転の覚悟と、過去に救えなかった妹への深い悔恨だ。その二つが入り混じった強い覚悟があるからこそ、彼は事件を決して諦めず、同時に、最後まで傷ついた人々への細かな配慮を忘れない人物であり続けられるのだと思う。彼の徹底した優しさがあるからこそ、読者である私たちも救われ、最後まで彼と共に走り切ることができた。
これほど過酷な現実を描きながら、これほど優しい作品を紡げるのは、作者の吉川英梨さんご自身がきっと、理不尽に苦しむ人々に寄り添えるとても優しい方だからなのだろう、と感じずにはいられない。
単なる犯人当てのミステリーではなく、社会の歪み、人間の底力、そして「人の優しさ」を描ききった最高傑作です。
Posted by ブクログ
もの凄い物語に触れた後、色々な言葉が浮かぶが本作は圧倒的である。小学生失踪事件に端を発する警察小説だが、夜に読んではいけない。結末が気になって手が止まらなくなるからだ。
事件に当たる捜査員たちの緊張感はもちろん、被害者家族に吹き付ける誹謗中傷、顔のない悪意まで満ちているのは吐き気がする。胃の中に剣山でも入れられたような気持ちになった。
一欠片の容赦もなく、吉川は人間の悪意を、それに触れた人間がどうなってしまうのかを描き出す。それに立ち向かうにはどれだけの強さがないといけないのかも。それらの存在感は確かだ。読後、物語の中にいた人々の顔が浮かんでくるよう。
Posted by ブクログ
子供が行方不明になった時
報道されている以外のことはわからない
その見えない部分を
家族 警察 マスコミ 地域住民
それぞれのサイドから多角的に見せてくれた物語
小学5年生の女子児童失踪事件のリアルを俯瞰しながら、関係者の心情に寄り添う
あらゆる事を想定して捜査する警察の非情さ
公開捜査後の家族への誹謗中傷、プライバシー侵害
1ヶ月もすれば日常に戻ろうとする地域社会
1年経って縮小される捜査の規模
いつまでも失踪したその日に留まり続ける家族達の苦痛 後悔を引きずりながら希望を捨てずに
女の子は見つかるのだろうか
事件か事故か家出か
生きているのか
死んでいるのか
現実では無責任な傍観者にすぎない読み手としての自分だけれど、一番感情移入したのは家族の願いと
粘り強い捜査で家族を支え続けた人達の思い
痛みを抱えながら諦めない人たちを
心強く思う
この物語で
それぞれの立場の
それぞれの思いを受け取ってしまったから
これからは、
子供達の行方不明の報道を見聞きする度に
今まで以上に心がざわついてしまうに違いない
Posted by ブクログ
大雨の日の下校途中、小学五年生の葵が一本のひまわり傘を残して突然姿を消した。事件か事故か家出なのかすら分からない――。
読み進める中で最も胸が苦しくなったのは、葵の失踪によって一変してしまった石岡家の過酷な現実だった。事件当時、両親は離婚協議中で、姉は受験を控えているという繊細な時期だ。そんな家族をさらに追い詰めるのが、周囲の人々の無関心さや、怪しまれる男性教師への容赦ない目。さらにSNS上で飛び交う無責任な誹謗中傷が、家族の心を深く傷つけていく。娘の帰りをただ信じたいだけの家族に対して、顔の見えない悪意が牙をむく現代社会の冷酷さに、強い憤りを感じた。
絶望の淵にいる家族の唯一の光となるのが、執念の捜査を続ける奈良刑事だ。しかし、地道な捜査も虚しく手掛かりがないまま失踪から3年という残酷な月日が流れる。周囲の関心が薄れ、事件が風化していく恐怖。それでも諦めずに足を動かし続ける奈良刑事の姿に、私は「誰か一人でも信じ続けてくれる人がいること」の尊さを感じた。彼の執念こそが、家族の希望の灯火だ。
この本を読み終えて、ニュースの向こう側の事件を他人事として見てしまいがちだが、そこには絶望と戦い続けるリアルな家族がいることを痛感した。
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小説・文芸
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