仲正昌樹のレビュー一覧
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ネタバレ「現代思想」:脱・中心化もしくは脱・体系化していく傾向。p12
【マルクス主義】p32
①労農派:直接的に社会主義革命を目指すべきだと主張するグループ。
②講座派:封建制の残滓である天皇制を中心とする「絶対主義」耐性を生み出した明治維新は本来の意味でのブルジョア革命ではないので、他の反体制勢力と協力しながらブルジョア民主主義革命の完遂を目指すべきだとする"二段階革命論"を提唱するグループ。
後期フッサールの「共同主観性(=間主観性)」p76
廣松渉『世界の共同主観的存在構造』:「物象化」と「共同主観性」の不可分性。
ベンヤミン『パサージュ論』:パリの中心部に出来上がっ -
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ネタバレ主に社会思想史を研究する仲正氏による日独戦後思想史の概説書。
出版された2005年は、小泉政権下で自民党が衆院選挙で大勝した年である。
この本は、第二次大戦中の同盟関係から戦後の清算に至るまで類似した道をたどった(と一般的に思われている)日独が、実は、思想史的には質的に異なる道を辿ってきたことを主題として語っている。
また、日本における戦後思想は思想史的な主流を持たないまま、曖昧模糊とした「右と左」の二項対立に終始している点も指摘している。
具体的には、以下の4点において比較分析が行われている。
(第1章)戦争責任を誰が負うのか
(第2章)戦後ナショナリズムの形成過程とその内容
(第3章) -
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「わかりやすさ」に定評のある著者の文章をもってしても、ルソーの真意は読み取りにくい。著者もルソーの書物に矛盾が散見されることを認めている(あまつさえ、数々の矛盾は、ルソーの意図的なアイロニーなのかもしれない、とまで)。
ルソーのいう「一般意思」を、会社などの団体の意思に例えた説明はシンプルでしっくりきた。しかし同時に、「一般意思」の理想は、ある人が会社に属するのと同様に、コミュニティに「属している」と自覚しているかどうかにかかっているということなのかな。
一見すると誰もが首肯するような正論も、突き詰めるとさまざまなほころびが生じ矛盾が生じるという標本のようなものなのかもしれない、ルソー -
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一時期流行した、サンデルの正義について等を、アメリカの現代思想の流れの中で追いたかったので読んでみた。
序章によると、思想のアメリカ化の流れは、①ポストモダンの流れ、②分析哲学の流れ、③リベラリズムの流れがあるそうだが、本書は③のみを扱っている。
内容としては、保守主義とリベラルの対立軸の中で、元々リベラルがもっていた「自由主義」的な考えを保守主義がもつことによって、リベラルとしても新たに自由と平等を両立する必要性に迫られて、ロールズの「正義論」が生まれた。正議論を受けての、リベラリズム、リバタニアズム、コミュニタリズムなどの思想が生まれ、ポストモダンの哲学、冷戦後の哲学、文明の衝突などの -
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再読した。多岐にわたる話題。
特に興味を感じたのは、イマジナリーな領域の権利の話題
自由とは、自己決定できることだとして
この自己を自己決定する権利の話題。
まさに自分の問題意識。
デュルシラ・コーネルが参照されている。
あと、アーレントとハバーマスのコミュニケーション。
違いは経済活動の捉え方。
アーレントは、自己の利害などが入ったコミュニケーションは否定するが、ハバーマスは肯定。
アーランは、ポリス、西欧的な出自を持つコミュニケーションの限界を意識している?
