仲正昌樹のレビュー一覧
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E Oウィルソンの『知の挑戦』が解説される哲学関係の書籍というのはただそれだけで満足を得られたりする。
期待して読んだのは第4章「心の哲学 「心」はどこまで説明可能か?」
自分としては(大雑把にいって)自由意志と行動主義が同時に存在する感覚を、今ここで感じられること(事)が「こころ」と呼ばれるものだと思ってるのだけど、どっちかでないとダメみたいなところで議論しているみたいで、なんで両立しないのかが気になった。
あと、たとえば視神経の2つの異なる系の存在や、そうした神経と脳の関係が生物の進化の過程でどのように獲得されてきたのかというあたりは哲学ではあまり考えていなくて、純粋な思考によって -
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第二次世界大戦中にドイツからアメリカへ亡命したドイツ系ユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント。彼女が執筆した『全体主義の起原』をはじめとした著書を通して、ナチズムやホロコーストを推し進める背景にあった社会の流れや大衆心理を説いていく。
『蠅の王』(ウィリアム・ゴールディング)や『一九八四年』(ジョージ・オーウェル)を読んだときに感じた背筋がヒヤリとする感覚は、本書を通してかなり補完されました。
ヒトラーが大衆心理を熟知し巧みに操り、自身の「法」に従うよう扇動していたのはその通りです。アーレントはさらに歴史的惨事が起こった時代背景として、政治や社会が混沌とし敵味方の見通しがつきにくい、将来が不安定 -
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本日第3章「大衆は「世界観」を欲望する」に読み架かりました。
白眉は大衆を定義した箇所。
政治的に中立の態度をとり、投票に参加せず政党に加入しない生活で満足している
投票を棄権する人(大衆)は、平素はとりたてて不満がなく
「ま、ひどいことにはならないだろう。」
と楽観し、実際に(多少ズルをする人がいるかも知れないが)気楽に生きていく程度には不自由がないのだろうと思います。
しかし、彼ら(大衆)が、世の中に不満を持ったとき、全体主義の再来が懸念される
と言うことなのでしょう。
日本では選挙のたびに、低い投票率が嘆かれますが、
無理に投票に行かせると、極端な主張をしている左派か、右派のどち -
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ハンナ・アーレントの重厚な著作は、存在こそ認知しているものの手に取ったことがない。
気にはなっている、しかし手に取るには様々な意味で重たい。しかし気にはなっている…
そんな自分にとっては実にありがたい一冊だった。
強烈なリーダーシップを発揮する独裁者が全体主義を作るのか?ここでは明確に「ノー」という答えが提示される。
大衆の動きが作り出すものであり、またそのメカニズムに組み込まれた大衆はそのシステムから求められる行動が、規範が悪であるのかはもはや判定不可能になる。なんとも恐ろしい話であるし、遥か昔に片付いた話というわけではない。全体主義は隣で、自分の中で息づいているのだ。
立ち止まって物事 -
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本書は、アメリカ現代思想を、ジョン・ロールズの1971年の「正義論」により打ち立てられたリベラルな政治哲学を中心にして、アメリカの政治状況と絡みつつ、各思想家、哲学者が、どのような必要にかられて自分の思想、哲学を構築していったのか、歴史的に述べている。そして、アメリカの哲学がいつのまにか、伝統的なフランス・ドイツ系の哲学から、哲学の主流を奪ってしまったことについての、納得いく記述、回答になっている。
その哲学の主流の変化は、まずアメリカにおいて、文芸批評家ポール・ド・マン、ジョナサン・カラー等によりフランス・ドイツ系のポストモダンと言われた哲学が咀嚼、紹介され、盛んに研究された。一方、フランス -
購入済み
誰もが知るべき現代思想
私は理系で、こういう思想とか倫理とか疎い人間なのですが、とても面白かった
近代思想を超克しようとした思想の挑戦の歴史は、誰もが興味を持って勉強すべきなのではと思わされました
私が特にとても興味を持ったのは、ヴァルター・ベンヤミンのファンタスマゴリー論とバタイユと栗本慎一郎の蕩尽論
また読みたい本が増えてしまった -
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近年、「人が自分らしく生きる」ということと、他の人との関係、そして組織や社会との関係に関心があって、そこから暴力とか、エゴセントリシティとか、成人発達とか、文化の違いとか、色々、興味を持って本を読んでいる。
そういう中で、出会ったのが、ハンナ・アーレントで、彼女の言っていることに全面的に賛成しているわけではなく、一部大きな疑問を持っているとこもあるのだが、問題設定の仕方とか、思考のパターンとかにはかなり共感している。
アーレントは色々なことを言っているわけだが、何かこうしたらいいという積極的な主張があるわけでは必ずしもなく、彼女の最大の関心は、「全体主義を避けること」で、その他のことは少々 -
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タイトルが変だから読み控えていたけど、読んでみたら面白かった。
タイトルからして世の中の「みんな」に不満をぶつけて「こいつらほんとバカだよな(笑)」等感じなのかと思ってたけど、仲正昌樹なので当たり前だけど、そういう内容でなかった。
まず「みんな」って誰? という定義から入って、「赤信号」や例をもとにして、日本における「みんな」とは誰かを説明しつつ、西欧思想史における「みんな問題」(全体主義など)を説明。「みんなの責任」とか、その中での主体のあり方(ない方)など、みんなみんなで一冊。監獄の誕生。
「責任とは応答すること」で、「みんなが」とか「みんなやってるのに」という応答から「主体意識の解体 -
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戦後60年、海外ではイラク戦争が起こった2005年に書かれた日本とドイツが辿った戦後思想についての本。こちらも『日本とドイツ 二つの全体主義』と同じく、思想史について手際よくまとめられている。目次は以下の通り
第一章:二つの戦争責任
第二章:「国のかたち」をめぐって
第三章:マルクス主義という「思想と実践」
第四章:「ポストモダン」状況
第一章と第二章では、日本とドイツで戦争責任についてどう考えられていたのかが書かている。「一億総懺悔」で自国の被害者性を強調して、他国への加害者性が最近まで思考がいかなかった日本と、周辺諸国と隣接する領土を失い、東西に分割されてしまって新たに「国家」として出 -
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前年に出版された『日本とドイツ 二つの戦後思想』の続編だが、発売順ではなく、こちらの新書から読んだ。本書では、第二次世界大戦時に枢軸国側として参戦した日本とドイツが「国民国家」として成立する、1870年代から第二次大戦に突入する1930年代までの戦前の思想史を描いている。
目次は以下の通り。
第一章:近代化とナショナリズム
第二章:二つの社会主義
第三章:市民的自由と文化的共同性
第四章:全体主義と西欧近代の超克
本書では、非常に手際よく日本とドイツの戦前の思想史の比較がされており、ある程度、哲学と思想史を学んだ人にとっては頭の中の知識が再構成、整理されていく良い本だと思う。(個人的には哲