仲正昌樹のレビュー一覧
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ネタバレ『日本とドイツの二つの戦後思想』の続編?という位置づけにあたるようだ。前作の戦後思想に関するもののように、活発に議論されるテーマでなかったせいか、著者独自の見解というものが極力示されておらず、1870年代~1930年代までのドイツと日本の思想の変遷を順を追って比較し、論じるにとどまったものになっている。
前作の続編に位置づけられるのに、時代は遡っているという極めて異様な本書であるが、読み進めていくうちにこの後編を読むことによって、前作の理解がより深まっていくように感じた。
戦前から戦後と順を追っていくよりも、戦後の結果を踏まえた上でより理解が深まるものであると計算して、このシリーズを書 -
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ネタバレ日本とドイツ―戦後の対外政策においてよく比較の対象とされる両国であるが―では、よく「ドイツは周辺諸国にちゃんと謝罪したが、日本はアジアの国々に謝罪しない。けしからん」という主張が展開される。そうなるのはなぜなのか?、という素朴な疑問から出発している。
著者によると、日本とドイツの戦後政策は地政学的要素・政治的要素・文化的要素などから、単純比較はできないし、すべきでないという指摘・批判が鋭くなされていた。メディアで展開されるような単純な比較の問題とは異なり、議論に深みがあり説得力を持ったものだった。
ただ、途中のマルクス主義の日独比較あたりから、私の不勉強による教養の欠如が原因で、十分に -
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ネタバレ[ 内容 ]
1980年代、「ポストモダン」が流行語となり現代思想ブームが起きた。
「現代思想」は、この国の戦後思想をどのような形で継承したのか。
海外思想をどのように咀嚼して成り立ったのか。
なぜ80年代の若者は「現代思想」にハマったのか。
丸山眞男や吉本隆明など戦後思想との比較をふまえ、浅田彰や中沢新一らの言説からポストモダンの功罪を論じる。
思想界の迷走の原因を80年代に探り、思想本来の批判精神の再生を説く。
沈滞した論壇で唯一気を吐く鬼才による、異色の現代思想論。
[ 目次 ]
序 かつて、「現代思想」というものがあった
1 空回りしたマルクス主義(現実離れの戦後マルクス主義;大衆社 -
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ネタバレ[ 内容 ]
格差社会から地域紛争まで、喫緊の課題をどう読み解くか。
現実的な社会変革をめざす思想として、近年注目されるアメリカ発のリベラリズム。
社会全体の「平等」と個人の「自由」の両立を構想することで、自由をめぐる現代的課題を考察したロールズの正義論からリバタリアニズムにコミュニタリアニズム、ネオコン思想まで。
リベラリズムを中心とするアメリカ現代思想のあらましを、時代背景とともに明快に解説し、日本をはじめ現代の思想状況にリベラリズムが与えた影響を探る。
[ 目次 ]
アメリカ発、思想のグローバリゼーション
1 リベラルの危機とロールズ(「自由の敵」を許容できるか-戦後アメリカのジレンマ -
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[ 内容 ]
プラトン以降の西欧哲学・思想史において、“すぐれた哲学・思想”と思われているものが、いかに擬似宗教(形而上学)化の危険性と隣り合わせにありそのことが哲学者・思想家によってどのように問題化され、論じられてきたのか。
本書では、現代思想に特に強い影響を与えたハイデガー、アーレント、デリダなどの論考をてがかりに、思想史の概観を試みる。
新興宗教体験を持つ著者だからこそ、現代日本の思想業界に、“生き生きとしたラディカルな思想”を中心とした「真の共同体」を求めるかのような、擬似宗教化の風潮が生じていることが分かるのである。
[ 目次 ]
序章 擬似宗教化する現代思想と「私」
第1章 「真 -
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ネタバレ[ 内容 ]
国民性か?
歴史の必然か?
近代化の陥った罠を思想史から俯瞰する。
[ 目次 ]
第1章 近代化とナショナリズム(「国民」という思想 「国民」の“人為”と“自然” ほか)
第2章 二つの社会主義(「労働者」の誕生と社会主義 国民国家と社会主義 ほか)
第3章 市民的自由と文化的共同性(二つの戦間期 ワイマール共和国の大衆民主主義 ほか)
第4章 全体主義と西欧近代の超克(脱西欧化と新保守主義革命 脱西欧化とアジア主義 「生存圏」の思想 「近代の超克」論 ロマン主義と「近代の超克」)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
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ロールズを中心に、大戦後のアメリカ政治思想が俯瞰できる本。
当時の社会問題など時代背景とリンクさせることで、一見抽象的な議論が実感を伴って伝わるような構成になっている。
アメリカに対して大味なイメージを持つ人にとっては、この本によって「アメリカの底力」を知ることになるだろう。
リバタリアニズム-リベラリズム-コミュニタリアニズムという中心軸と、その周辺を回るポストモダニズム&プレモダニズムが複雑に入り組み、お互いを切磋琢磨している。
アメリカが熱狂的に一方向に振れつつも、時間とともに冷静に回帰していくプロセスを我々は目にすることが多いわけだが、それはこうした「知的な厚み」に支えられているわけ -
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[ 内容 ]
グローバル化の進展につれて、何かにつけて「自己決定」が求められるようになってきた。
その背景には、人間は「自由な主体」であるという考え方がある。
しかし人間は、すべてを「主体的」に決められるわけではない。
実際、「自由な主体」同士の合意によって社会がつくられるという西欧近代の考えは、ほころび始めてきた。
こうした「ポスト・モダン」状況にあって我々は、どう振る舞えばいいのか?
そもそも「自由な主体」という人間観は、どう形成されたのか?
こうした問いを深く追究した本書は、近代社会の前提を根底から問い直す、新しい思想の試みだ。
[ 目次 ]
第1章 「人間は自由だ」という虚構(現代思 -
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普遍的真理を探究し、誰にでも分かるように証明する「哲学・思想」には、もともと疑似宗教的な共同体を作り上げる傾向が付随する。ある一定の真理を得られたとしてもそれをもまた吟味して問い続ける営みが哲学なのだが、哲学が疑似宗教にはまってしまう危険性を、いかにして思想家(とくに現代思想家)たちが問題化としてきたのかを本書では思想史を概観しながら取り上げている(とはいえ、ハイデガー、ハンナ=アーレント、デリダがメインだが)。
西洋哲学・思想史の流れとして、万物を遍く普遍的真理を探究し、その真理の名の下に世界や人間のあるべき姿や政治、科学などを説く、ソクラテスやプラトンに代表されるギリシア思想の流れと、 -
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現代思想に至るまでの流れ、今時の大学生が文系学問やっていたら逃れられないだろうポストモダンとは。
読めば読むほどあざとい書き方に思えてならない。わかりやすい。
全共闘の最中の思想の動き、マルクス主義などからはじまる近代の学問の流れなどをさらっと復習、手はじめに読むには良い本ではないだろうか。
普通に面白いよ、この本。
僕の受け持った発表区分がそうだからかもしれないけど、全共闘の流れを理解するのには本当に役立った。小説で読んでもいまいちぴんとこないものではあったしね。なぜ今こそ革命がおきないのだろう。
60年代ほど思想的に大衆を巻き込むのに難しい状況にはないと思われるのに。
消費文化に毒さ