正義なりを確信したときの排他性。
悪の本質とは、自分で考えることをやめたこと -
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仲正先生の本、久しぶりに読みました。
おもしろすぎて頭が変になりそうでした。
帯には
高校生もわかる「思想」入門
なんて書いてあるんですが、
こんなの高校生のときに読んでたら、頭破裂していた気がしますよ僕は。
それは良いことかもしれないし、悪いことかもしれないし、そこは分からないんだけども。
政治やメディアの場でなぜかよく使われるようになっている、哲学・思想用語を取り上げ、
学術上の意味や文脈を自身の考えを織り交ぜながら解説していきます。
その「仲正先生の考えを織り交ぜながら」の部分がだいぶ乱暴です。いい意味で。
一つの項を読み終わって、そのキーワードに対する理解が頭の中ですっ -
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みそ汁をしばらく放っておくとみそが沈んでしまいますよね。アイデアやイメージがその沈んでしまったおみそだとすると、この本は、そのみそ汁をお箸でくいくいっとまぜるような読みものです。
ちゃんと言うと、あたまのなかに沈澱し(そしてある意味では安定化し)たイメージやアイデアを掘り起こして思考する意欲を刺激してくれるような本です。あまりたくさんの知識を与えてくれる本ではありません。むしろ、映画の予告編のように、いろいろ考えたく、知りたくなる本だと思います。
ご本人もあとがきで言っておられますが、けっこう毒舌で、譲歩やカッコ書きのあたりにユーモアやアイロニーが見え隠れしています。けっこう笑えます。 -
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ポストモダン思想を整理した上で、じゃあ今主流となるアメリカの思想はどうなの、ということで急遽衝動買いした一冊。まぁ著者も同じだし。しかし、忘れていたけどアメリカって日本以上の哲学後進国だったんだよね。
簡単に整理。アメリカでは功利主義や実証主義といった側物的な価値観が長らく主流で、それ故資本主義的な価値観と相性が良かったんだけど、そんな中で大きな転換点がロールズが1971年に発表した『正義論』。ここでは、「正義」という概念を「公正さ」と捉えなおし、その基準として「社会のどこに生まれ変わっても耐えられるか」 という立場可換性を置く事によって「自由」と「平等」を両立させる事に一貫性を見い出そうと -
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ちょっと考える事があって学生時代以来再読してみたのだけど、今改めて読んでみるとポストモダンとはなんだったのかが改めて理解できた。気が付いたのは、そのような考え方というのが何を前提として生まれてきたものか、ということ。
ポイントとなるのは、本書でポストモダンの思想家で取り上げられる人物というのは、大半がフランス・ドイツを中心とした英米を除いた西洋諸国であること。そう、彼らの思想的土台というものは二度の世界大戦を経験した事に対する近代的「知性」への疑問と、地理的に「資本主義/社会主義」という二項対立的な価値観が現前に迫ってきているという状況が存在していた事だ。そこに対する懐疑として生まれたのが構 -
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現代思想の解説本をはじめ多くの著書がある著者の新刊。
思想と死の関係、という切り口から10人の大思想家について解説している。そして、それは同時に「生き生きと」思想を語る人々への批判でもある。
まずもって読み物として非常に面白かった。
かなり探し歩いて、念願かなってという感じで手に入れたこともあり、夢中になって読んでしまった。
そして、解説としてもわかりやすかった。
神を殺して、頼るところのなくなった人間。
いかにして倫理は存在できるのか。
そして、人間は「人間」をも殺すことになる。
彼らの本を読んだことなどあまりなく、まして彼ら自身であるわけでもないのに、解説としてわかり -
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ネタバレ「みんな」という非常に馴染み深いが、何だかよくわからない概念に対して、鋭く迫って分析している著者の議論の進め方はお見事という他ないだろう。
没個性的になるのを嫌がって他人と自分を差別化したがり、そのために奮闘すればするほど没個性的になっていくというアイロニカルな逆説を著者は「客観的」に指摘しているようだ。
しかし、著者に言わせれば、他者を対象化しながら検証している自分自身でさえも、実は「みんな」の呪縛からは逃れられずに「わたし」と「みんな」の間を行き来して、袋小路に陥っているらしい。
「みんな」という存在に私達は否応なしに関わらざるを得ないようだ。 -
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ネタバレこの本で著者は、保守vsマルクス主義、マルクス主義陣営の内乱、ポストモダン、そして現在の論壇、という現代思想の流れを扱いながら、思想が世の中を動かす絶対的な装置だと自惚れた思想家に対して、冷ややかな目で横目で見ながら持論を展開している。
思想というものは絶対的なものなんかではなく、世の中の分析装置のひとつにすぎない、と述べられている。
思想を職業としている自らの自己否定かと思いきや、冷静な目で現代思想を活用していこうというポジティブな見解を示しており、妙な説得力に感心させられた。
特に印象に残ったところとしては、ポストモダンの記述について、ポストモダンが流行らなくなってきている現在の -
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帯の「現代思想の入門書」という文句とユニークなタイトルに惹かれて買って読んでみたが、私が以前に読んだ仲正氏の日本とドイツの思想比較をテーマにした新書よりも抽象度が高く、理解が及ばない箇所が多々あった。
この本は、アドルノ、ベンヤミン、アーレント、デリタ、ハイデガー、フーコー、マルクス、ニーチェ、ラカン、スローターダイクの10人の思想を章に分けて、著者のテーマに合わせて引用しつつ解説・解釈して話が展開していく形式をとっている。
私としては不十分な理解なりにも、ニーチェの「超人」に関する思想をバカボンのパパを題材にして論じている章が、妙に説得力があるように思われ楽しめた。