仲正昌樹のレビュー一覧
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第二次世界大戦前後から9.11以降の現在に至るアメリカの政治思想の歴史を、その時々の政治的状況を顧みながら概観する。「アメリカ現代思想」と言っても、アメリカに拠点を移したヨーロッパや非西欧圏出身の思想家なども含まれるので、本書がカバーする範囲は広い。
第一講ではロールズ以前のアメリカの思想状況として、全体主義を批判し自由を擁護したフロム、ハイエク、アーレントなどが紹介される。
第二講以降は、ロールズの正義論と、それに対するリアクションとして展開された種々の思想が時代を追って紹介される。
ロールズに対する種々の批判や応用、広義のリベラリズムとポストモダニズムの関係などを解説した第三講〜第五 -
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専門分野が多岐に渡るマックスウエーバーについての入門書という難しい問題に対して、その著書を読むことを通じて当たられた本書の挑戦が見事に当たっていると思います。本来、ウエーバーを学ぶには相応の覚悟が必要だと思いますが、その知識の一部でも正確に知る事ができる本書は有難かったです。
著者も序で書かれているように、やはり専門的な内容にもなるので、学生になって講義を受けているような姿勢で読まなければならない面があります。私は第3章が少し難しく感じました。
第1章・・・キリスト教の各宗派の思想と、資本主義の関係について
第2章・・・政治を扱う人の種類や、政治形態としての官僚制について
第3章・・・学問とし -
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マックス・ウェーバー入門書としてまとめられたものですが、「それぞれのテクストがどのような意味において知的に刺激的なのか、これから学者になろうとしている人、あるいは、少なくとも、学問と本格的に取り組もうとしている人の目線、言ってみれば、「学者の卵」目線で読んでいきたい。」(p18「序」より)と著者は単なる古典の「紹介」ではなく、読者の積極的な「読み」を要請しています。こうした姿勢は内田義彦『社会認識の歩み』(岩波新書・青版)とも共通しているように感じます。
本書はウェーバーの膨大な業績の中から、宗教社会学(『プロ・倫』)、政治観(『職業としての政治』『官僚制』)、社会科学方法論(『客観性』『 -
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この本を読む前は、アーレントについて、ナチスの全体主義を糾弾した人、ということしか知らなかった。なので、バリバリの個人主義の人かと思ってたら全く逆だった。
物事を単純化し、画一的な思考に陥ることを嫌い、言論活動を重視した共和主義者。他者と意見を交わすことでヒトは「人間性」を身に付けていくという。
著者はアーレントの言説を援用しつつ、近年メディアやインターネットに蔓延する、複雑な事象の単純解釈や、短絡的で画一的な思考様式や、「傍観者」が自由に意見を言いにくい風潮に警鐘を鳴らす。
「複雑な物事を複雑なまま捉える」……なかなか難しいことではあるが、とかく物事を単純化して理解したがる自分へ -
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ネタバレ面白かった。
マルクス主義の理論では、「階級」という仕組みが生まれたことによる不自由から人類の本来的な価値を「解放」するという考え方なのに対し、アーレントは、「解放=自由」ではなく、自由とは本来、市民が物質的な制約に囚われずに「活動」している状態と考える。解放を目的とするのではなく、共同体の「共通善」を探求することにより自由が現れて来るのだ。
貧困や障害という「不幸な人々」への共感を人間の「自然な情の発露」と見なして弱者を苦しみから救うことが政治だ、という論調は、「人間としての正しい在り方」を押し付ける排他的な価値観に繋がりやすい。
アーレントは、そういうヒトとして生まれたことより -
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21世紀も間近になった頃に大学入学、研究を本格的にはじめたのは2000年代後半というな私は、日々「なんでこんなことになっちゃってるの!?」と叫びたくなるような哲学・思想(と社会との関係)に関する問題にぶちあたることが多かった。――たとえば、「どうして浅間山荘に閉じこもった連合赤軍は仲間同士で殺し合ったのか?」とか「なんで『総括』という言葉がリンチを指すようになったのか?」とか、「なんでこんなに現代思想は、ライトなノリで明るくたのしく語らなくちゃいけない感じになっちゃったのか?」とか。
本書は、そうして日々ぶつかりながらも、その答えを見出す術同市もなく、喉にささった魚の小骨のようになってしまった -
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現在の宗教を考える上で、特にアメリカにおいては政治を考えなければならなくなっている(そしてその逆も然りである)。ということで何か政治哲学に関する入門書をと思い、手を出したのがこの本である。
僕の政治哲学に関する知識はほんのりハーバーマスやテイラーについて知っている程度であった。その程度の知識しかない者にとっても、本著は非常にわかりやすいと思う。特に、現在どのような思想があって、それはどういう経緯で生まれてきて、どういうところで対立しているかという全体像が見事に整理されている。また、日本の政治哲学思想についても少し言及してくれているのも嬉しい。
アメリカの事例なので、必ずしもこの本を読むこと -
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ネタバレ昨今において、様々な所で語られる言葉の幾つかについて、著者の考え方が書かれている。
よもすれば、私たちはこれらについて語る時、世論のコピーになりがちなのを、改めて自分自身で考える大切さを教えてくれていると思う。
以下、ややネタバレも含むが、この本で取り上げられているキーワードを元に、沸き上がってきた私の考えを整理してみた。
正義
更生なルールを追求する議論から、心の奥底にまで入ってきて導きを与えてくれるような正義論への移行
善
何が善かを特定しようとすれば、主体的に係わらなくてはならなくなると思う。
日本のように、自分の立場をはっきりさせなければ生死に関わるような宗教紛争もない国では、 -
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80年代を中心に流行った、「現代思想(ニューアカデミズム)」の思想がどのように生まれ、どのように展開されたかを中心に戦後の日本の思想をまとめた本。3部に分かれて解説している。
第1部(1.2章)で、戦後マルクス経済学がどのように日本に普及し、その限界があったかを述べている。具体的には、農労派(社会党系)や講座派(共産党系)の違いなどから始まり、全共闘、丸山や吉本などの思想にもふれながら、日本の左翼思想の高まりについて述べている。
第2部(3.4章)では、構造主義から、諸外国のポストモダン(脱構造主義)がどのように展開したか、特に生産から消費へと流れる中で、変化があったこと、またフランスのポ -
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マルクス主義に端を発する近代思想からポストモダンへの思想の変遷をコンパクトにまとめていて、現代思想って結局何だったんだべ、という僕のような今さらながらの入門者に打ってつけ。本書を通じて思想史を概観すると、ポストモダンはまるで保守と左派という連星の周りをグルグルと振り回されながら周回する人工衛星のようだ。思想は今、危機的低迷を迎えているというけれど、人は生きている限り必ず何か考えているもの。ましてやこの難しい時代だ。狭いニッチでミクロな分析に甘んじる現代思想の残り火が、やがて思いがけない方向へとスイング・バイで飛び出していかないとも限らない。がっぷりと組み合うに値する面白い地平が待っていそうな気